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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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地底の火

(ヒルまも)
※ヤメピ様からいただいたイラストから発想を得て。

+ + + + + + + + + +
腕を折って何が一番面倒かと聞かれたら、洗髪と迷わず言える。
なにせ片腕をギプスでグルグル巻きにされているので、まず普通にシャワーを浴びることが出来ない。
しかも利き腕。身体を拭くための濡れタオル一つ作るのにも一苦労だ。頭ならなおのこと。
かといって床屋や美容院で洗わせるのも御免被る。金髪をキープするために結構な頻度で床屋には通っているのだが、怪我をしているとあれば見境が無くなった連中に襲われる可能性だってある。もちろんぬかりなく武器や罠は用意しているにしても、無防備なところを襲われるのは気分のいいものじゃない。
泥まみれになって走り回っていた骨折前よりは汚れないとはいえ、頭を洗わずに生活するわけにはいかない。
というわけで、到底人には見せられない格好だろうなと自問自答を繰り返しつつ、俺はこの数日間結構な苦労をして洗髪していたわけだ。

連れ込んだ先が学校のすぐ側のシティホテルだったせいで、糞マネは俺が怪我人だということも忘れて耳元でぎゃんぎゃんわめき倒したが、ここが生活空間なのだと山と積まれた私物を見せてやっと納得させた。
「なんでホテル生活なの?」
「掃除も洗濯もめんどくせぇ」
ごく一般的なツインルーム。簡素な部屋に大量のDVDや雑誌、ファイルなどが山をなし、時折崩れている。
片方のベッドは私物で完全に埋没していた。
「一人なのにツインなんだ?」
「シングルは何やるにも狭ェ」
「家事一切ホテル任せってこと?」
「俺がそんなもんやると思うか」
「・・・そりゃ思わなかったけど」
ここまでとは、と呆れた糞マネは、手にしたコンビニ袋をガサガサと鳴らした。中には帰る途中ソンソンで買ったメイク落としが入っている。
「早くそれ使って顔洗ってこい」
「洗面所ってこっち?」
「あー」
メイク落としを手にバスルームに消えた糞マネを見て、そういえばと思い出したことを口にしようとしたとき。
「キャーッ!!」
「・・・あ」
遅かった。頭から水を被った糞マネが飛び出してきてすごい剣幕でまくし立てる。
「ちょっと! なんでシャワーがこっち向いてるの!?」
「そりゃ俺がこの腕だからだ」
この数日、どうにかして頭を洗おうと考えた結果、右腕に直接湯がかからないように洗面台の左側にシャワーヘッドを固定させることを思いつき、昨日はその状態のままにしておいてしまったのだった。
結局、糞マネはシャワーを頭から被ってしまったわけだ。
「ついでだ、そのままシャワー浴びちまえ」
「ええ?!」
「今の気候と連日の寝不足考えろ。絶対風邪を引かないと断言するならそのまま帰宅させるぞ」
「・・・う」
ほら、とタオルを渡すと糞マネは少し躊躇ったようだが、寒さに負けてタオルを受け取った。
「・・・あと、その・・・」
「ほれ」
どう言おうか、と目を泳がせる糞マネの考えることなどお見通し。俺は取り出した着替えを渡す。
「! あ、ありがとう・・・」
糞マネには絶対に大きすぎるシャツとハーフパンツ。
「でも、なんで全部クリーニングの袋に入ってるの」
「心優しい糞従業員サンのお心遣いデス」
それとも俺の脱いだままのがいいのか、と意地悪く問うと糞マネは真っ赤になってバスルームのドアを閉じた。
「ケケケ」
そうそう。
これが糞マネだ。大分調子取り戻してきたな。


「ヒル魔くん、痒いところはございませんかぁー」
間延びする声が、窓のないバスルームに響く。
かしゅかしゅかしゅ。
先ほどじっとその様子を見ていたら顔にタオルを乗せられてしまったため、糞マネのアホ面は拝めない。
結構面倒な作業だろうに、糞マネは鼻歌交じりで俺の頭を洗っている。

あの後シャワーを浴びてくると、糞マネは髪も乾かさず俺の頭を洗うと言い出した。
先に休ませようと思っていたのだが、あのあり得ないシャワーヘッドの固定位置に俺が本当に洗髪で苦労しているのだと察して俄然世話焼き気質に火がついたらしい。
俺はバスルームの床に座ってバスタブの縁に後頭部を預け、糞マネはバスタブの中に立って俺の頭を洗う姿勢だ。
少々首が痛いが、この部屋には洗面台に合う高さの椅子なんぞないし、これ以外の姿勢のとりようがなかった。

「ヒル魔くんの髪、思ったより柔らかいのねー」
もっと堅いのかと思ってたわ、と笑う糞マネの手に俺の髪が絡む様を想像する。泡まみれの指に絡む金髪。
「アメリカに行ったとき、シャワーから出てきてもヒル魔くんてば髪立ててたじゃない」
「くせ毛なもので」
「そんなくせ毛あるわけないでしょ!」
もう、と笑う糞マネの声は本当に楽しげで、時折無意識に動かそうとする糞右腕が動かないことを除けば、悪くない気分だった。
「ヒル魔くん、このシャンプーってどこの?」
「シラネ。床屋が勝手に寄越すからな」
「ふうん、お店専用のなのかしら。いい香りね」
糞マネは丁寧な手つきで髪を洗うと、熱くないように調節した湯で泡を流し始めた。
「ヒル魔くんの耳、ホント大きいね」
湯が入らないように、と手で覆ってその大きさに改めて感嘆したらしい。
温かい湯が糞マネの指と共に泡を洗い流していく。
「・・・ヒル魔くん、寝てるの?」
囁くような声に、起きていると返事をしかけて思い直す。そう思うのなら思わせておけばいい。
トリートメントを髪に馴染ませるぎこちない手が、そっと俺の頭をその意図以外で柔らかく撫でたから。
俺は糞マネに表情が見えないのをいいことに、静かに眸を閉じた。


「・・・はい、終わり!」
「・・・あ?」
本当にウトウトしてしまったらしい。間抜けな返答をした俺に構わず、糞マネは楽しげに俺の頭にタオルを乗せた。
顔に乗っていたタオルを首にかけて、俺は室内へと移動した。
「気持ちよかった?」
「ご苦労だった糞労働力」
「ははー」
尊大にねぎらってやれば、それが最大限の礼なのだと汲み取れる糞マネは芝居が掛かった仕草で大仰に身体を折り曲げて見せる。
ベッドに腰掛け、片腕で濡れた髪を拭っていると糞マネがもう一枚用意していたタオルを手に近寄ってきた。
「拭いてあげる」
「あー」
わしゃわしゃと髪の水気を取る糞マネの手がふと止まる。
「そういえば髪が降りたヒル魔くん見るの初めてだわ」
「あ?」
ふわりと湿気を含んだタオルが頭から離れる。俺は拭い切れていなかった雫を気にして首に置いていたタオルで拭っていた。
「・・・・・・」
だから糞マネの顔を見るのが若干遅れた。
「・・・なんだ、その顔」
「・・・え」
無自覚だったのか、半開きになってた唇もそのままに糞マネはじっとこちらを見ていた。
すっと視線を下げていけば、日本人離れしたメリハリが利いた身体を大きすぎるシャツが覆っていて、何回も折り曲げられた袖口が肘の当たりで丸くなっている。そこから伸びている手はすんなりと白く、男の俺からすると信じられないくらい細い。
貸したハーフパンツはおそらく腰で数回折り曲げられているのだろうが、それでもずり落ちそうだ。膝下まで降りてきている裾から覗く足は裸足。
滅多に見ない糞マネの裸足のつま先までまじまじと見て、もう一度視線を顔に戻す。
・・・オイオイ、いい加減口閉じろ。アホに見えるぞ。
「濡れ髪の俺に欲情でもしたのか糞マネ」
ケケケ、とからかうつもりで唇をつり上げて悪人面した俺の視界に、話題にした濡れた髪が降りてくる。
固めてないから視界に入って邪魔だ。
小さく舌打ちする俺の目の前で、糞マネが予想外の言葉をこぼした。
「そう、かも」
「・・・あ?」
俺が自分の耳と目を同時に疑ったのは初めてだ。
呆然とこちらを見ている糞マネの頬にさあっと朱が差して、それが首筋にも指先にも飛び火するのを、俺は目の前で見てしまった。
その火の名を何というか、俺は知っている。
ついでに言えば今この場所でこの反応はヤバイだろう。
糞マネはまだタオルを握りしめて、自分が何を言ったのか、どういう状況なのかも把握していないようだった。
寝不足で狂った調子はまだ戻ってなかったのか。
糞マネが生み出した火は勢いよく燃え広がり、先ほど見たつま先の、足の小指の小さな爪にまで余さず煌めいている。



――――――・・・そしてその火がどこまで飛び火したのか、お前は判ってるのか。
この身体の疼きを、さあ、どうしてくれよう。


***
ヤメピ様から頂いたイラストに付属していたメール本文の場面説明があまりに妄想をかき立てましたので(笑)自分設定を織り交ぜながら書きました。あああ楽しかったです!タイトルは『天上の青』とそれとなく対にしてみました。私も骨折経験があるので、お風呂は本当に苦労したのを思い出します。折ったのは足でしたが。
ヤメピ様、ほんとうにありがとうございましたー!

そうそう、鳥のヒル魔さん私生活についてちょっと書いてみたら長くなってしまったので、ご興味のある方は以下反転プリーズ。

ヒル魔さんの家の描写をホテルにしたのは、いくつか考えた結果これが一番すんなり納得できたからです。特に最上階などではない、ごく普通のフロアにひっそり生活してたりして。
大体制服のシャツだって自分でアイロンかけてたりクリーニング出したり、いるかどうか判らない家族が用意したり、というのが全く想像できないしそれならホテルのサービス使っちゃった方がいいかな、と。中学生の頃はタダでビジネスホテルに泊まっていましたが、この設定ではヒル魔さんはちゃんとホテル側にお金を払って生活してます。ただ、きっと何かしらの値段交渉はされていると思われます。アメフトに嵌ったらビジネスホテルじゃ手狭だった模様。
武器は泥門高校地下武器庫他数カ所持っている拠点に分散させているらしい。このホテルには手で持ち歩く以外の武器を置いてません。学校生活を送るのための拠点として使ってます。家族が仮にいるとしても、全然違う場所にいるのでしょう。たまに単身赴任のお父さんよろしく帰宅しているかもしれないです。
食事は基本コンビニかホテルのルームサービス。食べることに執着はない感じ。睡眠は短く深く。
この後まもりちゃんが入り浸るにしても、きっと手作りお弁当持参になるのでしょう。

こういう設定を考えるのは楽しいです♪
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