旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
部室が片付いたといっても、薬箱の中身までは整っていなかった。
部活の最中にモン太が転んだ際、薬箱を開いてようやくまもりは気づいた。
「・・・何コレ」
取り出した軟膏の使用期限が十年前だ。消毒液などは比較的使用されているが、何の用途か入れられていた胃薬は完全に変色している。
薬箱そのものも相当年季が入った木製のものだ。
とりあえず応急処置には問題なかったが、休憩時間に手を止めたヒル魔に駆け寄り、まもりは件の薬箱を見せる。
「ちょっと、ヒル魔くん! これ一体どこから持って来たの!?」
「職員室」
「先生たちのってこと!?」
それにしては中身が、と眉を寄せる彼女にヒル魔は軽く肩をすくめる。
「糞教師どもは各自で胃薬やら解熱鎮痛剤やら持ってんだよ。怪我なら保健室があるだろ」
「そりゃあ・・・そう、だけど」
「近所の薬局調べだと、糞教師どもはダントツで胃薬の消費量が多いそうだ」
ヒル魔がにやり、と口角を上げたのでまもりは深々と嘆息する。
「その原因のほとんどは自分だ、っていう自覚は?」
彼は全くその言葉に取り合わず、まもりが差し出した薬箱の中身を見て眉をひそめた。
「使えねぇもんは捨てておけ」
「これ、全部使えないものなの」
ごっちゃりと薬箱に入った薬は全て使用期限が切れている。
「ついでにこの薬箱も、今金具の部分が腐食してるの見ちゃって」
蝶番の根本が黒く変色していた。
「学校で練習してる分にはいいのよ、保健室あるし。でも試合とか練習でも外に行くときはまずいでしょう?」
きょろ、とまもりはヒル魔を見上げた。
「というわけで、薬箱から一式買ってきていい?」
ヒル魔は一瞬沈黙して、次いで口を開いた。
「おい、糞デブ! テメェらで練習してろ」
「えー、ヒル魔は?」
「俺は買い出ししてくる」
「え?! いいわよ、ヒル魔くん。私が行くから!」
最初から自分一人で全部買いそろえるつもりだったまもりは慌てるが、ヒル魔は用をなさなくなった薬箱を彼女から奪い取り、さくさくと歩いて行く。
「これ一式買うとなると結構な出費なんでなァ」
「そうよね」
使うか不明だがあるに越したことのない胃薬に整腸剤に解熱鎮痛剤といった基本的な薬剤、加えて外傷手当用の薬剤となれば一つ一つが大したことのない価格でもまとまって結構な額になることは想像に難くない。
「部費、足りる?」
無言で渡された出納帳―――レシートが張られているだけのものだが、当初の額から考えても相当厳しい状況なのがすぐわかる。
「うーん、部費集めないとダメかしら」
「だから俺が行く、っつってんだろ」
ヒル魔が荷物の中から黒い手帳を取り出す。
にたり、と上がる口角にまもりは血相を変えて止めようとするが、彼は薬箱をゴミ集積場に投げ捨てるやいなや軽やかに走り去ってしまう。
「あ、ちょっと!? ・・・もう!」
まもりは部室を経由し駐輪場まで走り、買い出し用の自転車にまたがり彼を追いかけた。
手にはしっかり自分の財布を握りしめて。
薬局が割と近いため、まもりがたどり着いたときには既に店員が青い顔をして走り回っていた。
「ちょ・・・っと! やめなさい、よ!」
「あの程度の距離を、しかもチャリで走ったくせに息切れか。糞運動不足だなァ糞マネ」
ケケケ、とまるで迫力のない怒り顔をからかうばかりで、ヒル魔は飄々としたままだ。
基礎体力の差を見せつけられて、まもりは大変面白くない気分になる。
「~~~んもう!」
ぷん、と頬をふくらませてそっぽを向いたまもりは、それでも会計時にはもう一度文句を言おうと決心してその場を離れた。
彼は薬箱の中身を用意させているのだろうが、それ以外にも欲しいモノがある。
そろそろ洗剤が切れそうなのだと思い出したのだ。
<続>
部活の最中にモン太が転んだ際、薬箱を開いてようやくまもりは気づいた。
「・・・何コレ」
取り出した軟膏の使用期限が十年前だ。消毒液などは比較的使用されているが、何の用途か入れられていた胃薬は完全に変色している。
薬箱そのものも相当年季が入った木製のものだ。
とりあえず応急処置には問題なかったが、休憩時間に手を止めたヒル魔に駆け寄り、まもりは件の薬箱を見せる。
「ちょっと、ヒル魔くん! これ一体どこから持って来たの!?」
「職員室」
「先生たちのってこと!?」
それにしては中身が、と眉を寄せる彼女にヒル魔は軽く肩をすくめる。
「糞教師どもは各自で胃薬やら解熱鎮痛剤やら持ってんだよ。怪我なら保健室があるだろ」
「そりゃあ・・・そう、だけど」
「近所の薬局調べだと、糞教師どもはダントツで胃薬の消費量が多いそうだ」
ヒル魔がにやり、と口角を上げたのでまもりは深々と嘆息する。
「その原因のほとんどは自分だ、っていう自覚は?」
彼は全くその言葉に取り合わず、まもりが差し出した薬箱の中身を見て眉をひそめた。
「使えねぇもんは捨てておけ」
「これ、全部使えないものなの」
ごっちゃりと薬箱に入った薬は全て使用期限が切れている。
「ついでにこの薬箱も、今金具の部分が腐食してるの見ちゃって」
蝶番の根本が黒く変色していた。
「学校で練習してる分にはいいのよ、保健室あるし。でも試合とか練習でも外に行くときはまずいでしょう?」
きょろ、とまもりはヒル魔を見上げた。
「というわけで、薬箱から一式買ってきていい?」
ヒル魔は一瞬沈黙して、次いで口を開いた。
「おい、糞デブ! テメェらで練習してろ」
「えー、ヒル魔は?」
「俺は買い出ししてくる」
「え?! いいわよ、ヒル魔くん。私が行くから!」
最初から自分一人で全部買いそろえるつもりだったまもりは慌てるが、ヒル魔は用をなさなくなった薬箱を彼女から奪い取り、さくさくと歩いて行く。
「これ一式買うとなると結構な出費なんでなァ」
「そうよね」
使うか不明だがあるに越したことのない胃薬に整腸剤に解熱鎮痛剤といった基本的な薬剤、加えて外傷手当用の薬剤となれば一つ一つが大したことのない価格でもまとまって結構な額になることは想像に難くない。
「部費、足りる?」
無言で渡された出納帳―――レシートが張られているだけのものだが、当初の額から考えても相当厳しい状況なのがすぐわかる。
「うーん、部費集めないとダメかしら」
「だから俺が行く、っつってんだろ」
ヒル魔が荷物の中から黒い手帳を取り出す。
にたり、と上がる口角にまもりは血相を変えて止めようとするが、彼は薬箱をゴミ集積場に投げ捨てるやいなや軽やかに走り去ってしまう。
「あ、ちょっと!? ・・・もう!」
まもりは部室を経由し駐輪場まで走り、買い出し用の自転車にまたがり彼を追いかけた。
手にはしっかり自分の財布を握りしめて。
薬局が割と近いため、まもりがたどり着いたときには既に店員が青い顔をして走り回っていた。
「ちょ・・・っと! やめなさい、よ!」
「あの程度の距離を、しかもチャリで走ったくせに息切れか。糞運動不足だなァ糞マネ」
ケケケ、とまるで迫力のない怒り顔をからかうばかりで、ヒル魔は飄々としたままだ。
基礎体力の差を見せつけられて、まもりは大変面白くない気分になる。
「~~~んもう!」
ぷん、と頬をふくらませてそっぽを向いたまもりは、それでも会計時にはもう一度文句を言おうと決心してその場を離れた。
彼は薬箱の中身を用意させているのだろうが、それ以外にも欲しいモノがある。
そろそろ洗剤が切れそうなのだと思い出したのだ。
<続>
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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