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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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天然恋愛観

(ヒルまも一家)
※あかりが4才、護が17才の話です。


+ + + + + + + + + +
とある大学のキャンパス内。
茶色の髪を揺らし、白衣を纏って歩く背の高い男。
彼は、午前中の講義を終えて鼻歌交じりに食堂へと向かっていた。
「あ! ヒル魔くん!」
そこに三人の女子大生が近づいた。
「ん?」
「ねえねえ、今からお昼?」
「私たちと一緒に食べない?」
きゃいきゃいと傍らで笑う女性は皆タイプこそ違えど可愛らしかったり美人だったりと華やかだ。
「うん、いいよ」
「やった! じゃあ、行こう!」
「私隣、いい?」
「やだー、私よ!」
まるで小学生の戯れのようでいて、実質火花が飛び散るような熾烈な女性陣の輪の中。
とりなそうと彼が口を開こうとした、その時。
「パパ―――――――――!!」
甲高く可愛らしい声。
皆が一斉にそちらを見る。
そしてそこにいたのは、茶色い髪の少女。
顎で切りそろえた髪を靡かせ、真っ青な綺麗な瞳で真っ直ぐに男を見上げていて。
視線が集まるのも気にせずに、彼女は軽い足音を立てて駆け寄って。
そして。
「パパ、捕まえたー!」
がし、と渦中の彼の足に捕まった。
「え・・・」
「その子・・・」
「ヒル魔くんの、子・・・?」
女性陣がじり、と後ずさり、少女と男とを見比べる。
「違・・・」
「いつもパパがお世話になってまーす!!」
彼の言葉を遮り、ぺこ、と頭を下げる少女に皆の顔が引きつった。
「な!? こら!」
焦る彼に対し、女性陣は視線を交わす。
「お子さんの邪魔しちゃ悪いから・・・」
「うん、ごめんね・・」
彼女らは語尾を濁しながらそそくさと立ち去っていく。
「違うって! ちょっと!」
「パパー」
「俺はパパじゃないでしょ、あかりちゃん!」
もー、と呟いて男こと妖介は足下にまとわりつくあかりを抱き上げた。
「あかりちゃんがここにいる、ってことは・・・」
妖介はふいににっこりと笑った。
「あかりちゃん、ちょっと両手でお耳塞いでくれるかな?」
こう? と小首を傾げるあかりに頷いて見せて、その身体を胸に抱き込み。
更に彼女の手の上から自らの腕で耳を塞いでから視線を上げた。
「こんの、糞親父ども!! 出てこ――――――――――い!!!」
周囲の人間がぎょっとして固まる程の声量に、ひょこりと姿を現したのは二人の男。
「糞親父!! なにあかりに仕込んでやがる!!」
「糞煩ェ女どもに困ってたんだろーが」
助けてやったんだからむしろ感謝しろ、と笑って言うヒル魔と。
「そんなに怒鳴ると血管切れるよ、兄ちゃん」
伊達眼鏡をかけて飄々と笑う護に妖介はいくつも青筋を浮かべる。
「そんなに怒りっぽいとハゲるぞ」
「ウチにはハゲ遺伝子ないよ!」
「尻軽女に付きまとわれて困るのは兄ちゃんでしょ」
「それ以前の問題だって!」
「むー! むー!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ男三人の間であかりが息苦しそうに身動ぐ。
「兄ちゃん、あかりが窒息するよ」
慌てて胸からあかりを放して、妖介は嘆息した。
「あかりちゃん、お父さんのイタズラに付き合っちゃ駄目だよ」
そう言いながら地面に下ろしてやると、あかりは首を振った。
「んーん、まもにぃが言ったの」
「テメェか護!!」
噛みついても護はにっこりとあかりに笑いかけるだけだ。
「姉ちゃんはむしろ喜んでたんだよねー」
「ねー」
よく似た顔で笑う弟妹に妖介は頭痛を覚える。
ということは同じ大学で別学部のアヤの方にも同じ事をやらかしたらしい。
そりゃアヤには既にムサシという旦那がいるのだから言い寄ってくる男は害虫にしかならないからいいだろう。
だが、妖介はそうではないのだ。
「俺ただでさえ全ッ然モテないのに!」
一生彼女が出来なかったらどうするの、と嘆く妖介にヒル魔と護は顔を見合わせる。
この天然ボケの男は、それこそ昔から相当モテていたのにそれに全く気づかない朴念仁なのだ。
顔こそヒル魔譲りだが、気質はまるっきりまもりそのものなのが災いしているようだ。
医者の卵である妖介は高校時代より更に騒がれているのに気づかないのはもう罪かもしれない。
「そりゃ俺たちだけのせいじゃねぇよナァ」
「ホントホント」
「ほんとー」
あかりまで言葉尻に乗るのに、妖介は渋い顔をして口を開く。
「で、何の用なの?」
「おー。ウチとテメェのチームと練習試合させようと思ってナァ」
「格上との実戦が一番の練習だからね」
「それなら部長のところに行ってよ。俺これから昼飯だから」
妖介は白衣の裾を翻す。すると、それを握る小さな手。
「ようにぃ、あかりもお腹空いたー」
「ん? じゃあ一緒にご飯食べようか。父さん達は後でいいんでしょ?」
「おー。俺らは先に交渉に行く」
「じゃあ後でね。それまであかりの面倒よろしく」
「午後の講義に間に合うように戻ってきてね」
わかったよ、と手を振る二人を見送って妖介はあかりを抱き上げる。
「さ、ご飯食べようか。何食べたい?」
「あかりねえ、ハンバーグ食べたい!」
その様子をちらりと振り返って見た護はヒル魔に話しかける。
「あれじゃまた父子だと誤解する人いるよね」
「そうだな」
「いいの?」
「テメェの相手くらいテメェで見つけるだろ」
そしてちらりとヒル魔は護を見る。
「テメェは少し落ち着いた方がいいくらいだがナァ?」
それに護はほんの一瞬、にやりと質の悪い笑みを浮かべて見せた。


後日。
医学部に所属する蛭魔妖介と、法学部に在籍する蛭魔綾は既に子持ちだという噂が大学校内を駆けめぐったのだった。

***
ヒルまも一家であかりを出すことに決めたとき、真っ先に浮かんだ話がコレでした(笑)
アヤ・妖介21才、護17才、あかり4才。妖介は小児科医を目指し、アヤは弁護士志望です。
護の今後やそれぞれが進路を選んだ経緯についてはまた後日。
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