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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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巧妙な蛇(上)

(ヒルまも未来)
※いずれのシリーズにも属しません

+ + + + + + + + + +
まもりは震える指でヒル魔のカフスを留めていた。
しかし段々堪えられなくなり、とうとう肩を震わせる。
目の前で震える茶色い頭を、ヒル魔は射殺しそうな鋭さで睨め付ける。
不穏な気配を察しても、まもりは震えを止められない。
「・・・この糞笑い上戸が」
「~~~ぷ――――っ!!」
とうとうこらえられず、まもりは吹き出してしまう。
「だ、だって、すごい格好よ、ヒル魔くんてば!」
ヒル魔は目の間に落ちてきた見慣れない色の前髪を無言で掻き上げた。


夕食後、両親に改まった顔で彼氏を紹介してほしい、と言われたときまもりは固まった。
「まもりも彼氏がいるんでしょ? そろそろ私たちに紹介してくれてもいいんじゃない?」
「え・・・」
「なにか不都合がある?」
「不都合・・・」
歯切れの悪い様子に父は厳しい顔になる。
「まさか親に紹介出来ないような男と付き合っているんじゃないね?」
「ええ、と・・・」
彼に相談するから、とその場では即答しなかったが、まもりは困った。
ヒル魔があの格好をやめるわけがないと思っていたし、そもそも彼女の両親への挨拶をするような男ではない。
仮に来てくれたとして、高校の時から変わらないあの格好のまま挨拶した日には、父の血管が切れるのではないかと危惧したのだ。
誰か適当な相手を彼氏と偽って連れて行くか、とも思ったが、それがヒル魔にばれたらまた煩いだろうし。
そもそも嘘の付けない性質のまもりである。
どうしよう、と困り果ててふさぎがちになったまもりに、ヒル魔は不信感を募らせていた。
結局、先に尋ねたのはヒル魔の方だった。
「テメェ、何隠し事してやがる」
「え」
見つめるヒル魔の顔に不信感と、少々の心配と。
他人では判らないだろうその感情が読める程には付き合いは長い。
まもりは歯切れ悪く答える。
「・・・隠し事、っていうか、困り事っていうか・・・」
「なにが」
「・・・あの・・・」
まもりは逡巡する。なんと言えばいいのか。
常にはない彼女の戸惑いようにヒル魔は眉を寄せたまま尋ねる。
「妊娠したか」
「っ?!」
それにまもりは飛び上がって否定しようとしたが、思い直して尋ね返す。
「・・・そうだって言ったら、どうする?」
まもりは言葉を待つ。ヒル魔はじっとまもりを見つめてから口を開いた。
「別れる」
「!!」
それにまもりは目を見開いた。咄嗟に声が出ない。
そんなまさか、やっぱり、でも、どうしよう、と意味を成さない単語が脳裏を空回る。
固まるまもりにヒル魔は嘆息すると長い腕を伸ばした。
「―――なんて言うか、バーカ」
「きゃふ!」
まもりの鼻を摘み、ヒル魔はにたりと笑う。
「俺から逃げられると思うなよ」
「逃げるって」
思わぬ衝撃に襲われた鼻を撫でるまもりは小首を傾げる。
なんで逃げるなんて単語が出てくるのか。
「もし子供が出来たら逃げるのはヒル魔くんの方じゃないの?」
「アァ?」
「だってヒル魔くん、結婚とか子供とか家庭とか、そういう単語とはかけ離れてるし」
「ホー?」
「結婚は人生の墓場だ、とか言いそうだし」
「ホホー?」
「・・・やっぱり誰かに頼もうかなあ・・・」
ヒル魔はピンと片眉を跳ね上げた。
「何をだ?」
「両親にね、そろそろ彼氏を紹介して欲しいって言われてるの」
最初から素直にそう言えばよかった。
彼相手に変に隠そうとしない方がいいと、実際に何度も経験してるはずなのに、と苦笑する。
まもりはふう、とため息をついた。
「ヒル魔くんそういうの嫌だろうし、誰か適当な相手がいればその人を彼氏だって言っちゃおうかなって」
「ホーオ?」
ヒル魔の額に血管が浮いた。
「ねえ、誰か適任いるかし・・・」
まもりがそれ以上言う前に、ヒル魔に唇を塞がれる。
唐突に深いキスにまもりは目を閉じることもできず、近すぎてぼけるヒル魔の顔を見つめてしまう。
息苦しくなって必死に押しのけようと腕を突っ張って、ようやく唇が離れる。
それでも彼の腕はまもりを放そうとはしない。
ぜいぜいと息をしながら、ヒル魔を見れば、唇を乱暴に拭いながら鋭い視線でまもりを見ていた。
「何・・・」
「そりゃこっちの台詞だ」
ひしひしと感じる怒りにまもりは彼の顔から視線を反らす事も出来ない。
「俺がいて、他の男を紹介だ? バカにするのにも程があるぞ」
「だって、嫌でしょ? 紹介されるってことは結婚の事とかも聞かれるのよ?」
「それのどこが嫌だってんだ」
まもりはぱちぱちと瞬きした。これは怒りもあるけれど、どこか拗ねてる、みたいな。
「ガキが出来たっつーんなら願ったりだろ。さっさと挨拶行くぞ」
「えっ!? いや、子供なんて出来てないわよ、それはヒル魔くんが言い出したことだし!」
それにヒル魔は舌打ちする。いかにも失言だった、という態度。
少々不安げに彼を見上げながらまもりは再度尋ねる。
「ねえ、それでも挨拶に来てくれるの?」
子供が出来たわけでもないし、特に身辺を固める必要がヒル魔にはなさそうな気がしてならないのだけれど。
「しつけぇ。テメェこそ逃げるんじゃねぇぞ」
「んもう! だから何で逃げるとかいう話になるのよ!」
むくれるまもりにヒル魔は無言でまもりの頭をごしゃごしゃとかき乱した。

その後、日程と場所を決め、ヒル魔は料亭を予約したとまもりに告げた。
「料亭? 洋食じゃないの?」
「あんまりテメェを喋らせるとボロが出そうだからな」
「?」
その内容に小首を傾げるが、ヒル魔はにやにやと笑うだけで答えない。
料亭と言うからにはそれなりの格好をしないとならないだろう。
それでも相変わらずのヒル魔に、まもりはどこででも彼はあの格好を通すんだろうなあ、とほぼ諦めていた。
先に両親に見た目について一言断った方がいいだろうか、と思っていた矢先。
挨拶を翌日に控えて彼は漆黒に髪を染めてきたのだ。しかも逆立てていない。
「・・・!!」
「アホ面」
下りてくる髪をうざったそうに掻き上げる顔は昨日までと全く同じなのに、色が違うだけでこうも印象は変わるものか。
「そ、染めてくるなんて思わなかった」
「セイイをお見せしないとなりませんカラネェ」
ヒル魔はにやりと笑う。
「やるからには徹底的にな」

そうして当日、衣装を纏ったヒル魔を前にまもりはつい笑ってしまったのだけれど。
実際、そのほとんどは嬉しさで出た笑顔だった。
「まさかそこまでしてくれるとは思わなかったから、嬉しいわ」
「テメェが浅慮なだけだ」
髪の毛を緩く後ろに流し、ピアスを外した彼はその耳さえなければあの蛭魔妖一とは気づかれないだろう。
「そういえば」
「ア?」
「ヒル魔くんって何の仕事してるの?」
両親に彼を紹介する、と伝えたときに仕事のことを尋ねられ、まもりはまた詰まったのだ。
それに両親がまた不審そうにしていたので説明に四苦八苦した。
仕事は何かしているらしいが、何か、というのまで聞いた事がないと素直に言えば騙されているのでは、と思われるのが普通だろう。
ヒル魔は内ポケットから名刺入れを取り出し、中身を一枚抜いた。
「ホレ」
「え?」
渡された名刺には彼の名前と会社の名前、そして肩書きが。
「取締役社長?!」
「IT関連のベンチャー企業だ。HP管理とソフト開発が主力」
「へえ・・・」
感心するまもりににやりと笑って一言追加。
「ということになっている」
「やっぱり! んもう、本業は何よう!」
ヒル魔の事だ、この仕事だけとは思えない。他に何をやらかしているやら。
「これだけ判ってりゃとりあえずいいだろ」
「ん・・・まあそうだけど」
一般人ならこれ一つで手一杯になる仕事だろうし、と渋々まもりは納得した。
ヒル魔は着慣れないだろうスーツも平然と着こなし、窮屈なネクタイにだけは眉を寄せつつ、それでもにやりと笑った。
「テメェの両親にはこれ以上ない優良物件だって納得させてやるよ」
それが実に楽しそうだったので、まもりはほどほどにお願いします、とだけ言ったのだった。


<続>
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