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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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インナモラーティ(1)

(ヒルまもパロSS)
※まもりが病弱な設定で、泥門高校ではありません
※その他の面子は原作と同じです


+ + + + + + + + + +
抜けるような晴天。
そこを楕円形のボールが飛んでいく。
視線を少し下に向ければ、緑色のフィールドが広がっている。
そのボールを追って走り抜けるのは赤いユニフォームを着た男達。
いや、まだ少年と呼んでも差し支えない年齢の者たち。
その中にいる、一際小さな人影を追っていく。
幼なじみの、小早川セナ。
姉崎まもりは、観客席で高校アメフトの試合を観戦していた。
生まれつき心臓が悪く、ほとんど学校にも行けないままだったまもりを、幼い頃から実の姉のように慕ってくれている存在。群を抜いて早い彼の姿に、幼い頃の軟弱さを知っている身としては、少し不思議なような、けれど誇らしいような。
飛びかかってくる相手をくぐり抜け、ゴールラインを越えるその姿に目を細める。
こんがりと日に焼けた腕を見比べて、いつの間にか小さく細いだけだった身体が逞しくなったのを改めて実感したのは昨日の事。
そこまで彼が嵌るアメフトってどんな競技なのだろう。
雑誌を見ても、ビデオを観ても、セナが語る彼自身の熱っぽい試合の様子は伝わらない。
だから、直接見てみたくて。
まもりは今日、病院から久しぶりに出て来たのだ。
外出自体は制限があるものの、禁止されてはいない。
けれど自主的に外に出たがらなかったまもりの突然の申し出に、医師は目を丸くしていたけれど。
外はまだまだ暑さが残っていて、じわりと汗が滲む。
まもりは一人、客席の端の方で試合観戦をしていた。
ルールは勉強してきたから、解説が無くても試合の流れは判る。
流れが判れば試合はより面白い。
そして何より、熱中するセナの姿にまもりは時折日傘から手を放しそうになるほどに集中していた。
試合はセナ達の方が終始優勢だった。
再び攻撃権が移り、響く声は味方のQBのもの。
あれが噂の『ヒル魔さん』ね。
まもりが視線を向けた先には、体躯のいいメンバーの中では細すぎるようにも見える男がいる。
あの細い身体で鋭いパスがよく投げられるものだ。
まるでレーザーみたいなんだよ、というセナの言葉通りだと思えた。

試合が終わった後、セナは身支度もそこそこに客席にいたまもりの元へと駆けてきた。
「まもり姉ちゃん」
「セナ! 勝って良かったわね!」
笑顔で祝福すると、えへへ、と照れたように笑う。
そんなところは昔から変わっておらず、まもりは笑みを深める。
「この後はどうするの?」
「次に対戦するのがこの試合で勝った方なんだ」
セナが示した先では、別のチームが既に試合を開始していた。
「だから、この試合をビデオに撮るんだよ」
「そうなんだ」
ビデオを片手に真剣に試合を見るセナに、まもりは逡巡する。
実は外出許可の門限が迫っているのだ。
病院はここからさほど遠くないが、あまり遅くなって心配されるのも困る。
アメフトの試合時間が思ったより長かったので、予定より押してしまったのだ。
だから一人で帰る旨を告げようと口を開こうとした瞬間。
「おい、糞チビ」
別方向からのとんでもないことを言った声に、まもりは発言のタイミングを逃した。
視線を声の方向に向けると、そこには見た事もない外見の男が立っていた。
あ・・・悪魔。
思わずそう内心で呟いてしまった。
逆立つ金髪、尖った耳、そこに光る二連のピアス。
顔つきは鋭利で、触れたら切れそうな雰囲気を醸し出している。
まもりは生まれてこの方、これほどに特殊な外見の男を見た事がなかった。
「はい、ヒル魔さん、なんですか?」
けれど平然とセナは返事をしたのだ。
こ、これが『ヒル魔さん』なんだ・・・。
セナは試合の事は色々教えてくれていたけれど、彼の個人的な情報については特に言っていなかった。
というか、言えなかったのだろう、多分。
「テメェ今回のビデオ当番だろ。ちゃんと撮っておけよ」
「は、はい。・・・ええと、どこを撮れば・・・」
「糞! おら、今の陣形見ろ! あのあたりからボールの流れを追え」
「はっ、はい!」
指示に慌てるセナの様子に、まもりは立ち上がり、つかつかとヒル魔の前に立つ。
「ちょっと、後輩に指示を出すにしてももうちょっと言い方ってあるでしょ!」
「・・・ア?」
唐突にセナとの間に割って入った女に、ヒル魔は目を丸くする。
「大体その呼び方! そのふぁ・・って失礼だと思うわ!」
困惑したような様子で、ヒル魔はまもりの背後のセナを呼ぶ。
「・・・おい糞チビ、なんだこいつ」
「ま、まもり姉ちゃん・・・」
青い顔をして背後から呼ぶセナに、まもりはきっと視線を向ける。
「セナも、嫌な呼ばれ方したら怒らないとダメじゃない!」
「えっ、いや、その・・・」
「ケケケ、糞チビを糞チビと呼んで何が悪ィんだ」
にやりと口角をつり上げ、尖った牙を見せられて内心怯んだが、表には出さずまもりはぴしりとヒル魔に指さした。
「ダ・メ・で・す! 名前にはちゃんと意味があるんだから、そんな変な呼び方許しません!」
「ホー? 人の事指さすような糞女に説教かまされてもナァ」
「な・・・またふぁ・・・なんて! 失礼よ!」
「どっちがだ、糞女」
わあわあと喧嘩するのをオロオロと見ていたセナだったが、試合を見ている観客の歓声に慌ててビデオを構える。
そちらも気になるが、このビデオを撮っておかないと後々みんなに迷惑が掛かってしまうのだ。
白熱する喧嘩にセナは冷や汗を浮かべるが、止められない。
「私には姉崎まもりっていう名前があるの! そのふぁ・・・なんて呼ばないで!」
「煩ェな、初対面でよくそんだけ人に文句言えるもんだ」
「回数は関係ないでしょ! 失礼な人に失礼って言って何が悪いの!」
「糞優等生気取りめ。そんな生白い顔してるくせにアメフト判んのか?」
「な! ちゃんと勉強したもの、判るわよ!」
ホー、と眉を上げるその顔が楽しげに変化した。

すっかり帰りが遅くなってしまって、まもりは医師や看護師に怒られていた。
「まったく、大丈夫だったからよかったものの・・・遅くなるようなら連絡しなさい」
「すみません」
謝るほかにやりようがない。医師に次は気を付けるように、と告げられて病室に戻る。
まもりはベッドに腰掛けると、鞄からあるものを取り出した。
それはビデオ。
今まで何回もセナとビデオでアメフトの試合を見ていたまもりは、要点がどこか、どこを見ればいいのかを理解していた。一緒に見ていたはずのセナよりもまもりの方が的確に試合を見ているという事実に気づいたヒル魔が押しつけたのだ。そしてその場で指示通りにビデオを撮らされ、その分析まで命じられた。
「信じられない・・・」
よく見て研究してこい、と彼は笑った。
学校はどこだ、と問われて咄嗟に答えられなかったまもりに、彼はそれ以上は言わずに泥門高校と、その部室の場所を教えた。
『データを纏めたら持ってこい。最低でも明後日までにだ』
『明後日?! え、なにそれ?!』
『期日厳守』
にやりと笑った彼は更に一言追加した。
『ああ、それとも糞優等生様にはアメフトなんて難しくてムリデスカ?』
それにまもりはかっとなって言い返してしまったのだ。
『出来るに決まってるでしょ!』
気づいたときには手にはビデオが収まっていた。
「ああ言っちゃったしなあ・・・」
まもりは病気で学校に通えないため、通信教育を受けている。
けれどそれだけでは日頃の暇をもてあましがちなので、これはまあ、丁度いい暇つぶしとも言える、かもしれない。
明日、さっそく取りかかろう。
そう決めてまもりはベッドへと潜り込んだ。

<続>
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