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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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幼きアストライアー

(ヒルまも一家)
※アヤ・妖介が4歳。

 


+ + + + + + + + + +
ヒル魔とまもりはリビングでにらみ合っていた。
事の起こりは些細なことだ。
普段は甘い物嫌いなヒル魔に多少遠慮して家では食べないシュークリーム。
けれど今日、たまたま友人が遊びに来て結構な量のシュークリームを置いていったのだ。
護は当然まだ食べられないし、アヤは食べないし、唯一甘い物好きな妖介はもう寝てしまった。
明日まで待ってもいいが堅くなってしまうし、どちらにせよ妖介と二人では食べきれないから、と。
山のように自分に言い訳をして、まもりは紅茶を入れてシュークリームの箱を取り出し。
思うままに食べ始めたのだが。
「・・・テメェ何やってやがる」
「むぐ」
呆れた声に振り返れば、地獄を見たかのような顔の悪魔が一匹。
もとい、ヒル魔が帰宅していた。
「おかえりなひゃい」
「口に毒物突っ込んだままで喋るな糞糞糞シュークリームマニア!」
「毒物じゃないもん」
むぐむぐ、と口に入れたシュークリームを咀嚼してそう反論したまもりに、ヒル魔の視線は冷ややかだ。
「子供が寝てる間に一人で美味いモン食うなんてイケナイお母さんデスネ」
「し、仕方ないじゃない。もう子供たち寝ちゃったし」
「寝るまで待ってたんだろ、この糞食いしん坊め。どうせシュークリームを子供に食われるのが嫌だったんだろ」
「な!? そこまで食い意地はってません!」
「こんな夜にンな油分と糖分の固まり食ってみろ。覿面に糞ブタブタになるに決まってんだろ」
大体家でンな糞甘いモン食うんじゃねぇよ気分の悪い、とまで言われて。
さすがのまもりもかちんとキた。
「たまたまヒル魔くんが出くわしただけじゃない! そんな言い方ないでしょ!?」
「どうだか? なんたって糞風紀委員時代につまみ食いしてたもんなァ~」
ケケケ、と嘲笑う彼にまもりはふるふると肩を震わせる。
「自分の好物を自分の家で食べて何が悪いのよ! 文句があるなら帰ってこなければいいでしょ!?」
「アァ!? テメェなにほざきやがる!」
「いつもいつも好き勝手にフラフラしてるくせに! そんな人にそこまで言われる筋合いはないわよ!!」
「・・・っ、この糞アマ・・・」
ヒル魔の眉間にも皺が寄る。水掛け論の様相を呈してきたその時。
「おとうさん、おかあさん、けんかしてるの?」
「「!!」」
びく、と二人は動きを止めた。慌てて視線を向ければ、そこには寝ぼけ眼のアヤの姿。
「あ、あら。アヤ、目が覚めちゃった? 煩かった?」
まもりが咄嗟に笑顔で不満を覆い隠して矢継ぎ早に尋ねるが、アヤはふるふると頭を振った。
「ううん。のどかわいた」
「水、飲むか」
ヒル魔が歩み寄ろうとしたが、それよりも先にアヤがとてとてと二人の足下に駆け寄った。
小さい手を上に伸ばして、二人に向かって万歳をするようにして。
「まあまあ」
と、至極真面目にのたまったのだ。
見上げてくる青い瞳は、眠気よりも不安を抱えている。
「おとうさんとおかあさんがけんかしてると、アヤしんぱいなの」
「「・・・」」
「なかなおり、してね」
小首をかしげてお強請りをするようなそぶりで。
両親の不仲を心配する表情そのもので。
可愛らしいその仕草に、二人は無言のまま互いを見つめ、どちらともなく嘆息する。
「そうね。喧嘩しちゃだめよね」
「うん」
ヒル魔はアヤを抱き上げ、その頭を撫でる。
「水でいいか」
「うん」
冷蔵庫から取り出したボトルをまもりが受け取り、アヤ用のコップに注ぐ。
ヒル魔の腕の中で、アヤは眠気が戻ってきたようでこてんとヒル魔の肩に頭を預ける。
「ほら。飲めるか」
「うん」
アヤは半分夢現のような状態でそれでも渡された水を飲み干すと、こくりと船をこぎ始めた。
「寝かしつけてくる」
「あ、私が」
「テメェはそれさっさと片付けて、飯用意しろ」
ヒル魔はテーブルの上に放置されていたシュークリームを指さし、アヤを部屋へと連れて行く。
その口調に先ほどまでの苛立ちはもうない。
まもりはシュークリームの残りを冷蔵庫にしまい込み、ヒル魔のための夜食を作り始める。
苛立ちは彼女の中にも残らなかった。
頭が冷えたらなんだかくだらないことで喧嘩したなあ、と気恥ずかしくなる。
「それにしても・・・子はかすがい、って本当なのね」
そう一人呟き、アヤは一体どこであの仲裁の仕草を知ったのだろうかと首をかしげたのだった。


『あのね、おばあちゃんが教えてくれたとおりにしたら、二人ともけんかやめたよ』
電話越しの拙い声に、まもりの母はふわりと笑みを浮かべる。
「そう、よかったわね」
『おばあちゃん、ああやってけんかするのは仲がわるいの?』
「いいえ、仲がよすぎて喧嘩することもあるのよ。アヤも妖介やお友達と喧嘩するでしょう?」
『うん』
「そうやって喧嘩して、でも仲直りしたら前よりもっと仲良しでしょう? お父さんとお母さんもそうなのよ」
『ふう・・・ん。そうなんだ。ありがとう、おばあちゃん』
「どういたしまして」
他愛ない孫との会話を楽しんだ後、通話を切る。
あの聡い孫娘はいつの間にやら電話操作を覚え、国際電話を一人でかけられるほどになっていた。
当初こそ驚き、慌てたが、彼の子であるのならそれもそうおかしくないと思える。
「やっぱり血は争えないのね」
くすくす、と笑いながら彼女は異国の地にいる娘たち一家の生活に思いを馳せたのだった。


***
4歳の息子さんがいらっしゃる方と話していた時、夫婦喧嘩をしたとき息子が仲裁に来た、というのを聞いて浮かんだ話です。本当に「まあまあ」って言って仲裁したというその子の仕草を想像したらかわいくて! その子は祖父母に両親の仲裁方法を尋ねたというので、まもママに登場願いましたw
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