忍者ブログ
旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

* admin *  * write *  * res *
[506]  [505]  [509]  [508]  [503]  [502]  [501]  [504]  [500]  [498]  [499
<<10 * 11/1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  *  12>>
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

碧き浄天眼(3)



+ + + + + + + + + +
カフェオレを手に、まもりはヒル魔を見つめた。
「私、普段は何してたの?」
それにヒル魔は片眉をぴんと上げる。
「仕事してたんでしょ? 公私ともに、って言ってたものね」
「そうだな」
「どんなことしてたの?」
「今のテメェじゃ何も出来ねぇよ」
知識も、経験も、何もない十五の頃の彼女では。
言わんとする事に気づき、まもりはしゅん、と俯いた。
どうしようもないことだ。
まもりが悪いわけでも、ヒル魔が悪いわけでもない。
ヒル魔はおもむろに立ち上がる。
「?」
「出掛ける」
「え、・・・今から?」
もうすぐ時刻は十時。まもりは慌てて共に行くべく立ち上がろうとしたが。
「いい。テメェはベッドで寝てろ」
指さされたのは寝室。まもりが二度目を覚ました場所だ。
「一応言っておくが、この部屋から出るなよ。出た後の安全の保証はねぇからな」
「う、うん」
何しろここは犯罪大国アメリカなのだ。比較的周辺の治安はよさそうだったけれど、夜ともなればまた話は違うのだろう。
ヒル魔がふらりと外へ消えてから、まもりは深々と息をつく。
正直、彼がいなくて助かった。
室内をざっと見渡しても、ベッドがあるのはあの一室だけだったのだ。
先に寝てしまえばとりあえず気まずくないだろう。
目が覚めて隣に彼がいたらどうしようか、と考えるが、他に行くあてがあるわけもない。
・・・とりあえず、何かされそうになったら全力で抵抗しようと決めて、まもりは自分の着替えが入っていると教えられたチェストへと近づいた。


ヒル魔は車に乗り、あてどなく走らせる。
そしておもむろに時刻を確認し、路肩に車を止め、電話を掛けた。
『はい、もしもし?』
柔らかい声が電話口から聞こえてくる。
まもりに似た、けれど別の声。
ヒル魔はきつく眉を寄せて俯いたが、迷いを振り払うように口を開いた。
「―――もしもし」

このベッドで目が覚めるのは三回目。
まもりはうーんとのびをして起きあがった。
ぺたりと床に足を降ろして、そこではたと気づく。
「・・・ヒル魔くん?」
ベッドには他に誰もおらず、リビングへと顔を出す。
けれどそこにもヒル魔の姿はない。
室内をくまなく探しても、彼の姿はどこにもなく、また彼がいたような形跡もなかった。
急に心細くなる。
彼が気まぐれにこの場所を後にしてしまえば、この国にまもりの知り合いは誰もいないのだ。
祖母がいたはずだけれど、今もまだ健在かどうかは判らない。
そこでまもりははたと気づいた。
両親。
いくら日本から全てを捨てて出てきたと言っても、実家と連絡を全くとらないという訳でもあるまい。
ヒル魔もまもりの母親に確認したと言っていたし。
まもりは電話を探したが、見あたらない。
「電話くらいありそうなのに・・・」
「生憎とここには携帯しかねぇよ」
「っ!?」
唐突に背後から聞こえた声にまもりは驚き飛び上がる。
そこにはにやにやと笑うヒル魔の姿。
「え、な・・・」
「固定電話なんざ今時必要ねぇからな」
渡されたのはシンプルな白い携帯電話。
「へえ、携帯って随分小さくなるのね」
「おー」
技術の躍進はすごいということか、とまもりは感心してそれを見る。
「これで国際電話も掛けられるの?」
「掛けられるが、向こうは真夜中だぞ」
「あ、そっか」
時差を忘れていた。そんなまもりから離れて、ヒル魔は何か探している。
「昨日、一晩中いなかったの?」
「ああ」
「何してたの?」
「ヒミツ」
ケケケ、と笑われてまもりはむっと眉を寄せる。
しかし空腹を思いだし、朝食の準備をすべくキッチンへと向かった。
その様子をちらりと見て、ヒル魔は探し当てた物をそっと自らの懐に隠した。

二人で過ごすようになって二日目。
とはいえ、特に何をするわけでもない。
家事は二人しかいないから大して溜まらないし、掃除は常日頃自分がやっていたようでそう汚れてもいない。
家族に連絡をしようにも日本はまだ真夜中、今電話をするわけにもいかない。
ぺらぺらと雑誌をなんとはなしに捲っていたまもりはふと思い出したようにヒル魔に問いかけた。
「そういえば、私と結婚したときに結婚式とかしたの?」
ヒル魔は銃の手入れをしつつまもりを見る。
「ア? してねぇよ」
「・・・なあんだ」
あからさまにがっかりしたまもりに、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「どんなウェディングドレス着たのか見たかったのに」
「ホー」
「でも以外だわ。私なら本当に色々形式張ったことしたがりそうなのに」
「ホホー」
けれど目の前の男相手では一般的な形式美など何一つ通用しそうにない。
事実そうだったのだろう。そうであれば、彼の手にも己の手にも嵌る指輪だけが異質に見える。
入学前からとかく派手な外見だったけれど、そういえば彼はピアスの他はアクセサリーを付けていた事はなかった。
それだけ特別だったんだろうか。
記憶を失う前の自分という存在は。
ヒル魔はふらりと立ち上がる。
そのまま何かしらの荷物を纏めているようだ。
「どこか行くの?」
「おー。仕事だ」
「仕事?」
今オフシーズンじゃないの? というまもりの疑問にヒル魔は唇を歪めただけで答えない。
「三日留守にする」
「三日も!?」
がしゃん、とまもりの前に置かれたのは先ほどまでヒル魔が手入れをしていた銃。
「もし外に出るようなら必ず持って行け。いざとなったら撃て」
「い、嫌!」
「姉崎」
低く冷たいその声に、まもりはひゅ、と息を呑んだ。
「いいか、ここはアメリカだ。テメェの身はテメェで守るしかねぇ」
恐る恐るその銃を手に取るとそれはずっしりと重かった。
鉄の重さ。オモチャではあり得ない冷たい感触にまもりはぞくりと背を震わせる。
「一つ、教えて」
「ア?」
「普段から私はこれを持って歩いていたの?」
「一人の時はな」
「・・・そう」
まもりはそっと銃をテーブルに戻した。
その様子を見ていたヒル魔はまもりに財布を渡す。
「え、これ」
「どこかに行くにしても金ねぇと無理だろ。現金とカードだ」
「こんなに?!」
一見しただけで驚愕するような金額にまもりは目を丸くする。
「全部持ち歩く必要はねぇだろ。適当に使え」
「あ、そうか。ありがとう」
ヒル魔はそのまますっと姿を消した。
まもりは財布と銃を前に、しばし考える。
ここがアメリカのどこかは判らないけれど、家族に電話したらきっと知れるだろう。
そうしたら観光がてらどこかに出掛けるのもいいかもしれない。
けれど。
冷たい銃を持つのだけは躊躇われ、まもりはやはり出掛けるのはやめることにした。
夜になれば実家に電話して、色々と母に聞こう。
そう決めて、とりあえず財布と銃を寝室のチェストにしまったのだった。


<続>
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

管理人のみ閲覧可能にする    
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
カウンター
プロフィール
HN:
鳥(とり)
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。

【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
最新コメント
[01/05 鳥]
[01/05 NONAME]
[10/21 NONAME]
[10/11 坂上]
[10/02 坂上]
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
アクセス解析
フリーエリア
powered by NINJA TOOLS // appeal: 忍者ブログ / [PR]

template by ゆきぱんだ  //  Copyright: hoboniti*kotori All Rights Reserved