旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりが抱えてくる大きな袋。
中にあるのはパウンドケーキにブラウニー、ガトーショコラにトリュフ、生チョコ。
どれもこれも甘くて甘くてたまらない。
「死ぬ」
たまたま登校途中にばったり顔を合わせただけなのに、開口一番ヒル魔はそう言い放った。
挨拶も何もかもすっ飛ばして、だ。
「チョコレートで人が死ぬなんて聞いたことないわ。ましてや匂いだけでなんて」
わざとらしく距離を置くヒル魔にこちらが舌打ちしたい気分だ、と嘆息してまもりは学校を目指す。
よいしょ、と結構な重量がある袋を抱え直す。
一つ一つ丁寧に包装した菓子がかさりと音を立てる。
「ンな大量に配って何狙ってんだ」
「狙うって、何をよ」
「世の中には三倍返しっつー言葉があんだろ」
いつもなら隣に並ぶのが常なのに、ヒル魔は近寄ってこない。
まもりの後ろを、きっちり三メートルは離れてついてきている。
まるで十字架を突きつけられた吸血鬼のようだ。
「そんな・・・見返りなんて考えてないわ」
「嘘つけ」
「考えてないったら。これはお礼なの。いつもお世話になってる人への」
「そんなんだったら盆暮れ正月にやってんだろ」
「お中元とかお歳暮のこと? それこそ私たちには縁がないでしょ」
社会人であっても廃止する会社があるくらいの古いしきたり。
それならばチョコレートなどの菓子で済ませられるバレンタインデーの方が、学生であるまもりにとってよっぽど現実的だ。
「大体テメェが世話してんならともかく、テメェが手ェ焼いてる連中にやって何が楽しいんだか」
「お世話させてくれるからよ」
「ア?」
まもりは首だけを後ろに向けて、眉間の皺も深い男に視線をやる。
「私って、自分で言うのもなんだけど結構な世話焼き体質でしょ?」
「自覚はあったのか」
「ヒル魔くんのおかげでよくよく自覚したわよ」
肩をすくめ、まもりは再びずり落ちそうになった袋を抱え直した。
「でもそれって、私にお世話させてくれるみんながいないと成り立たないのよね」
世話を焼かれて喜ぶ者もいるが、放っておいて欲しかったり過度の干渉を厭ったりする者はいる。
けれど、まもりが今まで生きていて、そうやって面と向かってまもりの干渉を厭った者はいなかった。
「だから、存分にお世話させてくれるみんなに感謝してるの」
「見上げた奴隷根性だなァ」
ふ、と近寄ってきたヒル魔はまもりの手から甘い匂いのする袋を奪い取る。
「ちょ、ちょっと! 何するの!」
「テメェ寝不足だな。夜中まで色々やってたんだろ」
すぱん、と言われてまもりはぐっと詰まった。
重量のある袋の中身をちらりと見て、それが全て個別包装された上にメッセージカードまでついているのを確認して、ヒル魔は更に眉間に皺を寄せた。
「感謝すんなら相手が負担に思わねぇ程度にしとけよ」
まもりは非常に微妙な顔をした。
確かにその通りだが、ヒル魔に真っ当に諭されると何故こうも反論したくなるのか。
ヒル魔はまもりの返答がないことを気にせず、袋を手にしたまま歩き出す。
「ヒル魔くん、私が持つわ。甘くて大変でしょ?」
横に小走りで駆け寄ってきたまもりを、ヒル魔はちらりと見下ろす。
「練習中にぶっ倒れたらテメェがこの作業に徹夜したってアイツらに言うぞ」
「て、徹夜はしてないわよ!」
「似たようなもんだろ」
そう言いながら、ヒル魔は荷物を持ったまま。どうやら運んでくれるつもり、らしい。
そうしてまもりの体調も心配してくれている、らしい。
しかめっ面の上に甘い匂いで辟易した口調なので判りづらいけれど。
「なんだ、そのツラ」
「え・・・いや、その」
なんだかんだでヒル魔が口にしたことが、一番甘いような気がする、と。
そう考えてしまったら、まもりの口元がどうしてもほころぶ。
「ヒル魔くん」
「ア?」
「昨日ね、実は私、コーヒー飲みすぎてなかなか眠れなかったの」
ヒル魔はまもりのその言葉にぴん、と片眉を上げた。
慣れないドリップ方式の淹れ方に試行錯誤したコーヒーを何杯も口にした。
せっかく淹れたものだから、ただ捨てるには忍びなくて。
「新しく買ったコーヒー豆と、コーヒーミルとね、一穴ドリッパーとね、琺瑯のドリップポットが入ってるの」
それ、と指さしたのはまもりが重そうに持っていた袋。
「お菓子を包むのは母も手伝ってくれたから、そう大変じゃなかったのよ」
「ホー」
軽く応じるヒル魔の声が、僅かに機嫌良くなった。
そう気づくくらい、まもりはヒル魔の機敏に聡くなったし、身近になったのだろう。
それくらいの距離を保てるくらい、世話を焼かせてくれたヒル魔にも、お礼をしたかったのだ。
「とびっきりのを淹れるわ」
楽しみにしてね、と笑顔を向ければ。
ケケケ、といつも以上に楽しげにヒル魔は笑った。
***
普段はコーヒーメーカーを使ってるけど、ドリップでコーヒー淹れて貰ったら嬉しいかなあ、と思ったのでつらつらと。ケーキを焼くことは慣れてればそんなに大変じゃないし、カードもオーブンを使ってる間に書けば苦にならない作業だと思います。個別包装も手伝って貰えたら楽ですしね。
中にあるのはパウンドケーキにブラウニー、ガトーショコラにトリュフ、生チョコ。
どれもこれも甘くて甘くてたまらない。
「死ぬ」
たまたま登校途中にばったり顔を合わせただけなのに、開口一番ヒル魔はそう言い放った。
挨拶も何もかもすっ飛ばして、だ。
「チョコレートで人が死ぬなんて聞いたことないわ。ましてや匂いだけでなんて」
わざとらしく距離を置くヒル魔にこちらが舌打ちしたい気分だ、と嘆息してまもりは学校を目指す。
よいしょ、と結構な重量がある袋を抱え直す。
一つ一つ丁寧に包装した菓子がかさりと音を立てる。
「ンな大量に配って何狙ってんだ」
「狙うって、何をよ」
「世の中には三倍返しっつー言葉があんだろ」
いつもなら隣に並ぶのが常なのに、ヒル魔は近寄ってこない。
まもりの後ろを、きっちり三メートルは離れてついてきている。
まるで十字架を突きつけられた吸血鬼のようだ。
「そんな・・・見返りなんて考えてないわ」
「嘘つけ」
「考えてないったら。これはお礼なの。いつもお世話になってる人への」
「そんなんだったら盆暮れ正月にやってんだろ」
「お中元とかお歳暮のこと? それこそ私たちには縁がないでしょ」
社会人であっても廃止する会社があるくらいの古いしきたり。
それならばチョコレートなどの菓子で済ませられるバレンタインデーの方が、学生であるまもりにとってよっぽど現実的だ。
「大体テメェが世話してんならともかく、テメェが手ェ焼いてる連中にやって何が楽しいんだか」
「お世話させてくれるからよ」
「ア?」
まもりは首だけを後ろに向けて、眉間の皺も深い男に視線をやる。
「私って、自分で言うのもなんだけど結構な世話焼き体質でしょ?」
「自覚はあったのか」
「ヒル魔くんのおかげでよくよく自覚したわよ」
肩をすくめ、まもりは再びずり落ちそうになった袋を抱え直した。
「でもそれって、私にお世話させてくれるみんながいないと成り立たないのよね」
世話を焼かれて喜ぶ者もいるが、放っておいて欲しかったり過度の干渉を厭ったりする者はいる。
けれど、まもりが今まで生きていて、そうやって面と向かってまもりの干渉を厭った者はいなかった。
「だから、存分にお世話させてくれるみんなに感謝してるの」
「見上げた奴隷根性だなァ」
ふ、と近寄ってきたヒル魔はまもりの手から甘い匂いのする袋を奪い取る。
「ちょ、ちょっと! 何するの!」
「テメェ寝不足だな。夜中まで色々やってたんだろ」
すぱん、と言われてまもりはぐっと詰まった。
重量のある袋の中身をちらりと見て、それが全て個別包装された上にメッセージカードまでついているのを確認して、ヒル魔は更に眉間に皺を寄せた。
「感謝すんなら相手が負担に思わねぇ程度にしとけよ」
まもりは非常に微妙な顔をした。
確かにその通りだが、ヒル魔に真っ当に諭されると何故こうも反論したくなるのか。
ヒル魔はまもりの返答がないことを気にせず、袋を手にしたまま歩き出す。
「ヒル魔くん、私が持つわ。甘くて大変でしょ?」
横に小走りで駆け寄ってきたまもりを、ヒル魔はちらりと見下ろす。
「練習中にぶっ倒れたらテメェがこの作業に徹夜したってアイツらに言うぞ」
「て、徹夜はしてないわよ!」
「似たようなもんだろ」
そう言いながら、ヒル魔は荷物を持ったまま。どうやら運んでくれるつもり、らしい。
そうしてまもりの体調も心配してくれている、らしい。
しかめっ面の上に甘い匂いで辟易した口調なので判りづらいけれど。
「なんだ、そのツラ」
「え・・・いや、その」
なんだかんだでヒル魔が口にしたことが、一番甘いような気がする、と。
そう考えてしまったら、まもりの口元がどうしてもほころぶ。
「ヒル魔くん」
「ア?」
「昨日ね、実は私、コーヒー飲みすぎてなかなか眠れなかったの」
ヒル魔はまもりのその言葉にぴん、と片眉を上げた。
慣れないドリップ方式の淹れ方に試行錯誤したコーヒーを何杯も口にした。
せっかく淹れたものだから、ただ捨てるには忍びなくて。
「新しく買ったコーヒー豆と、コーヒーミルとね、一穴ドリッパーとね、琺瑯のドリップポットが入ってるの」
それ、と指さしたのはまもりが重そうに持っていた袋。
「お菓子を包むのは母も手伝ってくれたから、そう大変じゃなかったのよ」
「ホー」
軽く応じるヒル魔の声が、僅かに機嫌良くなった。
そう気づくくらい、まもりはヒル魔の機敏に聡くなったし、身近になったのだろう。
それくらいの距離を保てるくらい、世話を焼かせてくれたヒル魔にも、お礼をしたかったのだ。
「とびっきりのを淹れるわ」
楽しみにしてね、と笑顔を向ければ。
ケケケ、といつも以上に楽しげにヒル魔は笑った。
***
普段はコーヒーメーカーを使ってるけど、ドリップでコーヒー淹れて貰ったら嬉しいかなあ、と思ったのでつらつらと。ケーキを焼くことは慣れてればそんなに大変じゃないし、カードもオーブンを使ってる間に書けば苦にならない作業だと思います。個別包装も手伝って貰えたら楽ですしね。
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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