旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
うららかな日差し差し込むリビング。
あかりはダイニングテーブルに肘を載せ、椅子に座った状態で携帯電話をいじっている。
その動きは実にゆっくりだ。
「ア? 珍しいじゃねぇか」
久しぶりに日本に戻ってきていたヒル魔がそれに気づいて声を掛ける。
「おはよー、お父さん」
あかりはさらりと肩より長く伸ばした茶髪を揺らし、顔を上げるとにこーっと笑った。
つい先日中学校に上がり、セーラー服を纏い始めたあかりはそれと同時に携帯電話を手に入れていた。
学校側の方針とかで制限の多分に掛かったそれを、あかりは持ち忘れることが多いくらい興味を覚えなかった。
デジタル関連にめっぽう強いヒル魔やアヤや護とは違い、まもりや妖介のように携帯電話すら危うい部類なのかと思っていたのだが。
ゆっくりではあるものの、入力作業は滞りない。
「貰った名刺のアドレスとか入力してたのー」
「名刺?」
ヒル魔はぴん、と眉を上げる。あかりの手元に二、三十枚くらいのカード状のものが積み上げられているのが見えたからだ。
「随分な量だなァ。奴隷志望か?」
「全部お友達のだよ」
あかりはほんわりしたしゃべり方でヒル魔にカードを一枚差し出す。
そこには可愛らしい手書きの丸っこい文字が踊っていた。
「打つのに時間が掛かるから、ゆっくりやってるのー」
「ホー」
ヒル魔が打つなら早々に終えられる分量だが、あかりは視線でそれを優しく断る。
上三人と比較されることがないからか、のんびりゆったりした性格に育ったあかり。
ただし頑固さだけは兄弟随一、と家族の誰もが口を揃えて言うほど芯が強い。
「お父さんにやってもらうと、男友達の分は焼却処分しちゃうかもって心配するの」
「ンなこと」
「するよねぇ、父さんならさ」
コーヒーの満たされたカップを手に、妖介がキッチンから顔を出した。
はい、と差し出されたカップを受け取りながらヒル魔は口を開く。
「なんだ、いたのか」
「いたのかって。俺は夜勤だって昨日の夜に言ったでしょ」
「さっきまで部屋で論文書いてただろうが」
「休憩。喉渇いちゃった」
姉崎は、と言いかけたヒル魔は、このところ生意気盛りの孫たちの姿がないことに気づいて眉を寄せた。
不在の理由を察したと同時に、妖介も彼が何を言いたいか察したようだった。
「今日は天気もいいし、母さんと小夏は小秋と小冬を連れて公園に行ったよ」
「・・・」
ぽちぽちと携帯を操作しながらあかりも補足する。
「お父さんは珍しくよく寝てるから起こさないようにって言ってたー」
母さんが起きたのに気づかないなんて、と言われてヒル魔は不機嫌そうにカップに口をつける。
仕事が忙しく、ここのところなかなか休暇が取れなかったのだ。
ようやくめどが立ったので日本に戻ってきたはいいが、自覚なしに相当疲れが溜まっていたらしい。
鈍っている、と自らに舌打ちする。
「糞」
小さい呟きに、あかりがくすくすと笑った。
「千秋と小冬がおじいちゃんと遊びたいって駄々こねてたから、今から行ってあげたら喜ぶよ」
それが置いて行かれたからだと彼女は判断したらしい。
「でも、父さんも孫煩悩になるかと思ったらそうでもないよね」
カフェオレが入ったカップを二つ持って来た妖介は、一つをあかりの前に置く。
「娘の孫はまた違うっていうけど、アヤの方ばっかりかわいがるってこともないしさ」
ヒル魔はアヤが産んだ孫たちの顔を思い浮かべる。見事にムサシによく似た彼らを見るのは非常に複雑な心境だ。
そんなヒル魔を余所に、勝手な未来予想図を浮かべてのほほんとくつろぐ兄妹。
「あかりの子が生まれる頃にはきっと父さんも人並みにじいさんっぽくなるだろうから、もっと角取れるんじゃない?」
「お父さんが丸くなるのって想像つかないねー」
「あれでも相当丸くなったんだって」
「えー?」
「・・・」
ヒル魔は少々の沈黙の後、カップに残ったコーヒーを飲み干した。
孫はともかく、姉崎が勝手に出て行ったのが気にくわない。
「行ってくる」
少々の不機嫌さに滲んだ気配を察しても娘息子は気にしない。
「行ってらっしゃーい」
「はーい、行ってらっしゃい」
苦笑混じりの二人の声に見送られてヒル魔がさっさと出て行ってから。
「それにしても凄い量だねえ」
「うーん、やっぱり全部携帯に入れるのは限度があるかも。女友達だけでもメモリが一杯になりそうよ」
あかりは小首を傾げると、やっぱりこれかと手帳を取り出した。
優しげな外見に伴わない、革作りのシックなシステム手帳だ。
ただし、かなり分厚い。
「やっぱり手書きの方が早いよね」
「うん」
あかりは新しいリフィルとペンを取り出すと、先程までの携帯を操作していたときとは違い、素早く手元が動く。
カカカカカッ!
「・・・兄ちゃんは時々その速度が空恐ろしくなるよ」
「そう?」
のんびりした口調はそのままなのに、凄い速度でカード類が捲られ、アドレス帳が埋まっていく。
その中には、あからさまに子供のモノではない名刺が何枚も混じっている。
「・・・ついでにそのなんだか判らないけど怖そうな人の名刺とか・・・なんで持ってるの」
いかにもその道の人です、というような異様な名刺。だがあかりはふわふわと笑うだけ。
「道を案内してあげたらくれたよー」
「・・・んもう」
奴隷や人の秘密というどちらかといえば負の財産的なモノを集めたヒル魔家のデータベース。
まもりやあかりはそれらに接続はおろか、存在すら知らずにいる。
けれど、それでもあかりは独自に、家族すら知り得ない人間関係を構築していたりする。
そうしてそれらは驚くほど広く深い。中学生では本来あり得ないくらいに。
しかもそれら全ては善意だというのだから、更に信じがたい。
「危ないことだけはしちゃだめだからね?」
家族の中で唯一、そんなあかりの様子に薄々気づいている妖介は一応そう釘を刺すが。
「みんなお友達だよ?」
妖介の心配を余所に、あかりは大丈夫だとほんわりと笑う。
写し終えた名刺を別に取り出したファイルに差し込んでいくのだが。
その背表紙にある数字が『№68』とあるのに眉を寄せ、妖介は嘆息するのだった。
***
ヒル魔さんまだ海外勤務中。妖介と小夏との間には子供が二人、ムサシとアヤの方にもいます。
孫を出すと収拾が付かなくなるかな、と思いつつ中学生くらいになったあかりちゃんが書きたくなったので必然的に出てくることに・・・。多分なるべく書かない方向で行くつもりなので、いるにはいるが性格・外見その他はご自由にご想像下さい、というスタンスでよろしくお願いします。
まもりちゃんはお母さんそっくりの外見ですが、髪の毛はセミロング。その正体はまだちょっと秘密。そうして護もいますが、その話も追々書いていきたいですね-。
・・・どこまで突っ走る気なのかしら、私。
あかりはダイニングテーブルに肘を載せ、椅子に座った状態で携帯電話をいじっている。
その動きは実にゆっくりだ。
「ア? 珍しいじゃねぇか」
久しぶりに日本に戻ってきていたヒル魔がそれに気づいて声を掛ける。
「おはよー、お父さん」
あかりはさらりと肩より長く伸ばした茶髪を揺らし、顔を上げるとにこーっと笑った。
つい先日中学校に上がり、セーラー服を纏い始めたあかりはそれと同時に携帯電話を手に入れていた。
学校側の方針とかで制限の多分に掛かったそれを、あかりは持ち忘れることが多いくらい興味を覚えなかった。
デジタル関連にめっぽう強いヒル魔やアヤや護とは違い、まもりや妖介のように携帯電話すら危うい部類なのかと思っていたのだが。
ゆっくりではあるものの、入力作業は滞りない。
「貰った名刺のアドレスとか入力してたのー」
「名刺?」
ヒル魔はぴん、と眉を上げる。あかりの手元に二、三十枚くらいのカード状のものが積み上げられているのが見えたからだ。
「随分な量だなァ。奴隷志望か?」
「全部お友達のだよ」
あかりはほんわりしたしゃべり方でヒル魔にカードを一枚差し出す。
そこには可愛らしい手書きの丸っこい文字が踊っていた。
「打つのに時間が掛かるから、ゆっくりやってるのー」
「ホー」
ヒル魔が打つなら早々に終えられる分量だが、あかりは視線でそれを優しく断る。
上三人と比較されることがないからか、のんびりゆったりした性格に育ったあかり。
ただし頑固さだけは兄弟随一、と家族の誰もが口を揃えて言うほど芯が強い。
「お父さんにやってもらうと、男友達の分は焼却処分しちゃうかもって心配するの」
「ンなこと」
「するよねぇ、父さんならさ」
コーヒーの満たされたカップを手に、妖介がキッチンから顔を出した。
はい、と差し出されたカップを受け取りながらヒル魔は口を開く。
「なんだ、いたのか」
「いたのかって。俺は夜勤だって昨日の夜に言ったでしょ」
「さっきまで部屋で論文書いてただろうが」
「休憩。喉渇いちゃった」
姉崎は、と言いかけたヒル魔は、このところ生意気盛りの孫たちの姿がないことに気づいて眉を寄せた。
不在の理由を察したと同時に、妖介も彼が何を言いたいか察したようだった。
「今日は天気もいいし、母さんと小夏は小秋と小冬を連れて公園に行ったよ」
「・・・」
ぽちぽちと携帯を操作しながらあかりも補足する。
「お父さんは珍しくよく寝てるから起こさないようにって言ってたー」
母さんが起きたのに気づかないなんて、と言われてヒル魔は不機嫌そうにカップに口をつける。
仕事が忙しく、ここのところなかなか休暇が取れなかったのだ。
ようやくめどが立ったので日本に戻ってきたはいいが、自覚なしに相当疲れが溜まっていたらしい。
鈍っている、と自らに舌打ちする。
「糞」
小さい呟きに、あかりがくすくすと笑った。
「千秋と小冬がおじいちゃんと遊びたいって駄々こねてたから、今から行ってあげたら喜ぶよ」
それが置いて行かれたからだと彼女は判断したらしい。
「でも、父さんも孫煩悩になるかと思ったらそうでもないよね」
カフェオレが入ったカップを二つ持って来た妖介は、一つをあかりの前に置く。
「娘の孫はまた違うっていうけど、アヤの方ばっかりかわいがるってこともないしさ」
ヒル魔はアヤが産んだ孫たちの顔を思い浮かべる。見事にムサシによく似た彼らを見るのは非常に複雑な心境だ。
そんなヒル魔を余所に、勝手な未来予想図を浮かべてのほほんとくつろぐ兄妹。
「あかりの子が生まれる頃にはきっと父さんも人並みにじいさんっぽくなるだろうから、もっと角取れるんじゃない?」
「お父さんが丸くなるのって想像つかないねー」
「あれでも相当丸くなったんだって」
「えー?」
「・・・」
ヒル魔は少々の沈黙の後、カップに残ったコーヒーを飲み干した。
孫はともかく、姉崎が勝手に出て行ったのが気にくわない。
「行ってくる」
少々の不機嫌さに滲んだ気配を察しても娘息子は気にしない。
「行ってらっしゃーい」
「はーい、行ってらっしゃい」
苦笑混じりの二人の声に見送られてヒル魔がさっさと出て行ってから。
「それにしても凄い量だねえ」
「うーん、やっぱり全部携帯に入れるのは限度があるかも。女友達だけでもメモリが一杯になりそうよ」
あかりは小首を傾げると、やっぱりこれかと手帳を取り出した。
優しげな外見に伴わない、革作りのシックなシステム手帳だ。
ただし、かなり分厚い。
「やっぱり手書きの方が早いよね」
「うん」
あかりは新しいリフィルとペンを取り出すと、先程までの携帯を操作していたときとは違い、素早く手元が動く。
カカカカカッ!
「・・・兄ちゃんは時々その速度が空恐ろしくなるよ」
「そう?」
のんびりした口調はそのままなのに、凄い速度でカード類が捲られ、アドレス帳が埋まっていく。
その中には、あからさまに子供のモノではない名刺が何枚も混じっている。
「・・・ついでにそのなんだか判らないけど怖そうな人の名刺とか・・・なんで持ってるの」
いかにもその道の人です、というような異様な名刺。だがあかりはふわふわと笑うだけ。
「道を案内してあげたらくれたよー」
「・・・んもう」
奴隷や人の秘密というどちらかといえば負の財産的なモノを集めたヒル魔家のデータベース。
まもりやあかりはそれらに接続はおろか、存在すら知らずにいる。
けれど、それでもあかりは独自に、家族すら知り得ない人間関係を構築していたりする。
そうしてそれらは驚くほど広く深い。中学生では本来あり得ないくらいに。
しかもそれら全ては善意だというのだから、更に信じがたい。
「危ないことだけはしちゃだめだからね?」
家族の中で唯一、そんなあかりの様子に薄々気づいている妖介は一応そう釘を刺すが。
「みんなお友達だよ?」
妖介の心配を余所に、あかりは大丈夫だとほんわりと笑う。
写し終えた名刺を別に取り出したファイルに差し込んでいくのだが。
その背表紙にある数字が『№68』とあるのに眉を寄せ、妖介は嘆息するのだった。
***
ヒル魔さんまだ海外勤務中。妖介と小夏との間には子供が二人、ムサシとアヤの方にもいます。
孫を出すと収拾が付かなくなるかな、と思いつつ中学生くらいになったあかりちゃんが書きたくなったので必然的に出てくることに・・・。多分なるべく書かない方向で行くつもりなので、いるにはいるが性格・外見その他はご自由にご想像下さい、というスタンスでよろしくお願いします。
まもりちゃんはお母さんそっくりの外見ですが、髪の毛はセミロング。その正体はまだちょっと秘密。そうして護もいますが、その話も追々書いていきたいですね-。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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