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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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長編連載『カワイイヒト』/10(完結)

(ヒルまもパロ)
※20000HITお礼企画

+ + + + + + + + + +
足下の覚束ないまもりをベッドに放り投げる。
昨日抱かれたのとは違う、ヒル魔の寝室側として使っていた方だ。
「や・・・!」
昨夜の恐怖が蘇って、まもりの顔から一気に血の気が失せる。
「契約違反も甚だしいな、逃げるな、っつったろ」
ヒル魔の手にはまもりが書いた手紙があった。
それをヒル魔はどこからか取り出したライターで燃やしてしまう。
「だって・・・昨日で終わったでしょう!? なのに、なんで」
まもりは時折声を詰まらせて必死にヒル魔を睨みつけた。
ヒル魔も負けじと冷徹にまもりを見下ろす。
「最初に言っただろう、一ヶ月ってな」
「ええ、言ったわね」
「最初の日から数えて一ヶ月後、っていつだ」
「え、そんなの昨日・・・」
「一般的に言って、一ヶ月後と言うからには、三十日後だな」
「ええ」
「数えろ」
見せられたスケジュール表の日付を数えていく。まもりの目が見開かれる。
「・・29日!?」
「だから言っただろう、まだ終わっちゃいない、ってな」
にやりと笑われて、まもりは改めて今日の日を思う。
今日が一ヶ月目。今日こそが最後の日。
「・・・じゃ、じゃあ、なんであんな事・・・!」
なぜ最後の前日になって、あんな風にまもりを抱いたのか。
なぜ、今更。
「あ? 婚約者だろ、お前」
「それはフリでしょ?!」
そうだ、と肯定されるべき台詞は、あっさりとした返答で否定された。
「誰がそんなこと言った?」
・・・・まもりの脳裏で記憶が凄まじい勢いで巻き戻されていく。あの契約書。
あそこにはなんて書いてあった?
「契約書はちゃんと隅々まで読んでからサインするのが定石だぜ?」
ひらりと目の前に晒されたそこには、注意書きのように小さく書かれた一文があった。
「『なお、会合を無事に終えたとき、雇い主の意に添えば婚約はそのまま正式なものとして関係を持続する』って・・・!?」
読み終えた途端契約書は再びヒル魔の手元に引き戻された。
呆然とするまもりの目の前には、変わらない悪魔の笑顔。
「お前は俺の意に添った、っつーことだ」
「なっ・・・そ、そんな一方的な!」
「アァ? ちゃーんと俺は契約書にも明示したし、お前とのくだらねぇ約束だって守ってるだろ?」
「約束・・・?」
おいおい、とヒル魔は呆れたようにため息をつく。
「思ったことは口にするように強制したのはどこのどいつだ?」
それは言ったけれど。でも。
「・・・そんなことは一言も、だって、貴方は・・・」
私の事なんて、と言いつのろうとしたのに、きっぱりと遮られる。
「言った」
「いつ、どこで!」
「昨日、店で」
「店・・・?」
「記憶力のないヤツだな」
腰が抜けたようにベッドの上で座るまもりにヒル魔がぐ、とのし掛かった。
柔らかなベッドのスプリングは音も立てずまもりとヒル魔の二人分の体重を受け止める。
「ちゃんと言っただろ、まもり」
「・・・!!」
もう呼ばれることのないと思っていた名を呼ばれて、まもりの肩がひくりと震える。
「愛してるって」
低く耳に吹き込まれる声に、まもりは目を見開く。
確かに言われた。柔らかいキスと共に。
けれど、あれは、きっとその場限りのものだと思っていた。
これから会合という名のパーティーに赴くための、気付けのようなものだと。
「どうして・・・」
まもりの声が震える。
「どうして、私なの? なんで、たかが一ヶ月で!」
「時間が関係あるのか?」
くっくっ、と笑いながら彼はこちらを見下ろす。
勝利を確信した、傲慢でいて酷く魅力的な笑顔。
「お前は、そのたかが一ヶ月で俺に心奪われただろうが?」
「なっ・・・自意識過剰だわ!!」
「本当に?」
右手を引かれる。その甲に唇が落とされ、まもりの方がひくりとおののいた。
「お前は違うのか? まもり」
「・・・呼ばないで!」
まもりは叫んでうずくまる。そんな都合のいいことはそうそう起こらない。
まだお前のことは遊びで気まぐれに抱いただけだと言われた方がマシだ。
「ちゃんと対価は払ってやる、って言っただろ?」
それは首筋に歯を立てられる直前、嘲るような笑みと共に言われた言葉。
まもりは顔を歪め、俯く。
「まもり、こっちを見ろ」
ぐい、と顎を捉えられ、こつんと額同士を当てられる。
「お金なんかもういらないわ。・・・私を帰して」
それでも瞳を伏せるまもりに、ヒル魔は大きな舌打ちをこぼした。
「私は安い商売女だもの。どれだけ着飾らせて貰って、勉強しても、変わらないもの」
昨日散々こぼした涙が、再びこぼれる。昨日今日と、どれだけ泣けばいいのだろう。
どれもこれも辛くて苦しい涙ばかり。
「違うだろ」
ぽつんと落とされた言葉に、きつく抱き寄せる腕。
「テメェはもうそんな女じゃねぇ。だからそんな抵抗するな、っつったんだ」
今度こそ視線をそらせないような至近距離で、瞳を覗き込まれる。
「言葉が欲しいのなら何度でも言ってやる」
ヒル魔は至極真面目に言った。
彼が真剣かどうか、この言葉が本気かどうかなんてわからない。
いくらでも嘘を重ねて本音を漏らさない人だから。
信じたいという気持ちと、辞めた方がいいという気持ちと。
揺らめく気持ちそのままに揺らぐ瞳に、柔らかく触れる唇の感触。
「俺は、嘘はつかねぇよ」
「・・・嘘ばっかり」
「言わねぇことはあるかもしれねぇが、テメェに嘘なんて言ってねぇよ」
同様に額に落とされるキスに、抱きしめる腕に、ほだされそうになってしまう。
「テメェを買ってやる」
「・・・三千万円で?」
「それは契約の値段だろ。そんな端金で買える女か、お前は」
ヒル魔はまもりの左手を取る。そこにするりと嵌められたのはプラチナの輝き。
「これ・・・」
同様の輝きが、己の左手にもあるのだと見せつけるヒル魔に、まもりはただ目を見開く。
「対価は俺だ」
だから、とヒル魔はその指にキスを落としてにやりと笑った。
「だから名前を呼べ。『貴方』禁止だっつったろ、まもり?」
まもりが必死に張っている意地を、ヒル魔は易々と突き崩して。
あらゆる手段を使ってまもりを手に入れようとする。
「お前の望みを言え」
口調は命令なのに、酷く甘い。
混乱しながらもまもりは今までのことを出来るだけ詳細に思い出そうとする。
嘘なんて彼は言っていなかった。思い返してもそのどこにも嘘がなかった。

本気だ。
彼はずっと本気だったのだ。

ようやく得た真実にまもりの胸がキリキリと痛む。
まもりは震える唇を開いた。
「・・・お願いがあるの」
「なんだ?」
同様にふるえる手がヒル魔の背中に回される。
おずおずと甘えるように。
「私を、抱いて・・・妖一さん」
一人訳もわからず傷つき、目を耳を塞いで抱かれた昨日を上書きするように、抱いて欲しい。
たどたどしく縋りつく腕と再び呼ばれた名に、満足そうに笑ったヒル魔はやさしいキスで応えた。








泥門高校のグラウンドにヒル魔が現れると、部員たちが一斉に集まってきた。
「こんにちは、ヒル魔さん! ・・・あれ!? まもり姉ちゃん!!」
「セナ!」
その後ろからぱっと顔を輝かせて近づいてきたまもりに、セナはぽかんと口を開けた。
「・・・どうしたの?」
不安そうなまもりに、セナははっと我に返って首を振った。
「う、ううん!! あ、あんまり姉ちゃんが綺麗になってたから、びっくりして・・・」
「え?!」
元から美しかったまもりは、一ヶ月ほどしか離れてなかったはずなのに別人のように美しくなっていた。
あか抜けた、というのがぴったりの表現だろうか。
目のやり場に困ったセナは、視線を彷徨わせる。
ふとまもりの左手の薬指に銀色の輝きを見つけて、目を瞬かせた。
「まもり姉ちゃん、それ・・・指輪?」
「え? ああ・・・」
まもりが頬を染めてそれを撫でる。と。
「おー糞チビ。感動の再会は済んだか」
まもりの背後から近寄ってきたヒル魔が、まもりの肩を抱き寄せる。
「だが生憎とテメェの糞保護者である姉崎まもりは俺のモンとなった。今後気安く触らねぇように」
「え・・・・ええ―――――――――?!」
絶叫するセナに、まもりは真っ赤になりつつもヒル魔の言葉を否定しなかった。
「弟といえども容赦しねぇ」
「・・・妖一さん、私たちは姉弟だからなんにもできないのよ?」
「煩ェ、黙って従え」
「もう!」
ぷうっとむくれるまもりを、ヒル魔はケケケと笑っていなすばかり。
「ヒル魔ぁ、こっち始めちゃっていいの?」
もう一人のコーチとしてやって来ている栗田が声を掛ける。
「おー。おら糞チビ、練習に戻れ!」
「は、はい!」
あまりのことに呆然としていたセナはヒル魔の声で我に返り、土煙を上げてグラウンドを走っていく。
その早さに今度はまもりがぽかんと見送るしかなかった。
「・・・セナってあんなに足早かったんだ・・・」
「だからアメフト部に入れたんだよ」
「妖一さんが泥門高校アメフト部のコーチやってるっていうのも驚いたわ」
元ここの高校でアメフト部だったのだと言われ、まもりは当初怪しんだ。
だってそんな男がいるという話は在校中に聞いてなかったのだ。
こんな男が居たら絶対忘れないし、風紀委員だった自分は絶対校則を守れと追い回しそうなものなのに。
ヒル魔はあっさりと種明かしをする。
「学年が違うんだよ。お前とは被ってねぇ」
「え? 同じ年じゃないの?」
ヒル魔の年齢すら知らず、まもりは今更ながらに驚いてしまった。
そういえば色々ヒル魔のことは判らないことだらけなのだ。
被っていない、ということは年上なのだろう。年下だったら今も高校生のはずだが、そうではなさそうだし。
思いを巡らせるまもりに、ヒル魔はあっさりと言う。
「そんなもんは大した問題じゃねぇだろ」
「・・・うん、そうね」
まもりは自分の左手を見る。そして隣に立つヒル魔を。
出会いは唐突で、怒濤のような一ヶ月間を過ごして、今も婚約者として隣に立つ。
全てに夢心地とまではいかないし、今も毎日勉強やレッスンに明け暮れる日々を送っている。
判らないことだらけ、それも結構なことだ。
これから色々知っていくことができる。
だってまだほんの一ヶ月ほどしか経っていないのだ。これからの時間は沢山ある。

目下知りたいことは。
「ねえ、妖一さんはいつ、私のことを好きになってくれたの?」
「サアネ」
素直に口を割りそうにないヒル魔に、まもりは内心こっそりと笑う。
本当にカワイイヒトなんだから、と。


<了>



***
あとがき

この長編『カワイイヒト』はプ●ティ・ウーマンのストーリーを母から聞く内にヒルまもで考えたらどうなるかな~と思って出だし10頁くらいをサイト開設前の’07年12月半ば頃に勢いで書いたところから端を発します。
話はプ●ティ・ウーマンとは最早別物ですが、そこからタイトルも決定し、ちまちまと書き続けていました。
この度日の目を見ることが出来たので、感慨もひとしおです♪
当初の予定では本にしようと思っていたのですが、そもそも鳥の本が欲しい人がいるわけがない、と思い直してブログへの掲載に至りました(笑)

ここまで読んでくださってありがとうございました!!
今後ともよろしくお願いいたします!!

最後になりましたが、20000HITありがとうございましたー!!
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