旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「・・・お母さん、何かあったの?」
さすがにそれだけじゃ情報不足だろうとアヤが口を挟む。
怒るにしてもその内容を聞かないことには話にならない。
「この・・・服!」
「「「「服?」」」」
全員がまもりの指差す、彼女が今着ている服を見つめた。
先日から彼女のワードローブ入りを果たしたそれは、肌触りの良いサマーニットとフレアスカート。
派手過ぎない色彩で、清潔感もあり、まもりにとてもよく似合っている。
さて、どこが不満なのだろう。
全員の疑問に満ちた視線を受けて、まもりは声を上げる。
「なんでこんな高いものを私に着せてるわけ!?」
「え?」
アヤがきょとんとした顔をして、ヒル魔を見る。
ヒル魔はぱちりと一つ瞬きし、それから胡乱げな視線をまもりに向けた。
「高くねぇだろ」
「高いわ! 今日、私デパートで同じ服見つけて息が止まるかと思ったわよ!!」
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らす。
「高いうちに入らねぇ」
「どういう金銭感覚してるのよ!?」
「その言葉そっくり返す」
ぎゃあぎゃあと始まった夫婦喧嘩に、アヤは空になったカップ片手に台所へ避難する。
「・・・どういう流れ?」
折りよく色づき始めたにんにくを取り除き、たまねぎを放り込んで炒め始めた妖介はぽつりと呟く。
「・・・多分、母さんあの服の値段知らなかったんだよ」
護は種を取り除き終えたホールトマトを妖介に差出し、嘆息する。
「あれ、有名ブランドの新作なんだよね」
「そう」
アヤは洋服に興味がないのでよく知らないが、護が口にしたブランド名は彼女であっても知っていた。
ということは、相当高級なのだろう。
「あれ・・・母さん、普段洋服って自分で買ってなかったっけ?」
「結構父さんが買ってくる服も多いんだよ。僕よく付き合うもん」
「なんで二人で」
アヤが不思議そうに小首を傾げる。ヒル魔とまもりが共に行くのならともかく、供が護であるというのが解せない。
「だって、母さんが一緒だと『あれヒル魔くんに似合いそう! あ、あれは妖介かな。あれは護ね。ねえ、アヤの服だったら・・・』って収拾つかなくなるんだよ」
「ああ・・・」
何しろ自分に対する出費が極端に低いのがまもりなのだ。
ヒル魔が強引に買い物に連れ出しても家族のものばかり買って、自分のものは必要最小限。
それを言っても聞かないから、結局ヒル魔は勝手にまもりの洋服を買ってワードローブに追加してしまうのだ。
そうして価格は勿論気にしたことはない。買うときの基準は『似合うかどうか』、それだけ。
「母さんに一番似合うのを買えるのは父さんでしょ。父さん一人じゃ女性服売り場で浮くんで、僕がついていってるの」
「はあ・・・そんな風に買ってたんだ」
呆れた声で相槌をいれつつ、妖介はたまねぎが炒め終わったのを確認し、トマトとタイムを入れて煮込み始める。
「姉ちゃんの服もそうだよ」
「そう」
アヤはカップに再び落としたコーヒーを満たし、そっけなく応じる。
自分の格好など気にしたことはないのだが、時折入れ替わってる服はそうやって入ってきたのか、と認識した次第だ。
「あれが好きでやってることだから、気にすることはない」
アヤはちらりと両親を見るが、納得いかないまもりはヒル魔に食って掛かっている。
「そりゃ金銭感覚は昔からおかしかったけど、そもそも仕事は何なのよ!?」
「秘匿だ、ひ・と・く。俺はテメェに洋服代も込みでその金渡してんだぞ、俺が買うのが不満ならそこから自分で買え」
「嫌よ! だって貯金もなくちゃ不安だし!」
「それっぽっちの金貯めたところで糞雀の涙だろうが」
「それっぽっちって!」
言い争いは終わりそうにない。
「そろそろトマトソースできるんだけどさ、ピザって今日食べると思う?」
「うーん・・・」
護は両親を伺いながら首を振った。
アヤも肩をすくめ、ピザ生地に近寄り生地を一回分ずつにちぎり分けていく。
「冷凍しておけば持つ」
「そうだね」
兄弟総出でトマトソースを冷蔵庫に、ピザ生地を冷凍庫にしまい終える頃。
まもりの怒りはピークに達しようとしていた。
「大体ヒル魔くんはなんでも勝手なのよ! わ、私の言うことなんてろくに聞きもしないで・・・っ!」
ぐす、と怒りのあまり涙目になってきたまもりに、姉弟は顔を見合わせてそっとその場を後にする。
こうなればもう子供たちの出る幕はない。むしろヒル魔に邪魔者扱いされるのが関の山だ。
姉弟はリビングから首尾よく逃げ出し、アヤの部屋へと集まった。
「今何時?」
「六時」
「じゃあ八時には夕飯食べられるかな」
「どうかな」
階下では判りやすく悪魔が手練手管を駆使して愛妻を陥落することだろう。
とりあえずそれまで夕飯はお預けだ。
その後。
夕飯が特上寿司の出前となり、姉弟が食事にありつけたのは予想通りの夜八時だったとか。
***
まもりちゃんは家族第一で動いちゃって自分の分の買い物とかしないから、ヒル魔さんが色々買ってきて与えて着飾らせてるんじゃないかなという妄想でした。子供たちはとばっちりですが、もう慣れきってます(笑)
さすがにそれだけじゃ情報不足だろうとアヤが口を挟む。
怒るにしてもその内容を聞かないことには話にならない。
「この・・・服!」
「「「「服?」」」」
全員がまもりの指差す、彼女が今着ている服を見つめた。
先日から彼女のワードローブ入りを果たしたそれは、肌触りの良いサマーニットとフレアスカート。
派手過ぎない色彩で、清潔感もあり、まもりにとてもよく似合っている。
さて、どこが不満なのだろう。
全員の疑問に満ちた視線を受けて、まもりは声を上げる。
「なんでこんな高いものを私に着せてるわけ!?」
「え?」
アヤがきょとんとした顔をして、ヒル魔を見る。
ヒル魔はぱちりと一つ瞬きし、それから胡乱げな視線をまもりに向けた。
「高くねぇだろ」
「高いわ! 今日、私デパートで同じ服見つけて息が止まるかと思ったわよ!!」
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らす。
「高いうちに入らねぇ」
「どういう金銭感覚してるのよ!?」
「その言葉そっくり返す」
ぎゃあぎゃあと始まった夫婦喧嘩に、アヤは空になったカップ片手に台所へ避難する。
「・・・どういう流れ?」
折りよく色づき始めたにんにくを取り除き、たまねぎを放り込んで炒め始めた妖介はぽつりと呟く。
「・・・多分、母さんあの服の値段知らなかったんだよ」
護は種を取り除き終えたホールトマトを妖介に差出し、嘆息する。
「あれ、有名ブランドの新作なんだよね」
「そう」
アヤは洋服に興味がないのでよく知らないが、護が口にしたブランド名は彼女であっても知っていた。
ということは、相当高級なのだろう。
「あれ・・・母さん、普段洋服って自分で買ってなかったっけ?」
「結構父さんが買ってくる服も多いんだよ。僕よく付き合うもん」
「なんで二人で」
アヤが不思議そうに小首を傾げる。ヒル魔とまもりが共に行くのならともかく、供が護であるというのが解せない。
「だって、母さんが一緒だと『あれヒル魔くんに似合いそう! あ、あれは妖介かな。あれは護ね。ねえ、アヤの服だったら・・・』って収拾つかなくなるんだよ」
「ああ・・・」
何しろ自分に対する出費が極端に低いのがまもりなのだ。
ヒル魔が強引に買い物に連れ出しても家族のものばかり買って、自分のものは必要最小限。
それを言っても聞かないから、結局ヒル魔は勝手にまもりの洋服を買ってワードローブに追加してしまうのだ。
そうして価格は勿論気にしたことはない。買うときの基準は『似合うかどうか』、それだけ。
「母さんに一番似合うのを買えるのは父さんでしょ。父さん一人じゃ女性服売り場で浮くんで、僕がついていってるの」
「はあ・・・そんな風に買ってたんだ」
呆れた声で相槌をいれつつ、妖介はたまねぎが炒め終わったのを確認し、トマトとタイムを入れて煮込み始める。
「姉ちゃんの服もそうだよ」
「そう」
アヤはカップに再び落としたコーヒーを満たし、そっけなく応じる。
自分の格好など気にしたことはないのだが、時折入れ替わってる服はそうやって入ってきたのか、と認識した次第だ。
「あれが好きでやってることだから、気にすることはない」
アヤはちらりと両親を見るが、納得いかないまもりはヒル魔に食って掛かっている。
「そりゃ金銭感覚は昔からおかしかったけど、そもそも仕事は何なのよ!?」
「秘匿だ、ひ・と・く。俺はテメェに洋服代も込みでその金渡してんだぞ、俺が買うのが不満ならそこから自分で買え」
「嫌よ! だって貯金もなくちゃ不安だし!」
「それっぽっちの金貯めたところで糞雀の涙だろうが」
「それっぽっちって!」
言い争いは終わりそうにない。
「そろそろトマトソースできるんだけどさ、ピザって今日食べると思う?」
「うーん・・・」
護は両親を伺いながら首を振った。
アヤも肩をすくめ、ピザ生地に近寄り生地を一回分ずつにちぎり分けていく。
「冷凍しておけば持つ」
「そうだね」
兄弟総出でトマトソースを冷蔵庫に、ピザ生地を冷凍庫にしまい終える頃。
まもりの怒りはピークに達しようとしていた。
「大体ヒル魔くんはなんでも勝手なのよ! わ、私の言うことなんてろくに聞きもしないで・・・っ!」
ぐす、と怒りのあまり涙目になってきたまもりに、姉弟は顔を見合わせてそっとその場を後にする。
こうなればもう子供たちの出る幕はない。むしろヒル魔に邪魔者扱いされるのが関の山だ。
姉弟はリビングから首尾よく逃げ出し、アヤの部屋へと集まった。
「今何時?」
「六時」
「じゃあ八時には夕飯食べられるかな」
「どうかな」
階下では判りやすく悪魔が手練手管を駆使して愛妻を陥落することだろう。
とりあえずそれまで夕飯はお預けだ。
その後。
夕飯が特上寿司の出前となり、姉弟が食事にありつけたのは予想通りの夜八時だったとか。
***
まもりちゃんは家族第一で動いちゃって自分の分の買い物とかしないから、ヒル魔さんが色々買ってきて与えて着飾らせてるんじゃないかなという妄想でした。子供たちはとばっちりですが、もう慣れきってます(笑)
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鳥(とり)
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性別:
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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