旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
遠く、アメリカの地を走り抜けたことがある。
灼熱の大地を、文字通り死ぬ気で蹴った。
背後からは足音はないが銃声を響かせて漆黒の悪魔が迫ってくる。
指一本動かせないくらいになるまで走って、泥のように眠って、目が覚めたらまた走る。
ああ。
寝ても覚めても地獄だ。
死んでも生きていても地獄。
次第に思考は停止していく。
余計な考えはすべてそぎ落とされて、五感ばかりが鋭敏になっていくような感覚が常に纏わりつく。
誰もが苦しんで、倒れ、這い上がり、続けた四十日間。
それは背後から追う立場の悪魔のような彼とて同じだったはずだ。
それは地獄の行軍も半ばを過ぎたあたりの朝だったか、夕だったか。
どちらにせよ、誰もが眠りに沈む時間帯に不意に投げかけられた声だった。
薄青い空には雲一つなく、この先の好天を否応なく想像させる。
ぼんやりとそう考えていた時のことだった。
「今、何考えて走ってる」
彼の唐突な問いかけに、咄嗟に出たのは。
「蜘蛛の糸、です」
「ア?」
きっと『クリスマスボウル』という単語が出てくるのだと考えていたのだろう。
ぴんと片眉を上げた彼に、続ける。
「僕はまだ、みんなと肩を並べる位置にいないですから。まずそこにたどり着かないとならない」
運動らしい運動をしてこなかったこの細い体は、思うように動いてくれない。
この行軍を無事に走り抜けられない可能性が一番高い存在であることは重々承知していた。
けれど。
「僕にとってこの行軍は、垂れている蜘蛛の糸を上ることに等しいんです」
縋りつき、切れないように祈りながらただ愚直に上るしかない、蜘蛛の糸。
何かの気まぐれが起きて途絶えれば、途端に地獄に真っ逆さまだ。
細い細い可能性を寄り合わせて紡ぐ糸。
「その糸は誰が下ろしてんだ?」
言葉遊びのように彼は続ける。
「神か仏か」
彼も疲れているだろうに。
「それとも、悪魔か」
にやりと笑う口元に、ふと笑みを誘われる。
「神や仏じゃない気はしますね。そして、悪魔じゃないことだけは確実です」
「ホー?」
なぜだ、と視線で問われる。
「悪魔は今、一緒に走ってますから」
それに一瞬目を見開き、次いで彼はケケケ! と声を上げて笑った。
「いー度胸だ糞ハゲ。ヘマして糸切んじゃねぇぞ」
彼はそうして、口をつぐんだ。
手を離すことも諦めることも許さない、勝利に飢えた悪魔と共にいるからこそ上れる蜘蛛の糸。
それを上り切ったとき、目にする光景をどう思えるのだろうか。
ただ今は、余計なことを考えず悪魔と共に蜘蛛の糸を追う。
それだけ。
その先のことは、誰も分からない。
悪魔にさえ、まだ。
***
唐突に降ってきたデス・マーチ参加時の雪さんでした。
あれだけ頭のいい雪さんなんだから、ヒル魔さんの漠然とした不安とか疲れとかそういったものを彼なりに察してたんじゃないかな、と思いまして。まもりちゃんとは違うところで肩を並べる人であって欲しいという願望が多分に含まれてます。たまーに一人称抜いて書くと難しいですね。
灼熱の大地を、文字通り死ぬ気で蹴った。
背後からは足音はないが銃声を響かせて漆黒の悪魔が迫ってくる。
指一本動かせないくらいになるまで走って、泥のように眠って、目が覚めたらまた走る。
ああ。
寝ても覚めても地獄だ。
死んでも生きていても地獄。
次第に思考は停止していく。
余計な考えはすべてそぎ落とされて、五感ばかりが鋭敏になっていくような感覚が常に纏わりつく。
誰もが苦しんで、倒れ、這い上がり、続けた四十日間。
それは背後から追う立場の悪魔のような彼とて同じだったはずだ。
それは地獄の行軍も半ばを過ぎたあたりの朝だったか、夕だったか。
どちらにせよ、誰もが眠りに沈む時間帯に不意に投げかけられた声だった。
薄青い空には雲一つなく、この先の好天を否応なく想像させる。
ぼんやりとそう考えていた時のことだった。
「今、何考えて走ってる」
彼の唐突な問いかけに、咄嗟に出たのは。
「蜘蛛の糸、です」
「ア?」
きっと『クリスマスボウル』という単語が出てくるのだと考えていたのだろう。
ぴんと片眉を上げた彼に、続ける。
「僕はまだ、みんなと肩を並べる位置にいないですから。まずそこにたどり着かないとならない」
運動らしい運動をしてこなかったこの細い体は、思うように動いてくれない。
この行軍を無事に走り抜けられない可能性が一番高い存在であることは重々承知していた。
けれど。
「僕にとってこの行軍は、垂れている蜘蛛の糸を上ることに等しいんです」
縋りつき、切れないように祈りながらただ愚直に上るしかない、蜘蛛の糸。
何かの気まぐれが起きて途絶えれば、途端に地獄に真っ逆さまだ。
細い細い可能性を寄り合わせて紡ぐ糸。
「その糸は誰が下ろしてんだ?」
言葉遊びのように彼は続ける。
「神か仏か」
彼も疲れているだろうに。
「それとも、悪魔か」
にやりと笑う口元に、ふと笑みを誘われる。
「神や仏じゃない気はしますね。そして、悪魔じゃないことだけは確実です」
「ホー?」
なぜだ、と視線で問われる。
「悪魔は今、一緒に走ってますから」
それに一瞬目を見開き、次いで彼はケケケ! と声を上げて笑った。
「いー度胸だ糞ハゲ。ヘマして糸切んじゃねぇぞ」
彼はそうして、口をつぐんだ。
手を離すことも諦めることも許さない、勝利に飢えた悪魔と共にいるからこそ上れる蜘蛛の糸。
それを上り切ったとき、目にする光景をどう思えるのだろうか。
ただ今は、余計なことを考えず悪魔と共に蜘蛛の糸を追う。
それだけ。
その先のことは、誰も分からない。
悪魔にさえ、まだ。
***
唐突に降ってきたデス・マーチ参加時の雪さんでした。
あれだけ頭のいい雪さんなんだから、ヒル魔さんの漠然とした不安とか疲れとかそういったものを彼なりに察してたんじゃないかな、と思いまして。まもりちゃんとは違うところで肩を並べる人であって欲しいという願望が多分に含まれてます。たまーに一人称抜いて書くと難しいですね。
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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