旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
玄関を開いた途端彼を迎え入れた甘ったるい匂いのする花に、ヒル魔は眉を寄せた。
「なんだあの花」
「あ、お帰りなさい」
テーブルを拭いていたまもりは帰宅したヒル魔に顔を上げる。
甘い香りを振りまく花を指さす彼に、まもりは僅かに表情をゆるめて近寄った。
「あんまり売ってるところを見ないんですが、たまたま見つけたので買いました」
「ホー」
八重咲きの山梔子。
真っ白な花弁と、深い緑の葉。
「随分と強烈な匂いだな」
「そんなに強いかしら」
小首を傾げるまもりにヒル魔は尊大に言い放つ。
「コーヒー」
「はい」
まもりは肩をすくめ、キッチンに向かった。
すっかり馴染んだ二人での入浴。
先に湯船に身体を沈めたヒル魔はぼそりと呟く。
「口無しなんて言うくせに、随分と自己主張が激しいな」
「山梔子?」
まもりは身体を洗いながら彼を伺う。
ヒル魔はバスタブの縁に頭を預け、天井を見ている。
彼がくつろぐところは最初かなり違和感があったが、最近やっと見慣れてきた。
「まるでテメェみてぇだ」
「なんでですか」
まもりはその訳がわからず小首を傾げる。
「表面上は飄々と見せかけてるくせにエラく判りやすいとかナァ」
「それで言ったら貴方の方でしょう」
「ア?」
「最近判ってきましたけど、結構嫉妬深いですよね」
「ホー?」
ぴん、とヒル魔の片眉が上がる。
「それに心配性だし、優しいし」
「ホホー?」
「もっとあからさまにしてもいいと思うんですけ」
ど、という最後の一音を言う前に、まもりは勢いよくバスタブに引き込まれた。
泡にまみれた身体が勢いよく水面に叩きつけられる。
「!!」
「最近になって、だと?」
ヒル魔もその勢いで全身に湯を被り、その際に垂れてきた前髪を書き上げてにやりと笑った。
けれどそれは随分と苦笑混じりで。
「相変わらず糞天然ですね糞オクサマ」
「鼻にお湯入った・・・!」
けれどまもりはそれどころではなく、鼻の奥にツーンと響く痛みに顔を顰めている。
げほ、と噎せるけどヒル魔はそれに構わず唇を寄せるのだ。
「ちょっと、なんなんですかいきなり!」
「俺が普段から判りやすいか?」
「え、そうでしょう」
「仕事先でも?」
そう問われ、まもりは仕事先の彼の姿を思い浮かべる。
一分の隙もなく、隊を鍛える彼。
作戦の最終調整の時には夫婦という立場を忘れ、一個人で向かい合う。
相変わらずフラフラと隊舎内を歩き回っていても、緊張感を忘れないその不敵な笑み。
「・・・あら?」
まもりが知っている彼の無防備なところは、自宅でだけ見た事があるような。
仕事先では結婚前も後も変わりはしない。
小首を傾げるまもりにヒル魔はふん、と鼻を鳴らした。
「テメェの前でだけだ」
「え」
「他人の前で隙見せるなんて危険なことやるわけねぇだろ」
「・・・私は」
「テメェは俺のなんだ?」
妻だろ、と言われてまもりはぱちりと瞬く。
これは、甘え・・・なんだろう。
ヒル魔の腕がまもりを背後から柔らかく抱きしめる。
「家でくらいくつろがせろ」
ふ、と甘えるようにもたれ掛けられて、まもりは身体の前に回ったその手を抱きしめる。
「ねえ」
「ア?」
「山梔子の花言葉、知ってます?」
「シラネ」
興味のない事は全く覚えないヒル魔がそんなこと知っているはずがない。
けれどまもりは微笑むと、嬉しげに背後の彼に頬ずりするようもたれかかった。
山梔子の花言葉は、『私は幸せ』。
口に出して言わなくてもまもりは自己主張が激しいらしいから、きっと聡い彼は気づいてくれているだろう。
身体を沈めるこの暖かい湯よりも心地よい腕の中で、まもりは幸せそうに瞳を閉じた。
***
山梔子は夏の花です。時季はずれなのは重々承知してますが、なんとなく浮かんだので・・・。
大好きな花です、山梔子。
「なんだあの花」
「あ、お帰りなさい」
テーブルを拭いていたまもりは帰宅したヒル魔に顔を上げる。
甘い香りを振りまく花を指さす彼に、まもりは僅かに表情をゆるめて近寄った。
「あんまり売ってるところを見ないんですが、たまたま見つけたので買いました」
「ホー」
八重咲きの山梔子。
真っ白な花弁と、深い緑の葉。
「随分と強烈な匂いだな」
「そんなに強いかしら」
小首を傾げるまもりにヒル魔は尊大に言い放つ。
「コーヒー」
「はい」
まもりは肩をすくめ、キッチンに向かった。
すっかり馴染んだ二人での入浴。
先に湯船に身体を沈めたヒル魔はぼそりと呟く。
「口無しなんて言うくせに、随分と自己主張が激しいな」
「山梔子?」
まもりは身体を洗いながら彼を伺う。
ヒル魔はバスタブの縁に頭を預け、天井を見ている。
彼がくつろぐところは最初かなり違和感があったが、最近やっと見慣れてきた。
「まるでテメェみてぇだ」
「なんでですか」
まもりはその訳がわからず小首を傾げる。
「表面上は飄々と見せかけてるくせにエラく判りやすいとかナァ」
「それで言ったら貴方の方でしょう」
「ア?」
「最近判ってきましたけど、結構嫉妬深いですよね」
「ホー?」
ぴん、とヒル魔の片眉が上がる。
「それに心配性だし、優しいし」
「ホホー?」
「もっとあからさまにしてもいいと思うんですけ」
ど、という最後の一音を言う前に、まもりは勢いよくバスタブに引き込まれた。
泡にまみれた身体が勢いよく水面に叩きつけられる。
「!!」
「最近になって、だと?」
ヒル魔もその勢いで全身に湯を被り、その際に垂れてきた前髪を書き上げてにやりと笑った。
けれどそれは随分と苦笑混じりで。
「相変わらず糞天然ですね糞オクサマ」
「鼻にお湯入った・・・!」
けれどまもりはそれどころではなく、鼻の奥にツーンと響く痛みに顔を顰めている。
げほ、と噎せるけどヒル魔はそれに構わず唇を寄せるのだ。
「ちょっと、なんなんですかいきなり!」
「俺が普段から判りやすいか?」
「え、そうでしょう」
「仕事先でも?」
そう問われ、まもりは仕事先の彼の姿を思い浮かべる。
一分の隙もなく、隊を鍛える彼。
作戦の最終調整の時には夫婦という立場を忘れ、一個人で向かい合う。
相変わらずフラフラと隊舎内を歩き回っていても、緊張感を忘れないその不敵な笑み。
「・・・あら?」
まもりが知っている彼の無防備なところは、自宅でだけ見た事があるような。
仕事先では結婚前も後も変わりはしない。
小首を傾げるまもりにヒル魔はふん、と鼻を鳴らした。
「テメェの前でだけだ」
「え」
「他人の前で隙見せるなんて危険なことやるわけねぇだろ」
「・・・私は」
「テメェは俺のなんだ?」
妻だろ、と言われてまもりはぱちりと瞬く。
これは、甘え・・・なんだろう。
ヒル魔の腕がまもりを背後から柔らかく抱きしめる。
「家でくらいくつろがせろ」
ふ、と甘えるようにもたれ掛けられて、まもりは身体の前に回ったその手を抱きしめる。
「ねえ」
「ア?」
「山梔子の花言葉、知ってます?」
「シラネ」
興味のない事は全く覚えないヒル魔がそんなこと知っているはずがない。
けれどまもりは微笑むと、嬉しげに背後の彼に頬ずりするようもたれかかった。
山梔子の花言葉は、『私は幸せ』。
口に出して言わなくてもまもりは自己主張が激しいらしいから、きっと聡い彼は気づいてくれているだろう。
身体を沈めるこの暖かい湯よりも心地よい腕の中で、まもりは幸せそうに瞳を閉じた。
***
山梔子は夏の花です。時季はずれなのは重々承知してますが、なんとなく浮かんだので・・・。
大好きな花です、山梔子。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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よろしくお願いいたします。
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