旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
学年が上がり、新入生達が学舎に足を踏み入れる、春。
いつものように制服を着崩した状態で足音も立てず、けれど見た目には派手な男が一年生の教室前の廊下を歩いていた。蛭魔妖一。泥門高校の悪魔と呼ばれる男である。
「・・・ッ!!」
うっかりそれを見てしまった一年生は青ざめ硬直するか、悲鳴を上げて逃げるかのどちらかに別れた。
けれどそれには構わず、一年二組の教室に彼は躊躇いもなく入ると、血の気が引いて皆同じように青い顔なのをぐるりと見回し、そして目的の人物を見つけ出した。
「オイ」
すたすたと―――足音は立てていないのだけれど気分だ―――彼は教室の真ん中あたりで周囲に構わず本を読んでいる女生徒の前に立った。
「聞こえてるんだろ」
くい、と本を指で引くと、迷惑そうな顔で彼女は顔を上げた。
そんな彼女に一言、彼はにやりと笑って口を開く。
「アメフト部に入れ」
けれど彼女は眉間に皺を寄せた迷惑そうな顔で、すっぱりと返した。
「嫌」
ヒル魔が一年生の女生徒をわざわざ勧誘しに出向いた、と聞いた全校生徒はこぞって彼女を見に行った。
あの悪魔がわざわざ声を掛ける少女だ、何か特筆すべきことがあるのだろう、と。
けれど一言で言えば純和風、悪く言えば地味、な女の子としか見えない彼女に皆拍子抜けしてしまう。
肩より少し下まで伸ばされた漆黒の髪の毛は真っ直ぐ。
黒目がちな瞳は周囲の音など気にせず活字を辿っている。
そこそこ可愛い顔立ちなのだろうけれど、俯いていてよくは判らない。随分と小柄だ。
と、そこについ先日までこの階にたむろしていたアメフト部二年生がひょこひょこと顔を出した。
「あの子がヒル魔先輩が声掛けた子だって!」
モン太が噂の少女を指さした。
なぜ揃って皆いるかというと、この噂を聞きつけ、そこまでしてヒル魔が勧誘するなら即戦力なのだろう、と考えたのである。
「じゃあ何が何でも勧誘しなきゃ駄目なんだね・・・」
疲れたようにため息をつくセナ。その後ろに三兄弟が不服を申し立てる。
「「「なんで俺らまで来る必要があんだよ」」」
「アハーハー! じゃあ僕が!」
瀧が回りながらそちらに進もうとするが、それは十文字が取り押さえる。
「バカ! テメェが行ったら話がこじれる!」
「フゴ!」
「テメェもだフゴデブ!」
小結を戸叶が制止し、黒木が高らかに宣言する。
「やっぱりここはセナだろ!」
「ええええ!?」
こそこそと頭を付き合わせつつ、皆に押されるようにしてセナが彼女の前に連れて行かれるが。
彼女はまるで気にせず、おもむろに立ち上がると廊下に出てしまった。
「あ・・・」
「おい追いかけろよ!」
「で、でも!」
トイレとかだったらどうするの、と焦るセナの前から彼女はどんどん遠ざかる。
少しでも目を逸らすと見逃しそうな、まるで気配のない彼女に誰かを彷彿としつつ、セナは追い立てられるように後を追う。当然他の面子も。
そうして歩いていく彼女の姿は廊下を曲がって階段へと消える。そこまで追って。
「!」
まるで手品みたいに彼女を捕らえた長い腕に目を瞠る。
その持ち主は彼女を立入禁止区域のはずの屋上へと瞬く間に連れ去った。
「アメフト部に入れ」
「嫌」
「なんでだ?」
「それはこっちの台詞よ」
イライラとしたような女生徒の声に被るヒル魔の声は随分と楽しげだ。
「いいじゃねぇか、せっかく泥門に入ったんだしナァ」
「ッ、だ・れ・の! せいよ!」
こそこそと後を追ってきた二年生一同はドアの隙間からこっそりと屋上を伺う。
彼らはまるで決闘でもしそうな様子で向かい合って立っている。
(なんだか、去年の初めのまもり姉ちゃんとヒル魔さんの時みたい)
セナは内心でそう独り言ちる。
けれどあの時よりもヒル魔の様子は楽しげに見えた。もうクリスマスボウルという山を越えて実質引退だから、焦る事はないのだろうか。でも、それならなんでわざわざ彼女をアメフト部に勧誘するのだろうか。
疑問ばかりが膨れあがる。
「テメェにゃ主務にしてもマネージャーにしても向いてるだろ」
「ただでさえ教室なんかで声掛けられて凄く迷惑なの。話しかけないで!」
「オヤ、アノ日デスカ?」
「煩い!! バカ!!」
彼女は踵を返して帰ろうとするが。
「イイノカナァ?」
「何が!」
彼女は振り返ってヒル魔を見つめてしまう。
「学校中にばらすぜ?」
「何を!」
「いいのか、言って?」
ニヤニヤと笑うヒル魔の手には脅迫手帳はない。
しかも何か悪戯を企むような楽しげな表情にあまり害意はなさそうで。
「俺とお前の仲を、ナァ?」
ヒル魔がすっと近寄って手を差し伸べるが。
「触らないで! 大体誰に言っても信じるわけないじゃない!」
ぱん、と乾いた音を立てて彼女はヒル魔の手を払いのける。
「迷惑なのよ、ホントに! もう私に構わないで!!」
「それは無理な相談だナァ」
「無理じゃない! 私の平穏にアンタなんていらないのよ!」
ぎっと音がしそうな程に睨みつけてもヒル魔は動じる気配がない。
まるで、飼い猫の不機嫌など全て承知している飼い主の余裕のような。
「無理だぜ」
楽しげな声はすっと屋上からの出口に注がれる視線と共にセナ達にも届いた。
「ギャラリーには充分な頭数だ」
「っ!」
ば、と彼女が振り返ると同時に、ヒル魔の言葉に動揺したアメフト部二年生達が雪崩のように扉の外へとあふれ出た。
「イタタ」
「す、すみません・・・」
呻く二年生にヒル魔はにやりと嗤う。
「オイテメェら、いい事を教えてやろう」
「やめてよ! 言わないで!」
将棋倒しになった二年生達はそれでも好奇心でヒル魔の言葉を待つ。
慌ててその口を押さえようとした彼女の手を、ヒル魔は容易く捕らえた。
「こいつは俺の妹だ」
「「「「「「「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!??」」」」」」」
全員の目が、落ちるんじゃないかと思う程に見開かれた。
ヒル魔に取られた腕を振り払う彼女の名前は蛭魔性ではなかったし、見た目に全然似ていないではないか。
けれどセナは一人納得した。
ああ、あの背中は確かにヒル魔に似ていた、と。
「・・・嘘よ。どう見たって似てないでしょ」
冷静な声だが、幽かに震えている。
「似てない兄妹なんて沢山いるからナァ。糞バカと糞チアだってそうだろうが」
「皆さん、この悪魔の言う事を信じないで下さい」
嫌そうな顔、纏う雰囲気、どこをどうとっても似てない。とことん似てない。日本とアメリカくらい似てない。
「え、嘘、ッスか?」
モン太が恐る恐る尋ねるが。
「本当だ。性が違うのはカテイノジジョウだ」
ヒル魔の諸々ありましてネェ、という声に皆はじっと彼女を見つめた。居心地が悪そうに彼女は身動ぐ。
「・・・何ですか」
「妹さんでしたか」
「ムキャー! ヒル魔先輩の妹さん・・・!」
「違います!」
「ハ、成程妹か」
「ハァ、妹なら納得だな」
「ハァアア、ヒル魔に妹かァ」
「違いますって!」
否定する彼女に、セナがにっこりと笑う。
「だって似てますよ」
その言葉にものすごく、ヒル魔は嬉しそうに、彼女は嫌そうに顔を歪めた。
セナの言葉に他の面子も噛みつく。
「似てる!? どこが!?」
「え、背中とか足音がしないところとか」
「微妙だなァそれ」
騒ぐ面子の中から瀧ががばりと立ち上がった。
「アハーハー! 僕は一目でわかったよ! だってムッシューヒル魔は彼女をかわいがってるじゃないか! 僕のようにね!」
びしっと彼女に向かってポーズを決めた瀧に、ヒル魔は腐っても兄貴だ、わかってんじゃねぇか、と笑っているが。
「・・・・・・もう私に関わらないで!」
彼女は肩を怒らせ未だ出口に折り重なる二年生達を乗り越え階段に出ようとするが、ヒル魔の手は容易く彼女の襟首を掴んだ。小柄な彼女はそのまま容易く持ち上げられてしまう。
まるで猫扱い。彼女はさしずめ黒猫だろうか。
「離して!」
「それよりも言う事があるんじゃねぇか?」
こいつらは事実を知ったぞ? 口止めさせるなら今しかない、と。
ヒル魔に重ねて告げられ、彼女は誰も信じないと言い張ったが。
「ああ・・・そういやヒル魔にビビんねぇで普通に文句言える女ってマネージャー以外にいなかったから、もしかして彼女なんじゃねぇかって噂があったな」
ふと思い出した十文字に言われ、彼女はさーっと青ざめた。
「誰がこんな鬼畜な悪魔と付き合えるの!?」
「こんなに優しい兄貴捕まえてなにを言うやら」
「どの口が言うのよ! はなせーっ!!」
フギャーッ! とまるで猫のような声を上げて怒る彼女は心底嫌がっているようで。
けれどなんだか慣れた距離感に妹だという一言はますます信憑性が高くなる。
「そんな風にしてるとホントに兄妹なんだなって判るッスね」
感心したようなモン太の声に、彼女は苦り切った顔で力を抜いた。
ぷらんと下がった状態になった彼女をヒル魔は下ろす。
「アメフト部に入るまでずっとこんな風に勧誘するぞ」
「脅迫だよそれ」
一転して力無い呟きにヒル魔はむしろ胸を張るくらいの勢いで口を開いた。
「可愛い妹を目の届くところに置きたいという兄心だ」
「黙って!」
ヒル魔がその頭を撫でようとした手をまた叩かれ、それでもめげずに手を伸ばすのを戸叶が的確に表現した。
「おお・・・ヒル魔が思春期の娘に構われないオヤジみたいになってるぞ」
・・・それを聞きつけたヒル魔にものすごい形相で睨まれて、さすがの彼も慌てて顔をジャンプで覆ってしまったのだけれど。
***
ヒル魔さんに妹がいて欲しい妄想第二弾(第一弾は拍手でやりました/再録はありません)でした。
なんとなく似てるし仲良しという設定ではなくとことん似てないのはどうよ、と友人に言われてどうなるかね、と書いたらこんなになりました。Eちゃんどうよ! こんなん出たよ!
いつものように制服を着崩した状態で足音も立てず、けれど見た目には派手な男が一年生の教室前の廊下を歩いていた。蛭魔妖一。泥門高校の悪魔と呼ばれる男である。
「・・・ッ!!」
うっかりそれを見てしまった一年生は青ざめ硬直するか、悲鳴を上げて逃げるかのどちらかに別れた。
けれどそれには構わず、一年二組の教室に彼は躊躇いもなく入ると、血の気が引いて皆同じように青い顔なのをぐるりと見回し、そして目的の人物を見つけ出した。
「オイ」
すたすたと―――足音は立てていないのだけれど気分だ―――彼は教室の真ん中あたりで周囲に構わず本を読んでいる女生徒の前に立った。
「聞こえてるんだろ」
くい、と本を指で引くと、迷惑そうな顔で彼女は顔を上げた。
そんな彼女に一言、彼はにやりと笑って口を開く。
「アメフト部に入れ」
けれど彼女は眉間に皺を寄せた迷惑そうな顔で、すっぱりと返した。
「嫌」
ヒル魔が一年生の女生徒をわざわざ勧誘しに出向いた、と聞いた全校生徒はこぞって彼女を見に行った。
あの悪魔がわざわざ声を掛ける少女だ、何か特筆すべきことがあるのだろう、と。
けれど一言で言えば純和風、悪く言えば地味、な女の子としか見えない彼女に皆拍子抜けしてしまう。
肩より少し下まで伸ばされた漆黒の髪の毛は真っ直ぐ。
黒目がちな瞳は周囲の音など気にせず活字を辿っている。
そこそこ可愛い顔立ちなのだろうけれど、俯いていてよくは判らない。随分と小柄だ。
と、そこについ先日までこの階にたむろしていたアメフト部二年生がひょこひょこと顔を出した。
「あの子がヒル魔先輩が声掛けた子だって!」
モン太が噂の少女を指さした。
なぜ揃って皆いるかというと、この噂を聞きつけ、そこまでしてヒル魔が勧誘するなら即戦力なのだろう、と考えたのである。
「じゃあ何が何でも勧誘しなきゃ駄目なんだね・・・」
疲れたようにため息をつくセナ。その後ろに三兄弟が不服を申し立てる。
「「「なんで俺らまで来る必要があんだよ」」」
「アハーハー! じゃあ僕が!」
瀧が回りながらそちらに進もうとするが、それは十文字が取り押さえる。
「バカ! テメェが行ったら話がこじれる!」
「フゴ!」
「テメェもだフゴデブ!」
小結を戸叶が制止し、黒木が高らかに宣言する。
「やっぱりここはセナだろ!」
「ええええ!?」
こそこそと頭を付き合わせつつ、皆に押されるようにしてセナが彼女の前に連れて行かれるが。
彼女はまるで気にせず、おもむろに立ち上がると廊下に出てしまった。
「あ・・・」
「おい追いかけろよ!」
「で、でも!」
トイレとかだったらどうするの、と焦るセナの前から彼女はどんどん遠ざかる。
少しでも目を逸らすと見逃しそうな、まるで気配のない彼女に誰かを彷彿としつつ、セナは追い立てられるように後を追う。当然他の面子も。
そうして歩いていく彼女の姿は廊下を曲がって階段へと消える。そこまで追って。
「!」
まるで手品みたいに彼女を捕らえた長い腕に目を瞠る。
その持ち主は彼女を立入禁止区域のはずの屋上へと瞬く間に連れ去った。
「アメフト部に入れ」
「嫌」
「なんでだ?」
「それはこっちの台詞よ」
イライラとしたような女生徒の声に被るヒル魔の声は随分と楽しげだ。
「いいじゃねぇか、せっかく泥門に入ったんだしナァ」
「ッ、だ・れ・の! せいよ!」
こそこそと後を追ってきた二年生一同はドアの隙間からこっそりと屋上を伺う。
彼らはまるで決闘でもしそうな様子で向かい合って立っている。
(なんだか、去年の初めのまもり姉ちゃんとヒル魔さんの時みたい)
セナは内心でそう独り言ちる。
けれどあの時よりもヒル魔の様子は楽しげに見えた。もうクリスマスボウルという山を越えて実質引退だから、焦る事はないのだろうか。でも、それならなんでわざわざ彼女をアメフト部に勧誘するのだろうか。
疑問ばかりが膨れあがる。
「テメェにゃ主務にしてもマネージャーにしても向いてるだろ」
「ただでさえ教室なんかで声掛けられて凄く迷惑なの。話しかけないで!」
「オヤ、アノ日デスカ?」
「煩い!! バカ!!」
彼女は踵を返して帰ろうとするが。
「イイノカナァ?」
「何が!」
彼女は振り返ってヒル魔を見つめてしまう。
「学校中にばらすぜ?」
「何を!」
「いいのか、言って?」
ニヤニヤと笑うヒル魔の手には脅迫手帳はない。
しかも何か悪戯を企むような楽しげな表情にあまり害意はなさそうで。
「俺とお前の仲を、ナァ?」
ヒル魔がすっと近寄って手を差し伸べるが。
「触らないで! 大体誰に言っても信じるわけないじゃない!」
ぱん、と乾いた音を立てて彼女はヒル魔の手を払いのける。
「迷惑なのよ、ホントに! もう私に構わないで!!」
「それは無理な相談だナァ」
「無理じゃない! 私の平穏にアンタなんていらないのよ!」
ぎっと音がしそうな程に睨みつけてもヒル魔は動じる気配がない。
まるで、飼い猫の不機嫌など全て承知している飼い主の余裕のような。
「無理だぜ」
楽しげな声はすっと屋上からの出口に注がれる視線と共にセナ達にも届いた。
「ギャラリーには充分な頭数だ」
「っ!」
ば、と彼女が振り返ると同時に、ヒル魔の言葉に動揺したアメフト部二年生達が雪崩のように扉の外へとあふれ出た。
「イタタ」
「す、すみません・・・」
呻く二年生にヒル魔はにやりと嗤う。
「オイテメェら、いい事を教えてやろう」
「やめてよ! 言わないで!」
将棋倒しになった二年生達はそれでも好奇心でヒル魔の言葉を待つ。
慌ててその口を押さえようとした彼女の手を、ヒル魔は容易く捕らえた。
「こいつは俺の妹だ」
「「「「「「「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!??」」」」」」」
全員の目が、落ちるんじゃないかと思う程に見開かれた。
ヒル魔に取られた腕を振り払う彼女の名前は蛭魔性ではなかったし、見た目に全然似ていないではないか。
けれどセナは一人納得した。
ああ、あの背中は確かにヒル魔に似ていた、と。
「・・・嘘よ。どう見たって似てないでしょ」
冷静な声だが、幽かに震えている。
「似てない兄妹なんて沢山いるからナァ。糞バカと糞チアだってそうだろうが」
「皆さん、この悪魔の言う事を信じないで下さい」
嫌そうな顔、纏う雰囲気、どこをどうとっても似てない。とことん似てない。日本とアメリカくらい似てない。
「え、嘘、ッスか?」
モン太が恐る恐る尋ねるが。
「本当だ。性が違うのはカテイノジジョウだ」
ヒル魔の諸々ありましてネェ、という声に皆はじっと彼女を見つめた。居心地が悪そうに彼女は身動ぐ。
「・・・何ですか」
「妹さんでしたか」
「ムキャー! ヒル魔先輩の妹さん・・・!」
「違います!」
「ハ、成程妹か」
「ハァ、妹なら納得だな」
「ハァアア、ヒル魔に妹かァ」
「違いますって!」
否定する彼女に、セナがにっこりと笑う。
「だって似てますよ」
その言葉にものすごく、ヒル魔は嬉しそうに、彼女は嫌そうに顔を歪めた。
セナの言葉に他の面子も噛みつく。
「似てる!? どこが!?」
「え、背中とか足音がしないところとか」
「微妙だなァそれ」
騒ぐ面子の中から瀧ががばりと立ち上がった。
「アハーハー! 僕は一目でわかったよ! だってムッシューヒル魔は彼女をかわいがってるじゃないか! 僕のようにね!」
びしっと彼女に向かってポーズを決めた瀧に、ヒル魔は腐っても兄貴だ、わかってんじゃねぇか、と笑っているが。
「・・・・・・もう私に関わらないで!」
彼女は肩を怒らせ未だ出口に折り重なる二年生達を乗り越え階段に出ようとするが、ヒル魔の手は容易く彼女の襟首を掴んだ。小柄な彼女はそのまま容易く持ち上げられてしまう。
まるで猫扱い。彼女はさしずめ黒猫だろうか。
「離して!」
「それよりも言う事があるんじゃねぇか?」
こいつらは事実を知ったぞ? 口止めさせるなら今しかない、と。
ヒル魔に重ねて告げられ、彼女は誰も信じないと言い張ったが。
「ああ・・・そういやヒル魔にビビんねぇで普通に文句言える女ってマネージャー以外にいなかったから、もしかして彼女なんじゃねぇかって噂があったな」
ふと思い出した十文字に言われ、彼女はさーっと青ざめた。
「誰がこんな鬼畜な悪魔と付き合えるの!?」
「こんなに優しい兄貴捕まえてなにを言うやら」
「どの口が言うのよ! はなせーっ!!」
フギャーッ! とまるで猫のような声を上げて怒る彼女は心底嫌がっているようで。
けれどなんだか慣れた距離感に妹だという一言はますます信憑性が高くなる。
「そんな風にしてるとホントに兄妹なんだなって判るッスね」
感心したようなモン太の声に、彼女は苦り切った顔で力を抜いた。
ぷらんと下がった状態になった彼女をヒル魔は下ろす。
「アメフト部に入るまでずっとこんな風に勧誘するぞ」
「脅迫だよそれ」
一転して力無い呟きにヒル魔はむしろ胸を張るくらいの勢いで口を開いた。
「可愛い妹を目の届くところに置きたいという兄心だ」
「黙って!」
ヒル魔がその頭を撫でようとした手をまた叩かれ、それでもめげずに手を伸ばすのを戸叶が的確に表現した。
「おお・・・ヒル魔が思春期の娘に構われないオヤジみたいになってるぞ」
・・・それを聞きつけたヒル魔にものすごい形相で睨まれて、さすがの彼も慌てて顔をジャンプで覆ってしまったのだけれど。
***
ヒル魔さんに妹がいて欲しい妄想第二弾(第一弾は拍手でやりました/再録はありません)でした。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
HP:
性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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