旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりは疲労感に苛まれながらも腕の中で無心に乳を吸う赤ん坊を微笑んで見下ろした。
妊娠が判ったときには正直今更もう一人?! と思ったけれど、こうして生まれてくれたらやはり嬉しいものだ。
こうやって乳を飲んでくれたら痛みは忘れてしまう。母って強いわ、とまもりは内心独り言ちる。
「ご苦労」
そう一言労って、頭をゴシャゴシャとなで回すヒル魔にまもりは素直に笑う。
これがヒル魔にとって精一杯の表現なのだ。
長い付き合いでその指が労りに満ちているのだとよく判っているから、ぞんざいな口調でも腹が立たない。
彼は傍らに椅子を引き、隣にどっかりと座る。
「みんなは?」
「学校が終わったら直行する、だと」
今日ばかりは部活を休む、というアヤと妖介、護の三人にヒル魔もにやりと笑っただけだった。
新しい家族の誕生が皆、嬉しいのだ。
乳を飲み終えた赤ん坊をヒル魔が慣れた手つきで抱き上げる。
何度見ても赤ん坊を抱くヒル魔、というのは新鮮で、まもりは目を細めた。
と。
そこに扉を叩く音。そっと開かれたところから、金髪が覗いていた。
「どうぞ。入っても大丈夫よ」
「ホント?」
ひょこ、と顔を出したのは妖介。その後にアヤが続き、見れば護もいる。
「三人で待ち合わせでもしたの?」
「んーん。たまたま受付してたら二人が来たんだよ」
護が答える。ちなみに彼は今年中学生になったので、学ラン姿だ。
「そう。丁度良かった」
赤ん坊に考慮して大分小さな声で話しながら、三人は部屋に入った。
部屋は個室で、扉を閉めれば気兼ねしないでもいいのだが、あまり来慣れない場所に子供たちはちょっと落ち着かない様子だ。椅子に座って赤ん坊を抱く父親をどう見たのか、三人は一瞬固まるが、思い直してヒル魔の所にわらわらと集まる。
「小っさー」
「サルみたいだって聞くけど、本当だね」
弟二人が覗き込むだけで手を伸ばさないのを余所に、アヤはすっと手を出す。
慎重にヒル魔から赤ん坊を受け取り、アヤは意外な程手慣れたように抱いた。
小さな命を抱いて、アヤの顔がふわりとほころぶ。無意識なそれは、はっとするほど綺麗で。
「ちょ、兄ちゃんカメラ!」
「ヒル魔くん、カメラないカメラ!?」
「携帯!!」
三人が一斉にカメラを向けてシャッターを切るものだから、アヤは眉を寄せた。
撮った写真を四人で覗き込むのを呆れたように見て、腕の中の赤ん坊に視線を戻す。
小さく、柔らかく、暖かな命。
自分もかつてはこうだった、と言われてもにわかには信じがたい。
「なんだかアヤの方がお母さんみたいね」
「姉ちゃんが抱いてると本当に天使みたい」
赤ん坊の色素も薄いようで、ちょぼちょぼと生えている頭髪はまもり譲りの茶色だ。
「目、何色かな」
「青だったら母さんそっくりだね」
「あれ? この子、男の子? 女の子?」
生まれるまで性別はナイショにしてください、と医者に前もって言っていたため、まもりも生まれてから知ったこの子の性別は。
「女の子よ」
「「やった!!」」
それに妖介と護は声を上げて喜んだ。どっちでも嬉しいが出来れば妹がいい、それも母さん似の、というのがこのところの家族の話題だったのだ。
「どんな名前にするの?」
「うーん、それがね、まだ決めてないのよ。ヒル魔くんは希望の名前、ある?」
「あかり」
「どんな字?」
「平仮名」
「あかりちゃん! かわいい!」
「あかりちゃん、お兄ちゃんですよ~」
はしゃぐ弟たちの隙間から、アヤは母親に赤ん坊を返す。
もにゃもにゃと口元を動かす小さな命は、母の腕に抱かれてぱちりと目を開いた。
「あ、碧だ!」
「本当に母さん似なんだ!」
顔を見合わせた妖介と護はそのまま視線を横の父親に向けた。
楽しげに歪んだ唇に父も今その瞳を見たのだと知る。
彼も確か、兄弟と同じく母親似の娘が欲しいと言っていなかっただろうか。
そんなことを言っていても希望通りとは限らないだろうに、宣言通りの色彩に二人は物言いたげな視線を向けるばかり。
「父さんって魔法でも使えんの?」
「ア? 性別なら生み分けができんだよ」
「でも色は違うじゃない」
「そんなもん気合いでなんとかしろ」
「人には無理だよ!」
わいわいと騒ぐ男衆にまもりの腕であかりが小さく泣き声を上げる。途端にみんなして動きが止まった。
「姉崎似の平和主義者だな」
ヒル魔の一言にまもりは吹き出す。
「まだ生まれたばっかりなのに!」
「わかんねぇぞ、アヤの時だって生まれた直後からだろ」
「ああ、あれは不思議だったわね」
過去の話に盛り上がる両親の隣で姉弟は顔を見合わせる。
「母さん似の性格だといいね」
「やっぱり育て方次第じゃない?」
「そうね」
そうして姉弟は心を一つにした。
是非ともこの妹は天使の如く育てよう、と。
そんなみんなの思惑を余所に、あかりは大きくあくびをした。
***
というわけでヒルまも一家待望の二女でした。ヒルまも一家の新たなアイドルです。
さすがに四人目ともなるとヒル魔さんも新生児であっても抱っこできます。
この後あかりちゃんの面倒を見る争奪戦が始まりそうです。まもり母さんは楽できて幸せかも(笑)
妊娠が判ったときには正直今更もう一人?! と思ったけれど、こうして生まれてくれたらやはり嬉しいものだ。
こうやって乳を飲んでくれたら痛みは忘れてしまう。母って強いわ、とまもりは内心独り言ちる。
「ご苦労」
そう一言労って、頭をゴシャゴシャとなで回すヒル魔にまもりは素直に笑う。
これがヒル魔にとって精一杯の表現なのだ。
長い付き合いでその指が労りに満ちているのだとよく判っているから、ぞんざいな口調でも腹が立たない。
彼は傍らに椅子を引き、隣にどっかりと座る。
「みんなは?」
「学校が終わったら直行する、だと」
今日ばかりは部活を休む、というアヤと妖介、護の三人にヒル魔もにやりと笑っただけだった。
新しい家族の誕生が皆、嬉しいのだ。
乳を飲み終えた赤ん坊をヒル魔が慣れた手つきで抱き上げる。
何度見ても赤ん坊を抱くヒル魔、というのは新鮮で、まもりは目を細めた。
と。
そこに扉を叩く音。そっと開かれたところから、金髪が覗いていた。
「どうぞ。入っても大丈夫よ」
「ホント?」
ひょこ、と顔を出したのは妖介。その後にアヤが続き、見れば護もいる。
「三人で待ち合わせでもしたの?」
「んーん。たまたま受付してたら二人が来たんだよ」
護が答える。ちなみに彼は今年中学生になったので、学ラン姿だ。
「そう。丁度良かった」
赤ん坊に考慮して大分小さな声で話しながら、三人は部屋に入った。
部屋は個室で、扉を閉めれば気兼ねしないでもいいのだが、あまり来慣れない場所に子供たちはちょっと落ち着かない様子だ。椅子に座って赤ん坊を抱く父親をどう見たのか、三人は一瞬固まるが、思い直してヒル魔の所にわらわらと集まる。
「小っさー」
「サルみたいだって聞くけど、本当だね」
弟二人が覗き込むだけで手を伸ばさないのを余所に、アヤはすっと手を出す。
慎重にヒル魔から赤ん坊を受け取り、アヤは意外な程手慣れたように抱いた。
小さな命を抱いて、アヤの顔がふわりとほころぶ。無意識なそれは、はっとするほど綺麗で。
「ちょ、兄ちゃんカメラ!」
「ヒル魔くん、カメラないカメラ!?」
「携帯!!」
三人が一斉にカメラを向けてシャッターを切るものだから、アヤは眉を寄せた。
撮った写真を四人で覗き込むのを呆れたように見て、腕の中の赤ん坊に視線を戻す。
小さく、柔らかく、暖かな命。
自分もかつてはこうだった、と言われてもにわかには信じがたい。
「なんだかアヤの方がお母さんみたいね」
「姉ちゃんが抱いてると本当に天使みたい」
赤ん坊の色素も薄いようで、ちょぼちょぼと生えている頭髪はまもり譲りの茶色だ。
「目、何色かな」
「青だったら母さんそっくりだね」
「あれ? この子、男の子? 女の子?」
生まれるまで性別はナイショにしてください、と医者に前もって言っていたため、まもりも生まれてから知ったこの子の性別は。
「女の子よ」
「「やった!!」」
それに妖介と護は声を上げて喜んだ。どっちでも嬉しいが出来れば妹がいい、それも母さん似の、というのがこのところの家族の話題だったのだ。
「どんな名前にするの?」
「うーん、それがね、まだ決めてないのよ。ヒル魔くんは希望の名前、ある?」
「あかり」
「どんな字?」
「平仮名」
「あかりちゃん! かわいい!」
「あかりちゃん、お兄ちゃんですよ~」
はしゃぐ弟たちの隙間から、アヤは母親に赤ん坊を返す。
もにゃもにゃと口元を動かす小さな命は、母の腕に抱かれてぱちりと目を開いた。
「あ、碧だ!」
「本当に母さん似なんだ!」
顔を見合わせた妖介と護はそのまま視線を横の父親に向けた。
楽しげに歪んだ唇に父も今その瞳を見たのだと知る。
彼も確か、兄弟と同じく母親似の娘が欲しいと言っていなかっただろうか。
そんなことを言っていても希望通りとは限らないだろうに、宣言通りの色彩に二人は物言いたげな視線を向けるばかり。
「父さんって魔法でも使えんの?」
「ア? 性別なら生み分けができんだよ」
「でも色は違うじゃない」
「そんなもん気合いでなんとかしろ」
「人には無理だよ!」
わいわいと騒ぐ男衆にまもりの腕であかりが小さく泣き声を上げる。途端にみんなして動きが止まった。
「姉崎似の平和主義者だな」
ヒル魔の一言にまもりは吹き出す。
「まだ生まれたばっかりなのに!」
「わかんねぇぞ、アヤの時だって生まれた直後からだろ」
「ああ、あれは不思議だったわね」
過去の話に盛り上がる両親の隣で姉弟は顔を見合わせる。
「母さん似の性格だといいね」
「やっぱり育て方次第じゃない?」
「そうね」
そうして姉弟は心を一つにした。
是非ともこの妹は天使の如く育てよう、と。
そんなみんなの思惑を余所に、あかりは大きくあくびをした。
***
というわけでヒルまも一家待望の二女でした。ヒルまも一家の新たなアイドルです。
さすがに四人目ともなるとヒル魔さんも新生児であっても抱っこできます。
この後あかりちゃんの面倒を見る争奪戦が始まりそうです。まもり母さんは楽できて幸せかも(笑)
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鳥(とり)
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女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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