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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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インナモラーティ(2)




+ + + + + + + + + +
さて。
期日と定められた日に、まもりの姿は泥門高校の前にあった。
けれど制服姿でもないまもりは勝手に中に入っていいものか迷ってしまう。
じろじろと校門から出てくる人には見られている気がするし、何か囁き合っていたりもする。
実際にはここらで見た事もないような美女がそこに立っている、というので皆興味を持っただけなのだけれど。
ふと、そこに他校の制服を着た少女が通りかかった。ローラーブレードを履いた、颯爽とした子である。
そして彼女はまもりを見つけると、じーっと凝視してきた。
「・・・?」
思わずまもりは会釈してしまう。
そうすると、彼女はまるで猫がしっぽを立てたかのような状態でさあっと近づいてきた。
「あの、もしかして、『姉崎まもり』さん?」
「えっ、なんで名前、知ってるんですか?」
驚くまもりに、彼女はにっこりと笑う。
「やー! 私、透糸高校一年の瀧鈴音! セナに聞いてたから知ってるの!」
「セナ、に」
「そう! 妖兄と初対面で喧嘩したって聞いてたから、どんな人かと思ってたけど・・・」
再びじーっと眺められて、まもりはいたたまれない気持ちになる。
「あの・・・」
なにか、と問いかけようとした時に彼女はぱっと笑顔になった。
「やー! セナの言葉は間違ってないね! スゴイ美人!!」
「えっ」
鈴音は、衒いのない言葉に真っ赤になるまもりの手をとった。
「アメフト部の部室はこっちだよ」
「でも、あの、私こんな格好で・・・」
「大丈夫! だって私もこの格好だし」
元気いっぱいの鈴音に手を引かれ、まもりはようやく泥門高校の校門をくぐれた。
けれどぐいぐいと引かれて少々姿勢が辛い。
「あの、・・・瀧さん?」
途端に彼女は眉をきりりとつり上げた。
「名字で呼ばないで!」
「きゃっ!」
飛んできた声に、まもりは首をすくめる。
大声を出した事に気づいた鈴音は、困ったように笑った。
「・・・私、同じ年の兄さんがいるんだけど、それがすんごいバカなのね」
「そ、そうなの?」
「だから一緒にされたくなくて。そもそも名字で呼ばれるとややこしいし、下の名前で呼んで欲しいの!」
「ええと・・・じゃあ、鈴音ちゃん?」
「やー! そう! ね、私はまも姐って呼んでいい?」
くりくりと大きな瞳で見つめられて、まもりは思わず顔をほころばせる。
「ええ、いいわよ」
「やったー! じゃあ、まも姐みんなに挨拶しようよ!」
「え、ちょ、あ・・・」
グラウンドでは既にアメフト部の練習が始まっていた。
こっそり纏めておいたデータとビデオを置いて帰ろうとしていたまもりを鈴音は逃さず、グラウンドまで引きずっていく。
その様子に気づいたらしいセナが土煙を上げて走ってきた。
「まもり姉ちゃん?! ホントに来たの!?」
その言葉にまもりはおずおずと尋ねる。
「・・・来ちゃダメだった?」
「え、いや! そんなことはないけど! でも、身体・・・」
「少しなら大丈夫よ」
本当に? と心配そうなセナに笑って頷く。
病気で入院しているとはいえ、寝たきりという訳ではないので、多少なら問題ない。
「ねえ、ヒル魔さんはいるの?」
「え? ええと・・・」
きょろ、とセナが視線を巡らせた次の瞬間。
「出来たか」
「きゃっ!」
背後から伸びてきた手が、まもりが持つ書類を取り上げる。
「糞チビ、練習に戻れ」
セナはまもりとヒル魔を交互に見たが、じろりとヒル魔に睨まれて心配そうにまもりを伺いつつ練習に戻った。
「・・・どう?」
ヒル魔にぺらぺらと纏めた書類を捲られるのを、じっと見つめてしまう。
飄々としていた顔が、にやりと歪んだ。
「初めてにしちゃまあまあだな」
「そう・・・よかった」
にっこりと笑ったまもりは、これで用が済んだとばかり鞄からビデオを取り出してヒル魔に差し出す。
「ア? なんだ」
「なんだ、って・・・ビデオ。備品でしょ? お返しするわ」
それにヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「テメェが持ってろ。次の試合は今週の日曜だ」
「・・・え?」
「手ブレしねぇように撮影の練習しとけ」
「え、え?! ちょっと、何それ?!」
焦るまもりにヒル魔はにやにやと笑うばかり。
「まさかあれ一回だと思ったか?」
「ええー?! そんな、私、泥門高生でもないのに!」
「問題ネェ。テメェを糞主務に任命してやろう」
主務、という聞き慣れない言葉にまもりは首を傾げる。
「今回やったような敵チームの分析が主な仕事だな」
「え、誰もやるなんて言ってない・・・」
けれどまもりの呟きを聞かず、鈴音が目を輝かせて飛んできた。
「やー!? 主務?! 主務ゲットなの?!」
「おー。これでビデオ当番はなくなるな」
その声に練習の手を止めた他の面々も近寄ってきた。
「ハ? 女が主務?」
「ハァ? 他校生か?」
「ハァアア?! なんでマネージャーじゃねぇんだよ!」
自分より大きな人たちに囲まれたが、セナに聞き知ったハァハァ三兄弟だと判って笑顔になる。
「ええと、左から戸叶くんに十文字くんに黒木くん、で合ってる?」
「「「え?」」」
なんで名前、と呟く三人はヒル魔に追い立てられる。
「休憩じゃねぇんだぞ、さっさと練習再開しやがれ!」
「なんでマネージャーがいねぇんだよー」
「そっちの方が深刻だぜー。そっちになってもらえよー」
「なんで俺らの名前知ってんだよー」
わあわあと騒ぐのを聞いて困惑するまもりに、隣にいる鈴音が苦笑する。
「ここ、主務もマネージャーもいなくて。たまに私がマネージャーみたいなことしてるだけなの」
でも私は盛り上げ隊長で、チアリーディングがメインだからあんまりやれなくて、と言われて感心する。
幼い外見とは裏腹に、随分としっかりした子のようだ。
「ふうん」
「ビデオは持ち回りだったけど、事務関係はみんな妖兄がやってたんだよ」
「妖兄?」
「やー。あの人のこと。蛭魔妖一っていう名前なんだよ」
「・・・なんだかすごく見た目に不良みたいだけど」
「やー? でも頭すっごくいいんだよ。ラスベガスのカジノでブラックジャックやって、二千万勝ったし」
「はっ?! ラスベガス?! カジノ?!」
「うん。夏休み中走ってアメリカ横断したの。その最後に必要でねー」
「え?! 走って横断?! っていうか、なんで二千万!?」
「あのねー・・・」
鈴音が語るのは、夏休み中はアメリカで特訓した、としか言わなかったセナたちの実状で。
アメリカ横断とか、カウンティングとか、そんなことって出来るの!? と驚くまもりの耳が聞き慣れない音を拾った。驚き向けた視線の先では、騒ぐ部員を前に銃口を点に向けて撃つ姿が・・・。
「銃!?」
「あ、うん。妖兄の私物」
「私物?! モデルガンよね!?」
「ううん本物」
「えええ!? そんな、・・・っ」
鈴音の台詞にいちいち驚いていたまもりは、不意に胸を押さえた。
「・・・ぅ」
「・・・まも姐?」
白い顔が青くなり、その場にしゃがみ込んだ。
しまった、と思うがもう遅い。
驚く事が多すぎて興奮しすぎてしまった。
「まも姐!? やー、大丈夫?!」
それを見たセナが駆け寄ってくる。
「まもり姉ちゃん!」
「ごめ・・・」
「いいから休んで。薬は?」
「持ってる・・・」
「部室で・・・ヒル魔さん、僕、部室に行ってきます」
歩ける? と尋ねられて頷き、セナの肩を貸りて歩き出す。
部室の椅子に座らせてもらって、水を渡される。
「発作、久しぶり・・・」
薬を嚥下してほっと息をついたまもりに、セナは眉を寄せる。
「興奮しすぎたんじゃない?」
「そう、かしら」
「こないだの喧嘩の時も見ててひやひやしたし・・・気を付けないと」
「うん・・・ごめんね。セナ、練習戻っていいわよ」
「え、でも」
まもりの顔色はまだ悪い。
それでもまもりは笑って見せた。
「大丈夫よ。少し休んだら帰るから」
「・・・無理しないで。辛かったら寝てていいからね」
「うーん・・・」
お世辞にも部室は綺麗とは言えない。
ほこりっぽいし汗くさいし。
それでもセナの言葉に頷いて見せると、彼はほっとしたように練習へと戻っていった。
ここで横になるのはまず無理だ。
確かにコレではマネージャーを欲しがる部員の気持ちはよくわかった。
身体が丈夫ならマネージャーもやるんだけどな、とまもりは残念に思う。
しばし休憩して、どうにか調子が戻ってくる。
大丈夫かな、とゆっくり立ち上がってまもりは部室の扉を開けて外に出る。
途端に至近距離に立っていた人にぶつかってしまった。
「ぶ」
「何やってんだ」
その声に顔を上げると、そこには眉を寄せたヒル魔の姿。
「あ、休憩?」
「違ェ。ストップウォッチ取りに来たんだよ」
「そう・・・あ、ごめんなさい、今どくから・・・っ」
離れようとしたまもりの身体がふらりと傾ぐ。
ヒル魔はそれを咄嗟に支えた。
「・・・どこか悪ィのか」
「う、・・・まあ、その・・・」
言葉を濁すまもりに、ヒル魔は眉を上げただけでその手を放す。
「主務が出来ねぇならそう言え」
「え・・・」
ごそごそと部室を漁りながら、こちらを見もせず彼は続ける。
「身体が悪ィなら仕方ねぇだろ」
言われて、まもりはぎゅっと胸を押さえる。
生まれつき心臓が弱く、学校にもろくに通えず。
運動は当然出来ず。
今まで友達も出来なかった。
いや、作ろうとしなかった。
最初から諦めて、他人と関わろうとしてこなかった。
全部身体を言い訳にして、今まで生きていた。
・・・でも。
もし、この仕事が出来るなら。
「・・・主務やったら部員のみんなと仲良くなれるかな?」
ヒル魔が振り返り、片眉をぴんと上げる。
「やってみても、いいかな?」
やりきれるかどうかは判らないが、やりたいと素直に思えた。
こんなことは初めてだ。
それにヒル魔は探し出したストップウォッチを持って部室から出てくる。
不安そうに見つめてくる青い瞳を見て、まもりの頭をぐしゃぐしゃにかき乱した。
「きゃ! ちょっと!」
「やれ」
「え」
「諦める前に、やれ。ダメなら仕方ねぇがな」
ケケケ、と特徴的な笑い声を上げて去る彼の背を見ながら、手櫛で髪を整える。
ほんのり顔が熱いのは熱が出てきたからだ、と言い訳をして、まもりは病院へと戻っていった。


<続>
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