旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
糞マネが正気を取り戻す前に、俺は左腕を糞マネに伸ばした。
利き腕じゃなくても糞マネ一人引きずり倒すなんて朝飯前だ。俺が立ち上がる勢いを使って、ベッドの上に糞マネを押し倒す。
「・・・え」
「いつまでも惚けてんじゃねぇよ、糞マネ」
俺は糞マネの身体を両足でまたいで上にのし掛かる。
呆然と見開く瞳がやっと焦点を結ぶ時には、糞マネは標本の蝶よろしく縫い止められていた。
「な・・・何ッ?!」
「何、じゃねぇよ。お前、俺に欲情したとか言ったじゃねぇか」
「え!? いや、その・・・そんな!」
真っ赤になって焦って逃れようとするが、そうはいかない。
寝不足で頭の回らない糞マネ一人押さえつけるのなんて腕一本でも楽なもんだ。
「一応確認しておくが―――」
にや、と殊更悪く見える表情で俺は糞マネの顔を覗き込んだ。
「お前は俺のことが好きなんだよな?」
「ええっ?! あ、いや、その・・・!!」
「違うなら違うって言え。同意もなくヤろうっつーほど餓えてねぇからな」
にやにやと笑いながら言ってやると、糞マネはぱくぱくと口を開閉させた。
「沈黙は肯定と取るぞ」
「・・あ・・」
糞マネは逡巡を見せたが、結局は黙り込んだ。長い睫が白い頬に影を落とす。
天上の青のような瞳が伏せられると、途端に人形めいた美貌が顕著になる。
なすがままの美しい蝶。
補食されるのを当たり前と思うような女ではなかったはずだ。
それが気にくわなくて、俺は糞マネの頭に額を軽くぶつけた。
「痛ッ!」
予想外の衝撃に驚いて瞳を開く糞マネに素っ気なく言い放つ。
「俺がお前をどう思ってるかは言ってねぇぞ」
それにさーっと糞マネの血の気が引いた。
そして今度こそ本気で俺の下から逃げようともがきだす。
「こら、待て」
「待たない! もう、帰る!!」
青ざめた顔で悲痛な声を上げる糞マネの頭の中が手に取るように判って、俺は表面上はしれっと、内心は苦笑しながら告げた。
「俺は好きでもない女をここまで連れ込まねぇし、髪を洗わせるなんざさせねぇ」
「・・・それって」
ぴた、と動きを止めて回転の鈍い頭から正解を導こうとするところに言葉を被せる。
「ただし、お前の想像するような糞甘臭ェような関係には今のところなれねえ」
「・・・え?」
「いいか糞マネ。今の俺はクリスマスボウルのことで手一杯だ。早く怪我を治して復帰しなきゃならねえ。判るな?」
「うん」
動きを止めてこちらを見るのは、混乱しつつも答えを探そうとする真摯な瞳。
「だからお前の先走った欲情はクリスマスボウルが終わるまで持ち越しだ」
「欲情って!」
「お前が言ったんだろ」
「ええー!? う、いや、あのその!」
「とりあえず、お前はもう寝ろ」
からかいを交えつつ、俺は糞マネの上から降りた。
糞マネの下から毛布を引き抜いて被せると、その隙間からひょこりと顔を出した。
「え、ヒル魔くんは?」
「寝不足なのはテメェだけだろ。俺は帝黒のデータ分析する」
ベッドから伸びてきた腕が、俺の左手を掴む。
「それは後で私がやるわ。だから」
「だから?」
毛布の隙間から覗く顔がまた赤い。
「だから・・・その、手、握っててほしいの」
消え入りそうな程小さい声が、隙間から漏れてきて。
俺は盛大にため息をついた。
「・・・この糞情緒不安定寝不足マネめ・・・」
「だ、だめ?」
俺はもう一度ため息をこぼすと、半ばヤケになって糞マネの手を握った。
糞マネの瞳が一瞬大きく見開かれて、その後それはそれは嬉しそうな顔になった。
・・・安上がりな女だ、と一瞬思ったけれど、それは口に出さない。
俺の自由を奪って満足げな糞マネは瞳を閉じた。
「おやすみ、ヒル魔くん」
「とっととと寝ろ」
「うん・・・」
ほどなく糞マネの呼吸がほどけて、眠りに引き込まれたのが判った。
すこすこ寝やがって。
誰かコイツに男の生理っつーもんを教えてくれねぇもんか。
先ほど飛び火した糞マネの欲情はまだ俺の中で渦巻いていて、しばらく収まる気配はない。
「ったく」
それでも、きっと口程には嫌そうな顔ではないだろうと自己分析しながら、糞マネと繋がっている左手を少し引く。
大人しく付いてくる糞マネの右手の腕の内側にそっと唇を寄せた。
きつく吸い上げて残した跡は、ささやかながら絶大な意思表示だ。
「手付けくらいは貰わねぇとな」
糞マネはそんなことに気づかず惰眠を貪っている。
「この腕が治って、クリスマスボウルが終わったら覚悟しろよ」
俺もこのままでは何一つ出来ないから俺も昼寝してしまおう。それくらいしか本当にやることがない。
糞マネの隣に身体をねじ込むと、さっさと眠るべく目を閉じた。
・・・これって、結構可哀想な状況じゃねぇのか、俺。
そんな別目線の俺自身の自虐的な呟きは、聞かなかったことにした。
***
ヤメピ様からの「ところで『地底の火』の後はどうなるの?」という素朴な疑問にお答えしようと書いてみたらなんだかすごくヒル魔さんが可哀想になってしまいました。最初は寝顔見ているだけだったので、せめて添い寝を許してあげようと思ったら更に可哀想なことに・・・!!(大笑)オアズケ喰った犬みたいですね、ホント。
利き腕じゃなくても糞マネ一人引きずり倒すなんて朝飯前だ。俺が立ち上がる勢いを使って、ベッドの上に糞マネを押し倒す。
「・・・え」
「いつまでも惚けてんじゃねぇよ、糞マネ」
俺は糞マネの身体を両足でまたいで上にのし掛かる。
呆然と見開く瞳がやっと焦点を結ぶ時には、糞マネは標本の蝶よろしく縫い止められていた。
「な・・・何ッ?!」
「何、じゃねぇよ。お前、俺に欲情したとか言ったじゃねぇか」
「え!? いや、その・・・そんな!」
真っ赤になって焦って逃れようとするが、そうはいかない。
寝不足で頭の回らない糞マネ一人押さえつけるのなんて腕一本でも楽なもんだ。
「一応確認しておくが―――」
にや、と殊更悪く見える表情で俺は糞マネの顔を覗き込んだ。
「お前は俺のことが好きなんだよな?」
「ええっ?! あ、いや、その・・・!!」
「違うなら違うって言え。同意もなくヤろうっつーほど餓えてねぇからな」
にやにやと笑いながら言ってやると、糞マネはぱくぱくと口を開閉させた。
「沈黙は肯定と取るぞ」
「・・あ・・」
糞マネは逡巡を見せたが、結局は黙り込んだ。長い睫が白い頬に影を落とす。
天上の青のような瞳が伏せられると、途端に人形めいた美貌が顕著になる。
なすがままの美しい蝶。
補食されるのを当たり前と思うような女ではなかったはずだ。
それが気にくわなくて、俺は糞マネの頭に額を軽くぶつけた。
「痛ッ!」
予想外の衝撃に驚いて瞳を開く糞マネに素っ気なく言い放つ。
「俺がお前をどう思ってるかは言ってねぇぞ」
それにさーっと糞マネの血の気が引いた。
そして今度こそ本気で俺の下から逃げようともがきだす。
「こら、待て」
「待たない! もう、帰る!!」
青ざめた顔で悲痛な声を上げる糞マネの頭の中が手に取るように判って、俺は表面上はしれっと、内心は苦笑しながら告げた。
「俺は好きでもない女をここまで連れ込まねぇし、髪を洗わせるなんざさせねぇ」
「・・・それって」
ぴた、と動きを止めて回転の鈍い頭から正解を導こうとするところに言葉を被せる。
「ただし、お前の想像するような糞甘臭ェような関係には今のところなれねえ」
「・・・え?」
「いいか糞マネ。今の俺はクリスマスボウルのことで手一杯だ。早く怪我を治して復帰しなきゃならねえ。判るな?」
「うん」
動きを止めてこちらを見るのは、混乱しつつも答えを探そうとする真摯な瞳。
「だからお前の先走った欲情はクリスマスボウルが終わるまで持ち越しだ」
「欲情って!」
「お前が言ったんだろ」
「ええー!? う、いや、あのその!」
「とりあえず、お前はもう寝ろ」
からかいを交えつつ、俺は糞マネの上から降りた。
糞マネの下から毛布を引き抜いて被せると、その隙間からひょこりと顔を出した。
「え、ヒル魔くんは?」
「寝不足なのはテメェだけだろ。俺は帝黒のデータ分析する」
ベッドから伸びてきた腕が、俺の左手を掴む。
「それは後で私がやるわ。だから」
「だから?」
毛布の隙間から覗く顔がまた赤い。
「だから・・・その、手、握っててほしいの」
消え入りそうな程小さい声が、隙間から漏れてきて。
俺は盛大にため息をついた。
「・・・この糞情緒不安定寝不足マネめ・・・」
「だ、だめ?」
俺はもう一度ため息をこぼすと、半ばヤケになって糞マネの手を握った。
糞マネの瞳が一瞬大きく見開かれて、その後それはそれは嬉しそうな顔になった。
・・・安上がりな女だ、と一瞬思ったけれど、それは口に出さない。
俺の自由を奪って満足げな糞マネは瞳を閉じた。
「おやすみ、ヒル魔くん」
「とっととと寝ろ」
「うん・・・」
ほどなく糞マネの呼吸がほどけて、眠りに引き込まれたのが判った。
すこすこ寝やがって。
誰かコイツに男の生理っつーもんを教えてくれねぇもんか。
先ほど飛び火した糞マネの欲情はまだ俺の中で渦巻いていて、しばらく収まる気配はない。
「ったく」
それでも、きっと口程には嫌そうな顔ではないだろうと自己分析しながら、糞マネと繋がっている左手を少し引く。
大人しく付いてくる糞マネの右手の腕の内側にそっと唇を寄せた。
きつく吸い上げて残した跡は、ささやかながら絶大な意思表示だ。
「手付けくらいは貰わねぇとな」
糞マネはそんなことに気づかず惰眠を貪っている。
「この腕が治って、クリスマスボウルが終わったら覚悟しろよ」
俺もこのままでは何一つ出来ないから俺も昼寝してしまおう。それくらいしか本当にやることがない。
糞マネの隣に身体をねじ込むと、さっさと眠るべく目を閉じた。
・・・これって、結構可哀想な状況じゃねぇのか、俺。
そんな別目線の俺自身の自虐的な呟きは、聞かなかったことにした。
***
ヤメピ様からの「ところで『地底の火』の後はどうなるの?」という素朴な疑問にお答えしようと書いてみたらなんだかすごくヒル魔さんが可哀想になってしまいました。最初は寝顔見ているだけだったので、せめて添い寝を許してあげようと思ったら更に可哀想なことに・・・!!(大笑)オアズケ喰った犬みたいですね、ホント。
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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