旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
ムサシは目の前で楽しげにフライパンを振る少女をしげしげと眺める。
「どうしました? そんなにお腹空きました?」
小首を傾げてそんなことを尋ねる物だから、そんなことはないと告げると再び料理に戻る。
背は高い。自分とは数㎝しか差がない。
髪は金髪、生まれながらではないが瞳が青いために生来の物のように似合っている。
身体は細いながらしっかり肉もあり、出るところはちゃんと出て、メリハリが利いている。
顔は天使のそれと悪魔のそれを重ね合わせて柔和にしたようで。
有り体に言えば、非の打ち所のない美女。
眉目秀麗、文武両道。
学校内のみならず、全国区でファンが大勢いる事を知っている。
それが、何をトチ狂って二十才も年上の男のところに料理を作りに来ているのか。
もう見慣れる程に回数を重ねる来訪。
近頃では部活が休みの度に現れてはムサシを出迎えるのだ。
ムサシはため息をつく。
「やっぱりお腹空いてますか? ちょっと待ってて下さいね」
途端に反応を返すアヤにムサシはそうじゃなくて、と告げた。
「アヤ、家に帰れ」
「厳さんとご飯食べたら帰りますよ」
きょとんと小首を傾げられる。
「そうじゃない。前々から言おうと思っていたんだが―――」
話が長くなりそうだと察知して、アヤはガスを止め、ムサシの前に立つ。
「はい」
じっと澄んだ空のような瞳がムサシを見つめる。
幼い頃から変わらない、美しい色だ。
「アヤは何のつもりでここに来てるんだ」
「何のつもり、って」
ふわ、とアヤの頬が赤くなる。
そうすると一層色香の漂う表情に、ムサシは眉を寄せた。
「私は、厳さんが好きなんです」
ご存じでしょう、と赤い顔のまま言われ、ムサシは厳しい顔つきになる。
幼い頃から再三にわたって彼女はそう口にしてきていた。
最初は幼さ故の憧れだけだろうと踏んでいたのに、最近は真実みを帯びてきているとは判っている。
「何を好きこのんで父親と同じ年の男を・・・」
「そんなの、私にだって判りません」
アヤは一歩も引かず、ムサシを見つめる。
「たまたま、好きになった人が父と同じ年だっただけです」
それにムサシは更に眉を寄せる。
「年が離れすぎている。俺はアヤをそんな風には見られない」
「っ」
悪魔の娘なら、理詰めで説得したら納得するだろう。
そう踏んでいたムサシは畳みかけるように更に続ける。
「アヤは若いし、綺麗だ。こんなオヤジのところに無駄に来るんじゃない」
アヤはその言葉にきっと顔を上げる。
「年の事を理由にしないで下さい」
「一番真っ当で大きな理由だろう」
「だって!」
アヤは一歩ムサシに歩み寄る。
青い瞳が薄く涙に潤み、けれど強い光はそのままだ。
おもむろに彼女の手がムサシの手を取る。
細いけれど、『女』の手。
ムサシが思わず手を引こうとしたが、それを許さない。
「私、大きくなりました」
約束通り、とアヤは続ける。
それは幼い頃、十年も前に口にした約束。
つい先日思い出したムサシは歯がみするが、アヤは頓着せず続ける。
「年の差は、もう今更どうしようもないけれど、この十年ずっと待って、ここまで大きくなったんです」
ムサシの手を自らの胸に抱き、アヤは言いつのる。
「まだダメなんですか? 十年経っても、二十年経っても、まだダメだ、って言い続けるんですか? 年の差が縮まる事は絶対にないのに!」
ムサシは手を引こうとしたが、アヤはそれを許さない。
制服のシャツ越しに感じる、体温。
柔らかい身体は既に女としての弧を描き、十年という時の大きさを思い知る。
あんなに幼くて、遠かった視線が今は近い。そう、近すぎるくらいに。
「理由を付けて追い出しますか? 拒絶するんですか? ・・・私は、厳さんの側にいたくて、釣り合いたくて」
押し黙るムサシの身体に縋る、細いが鍛えられた身体。
見上げてくる瞳が、唇が、近い。
思わずムサシの喉が鳴る。
彼女の事は嫌いではない。むしろ好きだと言える。
だがそれは保護者としてのそれだ。
女としては見た事がない。
手を出してどうこう、と今まで考えた事はない。
「・・・抱きしめて、欲しくて」
けれどアヤの手は、ムサシの内心の葛藤など知らずに彼に絡みつく。
鼻孔を擽る香りに、喉が干上がる程興奮してしまう。
彼女は、女として極上の存在と呼んでいいだろう。
外見もさることながら、内面でも。
けれど年長者の意地で、彼女の誘惑を突っぱねようとしたのに。
「厳さん」
「・・・っ」
すり寄る身体、近づく唇。
ムサシを力ずくで陥落しようとする仕草は、まさに悪魔で。
けれど触れる身体が幽かに震えていて。
大胆でいて繊細、剛胆でありながら臆病。
いくつも異なった面を惜しげもなく見せながら、アヤはムサシに迫る。
親友の子供としてではなく、ただ一人の女として。
二十年、年を経てもほとんど変化のなかった男の腕に飛び込んできた悪魔の娘。
けれど悪魔と呼ぶにはあまりにも柔らかく、切なく甘く強請るその声に。
ムサシは迷いを振り解くように瞼を閉じ、次いで―――その身体をきつく抱きしめた。
華奢な女なら悲鳴を上げたその力にも、アヤはうっとりと笑ってみせただけ。
誂えたようなその身体を抱きしめながら、この後の悪魔の不機嫌を思って、少しだけムサシは苦笑した。
***
なんだか急にアヤが出てきてムサシとの進展を脅し懇願されたので書いてみました。
うーん、・・・なんだかヒル魔さんの気分に近いようで、あんまり笑顔で祝福出来ませんぞ!(笑)
「どうしました? そんなにお腹空きました?」
小首を傾げてそんなことを尋ねる物だから、そんなことはないと告げると再び料理に戻る。
背は高い。自分とは数㎝しか差がない。
髪は金髪、生まれながらではないが瞳が青いために生来の物のように似合っている。
身体は細いながらしっかり肉もあり、出るところはちゃんと出て、メリハリが利いている。
顔は天使のそれと悪魔のそれを重ね合わせて柔和にしたようで。
有り体に言えば、非の打ち所のない美女。
眉目秀麗、文武両道。
学校内のみならず、全国区でファンが大勢いる事を知っている。
それが、何をトチ狂って二十才も年上の男のところに料理を作りに来ているのか。
もう見慣れる程に回数を重ねる来訪。
近頃では部活が休みの度に現れてはムサシを出迎えるのだ。
ムサシはため息をつく。
「やっぱりお腹空いてますか? ちょっと待ってて下さいね」
途端に反応を返すアヤにムサシはそうじゃなくて、と告げた。
「アヤ、家に帰れ」
「厳さんとご飯食べたら帰りますよ」
きょとんと小首を傾げられる。
「そうじゃない。前々から言おうと思っていたんだが―――」
話が長くなりそうだと察知して、アヤはガスを止め、ムサシの前に立つ。
「はい」
じっと澄んだ空のような瞳がムサシを見つめる。
幼い頃から変わらない、美しい色だ。
「アヤは何のつもりでここに来てるんだ」
「何のつもり、って」
ふわ、とアヤの頬が赤くなる。
そうすると一層色香の漂う表情に、ムサシは眉を寄せた。
「私は、厳さんが好きなんです」
ご存じでしょう、と赤い顔のまま言われ、ムサシは厳しい顔つきになる。
幼い頃から再三にわたって彼女はそう口にしてきていた。
最初は幼さ故の憧れだけだろうと踏んでいたのに、最近は真実みを帯びてきているとは判っている。
「何を好きこのんで父親と同じ年の男を・・・」
「そんなの、私にだって判りません」
アヤは一歩も引かず、ムサシを見つめる。
「たまたま、好きになった人が父と同じ年だっただけです」
それにムサシは更に眉を寄せる。
「年が離れすぎている。俺はアヤをそんな風には見られない」
「っ」
悪魔の娘なら、理詰めで説得したら納得するだろう。
そう踏んでいたムサシは畳みかけるように更に続ける。
「アヤは若いし、綺麗だ。こんなオヤジのところに無駄に来るんじゃない」
アヤはその言葉にきっと顔を上げる。
「年の事を理由にしないで下さい」
「一番真っ当で大きな理由だろう」
「だって!」
アヤは一歩ムサシに歩み寄る。
青い瞳が薄く涙に潤み、けれど強い光はそのままだ。
おもむろに彼女の手がムサシの手を取る。
細いけれど、『女』の手。
ムサシが思わず手を引こうとしたが、それを許さない。
「私、大きくなりました」
約束通り、とアヤは続ける。
それは幼い頃、十年も前に口にした約束。
つい先日思い出したムサシは歯がみするが、アヤは頓着せず続ける。
「年の差は、もう今更どうしようもないけれど、この十年ずっと待って、ここまで大きくなったんです」
ムサシの手を自らの胸に抱き、アヤは言いつのる。
「まだダメなんですか? 十年経っても、二十年経っても、まだダメだ、って言い続けるんですか? 年の差が縮まる事は絶対にないのに!」
ムサシは手を引こうとしたが、アヤはそれを許さない。
制服のシャツ越しに感じる、体温。
柔らかい身体は既に女としての弧を描き、十年という時の大きさを思い知る。
あんなに幼くて、遠かった視線が今は近い。そう、近すぎるくらいに。
「理由を付けて追い出しますか? 拒絶するんですか? ・・・私は、厳さんの側にいたくて、釣り合いたくて」
押し黙るムサシの身体に縋る、細いが鍛えられた身体。
見上げてくる瞳が、唇が、近い。
思わずムサシの喉が鳴る。
彼女の事は嫌いではない。むしろ好きだと言える。
だがそれは保護者としてのそれだ。
女としては見た事がない。
手を出してどうこう、と今まで考えた事はない。
「・・・抱きしめて、欲しくて」
けれどアヤの手は、ムサシの内心の葛藤など知らずに彼に絡みつく。
鼻孔を擽る香りに、喉が干上がる程興奮してしまう。
彼女は、女として極上の存在と呼んでいいだろう。
外見もさることながら、内面でも。
けれど年長者の意地で、彼女の誘惑を突っぱねようとしたのに。
「厳さん」
「・・・っ」
すり寄る身体、近づく唇。
ムサシを力ずくで陥落しようとする仕草は、まさに悪魔で。
けれど触れる身体が幽かに震えていて。
大胆でいて繊細、剛胆でありながら臆病。
いくつも異なった面を惜しげもなく見せながら、アヤはムサシに迫る。
親友の子供としてではなく、ただ一人の女として。
二十年、年を経てもほとんど変化のなかった男の腕に飛び込んできた悪魔の娘。
けれど悪魔と呼ぶにはあまりにも柔らかく、切なく甘く強請るその声に。
ムサシは迷いを振り解くように瞼を閉じ、次いで―――その身体をきつく抱きしめた。
華奢な女なら悲鳴を上げたその力にも、アヤはうっとりと笑ってみせただけ。
誂えたようなその身体を抱きしめながら、この後の悪魔の不機嫌を思って、少しだけムサシは苦笑した。
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なんだか急にアヤが出てきてムサシとの進展を
うーん、・・・なんだかヒル魔さんの気分に近いようで、あんまり笑顔で祝福出来ませんぞ!(笑)
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性別:
女性
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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