旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
季節は残暑厳しくももう秋。
アメフトの東京大会会場は本日あいにくの曇り空だった。
むっとする気候の中、泥門高校の部員達はグラウンドを見て固まった。
「・・・なんだ、アレ」
「なんでこんなにカラスがいるの?!」
このグラウンドは周囲がネットで覆われているものの、取り立てて偏狭な立地でもゴミが多い場所でもない。
それなのにそのネット全ての上部分にたむろしているのでは、と思う程の過剰な数のカラス。
「ひどいな、こりゃ」
「試合には直接関係ないでしょうけど・・・」
泥門側が眉を寄せるのに対し、相手側は平然と、むしろ笑みさえ浮かべてこちらを伺っている。
「やっぱり相手が呪井だからかなあ」
「オカルト=カラスは短絡的じゃねぇか?」
「でもなんとなく縁起は悪いよね・・・」
「マジで呪われてるんじゃねぇの?」
相手側は毎年対戦相手が原因不明の怪我や病気に冒されることで有名な呪井オカルツだ。
こういった超常現象にも平然としているヒル魔だが、妖介はやや及び腰だ。
「おい、妖介」
「・・・なんですかコーチ」
「腰引けてるぞ。まさか怖いとか抜かすかテメェ」
「いえ・・・」
怖いというか気色が悪いというか。
生きている人間なら相手が悪魔と呼ばれるヒル魔だろうが怖くはないが、生きていない超常的な存在となれば話は別だ。
なんとなく落ち着かない彼にヒル魔は舌打ちする。
「部長がそれじゃ締まらねぇだろうが。今回はアヤがいねぇんだぞ」
前回右肩脱臼という怪我を負ったアヤは、大事を取って今回の試合は欠場なのだ。
ユニフォームにもならずジャージ姿だが、髪型と化粧だけは戦うときのそれになっている。
スタメンに正QBのアヤがいない。それも相手側には有利に働く。
異様な雰囲気に飲まれそうになっている一同に何か声を掛けようとした妖介の目の前に、にやにやと笑いながらアヤが進み出た。
ギャアギャアと啼き喚くカラスたちを一瞥する。
「このまんま俺も出ねぇのに志気下がりっぱなしっつーのも困るナァ」
妖介は思わず眉を寄せた。
演出と判っていても姉のこの言葉遣いは頂けないと常々思っているからだ。
けれど妖介の物言いたげな視線をものともせず、アヤは不意に襟元からペンダントを取り出した。
アヤがアクセサリーを身につけているなんて見たことがない。
一体何をする気だ、と見守る妖介の前でアヤはそのペンダントヘッドを銜えると、吹いた。
「何それ。音もしないけど」
「黙ってろ」
そうして曇り空を真っ直ぐに飛んでくる影に気が付く。
あれは。
妖介が目を見開く。
影はこちらめがけて直滑降に降りてくる。
あれは鳥笛だったのか、と理解する妖介の耳に空を切り裂くような音が響いた、気がした。
すう、とアヤの左手が伸ばされる。
まるで映画のワンシーンのように、アヤの左手に優美な仕草で隼が舞い降りた。
あまりに意外な隼の登場に、会場内は水を打ったようにしんとしている。
「Harpy」
アヤの凛とした声が名を呼ぶ。
「キー」
応じるハーピーの鋭いかぎ爪が食い込むアヤの腕には、いつの間にか革製のグローブが嵌められている。
アヤはにやりと質の悪い、父親そっくりな顔をした。
「獲れ!!」
「キ―――――――――――!!!」
ハーピーが翼を羽ばたかせ、飛び立つ。
一メートル近い翼の羽ばたきを間近に受けて、アヤの髪の毛が靡き、光を弾く。
眼光鋭いハーピーの威嚇に、カラスは怯え、一斉に飛び立つ。
一瞬であれほどにいたカラスは影どころか啼き声さえも消え失せてしまった。
今度は呪井オカルツの面々が雰囲気に飲まれたようで、たじろぐような様子が見て取れる。
フン、とアヤがそれを見て鼻を鳴らした。
「すっげ・・・」
「なんかの撮影とか言われても不思議じゃねぇよ、これ・・・」
呆然と事の成り行きを見ていた部員達に、アヤはグローブを外しながら視線を向ける。
「テメェら、これでも縁起が悪ィとか呪いとか愚にも付かねぇこと抜かしやがるか?」
「い、いいえ!」
「俺がいねぇから負けたなんて言い訳させんのか?」
「いいえ!」
ハッパを掛けるアヤが左手で妖介の肩を叩く。
引き継いで妖介が声を上げた。
「行くぞテメェら!!」
すう、と息を吸い込むそのタイミングで全員の顎が上がる。
「ぶっ殺す!!」
『Yeah―――――――――――――!!!』
叩きつけるような気合いに、ヒル魔とアヤはにやりと笑ってガムを口に放り込んだ。
一方その頃。
グラウンドの外で仕事を終えたハーピーを呼ぶ声。
「おいで」
キー、と嬉しげに啼いてハーピーはふわりと護の腕に舞い降りた。
「助かったよ。ありがとうね」
小首を傾げるハーピーを撫でて、護はぐるりと周囲を見渡した。
被写体としてカメラに狙われやすい姉の追っかけと呼ばれる面々。
毎試合ごとに数を増やす不届きな連中のデータを拾い集めるのは護の大事な仕事だ。
「今日は姉ちゃんもベンチにずっといるから狙われやすいし、もう少しよろしくね」
語りかけながらハーピーの身体にCCDカメラを取り付ける。
慣れた様子でハーピーは再び空へと戻った。
護は眸を細めて空を見上げ、それから客席へとするりと紛れ込んだのだった。
***
このワンシーンが書きたいがためにハーピーを出したと言っても過言ではないのですが・・・上手く書けなかった・・・! 護の本性話も書きたいし色々書きたいネタはあるのに手が追いつかないのが歯がゆいです。
というかヒルまも一家以外の話を書こう、私。
アメフトの東京大会会場は本日あいにくの曇り空だった。
むっとする気候の中、泥門高校の部員達はグラウンドを見て固まった。
「・・・なんだ、アレ」
「なんでこんなにカラスがいるの?!」
このグラウンドは周囲がネットで覆われているものの、取り立てて偏狭な立地でもゴミが多い場所でもない。
それなのにそのネット全ての上部分にたむろしているのでは、と思う程の過剰な数のカラス。
「ひどいな、こりゃ」
「試合には直接関係ないでしょうけど・・・」
泥門側が眉を寄せるのに対し、相手側は平然と、むしろ笑みさえ浮かべてこちらを伺っている。
「やっぱり相手が呪井だからかなあ」
「オカルト=カラスは短絡的じゃねぇか?」
「でもなんとなく縁起は悪いよね・・・」
「マジで呪われてるんじゃねぇの?」
相手側は毎年対戦相手が原因不明の怪我や病気に冒されることで有名な呪井オカルツだ。
こういった超常現象にも平然としているヒル魔だが、妖介はやや及び腰だ。
「おい、妖介」
「・・・なんですかコーチ」
「腰引けてるぞ。まさか怖いとか抜かすかテメェ」
「いえ・・・」
怖いというか気色が悪いというか。
生きている人間なら相手が悪魔と呼ばれるヒル魔だろうが怖くはないが、生きていない超常的な存在となれば話は別だ。
なんとなく落ち着かない彼にヒル魔は舌打ちする。
「部長がそれじゃ締まらねぇだろうが。今回はアヤがいねぇんだぞ」
前回右肩脱臼という怪我を負ったアヤは、大事を取って今回の試合は欠場なのだ。
ユニフォームにもならずジャージ姿だが、髪型と化粧だけは戦うときのそれになっている。
スタメンに正QBのアヤがいない。それも相手側には有利に働く。
異様な雰囲気に飲まれそうになっている一同に何か声を掛けようとした妖介の目の前に、にやにやと笑いながらアヤが進み出た。
ギャアギャアと啼き喚くカラスたちを一瞥する。
「このまんま俺も出ねぇのに志気下がりっぱなしっつーのも困るナァ」
妖介は思わず眉を寄せた。
演出と判っていても姉のこの言葉遣いは頂けないと常々思っているからだ。
けれど妖介の物言いたげな視線をものともせず、アヤは不意に襟元からペンダントを取り出した。
アヤがアクセサリーを身につけているなんて見たことがない。
一体何をする気だ、と見守る妖介の前でアヤはそのペンダントヘッドを銜えると、吹いた。
「何それ。音もしないけど」
「黙ってろ」
そうして曇り空を真っ直ぐに飛んでくる影に気が付く。
あれは。
妖介が目を見開く。
影はこちらめがけて直滑降に降りてくる。
あれは鳥笛だったのか、と理解する妖介の耳に空を切り裂くような音が響いた、気がした。
すう、とアヤの左手が伸ばされる。
まるで映画のワンシーンのように、アヤの左手に優美な仕草で隼が舞い降りた。
あまりに意外な隼の登場に、会場内は水を打ったようにしんとしている。
「Harpy」
アヤの凛とした声が名を呼ぶ。
「キー」
応じるハーピーの鋭いかぎ爪が食い込むアヤの腕には、いつの間にか革製のグローブが嵌められている。
アヤはにやりと質の悪い、父親そっくりな顔をした。
「獲れ!!」
「キ―――――――――――!!!」
ハーピーが翼を羽ばたかせ、飛び立つ。
一メートル近い翼の羽ばたきを間近に受けて、アヤの髪の毛が靡き、光を弾く。
眼光鋭いハーピーの威嚇に、カラスは怯え、一斉に飛び立つ。
一瞬であれほどにいたカラスは影どころか啼き声さえも消え失せてしまった。
今度は呪井オカルツの面々が雰囲気に飲まれたようで、たじろぐような様子が見て取れる。
フン、とアヤがそれを見て鼻を鳴らした。
「すっげ・・・」
「なんかの撮影とか言われても不思議じゃねぇよ、これ・・・」
呆然と事の成り行きを見ていた部員達に、アヤはグローブを外しながら視線を向ける。
「テメェら、これでも縁起が悪ィとか呪いとか愚にも付かねぇこと抜かしやがるか?」
「い、いいえ!」
「俺がいねぇから負けたなんて言い訳させんのか?」
「いいえ!」
ハッパを掛けるアヤが左手で妖介の肩を叩く。
引き継いで妖介が声を上げた。
「行くぞテメェら!!」
すう、と息を吸い込むそのタイミングで全員の顎が上がる。
「ぶっ殺す!!」
『Yeah―――――――――――――!!!』
叩きつけるような気合いに、ヒル魔とアヤはにやりと笑ってガムを口に放り込んだ。
一方その頃。
グラウンドの外で仕事を終えたハーピーを呼ぶ声。
「おいで」
キー、と嬉しげに啼いてハーピーはふわりと護の腕に舞い降りた。
「助かったよ。ありがとうね」
小首を傾げるハーピーを撫でて、護はぐるりと周囲を見渡した。
被写体としてカメラに狙われやすい姉の追っかけと呼ばれる面々。
毎試合ごとに数を増やす不届きな連中のデータを拾い集めるのは護の大事な仕事だ。
「今日は姉ちゃんもベンチにずっといるから狙われやすいし、もう少しよろしくね」
語りかけながらハーピーの身体にCCDカメラを取り付ける。
慣れた様子でハーピーは再び空へと戻った。
護は眸を細めて空を見上げ、それから客席へとするりと紛れ込んだのだった。
***
このワンシーンが書きたいがためにハーピーを出したと言っても過言ではないのですが・・・上手く書けなかった・・・! 護の本性話も書きたいし色々書きたいネタはあるのに手が追いつかないのが歯がゆいです。
というかヒルまも一家以外の話を書こう、私。
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HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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