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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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カトブレパスの眸・おまけ

(ヒル魔と椿)

 


+ + + + + + + + + +
ヒル魔は近寄ってきた椿を見下ろした。
彼女の背丈はさほど高くないので、彼からは椿のつむじが見える。
「おい、糞マネ」
「はいー、なんですか」
「山口が来てるぞ」
その声に彼女は下を向いたまま答える。
「知っとります」
「テメェは何にもしなくていいのか」
「ああいう手合いには何もせんほうがええんです」
それは、彼女がここまで生きてきて得た経験則。
たとえ目の敵にされても、相手にしなければいずれ収まる。
見た目にも性質的にも地味に過ごしてきた椿は、そうやってトラブルを乗り切っていたから。
ヒル魔はピンと片眉を上げた。
「それで収まらねぇであんな目に遭ったんだろうが」
「そうですけど」
「腹立ってんだろ」
「そりゃまあ」
「山口の方を見ろ」
「はい?」
「アイツに向かって、笑ってやれ。俺みたいにな」
ヒル魔の指示に、椿は困惑しつつ、言われたとおりに視線を向けた。
こちらを呆然と見ている山口に対して、笑ってみる。
ヒル魔コーチってどんな笑い方だっけ、こんな? と。
途端に山口の顔に朱が差した。
こちらに向かってこようとして、飛んできたのは・・・男。
妖介が投げる見覚えのある姿に、椿は目を丸くした。
「あれ」
「共犯者どもだろ」
「知ってたんですか」
「俺を誰だと思ってる」
「そうでした」
聞くまでもない。相手は悪魔コーチだ。
ヒル魔はぽん、と椿の頭を撫でた。
「今回の事なら、アイツが」
すい、と視線を向けた先には妖介の姿。
「片を付けるが、そうそういつも助けられる訳じゃねぇ」
「はい」
「大半の奴は相手が自分より格下だと思うから見くびるんだよ」
自分より見目が劣るという理由で椿を蔑んだ山口もそうだし、それに荷担した男達もそうだ。
大人しそうでいつもハイハイと姉にこき使われている妖介の姿を見た山口はそれも誤解しただろうし。
「テメェもそのナリになったからには堂々としてろ」
慣れないコンタクトに目が痛い。椿は意識して瞬く。
「不可抗力です」
メガネが壊れてしまったから新しいのが欲しかったのだが、そこは護に却下されコンタクトに、髪型は本人の意志関係なくヒル魔に切りそろえられてしまったのだ。
クラスメイトを始めとした周囲からかわいいと誰彼構わず騒ぎ立てられ、疲れの方が先に立つ。
こんな格好になりたいと自ら望んだわけではないから、余計に。
けれど、ヒル魔はにやりと笑って椿のつむじを見下ろす。
「外見は武器だ。ハッタリかましてこそ、な」
「・・・アヤと同じ事言いはるんですね」
だから私はアメフト選手じゃないんでハッタリは必要ないんです、という椿のぼやきに、ヒル魔はにやにやと笑う。
「これは好きな男にも有効だぜ?」
「っ!!」
椿はばっと顔を上げる。
彼女の視界で笑うのは悪魔。
けれど、人の親でもある彼はどこか慈しむような口調で告げる。
「テメェの想いはちゃんとテメェで片つけろよ」
「・・・はい」

じわりと赤くなる椿の背後で、つんざくような山口の悲鳴が響いた。



***
妖介が活動してる最中のヒル魔と椿の二人でした。椿の髪の毛、ヒル魔さんが切ったんです。
あと一家のスタイリスト護も助言してます。だからヒル魔さんと護が在宅かどうかを妖介が尋ねたのでした。
その話を中に出せなかったので、ここでお披露目(笑)

ヒル魔スキーで椿を褒めて下さったmasayonさんに捧げました。
掲載の要望を受けましたので、こちらにもアップです。
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