旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
病室に姉ちゃんがいる。
その傍らにはヒル魔さん。
少し離れたところで医者と看護師がモニターを見ている。
僕とムサシさんは、息を潜めるように病室の隅で身を寄せ合っていた。
本当は僕たちはここにいるべきではないのかもしれない。
けれど勢い込んで到着した僕たちは病室内の雰囲気に戻ることも、進むことも出来ず立ちつくしていた。
時折低く漏れるのは、ヒル魔さんの嗚咽だ。
泣くような人じゃないと思ってた。
苦しいときこそ笑い、悲しいときも笑ってやり過ごすのがヒル魔さんのやり方だと思ってた。
それでも。
自分の信念なんて大いなる悲しみの前では崩れるのかもしれない。
僕たちからは照度の落とされた室内の様子は判然としない。
ぼそぼそと聞こえるのは、潜めているのではなくそうとしか出ない姉ちゃんの声だ。
応じるヒル魔さんは、間違ってもその言葉を聞き漏らさないようにじっと姉ちゃんを伺っている。
こんな日が来るなんて、僕は想像もしてなかった。
二人は永遠に連れ立って高く空を飛び続けるのだろうと、常人では到達出来ない域を悠然と越えていくのだろうと。
どんなに実現不可能なことでも二人が揃っていれば平気だろうと、訳もなく信じていた。
それは盲信だと言われる類かも知れない。
でも。
僕にとっては、彼らはもう神様にも近かった。
二人がいなければ、僕とアメフトの出会いも、その後の輝かしいと言われた活躍も、何一つ存在しないだろう。
幼い頃から人生こんな物だとどこかで諦めていた心を、引き上げてくれた大事な人たち。
だから、余計に。
こんなに見ているだけで心臓が引き裂かれそうな別れが二人に訪れるなんて、僕には信じられなかったんだ。
「・・・ありがとう」
ぽつんと、吐息に滲んだ声がはっきり僕の耳にも届いた。
そして今まで弱々しくも一定のリズムを刻んでいた電子音が、耳障りに一本の音を奏でる。
医師が、良くできた機械のように感情もなく言葉を紡いだ。
「ご臨終です」
その瞬間。
ムサシさんは無言で僕の手を引いた。
僕たちは廊下を抜け、振り返りも言葉を交わしもせず中庭へとたどり着いた。
中庭は穏やかな日差しが差し込んで、たった今姉ちゃんが息を引き取ったなんて信じられないくらい空も綺麗だった。
なんで雨が降らないのだろう。
あの美しい碧の瞳が閉じられたのだから、空が晴れているのはおかしいと思える。
そんなことが不思議でしょうがなかった。
今、僕たちは何も出来ず、ただ空を見上げていた。
不意に一羽の大きな鳥が空を過ぎる。
「比翼連理」
「・・・え?」
ぽつんと呟かれたムサシさんの言葉に、僕は視線を向けたけれど。
ムサシさんはそれ以上口を開かず、ずっと鳥を見ていた。
家に帰って、『比翼連理』の意味を調べて。
心のどこかで止まっていた感情の歯車が不意に動き出して。
僕の涙腺は、その時になってやっと、音を立てて決壊したのだった。
***
セナかムサシとのことだったのですが、まだ未出のセナの方を。身近な人が亡くなって、なんだか感情が固まってしまってそのまま過ごし、不意に日常の隙間で『ああ、もうあの人はいないんだ』と気づく瞬間があるんですよね。
その傍らにはヒル魔さん。
少し離れたところで医者と看護師がモニターを見ている。
僕とムサシさんは、息を潜めるように病室の隅で身を寄せ合っていた。
本当は僕たちはここにいるべきではないのかもしれない。
けれど勢い込んで到着した僕たちは病室内の雰囲気に戻ることも、進むことも出来ず立ちつくしていた。
時折低く漏れるのは、ヒル魔さんの嗚咽だ。
泣くような人じゃないと思ってた。
苦しいときこそ笑い、悲しいときも笑ってやり過ごすのがヒル魔さんのやり方だと思ってた。
それでも。
自分の信念なんて大いなる悲しみの前では崩れるのかもしれない。
僕たちからは照度の落とされた室内の様子は判然としない。
ぼそぼそと聞こえるのは、潜めているのではなくそうとしか出ない姉ちゃんの声だ。
応じるヒル魔さんは、間違ってもその言葉を聞き漏らさないようにじっと姉ちゃんを伺っている。
こんな日が来るなんて、僕は想像もしてなかった。
二人は永遠に連れ立って高く空を飛び続けるのだろうと、常人では到達出来ない域を悠然と越えていくのだろうと。
どんなに実現不可能なことでも二人が揃っていれば平気だろうと、訳もなく信じていた。
それは盲信だと言われる類かも知れない。
でも。
僕にとっては、彼らはもう神様にも近かった。
二人がいなければ、僕とアメフトの出会いも、その後の輝かしいと言われた活躍も、何一つ存在しないだろう。
幼い頃から人生こんな物だとどこかで諦めていた心を、引き上げてくれた大事な人たち。
だから、余計に。
こんなに見ているだけで心臓が引き裂かれそうな別れが二人に訪れるなんて、僕には信じられなかったんだ。
「・・・ありがとう」
ぽつんと、吐息に滲んだ声がはっきり僕の耳にも届いた。
そして今まで弱々しくも一定のリズムを刻んでいた電子音が、耳障りに一本の音を奏でる。
医師が、良くできた機械のように感情もなく言葉を紡いだ。
「ご臨終です」
その瞬間。
ムサシさんは無言で僕の手を引いた。
僕たちは廊下を抜け、振り返りも言葉を交わしもせず中庭へとたどり着いた。
中庭は穏やかな日差しが差し込んで、たった今姉ちゃんが息を引き取ったなんて信じられないくらい空も綺麗だった。
なんで雨が降らないのだろう。
あの美しい碧の瞳が閉じられたのだから、空が晴れているのはおかしいと思える。
そんなことが不思議でしょうがなかった。
今、僕たちは何も出来ず、ただ空を見上げていた。
不意に一羽の大きな鳥が空を過ぎる。
「比翼連理」
「・・・え?」
ぽつんと呟かれたムサシさんの言葉に、僕は視線を向けたけれど。
ムサシさんはそれ以上口を開かず、ずっと鳥を見ていた。
家に帰って、『比翼連理』の意味を調べて。
心のどこかで止まっていた感情の歯車が不意に動き出して。
僕の涙腺は、その時になってやっと、音を立てて決壊したのだった。
***
セナかムサシとのことだったのですが、まだ未出のセナの方を。身近な人が亡くなって、なんだか感情が固まってしまってそのまま過ごし、不意に日常の隙間で『ああ、もうあの人はいないんだ』と気づく瞬間があるんですよね。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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