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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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一人にもしてくれない

(ヒルまもベースの三兄弟)
※ヤメピ様からいただいた三兄弟イラストから発想を得て。

+ + + + + + + + + +
蛭魔妖一と姉崎まもりがつきあい始めた、というのを朝練の後にセナの口から聞いたとき、俺は随分驚いた。
「ハァ? あいつらまだつきあってなかったのか?」
「アメフト部のみんなはそう言うよね」
苦笑いするセナに俺はそりゃそうだろ、と返す。
大体無自覚というのがおかしいくらい、あの二人はことあるごとに行動を共にし、互いを理解し合っていた。
傍目から見てもそりゃイチャイチャしてるっていうんじゃねぇのか、と何度突っ込みそうになったか。
多分あの悪魔は全部判っていて、マネージャーが自覚するのを待ってたんじゃねぇかな、と思う。
「・・・っつーことは、糞マネ呼ばわりはなくなるのか」
「多分そのままだよ。さっき会ったときもそうだったし」
「ハァ? 付き合っててもか?」
「そういうところで急に態度変える人たちじゃないと思うよ」
「それもそうだ」
急にラブラブになられても目のやり場に困る。春大会で引退とはいえ、色々引き継ぎはあるのだしこの先もあの二人との接点があるのは確実なのだ。
「・・・あの」
躊躇いがちなセナの声に、目線を下げるとこちらをじっと伺う目とぶつかった。
「? なんだよ」
「う、ううん。やっぱりいい」
慌てて首を振って、先に戻るね、と言って走られてしまえばさすがは光速のRB。追いつけやしない。
何が言いたかったんだろうか、と思いながら俺も戻る。
少々胸に何かが詰まったような気がしたけれど、それは黙殺した。


放課後もちらちらと話題の二人を見てみたけれど、結局いつもと変わらない。
よそ見するな、と銃弾が飛んでくるところまで同じ。
そういうところの線引きはきっちりするんだろうな、きっと。
けれどマネージャーがあいつを呼ぶときに、ほんのり頬を染めたのを俺は見てしまった。
直後にそんなマネージャーにデコピンかますヤツは悪魔に違いないが、それでも彼女は嬉しそうに見えた。
なんだか落ち着かない。
俺はあまり練習に身が入らない自覚がありながらも、それをどうしようもなかった。

「明日は午前中だけ練習。午後は休みだ」
「やったー!」
「久しぶりの休みだー!」
「おい十文字ィ、どこ行く?」
「久しぶりにカラオケでもいくか?」
「あー・・・」
わいわい騒ぐ部員の中で、俺はどうにも落ち着かない気持ちのまま黒木とトガに生返事をする。
俺の様子に気が付いた二人は、互いに視線を交わしてその後は特に何も言わなかった。

「で、なんで真っ昼間からこんな有様なんだよ」
「いいじゃねぇか、休みなんだし」
「大体俺たち学生なのに日曜祭日ほぼ休みなしってどんなチョウカキンムだよ」
「超過勤務くらいちゃんと発音しろよ」
トガのアパートで飲もうと言われ、俺の目の前には、ジャンクフードの山と当たり前のようにビール。
一年前ならいざしらず、今となっては滅多に口にしないビール。そんなもの飲まなくてもぐだぐだに疲れてベッドに飛び込む日々が当たり前になっていた。
ああ、俺結構青春してるんだな、と自覚する一瞬。
「ほい、十文字ィ」
わざわざプルトップを開けて寄越され、渋々受け取る。
黒木もトガも缶を手にかつんかつんと触れ合わせ、乾杯の音頭もなく一気に呷った。
「あー! 久しぶりに美味ェな!」
「ハァ? お前飲んでねぇの?」
「当たり前じゃねぇか、そんなヨユーねえって。なあ、十文字」
「まあなあ。トガは飲んでたのか」
「いや、全然」
「揃いも揃って飲んでねえのかよ」
「いや、つったって俺ら未成年だけどな」
「今更!」
わいわいと騒ぐ中でも、俺の気分は落ち着かないままだ。今日の午後、マネージャーとあの悪魔は連れ立って歩いていった。もしやデートがしたくて午後休みにしたのでは、と勘ぐるくらいマネージャーの表情は明るかった。
「・・・なあ、十文字ィ、俺らに相談したいことあるんじゃねぇの?」
「そうそう」
「ハァ? なんでだよ」
「そりゃなあ」
「まあなあ」
二人だけで判っているようにされる会話が気にくわなくて、俺はビールを一口飲む。
「なんだよ、ハッキリ言えよ」
「はっきり言うのはお前だって」
「そうだぜ、そんな顔しておいてよォ」
「顔?」
無自覚だった俺は思わず自分の頬を撫でた。そこに触れる十文字の傷。今は慣れてしまったが、そういえばこれも悪魔に付けられたものじゃなかったか。
「やっぱあれか、お前マネージャーが好きだったのか?」
「ハァアアア!? トガ、お前ストレートすぎだろ?!」
「無自覚っぽいし」
俺がマネージャーを? 好きだった? 恋愛として?
「・・・いや、違うと思う」
「ハ? じゃあなんだよ」
そうだ。恋愛云々の感情じゃない。
膝を抱えて、俺は空になったビールの缶をテーブルに置く。
なんだろうか、この感情は。
「悪魔とマネージャーがつきあい始めたって聞いた頃からおかしいから、てっきりそうだと思ったのによォ」
「まさかヒル魔に惚れてたとか」
「ありえねぇ!! おぞましいこと抜かすな、バカトガ!!」
ぎょっとするようなことを言われて俺は引きつった顔で即座に否定した。あり得ない。俺はホモでもなんでもない。
「じゃあなんだよォ」
「それは俺が聞きてぇよ」
本当に。
この感情がなんなのか、教えて欲しい。
そう思ったことが過去にもあった気がする。どこで思ったのだったか。
思考が沈み込む。でも今度は黒木もトガも茶化すことなくじっとこちらを伺っているようだ。
あれは。
遠い記憶の切れ端をどうにか掴む。
あれは、母の。
そして父の。
両親の姿に覚えた感情ではなかったか。
「―――――――あ」
やっと思い出した。この感情は。
「お、思い当たったか」
「何? 何?」
途端にわっと近づかれて、俺は膝を抱えて丸くなった。
じわじわと赤面するのが判ったが、止められない。
「なんだよそれ、抵抗か?」
「言えよォ」
あの感覚はマネージャーだけにも、あの悪魔だけにも抱いたのではなく。
俺は二人が揃ってデビルバッツから手を放すことに寂しさを感じたのだ。
俺たちを迎え入れた暖かいマネージャーに母性を、部員を牽引するあの悪魔に父性を見たのだろうか。
デビルバッツは間違いなくあの二人が中心になって育てた子供みたいなもんだった。
あの二人が付き合うということは、部活に注いでいた労力を互いに向け合うということで、それはつまり子離れ宣言みたいなものだ。
それを察して一人寂しがっていたのだと自覚したらもう恥ずかしくてたまらない。
わいわい言われても俺は口を割る気はない。思い当たった感情があまりに恥ずかしくて口に出せないというのが正しいかもしれない。
しかし黒木もトガもそれを許さず、がっと音を立てて俺の頭やら肩やらを掴む。
「おらおら、口割らねぇか~カズちゃ~ん?」
「真っ赤な顔してるぜカズちゃん」
「てめぇら、その呼び方よせよ!!」
があっと怒鳴っても、こいつらは全く動じるどころかむしろ楽しげに俺に構う。

それを煩わしく思いつつ、それでも心地よさを感じてしまった俺の内心を知ってか知らずか、黒木とトガはその後散々俺に絡んでずっと騒いでいた。


***
ええとですね、十文字くんは家庭がうまくいってなかった分、誰よりも部活に拠り所を求めていて、その中心人物たる二人が遠くに行ってしまうような感じに寂しさを覚えたのを黒木くんと戸叶くんが構って紛らわす、というのが書きたかった・・・んですけど・・・。タイトルはヤメピ様のメール本文を引用させていただきましたw
ヤメピ様、ありがとうございましたー! こんなんできましたー!!(脱兎)
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