旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
あれほどに思い焦がれたクリスマスボウルが終わり、疲労が蓄積した身体を引きずりながらも、気分は悪くなるはずもない。
祝勝会は大いに盛り上がり、夜半を過ぎてようやく解散した。
雪の降りしきる中を、ムサシは一人帰路に就く。
それを見つけた栗田が声を掛けた。
「ムサシー」
栗田がぼいんぼいんと人にはあるまじき音をたてて近寄ってくるのを、ムサシはその場に立ち止まって待つ。
「勝ったねー!!」
「ああ」
「すごいよねー!!」
その大きな体一杯に歓喜と幸せが詰まったような様子で笑う彼に、ムサシは笑みを浮かべて耳を掻く。
「すごいのは栗田、お前だろ」
「え?」
「ヒル魔は散々お前がどれだけ、と言っていたな」
「え、でも、あれは僕だけじゃなくて」
「ああ、判ってる」
さくさくと、積もった雪に足跡をつけながら歩く。
「あいつも素直じゃない奴だからな」
「そうだね」
「だが、あいつをあそこまで守ったのはお前だろ」
栗田はぴたりと足を止めた。
「でも、守りきれなかったよ」
「白秋か?」
「うん。結局怪我させちゃったし・・・」
しょぼん、と俯く栗田にムサシは柔らかく苦笑する。
「それだけの話じゃあない。俺は途中一度抜けたから偉そうなことは言えんがな」
見上げる雪空。夜になってもなお、薄明るく雪を降らせ続けている。
「ヒル魔一人じゃ早々にデビルバッツは潰れてただろう。奴もお前がいたから頑張れたんだよ」
何でも出来るが故に何もかもを背負い込んで、ストレスを発散することも人に頼ることも出来ずに。
あのまま一人突っ走らせてしまえばヒル魔も潰れ、一年生が入るのを待たず、廃部になっていてもおかしくない状況だった。
「ぼ、僕は何も出来てないよ。僕は、ただアメフトがやりたくて・・・バカみたいにそう言ってただけだもん」
「そうやって夢を語って、願い続けただろう?」
ムサシはぽん、と栗田の肩を叩いた。
絶望的な状況だったヒル魔を、どれだけ勇気づけたか、彼自身にはあまり自覚がないらしい。
「栗田の言葉には言霊があるのかもな」
ムサシはにやりと笑う。
「栗田が何か願って語れば、何でも叶うかもしれんぞ」
「ええ?! うーんと、えーと、それじゃあね・・・」
「『雁屋のシュークリームをお腹一杯食べたい!』」
「え?」
「ん?」
背後から聞こえてきた声に振り返れば、そこにはにやにやと笑うヒル魔の姿。
「なーんて糞なことは抜かすんじゃねぇぞ、糞デブ!」
あっという間に近寄り、げいん、と蹴られて栗田は目を丸くして。
「なんで僕の言いたいこと、判ったの?」
「ンなもんは夢じゃねぇだろ。明日にでも買いに行けば済む話だろうが」
「じゃあ明日は部室でシュークリームパーティーしようね!」
「アア!? ふざけんな、糞デブ! 部室に糞甘臭ェモン持ち込むな!」
「えー、だってヒル魔が食べていいって言ったんじゃない」
「そうは言ってねえだろ!」
一人増えただけで一気に賑やかになる。
げいんげいんと蹴られつつ栗田は何か思いついたようでぱっと顔を輝かせた。
「それじゃあ『僕たちが三人揃ってまたアメフトの試合をやりたい』っていうのはどう?」
ヒル魔は肩をすくめてガムを口に放り込む。
「ケッ! それも夢じゃねぇよ、糞デブ」
「え、だって・・・あ、春大会がまだあったね」
けれどヒル魔はぷう、とガムを膨らませて言いはなった。
「そんな小せぇ舞台で満足させやしねぇよ」
「どういうことだ?」
さてそれはどんな企みなのか。
いきいきとした表情にムサシと栗田の二人は顔を見合わせる。
「それよりももっと盛大なことを願いやがれ」
「えーとうーんと・・・じゃあ、『アメフトでパワー世界一になる!』・・・とか?」
言い過ぎたかな、という顔をした栗田に、ヒル魔は楽しげに笑う。
「ケケケ、そりゃあいい。期待を裏切るなよ、糞デブ」
「ええ?」
不思議そうな栗田の声にも、ヒル魔はただにやにやと笑うだけだった。
それから程なく。
遠く離れたアメリカで、三人は同じユニフォームに身を包み。
世界というフィールドに足を踏み入れることになる。
***
クリスマスボウル終了後、ヒルまもじゃなくこの三人で語っていてもいいかもな~と思って作成。
栗田くんの純粋さというか、願う強さってヒル魔さんとムサシも羨ましいんじゃないかな。
祝勝会は大いに盛り上がり、夜半を過ぎてようやく解散した。
雪の降りしきる中を、ムサシは一人帰路に就く。
それを見つけた栗田が声を掛けた。
「ムサシー」
栗田がぼいんぼいんと人にはあるまじき音をたてて近寄ってくるのを、ムサシはその場に立ち止まって待つ。
「勝ったねー!!」
「ああ」
「すごいよねー!!」
その大きな体一杯に歓喜と幸せが詰まったような様子で笑う彼に、ムサシは笑みを浮かべて耳を掻く。
「すごいのは栗田、お前だろ」
「え?」
「ヒル魔は散々お前がどれだけ、と言っていたな」
「え、でも、あれは僕だけじゃなくて」
「ああ、判ってる」
さくさくと、積もった雪に足跡をつけながら歩く。
「あいつも素直じゃない奴だからな」
「そうだね」
「だが、あいつをあそこまで守ったのはお前だろ」
栗田はぴたりと足を止めた。
「でも、守りきれなかったよ」
「白秋か?」
「うん。結局怪我させちゃったし・・・」
しょぼん、と俯く栗田にムサシは柔らかく苦笑する。
「それだけの話じゃあない。俺は途中一度抜けたから偉そうなことは言えんがな」
見上げる雪空。夜になってもなお、薄明るく雪を降らせ続けている。
「ヒル魔一人じゃ早々にデビルバッツは潰れてただろう。奴もお前がいたから頑張れたんだよ」
何でも出来るが故に何もかもを背負い込んで、ストレスを発散することも人に頼ることも出来ずに。
あのまま一人突っ走らせてしまえばヒル魔も潰れ、一年生が入るのを待たず、廃部になっていてもおかしくない状況だった。
「ぼ、僕は何も出来てないよ。僕は、ただアメフトがやりたくて・・・バカみたいにそう言ってただけだもん」
「そうやって夢を語って、願い続けただろう?」
ムサシはぽん、と栗田の肩を叩いた。
絶望的な状況だったヒル魔を、どれだけ勇気づけたか、彼自身にはあまり自覚がないらしい。
「栗田の言葉には言霊があるのかもな」
ムサシはにやりと笑う。
「栗田が何か願って語れば、何でも叶うかもしれんぞ」
「ええ?! うーんと、えーと、それじゃあね・・・」
「『雁屋のシュークリームをお腹一杯食べたい!』」
「え?」
「ん?」
背後から聞こえてきた声に振り返れば、そこにはにやにやと笑うヒル魔の姿。
「なーんて糞なことは抜かすんじゃねぇぞ、糞デブ!」
あっという間に近寄り、げいん、と蹴られて栗田は目を丸くして。
「なんで僕の言いたいこと、判ったの?」
「ンなもんは夢じゃねぇだろ。明日にでも買いに行けば済む話だろうが」
「じゃあ明日は部室でシュークリームパーティーしようね!」
「アア!? ふざけんな、糞デブ! 部室に糞甘臭ェモン持ち込むな!」
「えー、だってヒル魔が食べていいって言ったんじゃない」
「そうは言ってねえだろ!」
一人増えただけで一気に賑やかになる。
げいんげいんと蹴られつつ栗田は何か思いついたようでぱっと顔を輝かせた。
「それじゃあ『僕たちが三人揃ってまたアメフトの試合をやりたい』っていうのはどう?」
ヒル魔は肩をすくめてガムを口に放り込む。
「ケッ! それも夢じゃねぇよ、糞デブ」
「え、だって・・・あ、春大会がまだあったね」
けれどヒル魔はぷう、とガムを膨らませて言いはなった。
「そんな小せぇ舞台で満足させやしねぇよ」
「どういうことだ?」
さてそれはどんな企みなのか。
いきいきとした表情にムサシと栗田の二人は顔を見合わせる。
「それよりももっと盛大なことを願いやがれ」
「えーとうーんと・・・じゃあ、『アメフトでパワー世界一になる!』・・・とか?」
言い過ぎたかな、という顔をした栗田に、ヒル魔は楽しげに笑う。
「ケケケ、そりゃあいい。期待を裏切るなよ、糞デブ」
「ええ?」
不思議そうな栗田の声にも、ヒル魔はただにやにやと笑うだけだった。
それから程なく。
遠く離れたアメリカで、三人は同じユニフォームに身を包み。
世界というフィールドに足を踏み入れることになる。
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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