旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
メグの元にルイが現れたのは、よく晴れた日の午後だった。
「で? 何の用だい?」
「カッ! テメェ、こないだの話忘れた訳じゃねぇだろうな?」
それにメグは思考を巡らせ、すぐに思い当たった。
「ああ・・・こないだのかい」
まもりと買い物に出かけた際、荷物を運ばせたのだった。
それにぶつくさ言う彼を丸め込むために頬に口づけを一つ落としたのだったっけ。
一体どうするつもりなのか、と見上げれば、外に出るように言う。
「なんだい?」
「人里に行く」
それにメグは首をかしげた。はて、ルイはそんなに人里が好きだっただろうか、と。
「カッ! 俺とテメェとじゃ温度に差があるだろ」
すい、と手を伸ばされる。
その手を取ることすら本来はできないのだけれど、でも人に化ければそれも叶う。
「あんたにしちゃ上々の考えじゃないかい」
それに笑顔を向ければ、ルイは小さく舌打ちをしてじわりと頬を染めた。
人里に人の姿になって紛れる。
ごく当たり前に隣に並んで過ごすことが思いの外心地よい、とメグは感じる。
ルイが一生懸命虚勢を張って強く見せようとする気概もかわいらしくて好きなのだけれど、ごく普通にしていてくれると、メグも穏やかでいられるようだった。
一瞬、メグの思考が過去にとらわれる。
あの人も優しい人だったっけ・・・。
「メグ!」
「っ」
呼ばれて、メグは顔を上げる。隣でルイが訝しげにこちらを見ていた。
「何ぼーっとしてんだ?」
「ああ、すまないね。ちょっと人酔いしたようだよ」
ざわざわと人があふれる中は久しぶりで、確かにちょっと気分が悪くなっていた。
それを聞いてルイはメグの肩を抱く。
「おい、平気か?」
「大丈夫だよ、少し休ませてもらえたらね」
ルイはあたりを見渡してすぐに茶屋へと足を運ぶ。
ここぞとばかりに連れ込み宿でも探すかと思われたが、そういった考えはないようだ。
意気地なしだね、とからかおうとしたけれど、メグは結局その言葉を飲み込んだ。
触れた手が心地よく温かかったから。
人肌が心地よいなんて感覚、本当に随分と久しぶりだった。
茶屋で休憩を挟み、夕闇が迫る川縁を歩く。
子供が声を上げて駆け抜けるのを見て、メグは目を細めた。
「・・・テメェはガキがいたんだったな」
それをどう見たのか、躊躇いがちに言われてメグは隣を見上げる。
「会いたいか?」
「いや、いいよ」
会いたくないと言えば嘘だ。だが、もうあれは随分と昔の話。あの子達は既にもう生きていないだろう。
人として産み落としたあの子達は人としての生を全うしたはずだから。
幸せであったのならいい、そう思える程に時は過ぎていたから。
「もう随分昔の話だし、仮にあの子達が生きていても名乗りを上げられる訳じゃないしね」
妖怪と人との隔たりは大きい。どんなに想い合っても結局は時の流れに引き裂かれる。
それでも人が嫌いにはなれないのはなんでだろう、とは思うのだけれど。
「カッ、随分と大人しいじゃねぇか」
「たまにはアタシだって感傷に浸る事があるのさ」
それにルイは強くメグを抱き寄せた。
「俺の隣でンな顔してるんじゃねぇ」
不機嫌そうでいて、労る声にメグは声を上げて笑う。
むっとしながらも手を放さないルイの腕に心地よさを感じ、笑いすぎて滲んだことにした涙をそっと拭った。
夕方が次第に夜に混ざる。
夜空が腕を広げて人々を安息に包み込もうとし始める時刻。
二人は町はずれに出て帰路に就こうと町中を歩いていた。
人目の付かないところに路地裏にでも入り込んで一足で帰ればいいのだが、なんとなく帰りたくなかった。
まるで生娘のような純粋ささえ滲ませて、二人は短い逢瀬を惜しんでいた。
と。
町の外を目指していた二人が足を踏み入れたのは色町で。
ちら、と視線を向けるとルイは見た目ばかりは平然と歩いている。一瞬動揺した気配があったけれど。
色町は大体人里のはずれにあるのが一般的なので、驚く必要もない。
連れ込み宿か船宿に引き込むつもりだったのなら昼間か夕方の川縁で手を出しただろうから、そのつもりはないのだろう。
まったくかわいいね、とメグは内心ほくそ笑む。
色町は格子越しに商品と化した女が男を誘惑したり、客引きが声を掛けたりと賑々しい。
けれど女連れのルイは当然の如く声などかけられない。
ふと、メグは足を止めた。
気づかず人の流れに沿って歩いていくルイをそっと眺めていると。
「よっ! 色男、遊んでいかないかい?」
「ウチの店はべっぴん揃いだよ!!」
あっという間に客引きたちから声を掛けられ、ルイは仰天する。
「カッ?! どこ見てんだ、俺には連れが・・・」
いるだろ、と横を見て、そこにメグが居ない事に気が付いて。
大あわてでルイが視線を彷徨わせると、ほんの少し離れた距離で楽しそうにルイを眺めているメグの姿。
「メグ!!」
ルイは顔を真っ赤にして戻ってきてぐい、とメグの手を取る。
それを見た客引きたちはなんだ女連れか、悪かったね、と二人に声を掛けてすぐさま別の男たちに声を掛けに行った。
「何やってんだ!」
恥ずかしさからか未だ顔を赤くしているルイに、メグはにっこりと笑う。
「惚れた男がどれだけモテるのかちょいと見てみたくなっただけさ」
それにルイはますます赤い顔になって。
化蛇ルイ様も形無しだね、と呟いたメグがますます笑顔になったのに対し、ルイは惚れた弱み故忌々しげに舌打ちするしか出来なかった。
***
急にルイメグが書きたくなりました。悪ぶっていてもいいところのぼっちゃんだからなんだかんだ言いながら悪役になりきれないルイさんと、そんなルイをかわいいと言って憚らないメグ姐さんが好きです。
「で? 何の用だい?」
「カッ! テメェ、こないだの話忘れた訳じゃねぇだろうな?」
それにメグは思考を巡らせ、すぐに思い当たった。
「ああ・・・こないだのかい」
まもりと買い物に出かけた際、荷物を運ばせたのだった。
それにぶつくさ言う彼を丸め込むために頬に口づけを一つ落としたのだったっけ。
一体どうするつもりなのか、と見上げれば、外に出るように言う。
「なんだい?」
「人里に行く」
それにメグは首をかしげた。はて、ルイはそんなに人里が好きだっただろうか、と。
「カッ! 俺とテメェとじゃ温度に差があるだろ」
すい、と手を伸ばされる。
その手を取ることすら本来はできないのだけれど、でも人に化ければそれも叶う。
「あんたにしちゃ上々の考えじゃないかい」
それに笑顔を向ければ、ルイは小さく舌打ちをしてじわりと頬を染めた。
人里に人の姿になって紛れる。
ごく当たり前に隣に並んで過ごすことが思いの外心地よい、とメグは感じる。
ルイが一生懸命虚勢を張って強く見せようとする気概もかわいらしくて好きなのだけれど、ごく普通にしていてくれると、メグも穏やかでいられるようだった。
一瞬、メグの思考が過去にとらわれる。
あの人も優しい人だったっけ・・・。
「メグ!」
「っ」
呼ばれて、メグは顔を上げる。隣でルイが訝しげにこちらを見ていた。
「何ぼーっとしてんだ?」
「ああ、すまないね。ちょっと人酔いしたようだよ」
ざわざわと人があふれる中は久しぶりで、確かにちょっと気分が悪くなっていた。
それを聞いてルイはメグの肩を抱く。
「おい、平気か?」
「大丈夫だよ、少し休ませてもらえたらね」
ルイはあたりを見渡してすぐに茶屋へと足を運ぶ。
ここぞとばかりに連れ込み宿でも探すかと思われたが、そういった考えはないようだ。
意気地なしだね、とからかおうとしたけれど、メグは結局その言葉を飲み込んだ。
触れた手が心地よく温かかったから。
人肌が心地よいなんて感覚、本当に随分と久しぶりだった。
茶屋で休憩を挟み、夕闇が迫る川縁を歩く。
子供が声を上げて駆け抜けるのを見て、メグは目を細めた。
「・・・テメェはガキがいたんだったな」
それをどう見たのか、躊躇いがちに言われてメグは隣を見上げる。
「会いたいか?」
「いや、いいよ」
会いたくないと言えば嘘だ。だが、もうあれは随分と昔の話。あの子達は既にもう生きていないだろう。
人として産み落としたあの子達は人としての生を全うしたはずだから。
幸せであったのならいい、そう思える程に時は過ぎていたから。
「もう随分昔の話だし、仮にあの子達が生きていても名乗りを上げられる訳じゃないしね」
妖怪と人との隔たりは大きい。どんなに想い合っても結局は時の流れに引き裂かれる。
それでも人が嫌いにはなれないのはなんでだろう、とは思うのだけれど。
「カッ、随分と大人しいじゃねぇか」
「たまにはアタシだって感傷に浸る事があるのさ」
それにルイは強くメグを抱き寄せた。
「俺の隣でンな顔してるんじゃねぇ」
不機嫌そうでいて、労る声にメグは声を上げて笑う。
むっとしながらも手を放さないルイの腕に心地よさを感じ、笑いすぎて滲んだことにした涙をそっと拭った。
夕方が次第に夜に混ざる。
夜空が腕を広げて人々を安息に包み込もうとし始める時刻。
二人は町はずれに出て帰路に就こうと町中を歩いていた。
人目の付かないところに路地裏にでも入り込んで一足で帰ればいいのだが、なんとなく帰りたくなかった。
まるで生娘のような純粋ささえ滲ませて、二人は短い逢瀬を惜しんでいた。
と。
町の外を目指していた二人が足を踏み入れたのは色町で。
ちら、と視線を向けるとルイは見た目ばかりは平然と歩いている。一瞬動揺した気配があったけれど。
色町は大体人里のはずれにあるのが一般的なので、驚く必要もない。
連れ込み宿か船宿に引き込むつもりだったのなら昼間か夕方の川縁で手を出しただろうから、そのつもりはないのだろう。
まったくかわいいね、とメグは内心ほくそ笑む。
色町は格子越しに商品と化した女が男を誘惑したり、客引きが声を掛けたりと賑々しい。
けれど女連れのルイは当然の如く声などかけられない。
ふと、メグは足を止めた。
気づかず人の流れに沿って歩いていくルイをそっと眺めていると。
「よっ! 色男、遊んでいかないかい?」
「ウチの店はべっぴん揃いだよ!!」
あっという間に客引きたちから声を掛けられ、ルイは仰天する。
「カッ?! どこ見てんだ、俺には連れが・・・」
いるだろ、と横を見て、そこにメグが居ない事に気が付いて。
大あわてでルイが視線を彷徨わせると、ほんの少し離れた距離で楽しそうにルイを眺めているメグの姿。
「メグ!!」
ルイは顔を真っ赤にして戻ってきてぐい、とメグの手を取る。
それを見た客引きたちはなんだ女連れか、悪かったね、と二人に声を掛けてすぐさま別の男たちに声を掛けに行った。
「何やってんだ!」
恥ずかしさからか未だ顔を赤くしているルイに、メグはにっこりと笑う。
「惚れた男がどれだけモテるのかちょいと見てみたくなっただけさ」
それにルイはますます赤い顔になって。
化蛇ルイ様も形無しだね、と呟いたメグがますます笑顔になったのに対し、ルイは惚れた弱み故忌々しげに舌打ちするしか出来なかった。
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急にルイメグが書きたくなりました。悪ぶっていてもいいところのぼっちゃんだからなんだかんだ言いながら悪役になりきれないルイさんと、そんなルイをかわいいと言って憚らないメグ姐さんが好きです。
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鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
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