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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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水面下

(ヒルまも)

+ + + + + + + + + +
蛭魔妖一という人は。
何でも出来る人、らしい。
部活も終わって着替えてパソコンを叩く横顔は疲労を感じさせない。
他の部員たちは結構フラフラになって帰って行ったはずなのに。
かといって彼が手を抜いたというのはなく、むしろ人一倍動いているはずだ。
私は皆が帰った後の部室掃除を終え、コーヒーを淹れる。
それを持っていく間もずっと彼のことを考えていた。
確かに勉強はとてつもなく出来る。
いや、勉強というべきだろうか。順位が出るテストでは常にトップだけれど。
いつ勉強してるのだろうかという疑問は、ブラックジャックでカウンティングしたり暗号を一見しただけで覚えた辺りの瞬間記憶力を知れば解決。
試合中に危機的状況に陥っても必ずいくつもの打開策を展開できる用意周到さもある。
彼の目の前にコーヒーを置いて、私も自分用のカフェオレを手に席に着く。
あとは部誌を書けば終わり。
今日の練習メニューを書き込みながら、先ほどから頭の中でぐるぐると回っていた疑問がとうとう私の口からこぼれた。
「・・・ヒル魔くんの出来ないことってないの?」
「あ?」
また変なことを言い出した、といわんばかりの返答だが、返事があったということは会話をする気があるということだ。
「だって勉強も運動もできるし、英語で会話も出来るし」
「糞マネの『出来ること』の範疇はそんなもんか」
「私の目に見えるところはそういう風に感じるの」
「ホー」
「でも、見えないところで何かないのかなーって思って」
「サアネ」
「あ、意外にベタに泳げないとか」
「泳げない人間なんていねえぞ。誰でも基本的に浮く」
「体脂肪率低そうだからそう思ったのに」
「糞マネほどの脂肪ならそりゃプカプカ浮くだろうなァ」
「失敬な!」
「失礼さで言ったらお前の方が格段に上だ」
「なんでよ」
「すぐ人の邪魔をする」
「そんなこと無いわよ」
「ホー? 今のこの会話はそれにあたらないと?」
「最初から嫌なら会話なんてしないでしょ」
「それこそお前の独断だ。心優しい俺が糞マネの暇つぶしにいちいち付き合ってやってるとなぜ思わない」
「優しいヒル魔くんなんてあり得ないし」
「その発言こそ失敬だ」
淡々と会話する。そう、こんな他愛ない会話もできてしまう。
人離れした外見で人付き合いも得意なんてずるい。
一体何が出来ないのだろうか。
「ねえ、本当に何が出来ないの?」
彼は鼻で笑った。
「もう黙れ」
口程には嫌そうな態度でなく、彼は先ほどからずっといじっていたパソコンにちゃんと向き直った。
もう会話は終了と言うことだろう。
私も手元の部誌を書き終えるべく集中しだした。

私が部誌を書き終えてペンを置くと、彼もパソコンを閉じたところだった。
空になったカップを洗って戻ると、もう彼の帰り支度は終わっている。
「お待たせ」
忘れ物がないかかるくチェックして、私は部室を出る。鍵を掛けて、彼が隣に並んだ。

「何でも出来るヤツなんていねぇよ」
私がまた他愛ないことを一つ二つ喋って沈黙が降りたところで、彼が口を開いた。
「え?」
「出来ねぇことがあるから、努力するんじゃねぇの」
それが先ほどの会話の続きだと判って、私は何度か瞬いた。
「・・・ヒル魔くんって意外に地味なことが好きよね」
「あ?」
「見た目に派手だし、言動もそうだけど、結局の所練習とか基礎体力とか言うじゃない?」
「基本だろ」
「もっとそういうところ、みんなに見せていけばいいのに。そうしたら、練習に一層熱入っていいんじゃないの?」
「いーんだよ」
「なんで?」
そう言うと、彼はケ、と短く笑って私の頭をぐしゃぐしゃにした。
「なにするのよ!」
「クリスマスボウルが終わったら覚悟しておけよ」
「は?」
もう、とぐしゃぐしゃになった髪を整えようとしていたら、とんと肩を押された。
気が付けばもう駅だ。彼はいずこかの自宅へと向かって歩き出していた。


私は時間的にもう人気のない電車に乗って、彼の会話を反芻する。
窓の外に見える明かりのどれが彼のものかは判らなかった。 


***
水面下で何が起きているのか判っているようで判らないもどかしさが書きたかったのです。
もどかしいのは私がすっきりと綺麗なSSが書けないところだ・・・!!(じたじた)
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