旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
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大学に入って初めてサークルの飲み会の誘いが来たとき、まもりは自分が未成年だから酒を飲まされることはないだろう、と高をくくっていた。遅くとも十時前には帰れるだろう、とも。
だから飲み会に行くというのをヒル魔には伝えるのさえ忘れていて。
当日行く直前になって思い出して連絡したのだ。
だから飲み会に行くというのをヒル魔には伝えるのさえ忘れていて。
当日行く直前になって思い出して連絡したのだ。
『アァ?! テメェ何ほざいてやがる! さっさと帰ってこい!!』
脳天に突き抜けそうな怒声に、まもりは一瞬電話を遠くに放した。
ヒル魔が怒鳴り尽くしたのを見計らって耳に当てる。
ヒル魔が怒鳴り尽くしたのを見計らって耳に当てる。
「だってもう参加します、って約束したもの。大丈夫よ」
『テメェは何を根拠に大丈夫だっつってんだ?』
唸るような声で言われても、まもりは一度した約束を破るつもりはない。
「何かあったらヒル魔くんが助けてくれるでしょ。ちなみに飲み会は大学側の『フライパン』よ」
『フライパン』とは大学側のイタリアンの店なのだが、和洋中なんでも出てくる。
こないだのオススメメニューは刺身の盛り合わせにエビチリという無国籍状態。
とはいえ一応ピザが一番美味しいのでイタリアンの店という看板は偽りではない。
こないだのオススメメニューは刺身の盛り合わせにエビチリという無国籍状態。
とはいえ一応ピザが一番美味しいのでイタリアンの店という看板は偽りではない。
『だから何なんだ、その自信の根拠は!』
「んもう、そんなに怒ることなの? 私はお酒飲まないわよ、未成年だし」
思ったままを伝えると、ヒル魔は少し沈黙した。
『・・・だからテメェは糞甘臭ェっつってんだよ』
そしてため息。と、背後から友人が声を掛けてきた。
「まもり? もう行くよ~」
「あ、はーい! 今行くね! というわけでヒル魔くん、行ってきます!」
『ッテメ、人の話を・・・』
ぷち、と通話ボタンを押すとまもりは電話を鞄に放り込んだ。
普段からマナーモードになっているそれは鞄の奥底で早速震えている。
だがまもりは気にせず友人たちの後に続く。
普段からマナーモードになっているそれは鞄の奥底で早速震えている。
だがまもりは気にせず友人たちの後に続く。
何しろ飲み会というのがアメフト部の打ち上げを除けば初めてなのだ。
まもりはわくわくしながら会場となった店へと向かった。
まもりはわくわくしながら会場となった店へと向かった。
こぢんまりとした店一杯に学生が座っている。会長の挨拶が終わると、早々に皆が酒を飲み出した。
まもりもビールを渡されるが、慌てて断る。
「だ、だめよ! 未成年だもの」
それを聞いて、隣に座っていた女の先輩が一瞬目を丸くして、その後大笑いする。
「やっだ~、姉崎さんってばそんな堅いコト言っちゃだめよ! ほら、みんなだって飲んでるんだから!」
「え・・・」
言われて見渡せば、そこには既に赤い顔をしている面々がいる。
ピッチャーで生ビールがどんどん運ばれ、まるで飲むより浴びる、という表現の方が適切じゃないかと思わせるくらいの勢いだ。
ピッチャーで生ビールがどんどん運ばれ、まるで飲むより浴びる、という表現の方が適切じゃないかと思わせるくらいの勢いだ。
「あ、でもビールだったら苦くて飲みづらいかな。はいあんず酒ソーダ割り!」
ぽん、と目の前に置かれたそれにまもりは逡巡する。
酒を飲んだことがないとは言わないが、大して強くない自覚がある。
ましてやヒル魔にあれだけ飲まない、と言った手前口を付けるのは躊躇われる。
酒を飲んだことがないとは言わないが、大して強くない自覚がある。
ましてやヒル魔にあれだけ飲まない、と言った手前口を付けるのは躊躇われる。
「はい、手に持って! はい、乾杯!」
先輩は中ジョッキの生ビールを一気に煽ってしまう。
「っはー! やっぱ美味しいわ!」
それがあまりにも美味しそうで、まもりも恐る恐るグラスに口を付ける。
思ったより甘くて飲みやすいので、ほっと肩の力を抜いて飲み込んだ。
思ったより甘くて飲みやすいので、ほっと肩の力を抜いて飲み込んだ。
「ほら、美味しいでしょ? すみませーん、おかわり下さ~い!」
再びなみなみと注がれたビールを片手に上機嫌な先輩に勧められ、まもりは少しずつ、でも確実に酒を飲み始めた。
しばらくすると、隣で座っていた先輩は移動してしまい、別の男が座っている。
気が付けばまもりの周囲は男たちばかりになっていた。
気が付けばまもりの周囲は男たちばかりになっていた。
「いや~、姉崎さんって綺麗だね! どこから来たの?」
「東京です」
「へぇ、わざわざこっちに来はったんか! あっちにも大学ぎょうさんあるのに、なんでこっちなん?」
「この大学の学部に興味があって・・・」
「姉崎さんの下の名前って何?」
「まもりです」
「まもりちゃんかぁ・・・カワイイね。漢字でどう書くの?」
「まもりちゃん、次は何飲む? 今度はカクテルとかどう?」
「東京からってことは、今一人暮らし? どこに住んでるの?」
「バイトとかせぇへんの? いいとこ知っとるし、紹介するで」
わいわいと周囲で騒がれ、まもりは身体を小さくしてどうにか移動しようと目論むが、男たちはまもりをぐるりと囲んでしまっていて、身動きが取れない。
質問攻めになってまもりは困ってしまう。酒と熱気で頭がぼうっとしている。
質問攻めになってまもりは困ってしまう。酒と熱気で頭がぼうっとしている。
気分は悪くないが、このままではまずいかも、とようやくまもりは自分がかなり危ない場所に来ていることに気が付いた。
「なぁなぁ、まもりちゃんキスしたことある~?」
「うっわ出たよキス魔! きもいから寄るな!」
まもりが二杯目のグラスを空けたくらいの時間で、周囲はもうとんでもなく酔いつぶれ始めている。
雲行きが怪しくなってきて、まもりは逃げだそうと思ったが、他の女の子たちはまだまだ元気にはしゃいでいる。
携帯を取り出して助けを求めようにも、鞄は男たちの背後にあった。
「・・・あの、鞄を取りたいんですけど・・・」
まもりが意を決して腕を伸ばすと、その腕を男の一人が掴んだ。
「まもりちゃん彼氏いるの~?」
「俺と付き合おうよ~」
「いやいや俺と!」
酒の勢いもあって、周囲は変な風に色めき立っている。
まもりはどうにか逃げようとするが、男の手は外れそうにない。
まもりはどうにか逃げようとするが、男の手は外れそうにない。
「は、放して下さい」
「放して下さいって~そんなカワイイ声で言われても~」
酔っぱらいたちはへらへらと笑うばかりで全く頓着しない。
ああもう! こんなことなら参加しなければよかった!!
まもりが内心でヒル魔に後で謝ろう、と思っていたら男の一人が顔を近づけてきた。
生理的な嫌悪でまもりの腕に鳥肌が立つ。
「ちょ・・・」
酔った勢いでのし掛かってくる男に、まもりが本気で暴れようとした瞬間。
「なに人の女に手ェ出してるんだ糞野郎どもが」
地獄の底から響いてきそうな低い声。
耳慣れた声に、まもりはこんな時なのに唇を綻ばせてしまった。
「んなっ?!」
「ヒ、ヒル魔?!」
「なんでヒル魔がここにおるん!?」
呆気にとられつつもまもりを放さない男の腕を容赦なくヒル魔の足が踏みつける。
「ぎゃっ!!」
やっと解放されたまもりの腕を、今度はヒル魔が掴んで抱き寄せて。
「・・・ッ!!」
深々と、キス。
それはそれは濃厚なキスに、周囲の空気がぴきんと音を立てて凍り付く。
「っ・・は・・・っ」
散々に咥内を蹂躙されたまもりが、すっかり息を乱してヒル魔に縋りつく。
「やっぱり酒飲んでんじゃねぇか、この糞バカ女」
「ご、めん・・・」
ヒル魔はそのまままもりを軽々と両腕で抱き上げ、まもりの鞄を手にする。
呆然と見送る面々をぐるりと見回して、ヒル魔はにたりと笑った。
「テメェらのツラ、覚えたからな」
そのポケットから取り出されたのは黒革の手帳。それに一同の顔から音を立てて血の気が引いた。
入学してからさほども経っていないが、あの手帳の威力は誰もが知るところなのだ。
それを開いてニヤニヤと眺め、青ざめる男たちを見下ろして。
「・・・二度とコイツに手ェ出すんじゃネェぞ・・・?」
こくこくこくこく。
全員が壊れた人形のようにがくがくと首を縦に振る。
それを見てヒル魔はふん、と鼻を鳴らし、まもりを抱えて店外に出た。
まだまだ人通りのある道をヒル魔はまもりを抱いたまま歩いていた。
いわゆるお姫様抱っこ状態で、まもりは恥ずかしくて仕方ない。
「・・・ヒル魔くん、下ろして・・・」
「テメェ実際歩けねぇだろうが。歩かせて足捻られちゃ面倒だ」
「う」
まったくそのとおりだった。
飲み慣れないアルコールはまもりの足取りを覚束なくさせている。酒と羞恥とでまもりの顔は真っ赤だ。
「ったく、相変わらず糞甘臭ェ女だ」
「・・・ご、ごめんなさい」
「これに懲りたら飲み会は参加するんじゃねぇぞ」
「はーい・・・」
言われなくてももう参加したくない。もっとも、今回のことを聞いて呼んでくれる子がいたらの話だけれど。
「うん、でもホント、ありがとうね、ヒル魔くん」
「礼をするなら別の形にしやがれ」
「別の形?」
首を傾げるまもりの頭上に、ニヤニヤと笑ったヒル魔の顔が見える。
「とりあえず今夜は寝かさねぇ」
「えぇ?!」
その目が思いがけず本気で、まもりはさあっと青ざめた。酒の高揚感などもう微塵も残っていない。
「は、放して! 許して!」
「オヤオヤ人聞きの悪い。俺は当然の権利を主張したマデデスヨ?」
なんたってわざわざまもりを迎えに行き、害虫駆除をして、今こうやってまもりを抱えて歩いているのだ。
対価は支払え、とヒル魔はにやりと笑った。
なんたってわざわざまもりを迎えに行き、害虫駆除をして、今こうやってまもりを抱えて歩いているのだ。
対価は支払え、とヒル魔はにやりと笑った。
「だ、だって!」
じたばたと暴れるまもりをもう一度抱え直し、ヒル魔は囁く。
「・・・そんなに暴れるなら、ここで早速始めるか?」
「え?! いや、それはちょっと!! 家に行こう、家に!」
「家ならイインデスネ。YA-HA-!!」
「きゃー! きゃー! ちょっとー!!」
翌朝。というかもう昼近く。
ぎくしゃくとする身体では身動きも取れず、まもりは未だベッドに横たわってる。
「もう・・・お酒なんて・・・飲みたくない・・・」
そんな風に呻くまもりとは対照的にすっきりした顔をしたヒル魔は、ケ、と小さく笑った。
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5/18 15:25 「大学生~様リクエスト『大学生で飲み会に連れ出されたまもちゃんを迎えに来るヒル魔(同棲中)』でした。これはあっさり書き上がりましたね~。何が楽しかったかったかって、よく判らないながら書いた関西弁。フライパンは私の家の近所にある大学の側に実在します。ご存じの方が居たらご近所さんです!
リクエストありがとうございましたー!!
5/18 15:25 「大学生~様のみお持ち帰り可。
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5/18 15:25 「大学生~様リクエスト『大学生で飲み会に連れ出されたまもちゃんを迎えに来るヒル魔(同棲中)』でした。これはあっさり書き上がりましたね~。何が楽しかったかったかって、よく判らないながら書いた関西弁。フライパンは私の家の近所にある大学の側に実在します。ご存じの方が居たらご近所さんです!
リクエストありがとうございましたー!!
5/18 15:25 「大学生~様のみお持ち帰り可。
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
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【裏について】
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