旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりは台所で湯を沸かしながら色々考えていたが、混乱するばかりで全く形にならない。
お茶を淹れて戻ってみれば、ヒル魔は腕組みをしたまま瞼を伏せている。
こんな姿は珍しい。
なるべく音を立てないように歩くが、気配に聡い彼はすぐ気づいたようだ。
「ここにはコーヒーがないので、お茶です」
「おー」
ヒル魔は湯飲みに口を付ける。
そうしてふと顔を上げた。
「その頭、どうした」
「神様に対価として差し上げました」
正確には奪われたのだけれど、大差ないだろう。
それにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「ホー。・・・それだと天界に来たばっかの時みてぇだな」
「そうですね」
昨日の冷たいやりとりが嘘のようで、まもりはあたたかい湯飲みをくるむように持ち、ヒル魔を眺める。
もう二度と姿さえ見られないかと思っていたのに。
「また会ってくださるとは思いませんでした」
ぽつんと零した言葉は本心だ。
ヒル魔は今まで、一度言った事を覆す事はなかった。
誰に何を言われても意志を曲げるような人ではない。
ヒル魔はじっとまもりを見ていたが、ふいに嘆息した。
肺腑の底に溜まっていたものを吐き出すように、深く。
「なぜ、俺がテメェを仙人にしたがらなかったか、知りたいか」
それは鈴音も始め、セナもムサシもケルベロスも、誰もが疑問に思っていた事。
まもりは頷いた。
「俺はテメェを人として地上に降ろすつもりだった」
「・・・」
それはある程度予想していた答えだった。
けれどそれではおかしいのだ。
それならばなぜ、これほどに長く手元にまもりを置いたのか。
もっと適切なタイミングはいくつもあったのに、そのいずれにも手放さなかった。
だからまもりはじっとその言葉の続きを待つ。
ヒル魔は立ち上がる。まもりもつられて立ち上がった。
ほんの数歩で二人の距離はあっという間に縮まる。
彼の手がまもりの肩に触れる。
布越しでも感じる程に熱い手。
じわり、と威圧するような気配。
まもりは目を見開いてヒル魔を見上げる。
その眸にケダモノじみた光を感じて、身が竦む。
「―――欲は捨てたはずだった。感情も、長く生きるうちに沈み込んで消え去ったかと思っていた」
淡々と紡がれる言葉を聞きながら、まもりはヒル魔の気配に飲まれ、ただ立ちつくす。
突きつけられる威圧感はどす黒さを伴ったもの。
熱く蠢く、欲。
「それが思い違いだと知ったとき、俺は怖くなった」
「!」
何も怖いものなどないと常に不敵に笑うヒル魔の密やかな告白。
「俺はお前を壊しかねない」
静かな声とは裏腹の威圧感に、まもりは声も出ない。
ヒル魔は囁く。
低く、笑みさえ含んだ声で。
「逃げろ」
早く逃げろ。
そして俺の手の届かないところまで行って、幸せに生きるがいい。
時が経てば忘れる。
いかにお前が強くても、傷を忘れず泣き続けても、それは永劫ではない。
時は何物にも代え難い薬。
いずれ記憶は薄れて、また笑える日が来る。
かつての自分がそうであったように。
あれほど苦しくて悲しい離別さえも今ではただの過去なのだから。
「おまえは幸せになれ」
ひそりと祈るような声にまもりは唇を震わせる。
名残を惜しむようにヒル魔の手が離れた。
潮が引くように熱が消える。
威圧感が消えて、そこでようやくまもりは口を開いた。
「ヒル魔さまは、それで幸せになれるのですか」
震える声で、まもりは問う。
「ヒル魔さまは幸せになりたくないのですか」
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、こんなにも遠い。
「・・・今更ながらあいつの気持ちが知れた」
ヒル魔は優しく、まもりの頭を撫でる。
先ほどまでの威圧感はそこになかった。
「お前が笑っていられるなら、それでいい」
誰かのためを思って幸せを感じるなんて、ただの偽善だとずっと思っていた。
けれどそうではないのだ。
慈しむ相手の幸せを祈る、それだけで幸せになれるなんて思っていなかった。
「なら、私をお側に置いてください」
それにヒル魔は眉を寄せる。
「テメェ、人の話聞いてたか」
「聞いてました。私を壊しかねないと心配されているのも判りました」
まもりはばっと顔を上げた。
もはやまもりは泣いてはいなかった。
ただ、深く美しい碧の瞳が彼を見つめている。
「でも、私が幸せであるためには、ヒル魔さまの存在が不可欠です」
「それは単なるすり込みだ。たまたま俺がお前を拾っただけ―――」
「私を壊しかねない、というのだってヒル魔さまの思いこみです!」
出会ってから初めて、ヒル魔の言葉をまもりは遮った。
「あの人への贖罪で私を育てたのでも、私にあの人を重ねているのでもないのなら、私がヒル魔さまのお側を離れる必要はありません」
命が命の代替にならないのと同じように、誰かが誰かの身代わりになんてなれないから。
ヒル魔が今、慈しむのがまもりだというのであれば、離れない。
「私は逃げません」
「・・・ちっ」
毅然と見上げたまもりの手を、ヒル魔は掴んで引き寄せる。
乱暴な仕草にまもりは抱き込まれた彼の胸板に鼻をぶつけてしまう。
「きゃ・・・」
強引に抱き寄せながらもその腕はまもりをきつくは捕らえなかった。
彼の葛藤が透けて見える。
保護者として、師として見守る立場を守ろうとする気持ちと。
欲のままに彼女を貪ってしまいたいという気持ちと。
「なんで『合方』なんて制度が残ってるか、長く疑問だった」
複雑に絡み合った感情そのままの、中途半端な拘束。
逃げようと思えばあっさりと手放しそうな、それでいてどこまでも追うような執拗さも兼ね備えるそれ。
「あんな、体のいい奴隷みたいな存在を手元に置きたがる気持ちがわからなかった」
欲を捨てたはずの仙人が、どうして。
現に自分はそんなものを必要とせず、今まで生きてきた。
だからこれからもきっと必要ない。
そう思っていたのに。
「今ならまだ間に合う、逃げろ」
この欲が彼女を押しつぶしてしまう前に。
どす黒い欲に飲まれ、その笑顔を曇らせる前に。
どうか、どうか。
祈るような小さい、切ない声にまもりは腕を伸ばした。
かつてはまもりを慈しむように抱き上げたヒル魔を、今度は彼女が抱きしめる。
彼は完璧だと思っていた。
まもりの考えの及ばない、遙か高みから全てを見ているのだと。
けれど彼はそうではなかった。
「逃げません。私はヒル魔さまの側にいたいんです」
完璧ではなく、欲を持ち、まもりを慈しむ彼の側に。
ヒル魔はまもりの頬に手を添えた。
じわり、とまたあの威圧感が彼から滲む。
「後悔するぞ」
彼女を引き裂きかねない程の欲。
正直を言えば、とても怖い。
今までと同じように身近にあって、今までと全く違う関係になったら、どう変わるか判らない。
けれどまもりは、この腕を失う事の方がもっとずっと苦しいともう知っているから。
しつこいくらいに逃げないと繰り返し、まもりはヒル魔を抱きしめる腕に力を込めた。
ヒル魔は一度強く瞼を閉じる。
あの夜、欲を自覚してから常にヒル魔は葛藤し続けていた。
彼女を欲の赴くままに押し倒し、貪りたいという気持ちと。
誰よりも幸せになって欲しいという慈愛の気持ちと。
揺れ動くその気持ちごと抱きしめようとするまもりの熱。
ヒル魔はゆるりと瞼を開く。
幼い頃から変わらないまもりの青い瞳には強い意志が満ちていた。
きらきらと美しいそれに、ヒル魔は嘆息して唇を開く。
「もう逃げられねぇぞ」
いっそ哀れむような声は、彼の謝罪のようにも聞こえた。
彼女を手放せない自身を詰るようだ。
まもりは首を振る。
誰が悪いわけでも、罪であるわけでもないのだから。
そうして全てを許すような、柔らかく優しい笑みを浮かべて囁いた。
「愛してます」
全ての免罪符であるかのような声に、ヒル魔はまもりを抱きしめる。
幽かに震えるのがどちらの身体か判らないくらいに、・・・きつく。
屋敷に戻った二人を見て、鈴音とセナは仙獣と共に笑顔で自らの屋敷に戻っていった。
ケルベロスとポヨもほっとしたように二人を出迎える。
けれどどこかぎこちない二人を慮るようにいつの間にか姿を消した。
二人きりになった途端に満ちた沈黙に、まもりは居心地が悪そうに身動ぐ。
「まもり」
「っ」
唐突に名を呼ばれ、まもりの肩が跳ねた。
その様子にヒル魔は苦笑する。
「そんなに早々手は出さねぇよ」
「あ、え・・・え?!」
あからさまに挙動不審になったまもりの頭をヒル魔はごしゃごしゃとかき混ぜる。
「時間は飽きる程あるんだからな」
それにまもりはむっと眉を寄せた。
「誤魔化してませんか?」
「なにをだ?」
しれっと問い返され、まもりは真っ赤になって詰まる。
何を、なんて今は到底言えないから。
「~~絶対、逃がしませんからね!」
それだけを赤い顔のまま叫んで、まもりはばたばたと自室へと走って行く。
「それはこっちの台詞だ」
ヒル魔はそんな彼女を喉奥で笑いながら見送り、ひそりと呟いた。
***
ままま様&鶉様リクエスト『「桜雪奇談」続き』でした。途中から幾度となく、なんでこの二人は「好きだ!」「私も!」で終わらないんだろう、とか、なんで余計なコトするかな、とか、色々と現実逃避しかけましたが、形になって良かったです。鶉様のリクエストには応え切れていない気がしますが、今はこれが精一杯でした・・・!
リクエストありがとうございましたー!!
ままま様&鶉様のみお持ち帰り可。
お茶を淹れて戻ってみれば、ヒル魔は腕組みをしたまま瞼を伏せている。
こんな姿は珍しい。
なるべく音を立てないように歩くが、気配に聡い彼はすぐ気づいたようだ。
「ここにはコーヒーがないので、お茶です」
「おー」
ヒル魔は湯飲みに口を付ける。
そうしてふと顔を上げた。
「その頭、どうした」
「神様に対価として差し上げました」
正確には奪われたのだけれど、大差ないだろう。
それにヒル魔はぴんと片眉を上げた。
「ホー。・・・それだと天界に来たばっかの時みてぇだな」
「そうですね」
昨日の冷たいやりとりが嘘のようで、まもりはあたたかい湯飲みをくるむように持ち、ヒル魔を眺める。
もう二度と姿さえ見られないかと思っていたのに。
「また会ってくださるとは思いませんでした」
ぽつんと零した言葉は本心だ。
ヒル魔は今まで、一度言った事を覆す事はなかった。
誰に何を言われても意志を曲げるような人ではない。
ヒル魔はじっとまもりを見ていたが、ふいに嘆息した。
肺腑の底に溜まっていたものを吐き出すように、深く。
「なぜ、俺がテメェを仙人にしたがらなかったか、知りたいか」
それは鈴音も始め、セナもムサシもケルベロスも、誰もが疑問に思っていた事。
まもりは頷いた。
「俺はテメェを人として地上に降ろすつもりだった」
「・・・」
それはある程度予想していた答えだった。
けれどそれではおかしいのだ。
それならばなぜ、これほどに長く手元にまもりを置いたのか。
もっと適切なタイミングはいくつもあったのに、そのいずれにも手放さなかった。
だからまもりはじっとその言葉の続きを待つ。
ヒル魔は立ち上がる。まもりもつられて立ち上がった。
ほんの数歩で二人の距離はあっという間に縮まる。
彼の手がまもりの肩に触れる。
布越しでも感じる程に熱い手。
じわり、と威圧するような気配。
まもりは目を見開いてヒル魔を見上げる。
その眸にケダモノじみた光を感じて、身が竦む。
「―――欲は捨てたはずだった。感情も、長く生きるうちに沈み込んで消え去ったかと思っていた」
淡々と紡がれる言葉を聞きながら、まもりはヒル魔の気配に飲まれ、ただ立ちつくす。
突きつけられる威圧感はどす黒さを伴ったもの。
熱く蠢く、欲。
「それが思い違いだと知ったとき、俺は怖くなった」
「!」
何も怖いものなどないと常に不敵に笑うヒル魔の密やかな告白。
「俺はお前を壊しかねない」
静かな声とは裏腹の威圧感に、まもりは声も出ない。
ヒル魔は囁く。
低く、笑みさえ含んだ声で。
「逃げろ」
早く逃げろ。
そして俺の手の届かないところまで行って、幸せに生きるがいい。
時が経てば忘れる。
いかにお前が強くても、傷を忘れず泣き続けても、それは永劫ではない。
時は何物にも代え難い薬。
いずれ記憶は薄れて、また笑える日が来る。
かつての自分がそうであったように。
あれほど苦しくて悲しい離別さえも今ではただの過去なのだから。
「おまえは幸せになれ」
ひそりと祈るような声にまもりは唇を震わせる。
名残を惜しむようにヒル魔の手が離れた。
潮が引くように熱が消える。
威圧感が消えて、そこでようやくまもりは口を開いた。
「ヒル魔さまは、それで幸せになれるのですか」
震える声で、まもりは問う。
「ヒル魔さまは幸せになりたくないのですか」
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、こんなにも遠い。
「・・・今更ながらあいつの気持ちが知れた」
ヒル魔は優しく、まもりの頭を撫でる。
先ほどまでの威圧感はそこになかった。
「お前が笑っていられるなら、それでいい」
誰かのためを思って幸せを感じるなんて、ただの偽善だとずっと思っていた。
けれどそうではないのだ。
慈しむ相手の幸せを祈る、それだけで幸せになれるなんて思っていなかった。
「なら、私をお側に置いてください」
それにヒル魔は眉を寄せる。
「テメェ、人の話聞いてたか」
「聞いてました。私を壊しかねないと心配されているのも判りました」
まもりはばっと顔を上げた。
もはやまもりは泣いてはいなかった。
ただ、深く美しい碧の瞳が彼を見つめている。
「でも、私が幸せであるためには、ヒル魔さまの存在が不可欠です」
「それは単なるすり込みだ。たまたま俺がお前を拾っただけ―――」
「私を壊しかねない、というのだってヒル魔さまの思いこみです!」
出会ってから初めて、ヒル魔の言葉をまもりは遮った。
「あの人への贖罪で私を育てたのでも、私にあの人を重ねているのでもないのなら、私がヒル魔さまのお側を離れる必要はありません」
命が命の代替にならないのと同じように、誰かが誰かの身代わりになんてなれないから。
ヒル魔が今、慈しむのがまもりだというのであれば、離れない。
「私は逃げません」
「・・・ちっ」
毅然と見上げたまもりの手を、ヒル魔は掴んで引き寄せる。
乱暴な仕草にまもりは抱き込まれた彼の胸板に鼻をぶつけてしまう。
「きゃ・・・」
強引に抱き寄せながらもその腕はまもりをきつくは捕らえなかった。
彼の葛藤が透けて見える。
保護者として、師として見守る立場を守ろうとする気持ちと。
欲のままに彼女を貪ってしまいたいという気持ちと。
「なんで『合方』なんて制度が残ってるか、長く疑問だった」
複雑に絡み合った感情そのままの、中途半端な拘束。
逃げようと思えばあっさりと手放しそうな、それでいてどこまでも追うような執拗さも兼ね備えるそれ。
「あんな、体のいい奴隷みたいな存在を手元に置きたがる気持ちがわからなかった」
欲を捨てたはずの仙人が、どうして。
現に自分はそんなものを必要とせず、今まで生きてきた。
だからこれからもきっと必要ない。
そう思っていたのに。
「今ならまだ間に合う、逃げろ」
この欲が彼女を押しつぶしてしまう前に。
どす黒い欲に飲まれ、その笑顔を曇らせる前に。
どうか、どうか。
祈るような小さい、切ない声にまもりは腕を伸ばした。
かつてはまもりを慈しむように抱き上げたヒル魔を、今度は彼女が抱きしめる。
彼は完璧だと思っていた。
まもりの考えの及ばない、遙か高みから全てを見ているのだと。
けれど彼はそうではなかった。
「逃げません。私はヒル魔さまの側にいたいんです」
完璧ではなく、欲を持ち、まもりを慈しむ彼の側に。
ヒル魔はまもりの頬に手を添えた。
じわり、とまたあの威圧感が彼から滲む。
「後悔するぞ」
彼女を引き裂きかねない程の欲。
正直を言えば、とても怖い。
今までと同じように身近にあって、今までと全く違う関係になったら、どう変わるか判らない。
けれどまもりは、この腕を失う事の方がもっとずっと苦しいともう知っているから。
しつこいくらいに逃げないと繰り返し、まもりはヒル魔を抱きしめる腕に力を込めた。
ヒル魔は一度強く瞼を閉じる。
あの夜、欲を自覚してから常にヒル魔は葛藤し続けていた。
彼女を欲の赴くままに押し倒し、貪りたいという気持ちと。
誰よりも幸せになって欲しいという慈愛の気持ちと。
揺れ動くその気持ちごと抱きしめようとするまもりの熱。
ヒル魔はゆるりと瞼を開く。
幼い頃から変わらないまもりの青い瞳には強い意志が満ちていた。
きらきらと美しいそれに、ヒル魔は嘆息して唇を開く。
「もう逃げられねぇぞ」
いっそ哀れむような声は、彼の謝罪のようにも聞こえた。
彼女を手放せない自身を詰るようだ。
まもりは首を振る。
誰が悪いわけでも、罪であるわけでもないのだから。
そうして全てを許すような、柔らかく優しい笑みを浮かべて囁いた。
「愛してます」
全ての免罪符であるかのような声に、ヒル魔はまもりを抱きしめる。
幽かに震えるのがどちらの身体か判らないくらいに、・・・きつく。
屋敷に戻った二人を見て、鈴音とセナは仙獣と共に笑顔で自らの屋敷に戻っていった。
ケルベロスとポヨもほっとしたように二人を出迎える。
けれどどこかぎこちない二人を慮るようにいつの間にか姿を消した。
二人きりになった途端に満ちた沈黙に、まもりは居心地が悪そうに身動ぐ。
「まもり」
「っ」
唐突に名を呼ばれ、まもりの肩が跳ねた。
その様子にヒル魔は苦笑する。
「そんなに早々手は出さねぇよ」
「あ、え・・・え?!」
あからさまに挙動不審になったまもりの頭をヒル魔はごしゃごしゃとかき混ぜる。
「時間は飽きる程あるんだからな」
それにまもりはむっと眉を寄せた。
「誤魔化してませんか?」
「なにをだ?」
しれっと問い返され、まもりは真っ赤になって詰まる。
何を、なんて今は到底言えないから。
「~~絶対、逃がしませんからね!」
それだけを赤い顔のまま叫んで、まもりはばたばたと自室へと走って行く。
「それはこっちの台詞だ」
ヒル魔はそんな彼女を喉奥で笑いながら見送り、ひそりと呟いた。
***
ままま様&鶉様リクエスト『「桜雪奇談」続き』でした。途中から幾度となく、なんでこの二人は「好きだ!」「私も!」で終わらないんだろう、とか、なんで余計なコトするかな、とか、色々と現実逃避しかけましたが、形になって良かったです。鶉様のリクエストには応え切れていない気がしますが、今はこれが精一杯でした・・・!
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