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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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(ムサシ視点)

+ + + + + + + + + +
人には踏み込まれたくない領域というのがある。
だからそれに鍵を掛ける。
鍵を掛けて、見せないようにして、そうやっていくつもしまい込む。
誰にだってあるものだ。
きれい事だけで生きていけない世の中だから、誰もがそうやって鍵を掛ける。

なんの言葉遊びだったか。
鍵っていったらどんな形を思い浮かべるか、という話だった。
「あー、だったら俺あれ! あの数字合わすヤツ」
「ダイヤルロック、な」
「なんでだ?」
「えー、だってそれだったら数字だけ覚えてれば平気だろォ」
黒木がその話題に乗ってきて、十文字と戸叶が突っ込むと理由を語る。
なるほど。
「俺はコレ~」
「首から下げてるなんてどこのガキだよ!」
「いや猿だからだろォ」
「猿だ」
「ムッキィ~!」
それにモン太が加わって騒いでいる。
「何の話?」
姉崎の片づけを手伝っていたセナがひょっこりと顔を出した。
「お、セナ。いいとこに」
「なあなあ、鍵っつったら鍵の形なに浮かぶ?」
「鍵?」
唐突な話題を振られても、セナは真剣に考えているようだ。
「僕は・・・あのほら、ドアノブのところに押しボタンみたいになってる形のやつ」
「あー、トイレとかによくあるヤツな」
「そうそう」
「なんで?」
「え、いや、よく見かけるから」
わいわいと騒ぐ奴らの姿を眺めながら、俺も鍵を思い浮かべる。
「オッサンは?」
「ムサシさんはどんなのですか?」
「俺は・・・南京錠だな。古い感じの」
重厚な扉にありそうな、大きな南京錠。そう言われて連中はなるほど、と頷いている。
鍵というもの一つで様々に浮かべるモンだ。
「オラ糞ガキども! さっさと片づけて帰りやがれ!」
すぱーん! と相変わらず小気味よい音で扉を開いてヒル魔が入ってきた。どこに行っていたのか聞きたいところだが、きっと備品の点検でもしていたんだろう。体育館倉庫に姉崎ひとり行かせるにはあまり環境がよろしくない。虫除けとしては俺でも栗田でもいいが、その辺はまあ、目を瞑っておく。
悪魔の登場にわたわたと片づけをする一年たちを横目に、俺はふとヒル魔に尋ねた。
「なあ、お前、鍵って言ったらどんな形のを想像する?」
途端に後ろの一年たちが黙りこくった。・・・やっぱり興味があったんだろう。
「アァ?」
訝しげな声も、後ろが突然沈黙したことで何か察したんだろう。
「さっきな、その話で盛り上がった」
「くだらねぇことで盛り上がってるんじゃねぇよ」
そう言いながらパソコンを立ち上げてどっかりと椅子に座る。こりゃ今日も居残りする気だな。
最後にやってきた姉崎は心得たようにすぐにカウンターの奥へ向かった。
「・・・ディンプル」
「ん?」
「鍵っつったらそれだ」
ディンプル、という言葉に一年たちは一様に首を傾げた。俺は工務店の倅だから、当然そういったものも多少知っているが。
「どこからそういうのを聞いてくるんだ」
「ケケケ」
笑うばかりでヒル魔は答えない。
と、そこにコーヒーのいい香りが漂ってきた。
「はいどうぞ。ねえ、そのディンプルってなに?」
首を傾げる一年たちを見かねたわけではなく、その単語だけ聞きかじったらしい姉崎は純粋に質問している。
ヒル魔の視線がこちらに飛んできたので、俺は口を開いた。
「鍵の種類だ。何億通りも種類があって、複製はほぼ不可能」
「へぇ、そうなの」
「俺はヒル魔のことだから、きっと生体認証やら虹彩認証の鍵とか言い出すのかと思ったんだが」
「底が浅ぇよ」
ケ、と小さく笑って、その後ヒル魔は後ろでまだ残っていた一年たちに声を荒げる。
「さっさと帰れっつってんだろ! まだ気力があるっつーんなら、これからケルベロスを呼ぶが・・・」
「すっ、スミマセン! 帰りますー!!」
「お先に失礼シマース!」
「っした!」
「っす!!」
弾かれたように一年たちは部室を飛び出していった。まったく、と言わんばかりのヒル魔にもっと言いようがあるでしょ、と姉崎が突っ込む。
「鍵かあ・・・なんでそんな話になったんだろうね?」
「さあ。俺が入ってきたときにはもうその話だった」
「ふうん」
言いながら姉崎はエプロンを外した。もう仕事が終わったのだろう。ヒル魔はまだ終わらないようだ。
「糞ジジイもさっさと帰れ」
「ヒル魔くんは帰れないの?」
「区切りがついたら帰る」
「そう」
ヒル魔の視線がちらりとこちらに向いた。ああ、そういうことか。
「判った。姉崎、駅まで送る」
「え?!」
「もう外は結構暗いぞ」
「あ、うん」
じゃあちょっとこれだけ置いてくる、と言い置いて姉崎は外へ出た。畳んだタオルだから、ロッカールームに置きに行ったのだろう。
「なあ、さっきの話」
「あ?」
「ディンプル。お前のは誰が持ってるんだ?」
ヒル魔は返事もせずガムを膨らませる。
否定は雄弁に。肯定は沈黙を。
そんなヤツなのは何年も前から付き合いがあって知っているから。
「・・・ま、せいぜい鍵を投げ捨てられないように気を付けろよ」
「誰に言ってんだ、糞ジジイ」
ほどなくして姉崎が戻ってきて、俺と二人で部室を後にする。

「なあ、姉崎」
「なに?」
「鍵っていったらどんな形のを思い浮かべる?」
「鍵、ねえ・・・」
姉崎はしばし考えていたが、不意に顔を上げた。
「オートロックの鍵、ね」
「オートロック・・・」
それはまた。どうしてだろう。
「あのね、オートロックだったら開けるかどうかはこっちで決められるし」
にっこりと姉崎は笑う。
「来て欲しい人に鍵を持たせる必要がないでしょ?」
・・・ああ、そういうことか。
「その鍵がディンプルだったら間違いないな」
「そうね、複製不可なんて最高だわ」
そう笑う姉崎は俺の含みに気づいたのだろうか。頭のいい女だが、それを上回る天然だから。


ディンプルのオートロックで固められた場所が出来たら。
あの意地っ張りな悪魔も多少は安らぐことが出来るのだろうか。

南京錠がせいぜいの俺は、ただ耳に指を突っ込んだに止めた。

***
ウチのムサシさんはみんなのお父さんです。意地っ張りな長男ヒル魔さんに彼女が出来るかどうかを、女房役?のクリタンと温かく見守っています。とか言ってクリタン出てこないし!タイトルの「閂」が鍵と聞いたクリタンの連想、ということで(苦しい)。
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