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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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趣味

(ヒルまもベース・泥門デビルバッツ)

+ + + + + + + + + +

東京大会を勝ち進むにつれ、練習は厳しさを増していく。
当然それに伴うマネージャー業務も忙しくなる。
チアの練習をしていた鈴音は、日が暮れたのを契機に皆を解散させてアメフト部へと顔を出した。
そこにあったのは、汗くさい布の山。それをまもりが大きな駕籠に入れている。
「あ、鈴音ちゃんの方は終わったのね」
「まも姐! なにこれー?!」
「洗濯物だよ」
後ろから顔を出したアイシールド21ことセナが一言で説明。
「セ・・・・・・こっちも終わったの?」
「単なる休憩中だよマイシスター! まだまだ僕たちの練習は終わらないのさ!」
「フーン」
アハーハー! といつもの調子な兄を冷たく一瞥して、まもりが抱える駕籠を覗き込む。
「やー!? でもちょっと、これひどーい!」
泥や汗だけならまだしも、血が飛び散っているものもある。
「あー、それ俺」
戸叶がひらひらと左手を振った。そこには厳重に包帯が巻かれている。
「トガの爪が剥がれたんだよォ」
止血で使ったタオルだそれ、と黒木が苦々しい顔をしている。
「左でまだよかった」
「こいつ漫画描けなくなるから右じゃなくてよかった、とか言うんだぜ」
十文字の呆れたような声に、セナが苦笑する。
いくらアメフトに熱中していても、他にも皆それぞれ趣味がある。戸叶にとっては漫画だろうし、栗田は食べること、黒木はゲームというように。
ヒル魔は早々に部員たちに休憩終了を告げる。
げーもうかよ、とか言いながらも全員渋るそぶりは見せない。
時間がない、と毒づくヒル魔のそれが嘘でも脅しでもなんでもなく、真実なのだと誰もが知っている。
誰もが焦ってもがいて戸惑っている。
日ごと夜ごとに押し迫る試合へのプレッシャーを払拭するには、結局は地道な練習しかないのだ。
オラオラ、とマシンガンを撃ちながら部室の外へと部員たちを向かわせるヒル魔の後ろで小さな声がした。
「きゃ!」
洗濯物の駕籠に頭から突っ込むような姿勢でまもりがこけている。
「何やってんだ」
「もうちょっと入るかと思って詰め過ぎちゃった」
えへへ、と照れ笑いするまもりにヒル魔は片眉をぴんと跳ね上げた。
「無精するんじゃねぇよ」
「そうよね」
あはは、となおも笑いながらまもりは散らかった洗濯物を拾い上げる。
それをヒル魔も一枚つまみ上げて駕籠に放り投げた。
「あ、いいよヒル魔くん、練習に行っちゃって」
「いっそ乾燥機買うか」
「え?! ううん、今の洗濯機だけで充分よ。汚れ物は漬け置きしないと洗えないし、買って貰うと全部片づけて帰りたくなるじゃない?」
「ほー」
「そう。だから乾燥機は必要ない・・・ってなんで電話! なんで注文?! いや要らないから! 要らないから!!」
「しばらく早く帰れねぇんだからがっつり洗濯してろ糞マネ」
「いやよっ!! なんでそうなるのー?!」
外では部員たちが所在なげに部室を伺っている。
「・・・先に練習始めちゃおうか」
「うん、そうしよう」
やがてヒル魔が戻ってくるのを待つよりは練習に励んだ方がいいと判断して皆グラウンドに出る。
「それにしても、アイツも素直じゃねぇよな」
「え? 誰?」
十文字の言葉にセナは首を傾げる。
「ヒル魔。部活終わっても敵の分析だのHP管理とかでアイツ結構居残るだろ」
「ああ、それは確かに」
「マネは片づけ終わったらアイツより先に帰ってるんだろ?」
「え、うん。僕と一緒の時が多いかな」
「ちょっとでも長く一緒にいたいってことだろ、あれ」
「え?! そ、そうなの!?」
おーい、早く練習始めようぜー、というモン太の声にセナはあたふたしながらそちらへと向かう。
そんな彼の背中を見ながら十文字も自分の練習を始めようと、黒木と戸叶がいる場所に足を向けた。
悪魔だなんだと言われてもヒル魔も人間なのだし、アメフトが人生の全てではないのだからその他に好きなことがあってもいいだろう。
「それがあのマネっつーのも趣味がいいというか悪いというか」
こちらに来た十文字の呟きを、戸叶が拾い上げる。
「ハ? なんだ、十文字。マネに惚れたか」
「ハァアア?! 水臭ぇな、そんなんなら言えよぉ」
便乗した黒木が食いついてきたが、十文字は苦い顔をするだけだ。
「バーカ、そんなんじゃねぇよ」
「どんなんだよ」
「人の趣味はよく判らねぇって話だよ」
そう言ってちらりと背後に視線を投げると、ようやく部室から出てきたヒル魔と後ろできゃんきゃん吠え立てるまもりの姿。
彼女は全校生徒から才色兼備、眉目秀麗、穏やかな微笑みは天使のようだと褒めそやされた美しき風紀委員のはず。
けれどアメフト部にいる間はそんな風には見えない。
しかもヒル魔はわざとそれを狙ってやっている。
完璧といわれる万人が受け取れる微笑みを必要とせず、素の彼女の表情を引き出すことを楽しんでいる。
そして彼女もその方がいきいきとして楽しそうに見えるのは錯覚ではないはずだ。
「ああ・・・」
納得したように二人が頷く。
「まあ、人の趣味に口出ししていいことはねぇよなぁ」
「そーそー。外野は放っておくに限る」
「だな」
だがそれが少々羨ましい、と思ったことは内緒だけれど。

***
セナのネタバレ前にした意味があったのだろうか・・・。書いておいて自分で理由がわからないです。
ヒルまもを外側から見るとこんな感じなんだろうなあというのが多分書きたかったのだと・・・。

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