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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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飛来する悪魔

(ヒルまも)
※のりちこ様からいただいたイラストから発想を得て。

+ + + + + + + + + +
体育の選択授業で武道と創作ダンスを選べと言われて、私は武道の欄にあった剣道に心惹かれてそちらを選択したのだけれど。
剣道の方は希望者が多かったようで、私はもう一つの武道へと振り分けられた。
「まも、柔道かあ」
「なんでダンスにしなかったの?」
「実はあんまり創作ダンスって好きじゃなくて・・・」
あの創作ダンスを踊るのも作るのも大変なのだと去年やった風紀委員の先輩に聞いていたので私は避けたのだ。剣道はやってみたかったし。
結局柔道になったけれど、これはこれで悪くない。
「そうなんだ~」
残念だわ、と手を振るクラスメイトと別れ、私は武道場に足を踏み入れる。武道を選ぶ女子は結構いるけれど、ほとんどが剣道に行ってしまうので、女子は十数人しかいない。
「あ、姉崎さんは柔道なんだね」
にこにこと笑う栗田くんが話しかけてくる。彼もこちらなのか。
「僕は防具のサイズが合わないからってこっちになったの」
「そうなんだ。栗田君大きいもんね」
「糞デブ! 喋ってないでこっち来い!」
「うん」
じゃあね、と手を振って栗田くんが向かって行く先にはヒル魔くんがいた。ムサシくんもいたけれど、私が目を疑ったのはそこじゃない。
「・・・なんでヒル魔くん黒帯なの!?」
「あ? 黒帯ってなんで締めるかくらい知ってんだろ、糞マネ」
「・・・・・・・ヒル魔くん、いくら黒が好きって言ったって人の帯奪っちゃダメなのよ?」
「あぁ?!」
「それにしても意外ね。ヒル魔くんは剣道やるのかと思ってたのに」
「剣道は髪型が崩れるのが嫌なんだと」
「糞ジジイ、余計なこと言うんじゃねぇ」
栗田くんとムサシくんは白帯だ。クラスの男子も柔道部でないかぎりは皆白帯。唯一ヒル魔くんだけが黒帯。
チャイムが鳴って、私たちは道場の左右に分かれた。
女子の中にも柔道部の子がいて、その子は黒帯を締めている。
「やっぱり黒帯って格好いいね!」
「ありがとう。でもまだまだだから、もっと強くなりたいわ」
にこにこと笑う彼女は座っている姿勢一つとっても私たちとは違う。
私もこういう風に強くなれたらいいな、と思ってマネして背筋を伸ばした。


授業は基本の足捌きや受け身を中心にやっていく。女の子は特に素人ばかりだから、技云々に至るには結構掛かりそうだ。でも受け身の動きはとても面白くて、前回り受け身のコツを掴もうと回りすぎてちょっと目を回したりしていた。
「ケケケ! 糞マネ、それじゃでんぐり返しじゃねぇか」
「なっ、なによ! ヒル魔くんお手本見せてよ」
先生もヒル魔くんには手を焼いているのか、黒帯もそのままにさせている。
「ヤダネ」
「ええー?! 本当はできないんじゃないの?」
「どうとでもご想像クダサイ」
ケケケ、と笑いながらヒル魔くんが元の場所に戻っていく。からかうためだけにこっちに来たのか。相変わらず嫌がらせには手を抜かない男だ。
むう、とむくれながらも私は再び受け身を練習するべく畳に向かった。


そして数回目の授業の時。
「よーし、女子、互いに組んで!」
「はいっ!」
たどたどしいながら、技を教えて貰う。一番の基礎は体落とし、という技。腰に相手を乗せて投げる技で、体重移動が難しい。
「上手く相手を腰に乗せれば女子でも男を投げ飛ばせるぞー」
「ええー?」
「やってみたーい!!」
きゃあきゃあと騒いだりしつつも、みんな結構真剣に取り組む。
何度もやるうちに投げやすい角度というのが判って、投げるのが上手い人だと投げられても痛くないのだと柔道部の子と組んで判ったりした。
「凄いのね!」
「だって毎日やってるもの」
「やっぱり上手い人は違うんだなってわかるわ」
汗みずくになって授業をやるのは楽しい。やっぱりダンスじゃなくて柔道を選んで良かった、と思う。
「ホー」
「きゃっ!!」
いつの間にか側に来ていたヒル魔くんに、私は驚いて飛び上がる。
「本当に上手いヤツとヤるのは楽しいんだぜ?」
「・・・何その嫌な表現と嫌な笑い」
いつの間にか周囲は固唾を呑んでこちらを伺っている。
授業中なのに、先生もこちらを注意しない。っていうか後ろ向いてる。先生!!
「俺と組んでみろ」
「はっ?!」
驚いて一歩引くと、ヒル魔くんが更に嫌な笑みを浮かべた。
「なんだ、怖いのか?」
「こっ・・・そんな訳ないわ!!」
しまった、ついいつもの癖で返してしまった。
ヒル魔くんの腕がにゅっと伸びてくる。思わずもう一度引きかけたけど、掴む場所を示されて素直に従う。
逃げたくなかったし、黒帯モドキのヒル魔くんならがんばれば投げられるかもしれないし。
「じゃあこっちに向かって来い」
「言われなくても!」
意気込んで足を踏み出した瞬間。
くるりと身体が浮いた。
「え」
ヒル魔くんが横に見える。そのまま身体がどさりと畳に落ちた。 
「おおっ!!」
「え、何今の!! すっげぇ!!」
わあわあと生徒たちが沸き立つ。柔道部の部員たちも目を丸くしていた。
「今のは『出足払い』な」
ずる、と掴まれた腕がゆっくりと下ろされる。
あまりに咄嗟で受け身も取れなかった私が身体を打ち付けないように支えてくれたらしい。
「・・・ええっ?! 本当に黒帯だったの!?」
「バーカ、冗談で黒帯なんて締められるか」
鼻で笑われて、私の負けず嫌いに火がついた。
「お?」
がばっと立ち上がった私はそのままヒル魔くんと組み合った。といっても、私が習ったのは体落とし一つだけ。
黒帯の彼からしてみたら、隙だらけだろうし、どうにでも投げ飛ばされる。
でも悔しかった。
一瞬でもヒル魔くんなんかが格好いいって見惚れちゃったことが!!
「あちゃー・・・」
馬鹿正直に技を掛けようとした私の耳にも、無謀すぎる、という意味合いのため息が聞こえてきた。
でもやってみなきゃわからないじゃない。
「ふーん?」
技を掛けようと躯を捻った私の背後から、楽しそうな声。
あ、いや、これは。
何かを企んでそれを実行しようとする、そんな部類の声。
「え」
引っ張った腕に、ヒル魔くんの抵抗などはなく。
「うわぁ!?」
私の横を滑らかに飛んでいく金髪。
「えええええ――――?!」
そして一瞬の後、私の足下には投げ飛ばされた形のヒル魔くんがいた。
「おおすげぇ糞馬鹿力」
ああ痛い、とわざとらしく緩慢に立ち上がられる。
「なっ、な!」
「糞マネ、お前男も軽々投げ飛ばせる糞馬鹿力の持ち主だったか」
「そ、そんなこと無いわよ!」
「いやいや、謙遜することはねぇぞ糞馬鹿力マネ。さすがの俺もこのとおり見事にやられたしな」
「違うわよ!! だって私、そんなに力入れてな・・・」
そして私は周囲の妙な沈黙に気が付く。
「・・・どうしたの、みんな」
声を掛けると、皆一斉に視線を逸らす。慌ててムサシくんと栗田くんを見ると、二人ともやっぱり背を向けているけれど、その肩は小刻みに揺れている。
「お前がライン入った方がいいんじゃねぇの? その糞馬鹿力で相手ぶっ飛ばせよ」
「出来るわけないでしょー!? ちょっと、みんななんでこっち見ないのよ! ねえっ!!」
しかし誰一人こちらには視線を向けず、ムサシくんと栗田くんに至ってはしゃがみ込んでしまっている。 
二人の耳が赤い。もしかしなくても、爆笑されている・・・。
文句を言おうと思ったのに、ヒル魔くんが私の目の前に立ちはだかった。
「YA-HA-!! 喜べ糞馬鹿力マネ。お前は晴れてこの学校最強の名を手にしたぞ!」
「イーヤー!!!!」

キーンコーンカーンコーン。
まもりの悲鳴と白々しいヒル魔の応酬、そして完全に観客と化した他生徒たちの沈黙の中、チャイムが道場内に鳴り響いた。

***
実は半分実話です。鳥は中学校の時に体育の選択授業で柔道を取ったのです。先生を投げ飛ばしたとからかわれたのもいい思い出。選択した女子は皆柔道にはまってわざわざ休日に級を取りに行きました。楽しいですよ柔道!のりちこ様のイラストですとまもりちゃんも黒帯ですが、そこは後で友達に借りた、ということで(苦笑)
のりちこ様、本当にありがとうございましたー!
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