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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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帰宅

(ヒルまも)

※お盆ネタです。
※薄暗い感じです。

+ + + + + + + + + +
「ただいまー」
声を掛けて入ると、そこにはヒル魔くんが一人コーヒーを飲んでいた。
「またコーヒー? あんまり飲み過ぎると身体に悪いわよ?」
言いながらまもりは夕食の支度をしようと台所に立つ。
その前にぐっちゃりと汚れたシンクにげんなりとする。
なんでこんなに汚せるのかしら。
まもりは腕まくりをすると、シンクに向かう。
蛇口を捻ろうとして、ふと思い出した。
「そうそう、ヒル魔くん、今日は仕事じゃないの?」
ヒル魔は振り返らない。まもりはもう、と呟いてそちらに向かう。
「姉崎」
「なあに」
すっかり聞き慣れた声に、まもりは微笑んで近寄って。
手を、伸ばそうとして。
ヒル魔くんにはあんまり似合わない匂いを感じて手を止めた。
こちらを見ないヒル魔くん。
ねえ、どうしたの。
「ヒル魔くん・・・?」
ぽつんと呟かれた私の名前、けれどヒル魔くんの視線は違うところにある。
なんで?
私はここにいるわ。どうしたの?
ふと後ろから手を引かれる。
子供の手だ。
でも振り返っても顔は判らない。
小さな手だけが私の手と繋がっているのが判る。
あり得ない光景に一度瞬いてふと思い出した。
あ。
そうか。
・・・そうだったっけ。
私。
「ごめんね。また忘れちゃったわ」
小さな手がきゅっと私の手を握る。
それだけだ。
だって私はこの子の顔を知らない。この子の声を知らない。
この子も私の顔を知らない。
―――二人揃って目が覚めることがなかったから。

私たちは二人揃っていつもこの時期に帰って来る。
その度にいつもどおり過ぎて、変わらないヒル魔くんを眺めるんだった。
「・・・私が忘れちゃ駄目よね。ヒル魔くんが忘れてくれなきゃ」
返事はなかったけれど、繋いだ手がきゅっと力を込めた。

カレンダーにはお盆の表示。
部屋にそぐわない仏壇には二人分の位牌。
漂う線香の香り。
悄然と一人座るヒル魔くん。

もう私たちには触ることさえ出来ないひと。
私は充分幸せだったと伝えてあげたいのに、それすら叶わなくて、切なくて私は涙をこぼす。


ごめんね。
置いていっちゃって、ごめんね。
・・・お父さんにさせてあげられなくて、ごめんね。



***
だいぶ前に書いていたのですが、お盆に合わせてアップです。
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無題
泣けました。
nene 2008/08/13(Wed)23:25 編集
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