『それは突然の嵐のように』

『それは突然の嵐のように』

（ヒルまも）
今までありがとうございました！
沢山の感謝と愛を込めて、皆様に。

ざあざあと雨が降り続いている。
風も強く、嵐のような天候だ。
「天気予報ではこんなこと言ってなかったのに」
嘆息して窓を見上げるまもりの手にはたった今まとめ終えたデータがある。
少しだけだから、と残ったのが徒になったらしい。
「ったく、だから早く帰れっつったろ」
ヒル魔は舌打ちしながらパソコンの画面を睨んでいる。
その中身はなんだか知るよしもないが、それはこの先の天気予報だったりするのではないか、とまもりはぼんやり考えた。

雨は止みそうにもない。

「ねえ、ヒル魔くん」
「ア？」
顔を上げたヒル魔にまもりは歩み寄る。
普段通りに歩いているつもりだが、どうにも嵐の中を歩くように、足下が不安定な気がする。
「どうした、糞酔っ払いみてぇな動きしやがって」
それにまもりはふ、と笑みを浮かべる。
「・・・酔ってる、か。あながち間違ってないかもね」
「アァ？」

嵐の中、閉じ込められた部室。
その中に男女二人。
近すぎず、遠すぎず。
一定の距離をずっと保ってきていた。


でも。

「唐突すぎねぇか、糞マネ」
手を延べてみても、振り払われることはなく。
「その割には驚いてる様子もないじゃない」
逆に引き寄せられて、抱きしめられる。




ああ、恋愛なんてこの嵐みたいだ。
唐突に始まって、何もかもを飲み込んでいく。
「後悔すんなよ」
どこか念を押すような言葉に、まもりはふわりと笑みを浮かべた。
「そっちこそ」

――――それは突然の嵐のように。