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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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熱と重み

(ヒルまも一家)
※シリーズの中の『川向こうにて』をお読みになってから御覧下さい。


+ + + + + + + + + +
クリスマスボウルに向けて部員達の気勢が上がる。
関東オールスターメンバーがグラウンド中を所狭しと走り回るのを横目で見ながら、まもりはドリンク類の準備や洗濯などに追われる。
選手達には練習だけに専念して欲しい。
そのために雑用は全てまもりが請負っている。
今までもそうだったけれど、他校生達の分も入ると相当な量だ。
よいせ、とまもりは洗濯物の籠を持ち上げて。
そうして。
「・・・?」
足にぺた、と張り付く小さな人影に気づいた。
「え?」
籠の陰になってよく見えない。
慌てて籠を降ろすと、そこには。
くりくりと大きな目をした、黒髪の男の子。
年の頃は二歳ほどだろうか。
「・・・どこから・・・」
きょろ、とあたりを見回しても誰もいない。
子供はまもりのジャージを握り、じっと見上げてきている。
そして、不意ににこーっと笑った。
「かっ・・・かわいい・・・!」
思わずまもりはしゃがみ込み、視線を合わせる。
「う」
「え?」
ぱ、と手を伸ばすそのポーズは、抱っこして欲しいという無言の主張。
思わずまもりはその身体を抱えて立ち上がった。
途端、身体に染み込むようなあたたかさと、重み。
「うわ・・・」
ぎゅう、としがみつかれてまもりは目を細める。
小さな手の、意外な程に強い力。
そして小さいながら密度の濃い命が詰まった重さは、無条件にまもりを幸せな気分にさせる。
「おい、糞マネ!!」
「あ」
まもりは怒声を上げてやってきたヒル魔の方を向く。
ヒル魔はまじまじとまもりを見つめ、酸素カプセルからするりと抜け出した。
「いつ産んだんだ」
「まさか!」
冗談を言わないで、と苦笑するまもりだったが、ヒル魔の視線は妙に真面目だった。
「親類か」
「え? ううん、こんな小さい子はウチの身内にはいないわ。さっき洗濯しようと思ってたらこの子がいたの」
ねー、と問いかけると、子供はじっとヒル魔を見つめていて。
そうして子供は不意に笑った。
「う!」
「ア?」
なんと、ヒル魔に手を伸ばしたのだ。
自慢じゃないが、他人には―――特に女子供には極端に怖がられる自覚があるヒル魔にとって初の出来事。
子供に抱っこをせがまれている。
それにまもりは笑顔になった。
「あ、丁度良かった。抱っこしてあげて」
「アァ!?」
「今のうちに洗濯機回して来ちゃうから!」
あ、でも腕・・・と気づいたまもりが戸惑うが。
ヒル魔は嘆息して左腕を伸ばした。
「寄こせ」
「ありがとう」
抱き上げ、その暖かさと仄かに漂う甘い匂いにヒル魔は眉を寄せる。
「なんか甘臭ェぞ」
「そう? 気にならなかったけど・・・」
急いで行ってくる、とまもりは洗濯機の方へと荷物を抱えていく。
子供はヒル魔の腕に大人しく収まっている。
片手ではバランスが悪く、早々に降ろしたいのだが子供は降りてくれない。
無理矢理に降ろしてみれば、よじよじと登って来るではないか。
「糞ッ!」
険しい顔をして舌打ちしても、子供はより一層笑って登るばかり。
「・・・テメェは誰だ?」
ヒル魔が瞬く。
彼の眸に映る『色』は、見覚えがある。
そう、まもりと同じような色合い。
そうして、この色合いは今年の夏にも見た。
白昼夢のようだったあの一日のこと。
「テメェも、もしかして・・・」
子供は無邪気に笑ってヒル魔に言った。
「おとーたん」
「・・・っ!!」
がこん、という音を聞いて、ヒル魔は振り返る。
そこには空の洗濯籠を落としたまもりの姿。
「お、お、おとっ・・・」
「オットセイでも出たか」
「そそそんなことありえない! じゃなくて!」
ヒル魔はまもりを無視し、腕の中の子供をまじまじと見る。
あの二人とはあからさまに違う。
ってことは子供が三人か。随分作るんだな、俺。
そしてそんなことを考えている事をおくびにも出さず、ヒル魔はまもりを小馬鹿にしたように笑う。
「テメェ、常識的に考えろ。俺が父親な訳ねぇだろ」
「だって、だ・・・っ」
子供はくりくりとした目で取り乱すまもりを見つめて笑った。
「おかーたん」
「ホラな」
それにまもりはあからさまに安堵したように息をついた。
「・・・そっか。そうよね、ヒル魔くんみたいなお父さんがいるはずないもんね。単に男の人全員に言うだけよね」
「さりげなく人をこき下ろしたな」
「そんなことないわよ。・・・え、また私?」
うー、と手を伸ばす子供を改めて抱き上げ、まもりは笑みを浮かべる。
「かーわいい。いいなあ、子供欲しいなあ」
「手伝ってやろうか」
「いやいやいやいや!! そ、そんなつもりじゃなく!」
「糞無防備だな、テメェ。男の前で軽々しくそんなこと言うんじゃねぇよ」
ケ、と笑いながらガムを取り出し、口に入れる。
子供が降りたいという素振りをしたので、降ろしてやりながらまもりは真っ赤な顔でヒル魔に噛みつく。
「だったらヒル魔くんも! 軽々しく女の子にセクハラ発言しない!」
「ア? 子供作る手伝いのどこがセクハラだ?」
「手伝い、って・・・!」
「人工授精で精子提供とかあるだろ。テメェは一体何想像しやがったんだ?」
「だっ、そ・・・常識的に考えて、その発言はないと思うの!」
「アァ? 頭ン中エロい想像で埋めといて人に責任押しつける発言はどうかと思うナァ」
「エ・・・?!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人から離れ、子供はよちよちと頼りない足取りで歩く。
そして。
どこからか呼ぶ声を聞きつけたかのように、すっと木立の中へと入っていったのだった。


「ああ、護! もう、どこ行ってたの!?」
巨大スーパーで買い物をしている隙に護が消えたので、まもりは青くなって探していたのだった。
商品棚の陰からちょこちょこと出てきた護を、まもりは抱き上げる。
「見つかってよかったわ」
「護、いた?」
「見つかったの?」
つかず離れずの距離で弟を捜していたアヤと妖介も側に戻ってくる。
悠然とした足取りでヒル魔も。
彼はにやにやと笑ってまもりを見つめる。
「だから言っただろ。すぐ戻るってナァ」
「だってこのスーパー大きいんだもの! ヒル魔くんは心配じゃないの?」
むっと睨め付けられても、ヒル魔は笑みを消さない。
ヒル魔はまもりの腕から護を受け取り、抱き上げた。
安心したようにしがみつく熱に、ヒル魔は口角を上げる。
あの時ぎこちなく片腕で抱いた時は、違和感ばかりが先だってしまっていたのだけれど。
もう今は、そんなことはない。染み込む熱は、言いようのない優しさに満ちているようで。
「抱き方は上達しただろ」
そっと護に囁いてみる。けれど当然、護は答えない。
頼りがいある父親の腕の中で、心地よさそうにまどろみ始めている。
「え? ヒル魔くん、何か言った?」
子供達を両脇に引きつれたまもりに振り返られて、ヒル魔はベツニ、と言って笑った。

なあ、十七才の時の俺。
子供が三人も、って思ってたが、三人しか、の間違いだ。
無条件に愛し慈しむ存在なんてその時は想像も出来なかったが、増えれば増えただけ愛しいもんだぞ。
あの時の自分との再会にはあと十年ちょい。
その時に教えてやるよ。

そして出来る事なら『ヒル魔くんみたいなお父さんがいるはずない』とまでこき下ろした、あの時の姉崎にもこの現状を見せてやりたいもんだな、と内心呟いた。


***
アヤと妖介がタイムスリップしたなら、護もしないかな? と思って書いてみました。
後半のヒル魔さん独白が予想外に甘くなりすぎてぞわぞわしました(苦笑)
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