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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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淵の蜘蛛

(ムサシ視点)

※お題『女郎蜘蛛』で作成


+ + + + + + + + + +
ヒル魔の姿を見ていて、どこか違和感があった。
「・・・?」
けれど、なんとも言い難い、ような。
ヒル魔はそんな俺に、ただにやりと口角を上げただけだった。

違和感は日ごと募る。
けれど、どこが変わったというわけではない。
見た目にも、誰も気づかないようで。
ただ、違和感だけが。

何か。


コーヒーを淹れてくれた姉崎の指先に、絆創膏。
「どうしたんだ、それ」
「ああ・・・針を刺しちゃったのよ」
「針?」
「ええ」
その時の姉崎の表情は何とも表現しがたかった。
ただの笑顔だったはずなのに、なんで、あんなに違和感が。


部活を終えて着替えている最中、ふと。
俺はヒル魔を見た。
その時、唐突に気づいたのだ。
彼のシャツ、そのボタンを止める糸の色が違う。
本来白であるべきところが、黒。
ほんの僅かに染みを付けるように、黒い糸でボタンが縫いつけられている。
しかもそれはボタンの全てではない。
俺の視線に気づいたヒル魔は、やはり笑った。
にやり、と。

日ごと夜ごとにボタンは繋ぐ糸を変える。
白かったそれは段々と黒く。
けれどヒル魔は何も言わない。
同時に姉崎も、また。

なあ。
その糸はなんなんだ。
なんでそんなに小さく、けれど着実に変化していくんだ。
耐えられず尋ねた俺に、ヒル魔は唇に薄く笑みを掃き、口を開いた。
「淵の蜘蛛の伝説を知ってるか?」
それに俺は眉を寄せる。
淵の蜘蛛。
淵の側にいる者に静かに糸を掛け続け、ついには中に引きずり込む魔物。
姉崎が、蜘蛛?
少しずつ、少しずつ捕らえようと足掻くその様を、蜘蛛だと?
あの青い瞳を持つ、柔らかな風体の彼女を、そんな風に表現するのか、と。
微妙な顔をした俺の前で、ヒル魔はにたりと口角を上げる。
鋭く尖った牙が鈍く光った。
獲物を捕らえようとする鋭い眼光と共に嘯く。
「逃げようと思ったときには、もう遅い」

それは自分の事か、それとも彼女の事か。



それから随分と時は流れた。
高校も卒業し、今は学生の頃の友人と連絡を取り合うなんてそうそうない。
俺は今、あの二人がどうしているか知らない。
そして真に淵の蜘蛛がどちらなのか、俺は未だに判らない。
ただ一つ言えるのは、あの時、あの二人はどちらも不幸ではなかったのだろう、ということだけ。


・・・それで十分なはずなのに。



どこか遠くで、暗く水音が響いた。


***
昨日(おととい?)絵チャの最中に想像力をかき立てられる絵をお描きになられた方がいらっしゃいまして(鶉さん素敵でした!)、その場の流れで「『女郎蜘蛛』というお題で一本書いてみよう」ということになり、書いてみたものです。

創作意欲を刺激してくださった絵チャ参加者の皆様、構ってくださってありがとうございます!
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