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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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釣糸の外

(ヒルまもパロ)
※二人が違う学校に通ってます。
※リクエスト作品。


+ + + + + + + + + +
まっすぐに貫くような軌跡を描くボール。
それは敵チームの目論見を大きく外れた箇所にたどり着き、見事な逆転勝利を収める―――という構図が出来上がるはずだった。
少なくとも、このチームの司令塔であるヒル魔が考える限りは。
「!」
パァン、という鈍い音を響かせてボールが地面に叩きつけられる。
本来であれば全く別の箇所を守っているはずの敵守備が、パスカットしたのだ。
インターセプトをされなかっただけマシだが、それにしても。
(読まれた・・・か?)
ヒル魔はちらりと自陣のベンチを見る。
そこでは数人のマネージャーと主務がおろおろと様々なファイルやクリップボードを手に慌てふためいていた。
「チッ!」
派手に舌打ちしたヒル魔はタイムアウトを主審に告げる。
そうして皆がベンチに戻るのをさりげなく促すようにして―――彼の目は敵陣のベンチを抜け目なく見つめる。
部員達が我先に集まり、誰かの手が一人のマネージャーの頭に触れた。
『ヨクヤッタ』
触れた手の持ち主が刻んだ言葉を読み取る。
遠目であり、更に体格のいいアメフト部員たちに囲まれているせいもあって、その姿はよく見えない。
が、そのマネージャーは人望厚く、そうして高い能力を持っているのだと言うことはここからでも知れた。
「・・・ヒル魔? どうしたの?」
「何でもねぇ。おい、パターン変えていくぞ」
「? うん、判った」
急な作戦変更を告げても、昔なじみの栗田たちは全く動じない。
それに口角をつり上げ、ヒル魔は主務とマネージャーに檄を飛ばし、短時間に違う攻撃パターンに切り替えた。


彼らは、敵チームのそれ以上の追随を許さず、勝利を収めた。
「勝利MAX!!」
「ハァアアア! 煩ぇよ、サル!」
「ハァ、お前もな」
「ハ、似たもの同士、ってか」
「「似てねぇえええ!!」」
「うわ、息ぴったり」
ぎゃあぎゃあと騒がしい面子の中が引き上げていく中、ヒル魔はその集団をするりと離れる。
足音を消して向かった先は、敵チームの控え室の近くだ。
見た目に派手な男が側にいれば誰もが気づくだろうに、気配を消したヒル魔は異様なほど静かで、その姿を気取られることもない。
角を曲がれば控え室の出入り口、というところでぴたりとヒル魔は足を止める。
賑やかな声がこの距離からでも聞き取れた。
「大丈夫よ、今日は練習試合だったんだから」
「そうだ! また来年に向けて頑張ればいいんだ!」
「そ、そうっす、よね・・・ああでも、来年は・・・」
「・・・来年、先輩達、いないんですよね・・・」
「姉崎マネージャーがいないアメフト部なんてぇええ!」
「まもりさーん!! いかないでぇええ!」
「アホかお前ら! 俺たちを惜しめ! なんでマネージャーばっかりに!」
「そんなこと言ったって、マネージャー一人いたら百人力だって先輩達も言ってたじゃないですか!」
「実際そうだけどな! もう少し建前ってモンを使え!!」
「あ、あの、みんな・・・ここの控え室の使用時間がそろそろ終わるから・・・ね?」
「「「はーい!」」」
ガチャガチャと用具を片付ける音。笑い声を絶えず響かせながら世話を焼いているらしい女の声。
(ホー・・・)
三々五々に部員達は外へと出て行っているようだ。が、出口はヒル魔のいるのとは反対側なので、誰もこちらの方へは来ないで足音は遠ざかっていくばかり。
「あれ? 姉崎さんそっちなの?」
「ええ。鍵を返しに行かないと。みんなは先に帰って大丈夫よ」
「あ、じゃあオレが代わりに行くよ」
「何!? じゃあ俺が!」
「俺も一緒に行く!」
その場にいる何人かが我先にと共に行こうとしている。けれど彼女は笑み声でそれらを跳ね返した。
「大丈夫よ! それにみんなの方が疲れてるでしょ? 早く帰った方がいいわよ!」
「うう~・・・姉崎さん・・・」
「ほら、帰った帰った!」
すごすごと帰る足音が随分と名残惜しそうだ。顔まではよく見えなかったが、それなりにモテる部類なんだろうか、とヒル魔はつらつらとそんなことを考える。
「ふー。忘れ物なし! 備品戻し忘れなし!」
指さし確認でもしているのか、一人のくせにやたらきびきびとした声が聞こえてくる。
ヒル魔は口角を上げ、その角を曲がった。
「鍵よーし。・・・って、え?」
ぬ、と唐突に現れた人影に、彼女はぱっと向き直った。
「ホー」
思わずヒル魔は感嘆の声を漏らした。旗から聞いたらそうは思えないだろうが。
ヒル魔の鼻先ほどに頭がある、すらりとした美女がそこにいた。
髪の毛はおそらく天然の茶色のボブカット。肌は抜けるように白く、顔の作りも美人と呼べる部類の物。
更に瞳は青く、野暮ったいジャージに包まれていてもその肢体は随分とメリハリのある体型だと見て取れる。
控えめに言っても美人。それも、相当な。
男臭いアメフト部のマネージャーなんかにいるには勿体ないくらいの見た目だ。
「な、何ですか」
まじまじと見られて彼女は居心地悪そうに後退ろうとした。
咄嗟に、ヒル魔は手を伸ばす。
「!」
その手を掴み、ヒル魔はぐい、と顔を近づけた。
「何?!」
「今日の俺の作戦を見抜いたのは、テメェか」
「!」
そこでようやく、彼女は目の前の男が何者かに思い至ったのだろう。
それはそうだ、試合中は殆どヘルメットをかぶっているし、外すときは遠目にだけ。
「どこで判った?」
「・・・別に。見ていれば判るわ」
警戒心を露わに睨み付けてくる彼女に、ヒル魔はわざとらしく口角を最大限に引き上げた。
「ホー? 見ていれば、ねぇ?」
「だ、だって今までのパターンとか考え方とか見ていれば大体予測ってつくでしょう!? かなりクセのある戦い方だとは思ったけど、イレギュラーな能力選手がいなければ仕方ないってそれくらい予想できるわよ!」
手を掴まれたまま焦って声を上げる彼女に、ヒル魔は喉を震わせる。
これはいい。
これはいい女を見つけた。
彼女の通うこの高校はここ近隣でもかなりの進学校だったはず。
それなら、この先の進路を合わせればかなり『使える』人材となるはずだ。
「何よ、何なのよう! 手、離して!」
どうにかヒル魔を振り払おうとする彼女に、彼は楽しげに口を開いた。
「俺は、蛭魔妖一。テメェは姉崎まもりだな」
「!?」
何故自分の名を知っているのだ、と驚愕の表情を浮かべた彼女に彼は告げる。
「気に入った。テメェは俺の側に来い」
「な!? ちょ、何言ってるの?!」
「勿論今すぐとは言わねぇ。が、そのうち・・・な」
ケケケ、といつもの調子で笑い、ヒル魔はあっさりとその手を離した。
掴まれていた場所をさする彼女にあっさりと背を向け、ひらひらと手を振る。
茫然と立ち尽くす彼女の視線を受けながら、ヒル魔は楽しげに今後の展開を脳裏に描き始めた。


***
悠様リクエスト『違うチーム同士のヒルまも』でした。なんかヒル魔さん一目惚れ甚だしい気がします。この先ヒル魔さんははた迷惑なくらいの熱烈アプローチをかましてまもりちゃんにドン引きされてしまいそうな気がしますが、きっと彼のことだから上手にまもりちゃんの保護欲やら世話焼き精神やらを引き出して気がつけば夫婦・・・あれ、これって原作通りのパターン?!
楽しく書かせていただきました! リクエストありがとうございましたー!
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はじめまして(;・∀・)
この作品の続きを書いてほしいです。
kosuke 2012/11/05(Mon)20:55 編集
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