旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
結婚の報告を受けて、当初は硬直して倒れんばかりに驚いたまもりは早々に立ち直り、今度は結婚式の準備をしなければ、と言い出した。
アヤもムサシも式は挙げない方向だったのだが、まもりはせめて身内だけででも挙げるべきだ、と譲らないのだ。ドレスくらい着てみたいでしょう、という言葉にもアヤは迷惑そうに眉を寄せただけだったのだが。
「ねーちゃ、こえ!」
「これ・・・」
あかりがどこからともなく持ってきたのはまもりのウェディングドレスの写真で。
「ねーちゃ、こえきるの? きれいねー」
末子には甘い姉弟の気質を見込んでそう言うように吹き込まれたらしいあかりの無邪気な様子と。
「ウェディングドレスか。着てみればいい」
「でも、厳さん」
「きっと似合う」
「っ」
ムサシの勧めにより、結局小さいながら結婚式を挙げることになったのだ。
「借り物なんざ認めねぇ。作ってこい」
ヒル魔の一言により、アヤはまもりと共にオーダーメードでドレスを作ってくれる店へと足を運ぶことになった。
ムサシは女の服はよく判らないがアヤが選ぶなら間違いない、という体のいい一言でその店への付き添いは免除して貰っていた。
ただし。
「色々入り用だから、買い物しないとね!」
「そうだね」
「お父さんたちは荷物持ちしてね!」
「勿論ムサシくんもよ」
まもりと護は結婚式に使うような細々した物を買うべくリストを作成し。
「俺はあかりちゃんと留守番してるね」
「ようにぃ、あそぼ!」
妖介はあかりの面倒を見るべく立候補し。
そうして、皆の休みが重なったとある土曜日にあかりと妖介を残し、連れ立って出掛けたのだった。
買い出し自体はリストもあるしさほど時間を取らないのだが、それ以外に引っかかるまもりと護を引きつれ、早々にアヤはドレスの店へと向かった。
その間に買った物だけでも結構な量になっているが一度家に戻るのも面倒なので、荷物番を仰せつかったヒル魔とムサシは二人揃って喫茶店でへばっていた。
「これだけ買ってまだ足りないのか」
「まだリストの半分だ、って言ってたぞ」
げんなりした口調で二人はコーヒーを啜る。
「お前達の時にはこんなじゃなかっただろう」
「こういうのは自分で動くより人使った方が早いんだよ」
ヒル魔は舌打ちする。
彼が結婚したときには自分たちで動いたのはドレス程度のもので、それ以外は全て式場側に用意させたのだ。
「なら今回はなぜそうさせない」
「姉崎やら糞ガキどもが譲らねぇんだよ」
ムサシは眉を寄せる。
「祝いの席が素っ気ないのは許せねぇんだろ。姉崎の母親も気合い入ってたからな」
そこでふとまもりの父親のことを思い出してヒル魔は笑みを浮かべる。
「姉崎の父親はえっらい凹んだみてぇだがな」
「・・・そうか」
「なんだ、責任感じてやがんのか、糞ジジイ」
ヒル魔はにやにやと笑う。
「だったらさっさとガキ作ってひ孫見せりゃ一発だ」
「それはお前の経験からか?」
それにヒル魔は片眉をぴんと上げる。
「そうすりゃ諦めがつく、っつってんだっ!!」
その口調にやはりどうにも納得いかない娘の父親の心情という物が透けて見えて、ムサシは小さく済まないな、と謝ったのだった。
さてその頃。
どんなドレスがいいかと頭を付き合わせるまもりと護とデザイナーを横目に、アヤはコーヒーを飲んでいた。
正直フリルだのリボンだのが飛び交う店内において自分が異質にしか感じない。
居心地が悪いのでどちらかといえば自分も荷物持ちの方に回りたいくらいだった。
「これも綺麗よね」
「んー、でも姉ちゃんは身長があるからそれだと下の方が寂しいかも。こっちは?」
「ああ、そちらも人気のデザインですね。その他にこういうのも・・・」
「わ! かわいい!!」
盛り上がる三人を眺めながら、アヤはふと思いついて自分の金髪に触れた。
「髪、黒に戻すかな・・・」
妖介は卒業と同時に戻すと宣言していたし、自分もそうしようかと思ったのだが。
途端に今までドレス選びに夢中になっていた三人がぐるんとアヤの方を向いた。
「だめよ!!」
「まだだめだよ姉ちゃん!!」
「だめですよ!!」
なぜだかデザイナーにまで止められ、アヤは目を丸くする。
「今金髪の姉ちゃん中心にドレス考えてるんだから!」
「結婚式が終わったら戻してもいいから!」
「いやでも、似合ってるんですから結婚式が終わってもそのままの方が!」
「それもそうよね!」
大騒ぎの面々に、アヤは早いところ終わらないかな、とため息をついたのだった。
その後も買い物を続け、護を除きぐったりする男衆は荷物を持って早々に帰宅し、まもりとアヤは二人きりでゆっくりと家路を歩いていた。
「はじめてじゃない? 二人でこんな風に歩くのって」
「そうね」
いつになくテンションの高いまもりに、アヤは歩調を合わせながらすっと手を出した。
「お母さん、手、繋ごう」
まもりはそれにちょっと目を丸くし、次いでふわんと笑った。
「嬉しいわ」
「そう」
「アヤは小さい頃からムサシくんに夢中だったけど、まさか本当に結婚しちゃうとはねー・・・」
ぶん、と勢いを付けて手を振るのにされるがままで、アヤは黙って母の言葉を聞く。
「結婚ってね、言う程楽しくないこともあるわよ」
「ええ」
「旦那さんがどんなにいい人でも嫌なことも辛いことも沢山あるのよ」
「そう」
「だけど結婚しちゃうと、恋人が別れるのと違って、こんなハズじゃなかった、別れましょうってすぐ言えないのよ」
「ふうん」
「それにね、どんなに好きでもやっぱり元が他人同士だから意見の食い違いとかねー・・・」
えーとえーと、と指折り数えて色々口にするまもりに、アヤは足を止めた。
「お母さん」
まもりも足を止めて、隣の娘を見上げる。
「なあに?」
「私はお父さんとお母さんの娘だから、結婚がすごくいいことなんだってちゃんと判ってる」
「・・・そう?」
「私は二人を目標にしてるの。いずれはお母さんみたいなお母さんになりたいのよ」
「・・・そう・・・」
まもりの手を引き、アヤは再び歩き出す。
しばらく無言で歩いていると、まもりが掠れた声で小さく語りかける。
「ねえ。泣きながら星を見ると、涙で万華鏡みたいになって、凄く綺麗なのよ」
アヤも空を見上げて呟いた。
「本当ね」
***
冬雪様リクエスト『アヤとまもりがアヤのウェディングドレスを選びに行く話』でした。しかし家族総出で買い物しててすみません。荷物持ちでぐったりする男衆とか、当人より口出しする護が書きたくて趣味に走ってしまいました(苦笑)その代わり「アヤはお母さんを好きだし大切にしてる」というのを盛り込んでみましたがいかがでしょうか。楽しく書けました。リクエストありがとうございましたー!!
冬雪様のみお持ち帰り可。
アヤもムサシも式は挙げない方向だったのだが、まもりはせめて身内だけででも挙げるべきだ、と譲らないのだ。ドレスくらい着てみたいでしょう、という言葉にもアヤは迷惑そうに眉を寄せただけだったのだが。
「ねーちゃ、こえ!」
「これ・・・」
あかりがどこからともなく持ってきたのはまもりのウェディングドレスの写真で。
「ねーちゃ、こえきるの? きれいねー」
末子には甘い姉弟の気質を見込んでそう言うように吹き込まれたらしいあかりの無邪気な様子と。
「ウェディングドレスか。着てみればいい」
「でも、厳さん」
「きっと似合う」
「っ」
ムサシの勧めにより、結局小さいながら結婚式を挙げることになったのだ。
「借り物なんざ認めねぇ。作ってこい」
ヒル魔の一言により、アヤはまもりと共にオーダーメードでドレスを作ってくれる店へと足を運ぶことになった。
ムサシは女の服はよく判らないがアヤが選ぶなら間違いない、という体のいい一言でその店への付き添いは免除して貰っていた。
ただし。
「色々入り用だから、買い物しないとね!」
「そうだね」
「お父さんたちは荷物持ちしてね!」
「勿論ムサシくんもよ」
まもりと護は結婚式に使うような細々した物を買うべくリストを作成し。
「俺はあかりちゃんと留守番してるね」
「ようにぃ、あそぼ!」
妖介はあかりの面倒を見るべく立候補し。
そうして、皆の休みが重なったとある土曜日にあかりと妖介を残し、連れ立って出掛けたのだった。
買い出し自体はリストもあるしさほど時間を取らないのだが、それ以外に引っかかるまもりと護を引きつれ、早々にアヤはドレスの店へと向かった。
その間に買った物だけでも結構な量になっているが一度家に戻るのも面倒なので、荷物番を仰せつかったヒル魔とムサシは二人揃って喫茶店でへばっていた。
「これだけ買ってまだ足りないのか」
「まだリストの半分だ、って言ってたぞ」
げんなりした口調で二人はコーヒーを啜る。
「お前達の時にはこんなじゃなかっただろう」
「こういうのは自分で動くより人使った方が早いんだよ」
ヒル魔は舌打ちする。
彼が結婚したときには自分たちで動いたのはドレス程度のもので、それ以外は全て式場側に用意させたのだ。
「なら今回はなぜそうさせない」
「姉崎やら糞ガキどもが譲らねぇんだよ」
ムサシは眉を寄せる。
「祝いの席が素っ気ないのは許せねぇんだろ。姉崎の母親も気合い入ってたからな」
そこでふとまもりの父親のことを思い出してヒル魔は笑みを浮かべる。
「姉崎の父親はえっらい凹んだみてぇだがな」
「・・・そうか」
「なんだ、責任感じてやがんのか、糞ジジイ」
ヒル魔はにやにやと笑う。
「だったらさっさとガキ作ってひ孫見せりゃ一発だ」
「それはお前の経験からか?」
それにヒル魔は片眉をぴんと上げる。
「そうすりゃ諦めがつく、っつってんだっ!!」
その口調にやはりどうにも納得いかない娘の父親の心情という物が透けて見えて、ムサシは小さく済まないな、と謝ったのだった。
さてその頃。
どんなドレスがいいかと頭を付き合わせるまもりと護とデザイナーを横目に、アヤはコーヒーを飲んでいた。
正直フリルだのリボンだのが飛び交う店内において自分が異質にしか感じない。
居心地が悪いのでどちらかといえば自分も荷物持ちの方に回りたいくらいだった。
「これも綺麗よね」
「んー、でも姉ちゃんは身長があるからそれだと下の方が寂しいかも。こっちは?」
「ああ、そちらも人気のデザインですね。その他にこういうのも・・・」
「わ! かわいい!!」
盛り上がる三人を眺めながら、アヤはふと思いついて自分の金髪に触れた。
「髪、黒に戻すかな・・・」
妖介は卒業と同時に戻すと宣言していたし、自分もそうしようかと思ったのだが。
途端に今までドレス選びに夢中になっていた三人がぐるんとアヤの方を向いた。
「だめよ!!」
「まだだめだよ姉ちゃん!!」
「だめですよ!!」
なぜだかデザイナーにまで止められ、アヤは目を丸くする。
「今金髪の姉ちゃん中心にドレス考えてるんだから!」
「結婚式が終わったら戻してもいいから!」
「いやでも、似合ってるんですから結婚式が終わってもそのままの方が!」
「それもそうよね!」
大騒ぎの面々に、アヤは早いところ終わらないかな、とため息をついたのだった。
その後も買い物を続け、護を除きぐったりする男衆は荷物を持って早々に帰宅し、まもりとアヤは二人きりでゆっくりと家路を歩いていた。
「はじめてじゃない? 二人でこんな風に歩くのって」
「そうね」
いつになくテンションの高いまもりに、アヤは歩調を合わせながらすっと手を出した。
「お母さん、手、繋ごう」
まもりはそれにちょっと目を丸くし、次いでふわんと笑った。
「嬉しいわ」
「そう」
「アヤは小さい頃からムサシくんに夢中だったけど、まさか本当に結婚しちゃうとはねー・・・」
ぶん、と勢いを付けて手を振るのにされるがままで、アヤは黙って母の言葉を聞く。
「結婚ってね、言う程楽しくないこともあるわよ」
「ええ」
「旦那さんがどんなにいい人でも嫌なことも辛いことも沢山あるのよ」
「そう」
「だけど結婚しちゃうと、恋人が別れるのと違って、こんなハズじゃなかった、別れましょうってすぐ言えないのよ」
「ふうん」
「それにね、どんなに好きでもやっぱり元が他人同士だから意見の食い違いとかねー・・・」
えーとえーと、と指折り数えて色々口にするまもりに、アヤは足を止めた。
「お母さん」
まもりも足を止めて、隣の娘を見上げる。
「なあに?」
「私はお父さんとお母さんの娘だから、結婚がすごくいいことなんだってちゃんと判ってる」
「・・・そう?」
「私は二人を目標にしてるの。いずれはお母さんみたいなお母さんになりたいのよ」
「・・・そう・・・」
まもりの手を引き、アヤは再び歩き出す。
しばらく無言で歩いていると、まもりが掠れた声で小さく語りかける。
「ねえ。泣きながら星を見ると、涙で万華鏡みたいになって、凄く綺麗なのよ」
アヤも空を見上げて呟いた。
「本当ね」
***
冬雪様リクエスト『アヤとまもりがアヤのウェディングドレスを選びに行く話』でした。しかし家族総出で買い物しててすみません。荷物持ちでぐったりする男衆とか、当人より口出しする護が書きたくて趣味に走ってしまいました(苦笑)その代わり「アヤはお母さんを好きだし大切にしてる」というのを盛り込んでみましたがいかがでしょうか。楽しく書けました。リクエストありがとうございましたー!!
冬雪様のみお持ち帰り可。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
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閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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