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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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女達の歓談

(ヒルまも一家)
※「男達の憂鬱」の続きです
※まもり視点
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
アヤがあんまりにも自分の外見に無頓着だったり、オシャレに興味がないみたいだったりで、私は心配なの。
そう言えばヒル魔くんとか護なんかは変な顔してたし、妖介も『別に平気でしょ』なんて言って取り合ってくれなくて。
なんでそんなに平然としてるのかしら、って思いながら。
あかりをつれて実家に遊びに行ったときにお母さんに聞いてみた。
「・・・っていう訳でね」
「アヤちゃんのこと? あら・・・」
お母さんは私の話を聞いて、くすくすと笑い出してしまった。
あかりはお父さんと一緒に遊ぶんだと言って公園へ行ってしまったので、今この家には二人だけだ。
「なに?」
「まもりだって高校卒業するまで全然そういう話がなかったじゃない」
それに私は詰まる。
確かに誰かと付き合ったりデートしたりっていう浮いた話はなかったかもしれないけど・・・。
「そ、それでも私だって片思いというかね!」
「妖一くんにね。結局叶って良かったじゃない」
「うんそうだけど。・・・じゃなくて! アヤの話よ!」
全く、お母さんと話してるとすぐ誤魔化されちゃう。でもお母さんは優しく笑って紅茶に口を付ける。
「アヤちゃんもまもりと一緒で、高校卒業後に急に相手連れてくるかもしれないじゃない」
「そうかしら」
部活三昧、オシャレのオの字もなく、たまにムサシくんの面倒見てるなんて言ってるけどそれだけじゃない?
同じ部活にそれらしき人はいないのかしら、と思って妖介にも聞いてみたんだけど、そんな奴はいないよ、ってあっさり言われちゃった。
「意外とあなた宛に来たりするかもしれないわよ?」
「アヤの相手が? まさか!」
「そのまさかが妖一くんだから」
「・・・そうでした」
にこにこと笑うお母さんの衝撃はどれくらいだったんだろう。
ちょっと気になってヒル魔くんが来たときのことを聞いてみたら。
「突然で驚きはしたけど、妖一くんが真剣だったしあなたも判りやすかったから割とあっさり認められたわね」
「わかりやすい? え、私その頃お母さんに言ってたっけ?」
「いいえ。まもりはお父さんそっくりですぐ顔に出るから」
そこで私は思わずちょっと唇を突き出してしまって、それを見たお母さんがまた声を上げて笑う。
「・・・そう言う意味じゃアヤは判らないわ。淡々としてるし」
「そうね。・・・それじゃ、まもりにじゃなくて、妖一くんに事前に相談するのかもね」
「相手の人が? ヒル魔くんに単独で!? ・・・そんな命知らずの人なんているのかしら」
小首を傾げる私に、お母さんは予言者のように笑った。
「まもり、事実は小説よりも奇なり、よ」


我が家の電話が鳴ったのは平日の、ごく普通の日だった。
「はいはい、ちょっと待ってね」
誰に言い聞かせるのでもなく受話器を取り上げた私に、聞こえてきたのは聞き慣れた声で。
『ああ、姉崎か。丁度良かった』
「ムサシくん? どうしたの?」
『いや、ちょっと話があってな』
「私に話? ヒル魔くんじゃなくて?」
『どうにもアイツが捕まらなくてな。実は・・・』
そこで背後から伸びてきた腕が、私の手から受話器を奪い取った。
「なっ!? ちょっと! ヒル魔くん?!」
「何してやがる糞ジジィ!」
「何してる、っていうのならヒル魔くんの方でしょ! ちょっと、私が先に話してたのに!」
「煩ぇ、糞ジジィが用があるのは俺なんだよ!」
受話器を挟んでぎゃーぎゃー騒ぐ私たちの耳に、咳払いと少々大きめの声。
『やっと出たな、ヒル魔』
ほらな、という視線で私を見てから、それでもどこか苦々しい顔でヒル魔くんは電話を替わった。
なんなのかしら、と様子を見ていたけれどヒル魔くんは少し話した後出掛けると言ってすぐ出て行ってしまった。
んもう、唐突なんだから。
それにしても・・・ムサシくん、何の話だったのかしら?


そうしてその疑問は。
来春に卒業を控えたアヤと連れ立ってやって来たムサシくんの口から明らかにされた。
「いらっしゃい。どうしたの、珍しいわね?」
ムサシくんはスーツを着ていた。
基本的に肉体労働だからスーツは持っていてもほとんど着る機会がないと聞いていたのに。
控えているアヤが嬉しそうに笑ってるのはまあいつものことだからいいとして。
なんで全員リビングに集まってるのかしら?
妖介はムサシくんが持ってきたケーキを嬉しそうに受け取ってる。
私はあかりを抱いていたのだけれど、護が抱くと言うので交代する。
「どうして?」
「んー、すぐ判るよ」
ね、と護と妖介はなにか通じ合ってるようだし。
ヒル魔くんはこれ以上ないってくらい不機嫌だし、一体何がどうなってるのかしら。
ソファに座ってヒル魔くんと私の向かいにムサシくんとアヤ。
妖介・護・あかりはその隣の絨毯の上で座って待機。
出したコーヒーに口も付けず、ムサシくんはおもむろに切り出した。
「実は、アヤと結婚を前提に付き合おうと思ってな」
「―――――――――――――!!!???」
私は、そりゃもう、ものすごく驚いた。
驚きすぎて息が止まったもの。
ヒル魔くんが軽く背中を叩いてくれなかったら、たぶん窒息したでしょう。
ああ、だから護は判っていてあかりを受け取ったのね。
・・・じゃなくて!
「け、け・・・・!?」
言葉もない私の隣で、ヒル魔くんがいつもの調子で口を挟む。
「おい糞ジジイ、付き合うとかじゃねぇだろ、もう」
「!!??」
いいのか、と視線でヒル魔くんに問いかけるようにして、それからムサシくんは頭を掻いた。
「アヤが高校卒業したら、結婚しようと思う」
「っっっ!!!???」
また息が止まった。
は、早すぎない?! いや、私も大学在学中に結婚したから人のことは言えないけど!
でも!!
「おー! やったじゃんアヤ!」
「よかったね、姉ちゃん!!」
「ねーちゃ!」
子供達三人は歓声を上げて喜んでいて、アヤも笑顔で。
でも呼吸を取り戻した私は叫ばずにはいられなかった。
「アヤ! お願いだから子供はすぐ作らないで!」
だって、結婚してすぐ子供を作ったとしたら。
「なんで?!」
「どうしてそんなこと言うの!?」
息子二人が驚くのを尻目に、アヤが呆れたように口を開いた。
「三十代でおばあちゃんになりたくないのね?」
「ああ、なるほど」
何故か納得したようなムサシくんの声に、私はもう何も反応出来ない。
身動きが取れない私を、不意に抱き寄せる腕。
ヒル魔くん。
私は内心でぐるぐると色々考える。
ちょっと、あなただって娘が嫁いじゃうのよ!? 
あなただって花嫁のパパよ?! 
花嫁の手紙とか読まれて号泣しちゃうのよ?!
そもそも何で平然としてるの!?
そんな私の葛藤を全て見越したように笑う口元を視界に入れた瞬間、かつてお母さんと交わした会話が蘇った。

(そうね。・・・それじゃ、まもりにじゃなくて、妖一くんに事前に相談するのかもね)
(相手の人が? ヒル魔くんに単独で!? ・・・そんな命知らずの人なんているのかしら)
(まもり、事実は小説よりも奇なり、よ)

ヒル魔くんは、知っていたのね。
私はようやく衝撃から抜け出し、ヒル魔くんを睨みつけた。
「アヤが在学中のうちは、子供は作らない」
ムサシくんが苦笑するのを見て、私は大きく深呼吸して立ち上がる。
「ヒル魔くんが言ったんでしょ、それも」
「まあ、そうだな」
「アヤ」
「はい」
神妙な顔をするアヤを手招きする。
戸惑ったように近寄ってくるアヤを、抱きしめる。
思いっきり、ぎゅうっと。
「お、母さん?」
戸惑ったアヤの声が頭上から降りてくる。
「おめでとう!」
身長差が随分あるから、アヤを抱きしめても私がその胸に顔を埋めるようだけれど。
アヤは私の娘だから。
すっかり大きくなって、私が抱きしめる事なんて最近は全然無かったけど。
「三十代でおばあちゃんはちょっと嫌だけど、子供は授かり物だから、出来たらちゃんと言うのよ?」
私はにっこりと笑って言った。
「だって、私の孫になるんだもの!」
アヤはちょっと目を見開いて、その後大輪の花が綻ぶように綺麗に笑った。


***
nao様リクエスト『「男達の憂鬱」の続き』でした。実際はアヤとムサシさんの結婚生活か結婚報告をしたときの周囲の様子、という二択だったのですが他に頂いているリクエストの流れから後者を選ばせて頂きました。
これがもう楽しくて! あんまりまもりちゃん視点書かないなあ、と思って書いてみたら早々と書き上がりました。リクエストありがとうございましたー!!

nao様のみお持ち帰り可。
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