旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
日課のランニング後のシャワーから出てきた妖介の足下にあかりがタオルを持ってやって来た。
「ようにぃ、はい!」
「ありがと、あかりちゃん」
にっこり笑ってタオルを受け取った妖介は、そのタオルで頭を拭う。
それを見てあかりは踵を返し、キッチンへと向かう。
その後を妖介もゆっくりと着いていく。
「あらあかり、お手伝いしてくれるの? ありがとう」
「うん!」
ばさりとタオルを肩に掛けた妖介と、まもりと、あかり。
三人の髪は揃って明るい茶色だ。
「そこの糞赤犬共、コーヒー」
「ちょっと! ヒル魔くん、その言い方はやめてっていつも言ってるでしょ!」
まもりが文句を言いながらコーヒーを用意する。
その側であかりがカップを運ぼうと待機している。
その様子はまさしく忠犬のようで、妖介は的確だな、と柔らかく苦笑した。
階下に降りてきた護を交え、最多時から一人減った食卓を囲む。
「妖介、今日は遅いの?」
「そうだね、今日は実習があるから。夕飯は外で食べてくるよ」
「護は?」
「僕は早く帰ってくるから夕飯よろしく」
「ヒル魔くんはどうするの?」
「俺は一日家にいる」
全員の予定を確認するまもりに、あかりがはーい、と手を上げる。
「あかりも幼稚園に行くよー」
「そうねー。そうだ、今日はヒル魔くんが幼稚園に連れて行ってくれる?」
「おー」
ほのぼのした会話はいつもと変わらない。
食後、身支度を調えて家族はそれぞれ出掛けていった。
妖介は医大生だ。
高偏差値と名高い大学にあって、最も難関だったその試験を妖介は持ち前の頭脳と同じくらいの努力でもって通り抜けた。
現在は卒業試験を来年に控え、更に勉強に励む時期だ。将来は小児科医になるのを目標にしている。
どちらかといえば運動するだけの暇がある者が少ない医学部の中で、妖介は少々変わっていた。
「ランニング行くぞー!」
「うーっす!!」
高校から引き続き、妖介はアメフト部に所属していた。
チームとしては強くも弱くもない中堅どころ。
そこのLBとして彼は今も活躍している。
日々を勉学に部活にと忙しく過ごしている妖介は、当人曰く『相変わらずモテない人生』を歩んでいるのだった。
さてそんなある日のこと。
朝練の途中、部員の一人が思いきり蹴り飛ばしてしまったボールを妖介は探しに来ていた。
ムサシの60ヤードとはいかないまでも、風に乗って結構な距離を飛んでしまったのだ。
「どこ行ったんだろ」
木立に入り込んでしまったため、なかなか見つからない。
がさがさと草をかき分けて歩く妖介に、背後から声が掛けられる。
「あの」
「え?」
女性の声。振り返れば、そこには探していたアメフトボールを手にした少女が立っていた。
「お探しのものは、これですか?」
「ああそう! それ! ありがとう、拾ってくれたの?」
見るからに大学生と呼ぶには若い少女がこんなところにいる理由には目を瞑り、妖介は笑顔でそれを受け取った。
「道に迷ってしまって、その時に丁度これが飛んできたんです」
困ったように笑う少女。
ストレートの黒髪を肩先ほどまでのばし、前髪は眉毛の上で切りそろえられている。
ぱっちりとした黒目勝ちの瞳は長い睫で縁取られていた。
小柄で細い見た目もあって、随分と幼く見える。
「どこに行くつもりだったの?」
「あの、この大学の見学に来てたんです」
「見学?」
妖介は首を傾げた。
学校説明会や進学相談会の時期ではないはずだ。
それに気づいたのか少女は照れたように笑う。
「私、お医者様になるのが夢で。まだまだ受験は先なんですけど、今日は創立記念日で学校が休みなので見学だけでも、と思ったんです」
「へえ。君は高校生なの?」
「はい。高校一年です」
「一年! それでもう進路も大学も決めてるのか。すごいねえ」
へー、と妖介は感心し、彼女の頭を撫でた。
唐突な行動に少女は目を丸くする。
「なっ」
「あ、ごめん。俺、妹がいてね、つい同じような気分になっちゃった」
妖介が笑って謝ると、少女もふっと唇を綻ばせる。
「じゃあ医学部棟に行きたいよね。ここを抜けて真っ直ぐ行って、左。そうすると一本道にぶつかるから、そこを右に曲がって真っ直ぐ進めば着くよ」
「ありがとうございます!」
少女はぺこりと頭を下げて歩き出す。それを見た妖介も戻ろうとしたが、不意に少女が振り返った。
「あ! あの!」
「ん?」
「アメフト、頑張ってください!」
「え・・・」
目を丸くする妖介にもう一度にっこりと笑いかけて、少女は足取り軽やかに走り去っていった。
妖介は手元のボールを見て、少女が走っていった先を見つめる。
ユニフォームを着ていてかつボールを持っていても、アメフトというスポーツ自体がマイナーでラグビーと混同されがちなのに。
「面白い子だなあ」
感心するように呟いた妖介の方へ、グラウンドからいつまでボール探してるんだ、という声が掛けられて慌てて彼は元いた場所へと走って戻ったのだった。
妖介は白衣を翻して校舎へと向かっていた。
今日はオープンキャンパスと称し校舎内がざわついている。
けれど彼はゼミの実験準備があるので部活の方には出ないのだ。
それでも花のあるプレーをする彼がいれば新入部員獲得に貢献するので、彼は早く部活へ顔を出して欲しいと頼まれていた。
早く片づけてしまおう、と急ぐ妖介に。
不意に木陰から飛び出してきた人影がぶつかった。
「?!」
「ご、ごめんなさい!!」
驚き見下ろした妖介は、更に驚いた。
それは以前アメフトボールを拾ってくれた少女だったから。
「君は・・・」
「ごめんなさい! 今、逃げてるんです!!」
「逃げてる?」
見れば少女は肩で息をしていて、全身に木の葉や細かな草のゴミがまとわりついている。
ぐるる、という声が響いて彼女はひっと声を上げて妖介にしがみついた。
妖介はその声の主に気づき、ぴんと片眉を上げる。
「グォオオオン!!」
飛び出してきたのは真っ黒な毛並みの、恐ろしい鳴き声を上げる大型犬。
少女は涙目になっている。
飛びかかろうとした黒犬だったが。
「Typhon!!」
妖介の厳しい声に黒犬はビタッと止まる。
「いつも言ってるだろ。好きな子には優しくしろって」
ため息混じりにしゃがみ、妖介は少女をしがみつかせたまま黒犬へ手を伸ばす。
すると犬はきゅーん、と小さく鳴き、先ほどまでとは打って変わって大人しくなった。
「え・・・」
「ごめんね。こいつテュポンっていう大学に住み着いてるんだけどさ。女の子大好きなんだよね~」
よしよし、と撫でると黒犬は座って少女を見上げている。
先ほどまでの勢いとは別物の犬に、少女はそっと手を伸ばす。
すると、テュポンはぺろりと少女の手を舐め、頭を擦りつける。
「あ・・・かわいい、かも」
「逃げられちゃうと、つい追っかけちゃうみたいなんだ」
妖介はテュポンの顔を両手で包むようにすると、こん、と額同士を当てる。
「女の子を泣かせていいのは嬉し泣きの時だけなんだからね」
「わふ」
いかにも反省してます、という声に、少女は目を丸くし、そして笑い出した。
散らばっていた荷物を拾い上げながら妖介は問いかける。
「オープンキャンパスだからこっちに来たの?」
少女は制服を着ているから想像は容易い。
「はい! こないだは校舎内には入れなかったから、今日なら行けるかなって」
「そっか。じゃあ一緒に行く?」
「え?」
「俺医学部なんだ。案内するよ」
「ええっ!? で、でもお邪魔じゃあ・・・」
「大丈夫だって。さ、おいで」
妖介は躊躇いもなく少女の手を取り、すたすたと歩き始めるが、すぐに足を止める。
少女が躓きそうになったからだ。
「あ、ごめんね。歩幅忘れてた。歩き辛いね」
身長差は30センチくらいあるだろうか。少女は妖介を見上げるようにして笑う。
「いいえ。実は私、父があなたと同じくらいの身長なんです。だから平気ですよ」
「へえー・・・」
妖介は少女を改めて見つめる。制服は王城高校のもの。あそこは大学まで付属だから外部受験をするのだろう。アメフトを知っていて、妖介と同じくらいの身長の父親がいて、年は16才・・・。
妖介の頭の中でデータが凄い勢いで検索されていく。
「あ」
妖介は該当する名前を見つけ出し、声を上げた。
「え?」
「君、もしかして王城高校出身の高見さんと若菜さんの娘さん?」
「ええっ!? な、なんでご存じなんですか?!」
驚き飛び上がらんばかりの少女に、妖介はなるほどねー、と一人納得している。
高見は外科医だ。その彼がマネージャーだった若菜小春と結婚し、子供は娘一人と聞いたことがある。
父親の姿を見て医者になりたいと思ったのだろう。
「あの、私の名前は高見小夏(こなつ)、っていいます」
小首を傾げて自己紹介する彼女に、妖介も笑みを浮かべて名乗る。
「俺は蛭魔妖介。妖介って呼んでいいよ。小夏ちゃんって呼んでいい?」
「あ、はい!」
「そっか高見さんの娘さんか・・・」
その割に小さいな、と思ったのが知れたのだろう、彼女は苦笑する。
「母に似たようで、あんまり身長は伸びなかったんです。それでも母よりは大きいんですよ!」
「そうなのか~。ご両親は元気?」
「はい! お陰様で、毎日元気に仕事してます」
二人は他愛ない話をしながら歩いていく。
その様子を見ていた他の学生は、彼女のぼろぼろの格好を見て彼が何か無体を働いたのではないかとひそひそと噂したのだった。
そうしてこれより。
彼らの恋物語が、始まる。
***
リル様リクエスト『妖介の恋愛』でした!・・・えーまだ恋愛以前ですが、出会い編ということで・・・。
この後も徐々に繋げていきたいですw書いてみたい話だったので楽しく書かせて頂きました♪
この後の高見パパの悲哀とかね! ヒル魔さんの感想とかね! 書きたいのは沢山あるのですよw
リクエストありがとうございましたー!!
リル様のみお持ち帰り可。
「ようにぃ、はい!」
「ありがと、あかりちゃん」
にっこり笑ってタオルを受け取った妖介は、そのタオルで頭を拭う。
それを見てあかりは踵を返し、キッチンへと向かう。
その後を妖介もゆっくりと着いていく。
「あらあかり、お手伝いしてくれるの? ありがとう」
「うん!」
ばさりとタオルを肩に掛けた妖介と、まもりと、あかり。
三人の髪は揃って明るい茶色だ。
「そこの糞赤犬共、コーヒー」
「ちょっと! ヒル魔くん、その言い方はやめてっていつも言ってるでしょ!」
まもりが文句を言いながらコーヒーを用意する。
その側であかりがカップを運ぼうと待機している。
その様子はまさしく忠犬のようで、妖介は的確だな、と柔らかく苦笑した。
階下に降りてきた護を交え、最多時から一人減った食卓を囲む。
「妖介、今日は遅いの?」
「そうだね、今日は実習があるから。夕飯は外で食べてくるよ」
「護は?」
「僕は早く帰ってくるから夕飯よろしく」
「ヒル魔くんはどうするの?」
「俺は一日家にいる」
全員の予定を確認するまもりに、あかりがはーい、と手を上げる。
「あかりも幼稚園に行くよー」
「そうねー。そうだ、今日はヒル魔くんが幼稚園に連れて行ってくれる?」
「おー」
ほのぼのした会話はいつもと変わらない。
食後、身支度を調えて家族はそれぞれ出掛けていった。
妖介は医大生だ。
高偏差値と名高い大学にあって、最も難関だったその試験を妖介は持ち前の頭脳と同じくらいの努力でもって通り抜けた。
現在は卒業試験を来年に控え、更に勉強に励む時期だ。将来は小児科医になるのを目標にしている。
どちらかといえば運動するだけの暇がある者が少ない医学部の中で、妖介は少々変わっていた。
「ランニング行くぞー!」
「うーっす!!」
高校から引き続き、妖介はアメフト部に所属していた。
チームとしては強くも弱くもない中堅どころ。
そこのLBとして彼は今も活躍している。
日々を勉学に部活にと忙しく過ごしている妖介は、当人曰く『相変わらずモテない人生』を歩んでいるのだった。
さてそんなある日のこと。
朝練の途中、部員の一人が思いきり蹴り飛ばしてしまったボールを妖介は探しに来ていた。
ムサシの60ヤードとはいかないまでも、風に乗って結構な距離を飛んでしまったのだ。
「どこ行ったんだろ」
木立に入り込んでしまったため、なかなか見つからない。
がさがさと草をかき分けて歩く妖介に、背後から声が掛けられる。
「あの」
「え?」
女性の声。振り返れば、そこには探していたアメフトボールを手にした少女が立っていた。
「お探しのものは、これですか?」
「ああそう! それ! ありがとう、拾ってくれたの?」
見るからに大学生と呼ぶには若い少女がこんなところにいる理由には目を瞑り、妖介は笑顔でそれを受け取った。
「道に迷ってしまって、その時に丁度これが飛んできたんです」
困ったように笑う少女。
ストレートの黒髪を肩先ほどまでのばし、前髪は眉毛の上で切りそろえられている。
ぱっちりとした黒目勝ちの瞳は長い睫で縁取られていた。
小柄で細い見た目もあって、随分と幼く見える。
「どこに行くつもりだったの?」
「あの、この大学の見学に来てたんです」
「見学?」
妖介は首を傾げた。
学校説明会や進学相談会の時期ではないはずだ。
それに気づいたのか少女は照れたように笑う。
「私、お医者様になるのが夢で。まだまだ受験は先なんですけど、今日は創立記念日で学校が休みなので見学だけでも、と思ったんです」
「へえ。君は高校生なの?」
「はい。高校一年です」
「一年! それでもう進路も大学も決めてるのか。すごいねえ」
へー、と妖介は感心し、彼女の頭を撫でた。
唐突な行動に少女は目を丸くする。
「なっ」
「あ、ごめん。俺、妹がいてね、つい同じような気分になっちゃった」
妖介が笑って謝ると、少女もふっと唇を綻ばせる。
「じゃあ医学部棟に行きたいよね。ここを抜けて真っ直ぐ行って、左。そうすると一本道にぶつかるから、そこを右に曲がって真っ直ぐ進めば着くよ」
「ありがとうございます!」
少女はぺこりと頭を下げて歩き出す。それを見た妖介も戻ろうとしたが、不意に少女が振り返った。
「あ! あの!」
「ん?」
「アメフト、頑張ってください!」
「え・・・」
目を丸くする妖介にもう一度にっこりと笑いかけて、少女は足取り軽やかに走り去っていった。
妖介は手元のボールを見て、少女が走っていった先を見つめる。
ユニフォームを着ていてかつボールを持っていても、アメフトというスポーツ自体がマイナーでラグビーと混同されがちなのに。
「面白い子だなあ」
感心するように呟いた妖介の方へ、グラウンドからいつまでボール探してるんだ、という声が掛けられて慌てて彼は元いた場所へと走って戻ったのだった。
妖介は白衣を翻して校舎へと向かっていた。
今日はオープンキャンパスと称し校舎内がざわついている。
けれど彼はゼミの実験準備があるので部活の方には出ないのだ。
それでも花のあるプレーをする彼がいれば新入部員獲得に貢献するので、彼は早く部活へ顔を出して欲しいと頼まれていた。
早く片づけてしまおう、と急ぐ妖介に。
不意に木陰から飛び出してきた人影がぶつかった。
「?!」
「ご、ごめんなさい!!」
驚き見下ろした妖介は、更に驚いた。
それは以前アメフトボールを拾ってくれた少女だったから。
「君は・・・」
「ごめんなさい! 今、逃げてるんです!!」
「逃げてる?」
見れば少女は肩で息をしていて、全身に木の葉や細かな草のゴミがまとわりついている。
ぐるる、という声が響いて彼女はひっと声を上げて妖介にしがみついた。
妖介はその声の主に気づき、ぴんと片眉を上げる。
「グォオオオン!!」
飛び出してきたのは真っ黒な毛並みの、恐ろしい鳴き声を上げる大型犬。
少女は涙目になっている。
飛びかかろうとした黒犬だったが。
「Typhon!!」
妖介の厳しい声に黒犬はビタッと止まる。
「いつも言ってるだろ。好きな子には優しくしろって」
ため息混じりにしゃがみ、妖介は少女をしがみつかせたまま黒犬へ手を伸ばす。
すると犬はきゅーん、と小さく鳴き、先ほどまでとは打って変わって大人しくなった。
「え・・・」
「ごめんね。こいつテュポンっていう大学に住み着いてるんだけどさ。女の子大好きなんだよね~」
よしよし、と撫でると黒犬は座って少女を見上げている。
先ほどまでの勢いとは別物の犬に、少女はそっと手を伸ばす。
すると、テュポンはぺろりと少女の手を舐め、頭を擦りつける。
「あ・・・かわいい、かも」
「逃げられちゃうと、つい追っかけちゃうみたいなんだ」
妖介はテュポンの顔を両手で包むようにすると、こん、と額同士を当てる。
「女の子を泣かせていいのは嬉し泣きの時だけなんだからね」
「わふ」
いかにも反省してます、という声に、少女は目を丸くし、そして笑い出した。
散らばっていた荷物を拾い上げながら妖介は問いかける。
「オープンキャンパスだからこっちに来たの?」
少女は制服を着ているから想像は容易い。
「はい! こないだは校舎内には入れなかったから、今日なら行けるかなって」
「そっか。じゃあ一緒に行く?」
「え?」
「俺医学部なんだ。案内するよ」
「ええっ!? で、でもお邪魔じゃあ・・・」
「大丈夫だって。さ、おいで」
妖介は躊躇いもなく少女の手を取り、すたすたと歩き始めるが、すぐに足を止める。
少女が躓きそうになったからだ。
「あ、ごめんね。歩幅忘れてた。歩き辛いね」
身長差は30センチくらいあるだろうか。少女は妖介を見上げるようにして笑う。
「いいえ。実は私、父があなたと同じくらいの身長なんです。だから平気ですよ」
「へえー・・・」
妖介は少女を改めて見つめる。制服は王城高校のもの。あそこは大学まで付属だから外部受験をするのだろう。アメフトを知っていて、妖介と同じくらいの身長の父親がいて、年は16才・・・。
妖介の頭の中でデータが凄い勢いで検索されていく。
「あ」
妖介は該当する名前を見つけ出し、声を上げた。
「え?」
「君、もしかして王城高校出身の高見さんと若菜さんの娘さん?」
「ええっ!? な、なんでご存じなんですか?!」
驚き飛び上がらんばかりの少女に、妖介はなるほどねー、と一人納得している。
高見は外科医だ。その彼がマネージャーだった若菜小春と結婚し、子供は娘一人と聞いたことがある。
父親の姿を見て医者になりたいと思ったのだろう。
「あの、私の名前は高見小夏(こなつ)、っていいます」
小首を傾げて自己紹介する彼女に、妖介も笑みを浮かべて名乗る。
「俺は蛭魔妖介。妖介って呼んでいいよ。小夏ちゃんって呼んでいい?」
「あ、はい!」
「そっか高見さんの娘さんか・・・」
その割に小さいな、と思ったのが知れたのだろう、彼女は苦笑する。
「母に似たようで、あんまり身長は伸びなかったんです。それでも母よりは大きいんですよ!」
「そうなのか~。ご両親は元気?」
「はい! お陰様で、毎日元気に仕事してます」
二人は他愛ない話をしながら歩いていく。
その様子を見ていた他の学生は、彼女のぼろぼろの格好を見て彼が何か無体を働いたのではないかとひそひそと噂したのだった。
そうしてこれより。
彼らの恋物語が、始まる。
***
リル様リクエスト『妖介の恋愛』でした!・・・えーまだ恋愛以前ですが、出会い編ということで・・・。
この後も徐々に繋げていきたいですw書いてみたい話だったので楽しく書かせて頂きました♪
この後の高見パパの悲哀とかね! ヒル魔さんの感想とかね! 書きたいのは沢山あるのですよw
リクエストありがとうございましたー!!
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鳥(とり)
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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