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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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インナモラーティ(4)



+ + + + + + + + + +
地面に掘った穴でぱちぱちと燃えさかる炎に、整った字が並んだ封筒が放り込まれる。
それが煙になって重く雲が立ちこめる空に登っていく様子を、なんとはなしにヒル魔は眺めていた。
不意に風に吹かれた煙が彼の顔に掛かる。
それにヒル魔は眉を寄せた。
「泣くの?」
間髪入れずに聞こえた声に、視線を下げる。
そこには今日は雲に覆われていて見えないはずの空色。
澄んだ綺麗な青が笑みを浮かべてヒル魔を見つめていた。
「誰が泣くか」
「なんだ、残念だわ」
まもりは肩をすくめ、新たな手紙をそこに放り込んだ。


そう、手術は無事成功したのだ。
二割という成功率の低さをかいくぐり、まもりは再びこの世で目を覚ました。
だから今燃えるそれは、出す事がなかった手紙。
約束通り自力で部室にやってきたまもりは、ヒル魔に手伝って貰ってそれを自らの手で燃やしていたのだ。
「ねえ」
「ア?」
「約束の話、なんだけど」
「見せただろ、優勝杯」
「や、それじゃなくて、もう一つの方の!」
強請る声に、ヒル魔はにやりと口角を上げる。
「どうぞ、仰ってクダサイ」
「好きよ、ヒル魔くん」
躊躇うかと思ったら、まもりは意外にあっさりと告げて笑顔を見せた。
「聞いてくれてありがとう」
「おー」
手紙はあっという間に燃え尽きた。それに用意しておいたバケツの水を掛けると、作業は終了だ。
掘ったときに残しておいた土をそこに被せる。
手際よく片づけていくまもりを見ていたヒル魔は口を開く。
「おい」
「え、何?」
「返事はいいのか」
その言葉にまもりはきょとんとした顔をして、その後に笑った。
晴れ晴れとした笑顔。
「聞いてくれただけでいいのよ」
まもりはぱんぱんと手を叩き、立ち上がる。
「今までありがとう」
「ア?」
「私、病院に戻らないと」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「完全なる自己満足だな」
「うん、ごめんね」
それを否定せず、まもりは微笑んだ。
「今日は付き合ってくれてありがとう。元気でね。・・・さよなら」
そのまま躊躇いもせず背を向け歩き出したまもりの背後で、盛大な舌打ちが聞こえた。
そして。
「待て、まもり」
「ッ!!」
一度も呼ばれた事のない名を呼ばれ、まもりは思わず振り返る。
じっと彼に見つめられ、まもりは動けない。
ため息混じりにヒル魔が近寄った。
「なんで返事も聞かないで勝手に終わらすんだか」
「だって・・・」
呆然とヒル魔を見上げる頬に、涙。
それを指で拭われた。
「だって?」
「・・・迷惑でしょう?」
「なんでそう思うんだ」
まもりは困ったように沈黙する。
ヒル魔がどう思っているかは判らないが、もしまもりがヒル魔の立場だったら困ると思うのだ。
病弱でろくに会えないような女がただ好きだと告げて、更にその先を願ったとしたら。
好きな相手でも付き合うのは躊躇うだろう。
ましてや好きでもない、ただ便利に使えた主務というだけの存在では。
今は彼の長年の夢だったクリスマスボウルも制覇したのだ。
その主務という存在も、今は必要ないはずだ。
「そもそも、ヒル魔くんは私のことなんて好きでもなんでもないでしょ? だから・・・」
それにヒル魔は目を丸くした。
珍しい彼の表情に、まもりも言葉が途切れる。
「・・・ど、どうしたの」
「そういやそもそもが『話を聞く』だったな。何かと思ったら、そういう訳か」
「え?」
なるほど、と一人納得しているヒル魔に、まもりは戸惑う。
「何がなるほどなの?」
「俺は何とも思ってない奴相手に時間割く程暇人じゃねぇよ」
するりとヒル魔の腕がまもりの身体を捕らえる。
気づいたときにはヒル魔の腕の中にすっぽりと包まれていた。
咄嗟に離れようと胸に手を突いたが、彼の腕はまもりを捕らえて放さない。
「え、ちょ・・・っ」
「好きだ」
「はっ?!」
至近距離から聞こえた言葉に、まもりは驚き彼を見上げた。
「勝手に人の気持ちまで決めつけるんじゃねぇよ」
真摯に見つめられ、まもりは唇を震わせる。
「いいの? 私、前と同じで、早々ここには来られないのよ?」
手術は成功したが、完治したわけではないのだ。
これからも入院生活は長く続くだろう。完治までの道のりはまだまだ長いのだ。
「ここに・・・側には・・・いられないのよ?」
彼の胸に当てた手が震える。
それにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「行くぞ」
「え、どこに」
ぐい、とヒル魔はまもりを伴って歩き出す。
その手を繋いで。
「病院」
それにまもりは瞠目する。
「え、なんで」
「テメェが回復するまでの間に部活も引退したしナァ」
にやり、とヒル魔が笑う。
「これからはテメェのところに俺が行ってやる」
「!」
そうしたら、『側』にいられるだろう? そう言外に言われて、まもりは俯いた。
繋いだ手から届いた振動に、ヒル魔は無言でハンカチを渡した。
「・・・ヒル魔くんからハンカチ渡されるなんて、想像出来なかった」
そのハンカチを握りしめ、泣きながらも笑うまもりに、ヒル魔はケ、と短く笑う。
「想像と現実が隔たっているのは世の常だ」
「うん、そうね」
―――でも、その結果がこの位置なら、私、生きていて本当に良かったと思えるの。
涙で切れ切れのまもりの言葉を耳にしながら、ヒル魔は至極満足そうにその隣を歩いた。

ゆっくりと、確実に。



***
ブログカウンターで80000を踏んでくださった悠様リクエスト『ヒルまもパラレル』でした♪
ベッタベタの少女漫画風を、ということだったのですが、出来てますかね~。病気で心臓云々の病状は詳しくないで全て捏造ですが、まあありがちな設定ということで・・・(苦笑)
最後がどうしても「好きです!」「俺もだ!」とかで終わらなくて予定より長くなってしまいました。

このお話は悠様に捧げます。リクエストありがとうございましたー!! 
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