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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ウロボロスの痣

(創/聖/の/ア/ク/エ/リ/オ/ンっぽいヒルまも)
※15000HITお礼企画作品

+ + + + + + + + + +
遠い昔、世界を創世したという大いなる神がいた。
その神から最初に生み出された古代種と呼ばれる妖魔たちがいる。
古代種の妖魔たちは永遠の命と若さと力、全てにおいて完璧に作られたが、生殖能力はなかった。
そして長く生きたが、ただ生きることに飽きた彼らは己の外見を元に生殖能力を持つ人を作り出した。
地上には今、古代種と人という二種類の知能生物がいる。
古代種は人を眷属とする能力があり、その眷属になると永遠を共にするという。
数千年前には古代種と眷属対神で大規模な戦争があったと聞く。

けれど今、古代種は姿を現すことなどなく、空想上の生き物として捉えられていて。
その存在を信じる者は誰もいない。

「まもりー、こっち出来たよ!」
「はーい! 今行きます!」
「おーい、ネェちゃん酒持ってこい!」
「こっちも! 追加だ!」
「はいはーい!」
騒がしい食堂兼居酒屋、という場所でまもりと呼ばれた少女はくるくると働いていた。
慣れた様子で大量の料理を運び、酒を運んで乱雑な人とテーブルの隙間を縫い、空いた皿を片づける。
「いやぁやっぱりまもりがいると違うねぇ!」
恰幅のいいマスターとその女将が豪快に笑ってまもりの肩を叩く。
「本当に助かるよ! どうだい、正式にウチで働かないかい?」
「・・・ごめんなさい、長くは働けないの」
すまなそうに謝る少女に、これ以上は無理強いできなくて、二人は渋々引き下がる。
この少女は不思議な存在だった。
この村で生まれ、早くに両親を亡くし一人で暮らしている割には博識で、様々な知識で彼女は皆を助けた。
彼女を怪しい者と忌む人もいたが、大多数は好意的だった。
誰もが彼女を嫁として、または働き手として欲しがった。
しかし短期間の労働ならともかく、長期間となると彼女は途端にそれを拒む。
そしてこの村から出ようともしない。
「・・・でも、そろそろまもりも十六だろ? 嫁に行く気はないのかい?」
この村の適齢期は十五、六。
もう彼女は結婚してもおかしくない年なのだ。けれどまもりは曖昧に笑うだけ。
背後ではこっそりと聞き耳を立てている若い男たち。
彼らは皆まもり目当てで、あからさまに手を出そうとする者もいたが、彼女は笑ってそれをいなすだけだ。
「待ってるのよ」
「何を?」
その続きを聞こうとしたマスターに追加注文が入る。まもりはくるりと踵を返し、人々の中に戻ってしまった。
「一体なんだろうね?」
「さあ。・・・白馬の王子様を待つ、っていうのかしら」
高望みなんてしてはいけない。
いくら美貌があっても、年が行きすぎては嫁のもらい手などつかないのだ。
いつか美しさなど色あせる。だから妥当なところで手を打つように周囲は勧めるのだ。
まもりは美しいしそれを特段鼻に掛けているわけでもないのに、なぜだか首を縦に振らない。
「不思議な子だよ」
今も視界の隅で、彼女は笑顔で接客していた。


仕事が終わり、帰宅しようとするまもりの手を引く人がいる。
彼はこの村一番の働き手で、まもりに再三結婚を申し込んでいる青年、十文字だった。
「俺と、結婚して欲しい」
「ダメよ」
まもりはきっぱりと、とりつく島もなく断る。ギリ、と歯がみする青年に、まもりは微笑む。
「私は貴方とは結婚できないわ」
「なんでだよ! どうして・・・」
次の瞬間、まもりの身体を漆黒の闇が覆った。
「そりゃ簡単だ」
低く、滑らかな男の声。それは闇から聞こえてきた。
「こいつは俺の花嫁だからナァ」
・・・いや、闇だと思ったのは、マントだった。それを纏った男は、怜悧な光を宿す妖しい存在。
その腕の中で、まもりはとろりと笑み崩れた。
誰の前でも見せたことのない、心より幸せそうなその顔に、十文字は愕然とする。
「待たせて、ごめんね?」
まもりの囁きは、切ない程の愛しさに震えていて、聞く者の胸を締め付けるような響きを含んでいる。
「ああ。・・・だが、お前がここにいればいい」
まるで壊れ物を扱うように丁重に、男の腕がまもりを抱きしめた。
「・・・あんた、何者だ」
男はまもりを放さぬままあっさりと正体を口にする。
「古代種」
「・・・ハァ?!」
伝説の存在、古代種。
それがなんでこんな辺鄙なところで、まるでまもりと旧知の仲だ、と言わんばかりなのか。
まもりはこの村から出たことはないし、こんな男は今までまもりの周辺で、いや近隣の村でも見たことはない。
混乱する彼に、まもりの声が届く。
「言い伝えの歌があるでしょう? わたしはその歌の少女なの」
まもりの青い瞳が瞬く。
男の手がまもりの服の背の部分を十文字に見せつけるようにはぎ取った。
「・・・!!」
その背には不可思議な文様の痣。その文様を知らない人はこの世にはいない、と言わしめる程のそれが彼女の背にある。
伝説のウロボロスの文様。
「そ、んな・・・まさか」
伝承の歌がある。
 
『遠い昔、古代種の男が一人の少女に恋をした。
彼女はその穢れ無き魂で彼の全てを愛したが、時の戦争が少女の命を無惨にも奪い去った。
男は命の儚さを思い、涙に暮れる。
けれど魂は巡る。
一度目は記憶もなく場末の女として。
二度目は記憶を持ったが為に短命の少年として。
三度目は記憶を持ったが歪んだ運命に飲まれ姿を消した少女として。
古代種の男は怒り狂った。なぜ彼女ばかりがこのような目に、と。
そしてその原因は明らかとなる。その魂に干渉し、運命を弄んだ神がいたのだ。
古代種の男は戦争を起こし、とうとう神を殺してその力を得て。
神と同等の力を持った古代種の男に、死と再生の象徴であるウロボロスの文様を魂に刻みつけられ、生まれ変わっても記憶を持ち続け二度と彼から逃げられないようになった、悲劇の少女。 
背中には必ずウロボロスの痣が浮かび上がるという』

「だったら! なんで、そいつを・・・ッ」
忌まわしいのなら、そんなことはやめてしまえ、と言いたかったのに、男の声がそれを阻んだ。
「伝承は時を経て歪む。真実はそんなに悪いもんじゃねぇ」
愛おしそうにまもりの背を撫でる男の顔が満たされたように笑む。
十文字はもう一つ、古代種の伝承を思い出す。
彼らは人間を眷属にすることが出来る。永遠を共にすることができる眷属に。
ならば眷属として永遠を共にしたらいいのに。
そうしたら二度と離れないのに。
そんな十文字の心を見透かしたように、うっとりとまもりは笑った。
「・・・永遠を共にするのは簡単よ。でもダメなの。私たちはこうやって生きるのよ」
まもりが男の首に腕を回した。きつく、強く。
「もういいか?」
「うん。連れて行って。・・・ヒル魔くん」
ざあっと風が吹く。
呆然とする十文字の前から、二人は唐突に姿を消した。
後には引き裂かれた服の破片が風に散るばかり。



まもりが姿を消して、村は騒然となった。
けれどどこを探しても彼女はいなくて。
彼女が一人で住んでいた部屋からは旅に出るという簡単な手紙が残されていた。
やがて人々はまもりのことを徐々に忘れていった。

十文字は教会へと足を運ぶ。
神を殺した古代種を崇める教団のそこに、ステンドグラスが嵌め込まれている。
逆立った黄金の髪を持ち、尖った牙と耳。その姿は神を殺したからか、その前からか。
ウロボロスの痣を背に持つ少女を抱き寄せる古代種は邪悪に笑い、まさに呪われた存在のように見えた。
少女も悲痛な顔をしてその腕に抱かれている。
でも。
あの時の二人は、あんな顔じゃなかった。
満たされたような、愛おしいという言葉はあの状態そのものなのだ、とまもりに恋い焦がれた十文字にさえ思わせるほど美しい笑みを浮かべていた。
今は戦争も起きていないし、平和な世の中だ。
彼女は他人にその命を奪われることなく、生を全うできるだろう。
しかしいずれ死は訪れる。そうして彼女が瞳を閉じたら、彼はきっと泣くのだろう。
泣いてまた彼女が生き変わるのを待って、そうしてまた迎えに行くのだろう。
主と眷属になることでは満たされない何かを、永遠に二人は続けていくつもりなのだ。

彼らがどこに行ってどこでどのように生きるかは知らないけれど。
けれどせめてその道行きが安らかでありますように、と、十文字は一人祈った。

***
コメ様リクエスト『創/聖/の/ア/ク/エ/リ/オ/ンの歌詞のようなイメージでの、西洋の戦争を背景としたようなパラレル(ヒルまも)』でした~。コメ様には他にもいくつかリクエスト頂いているので、間に他の方のを挟みつつアップする次第です。ご了承下さい。

創/聖/の/ア/ク/エ/リ/オ/ンについては全く知らなかったので参考のために歌詞を読んだら、このネタが浮かびました。実は某PC18禁ゲームのネタを使って書いてます。でも肝心のタイトルやキャラ名、その他すっかり忘れてしまって、ストーリーだけ覚えていたのですが・・・なんてタイトルだったかなぁ・・・6年くらい昔のです。借り物だったし貸してくれた人とはもう疎遠なので聞くことも出来ないのです。うーむ。
そして十文字くんが完全当て馬です。他に丁度いいキャラが居なかったので・・・ごめんね十文字くん・・・。
リクエストありがとうございましたー!!

コメ様のみお持ち帰り可。
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