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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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密室黙契(下)



+ + + + + + + + + +
ヒル魔の楽しげな声に意識を引き戻される。
「そういうことだ。テメェの責任は重大だぞ」
「は?」
「俺と一緒に最京大アメフト部に入るんだからなァ」
にやにやと笑う彼は用紙をまもりの手から取り戻し、そうして氏名欄のところを指で示す。
「・・・!!」
姉崎まもり。自らの字でそう書かれた用紙に、まもりは目を見開いた。
「な・・・!? ちょっと、ヒル魔くん!?」
まもりは既に進路希望の用紙を出していた。そこには最京大の名は欠片もなく、まったく違う進路を選んだはずなのに。
良く見ればその希望は見事に修正液で塗りつぶされ、上書きされている。
「まったく、記憶力のねぇ女だな」
「何がよ!」
躍起になってその紙を奪い取ろうとするけれど、かつてチアガールの格好をした彼女を映したビデオと同じくマシンガンの先端に貼り付けられて取り戻すことができない。
「いやー! ちょっと、やめてよ!」
返して、とモップを手に悲鳴染みた声を上げるまもりの肩に、不意に回る腕。
「な」
彼の胸元に引き寄せられ、まもりは絶句する。
「言っただろ」
息がかかりそうなほどに近くで囁かれ、まもりはびくりと肩を震わせた。
近すぎる。
「約束は守りやがれ」
その言葉には聞き覚えがある。

歓声を遠くに聞きながら、手当てをした救護室。
窓もない白い壁。蛍光灯の白々とした明かりの下、包帯も彼の汗だくの背中もひどく白かった。
痛みにも揺らがない声で、彼は告げた。
『約束どおり従順に働け』と。
俯いて垂れた金髪の間から覗いた唇は、それでもつりあがっていた。

「・・・それは、この部活の中だけの話でしょう?」
見上げればつりあがった唇の形はあの時と同じ。
「ンな制限設けた覚えはねぇなァ」
「そんな! それじゃ、いつまで続くのよ!?」
進路を勝手に決められそうな様子に、まもりは焦る。
「期限も定めなかったよなァ」
にやにやと楽しげな声に、まもりは眉を寄せる。
約束は約束。
けれど、いくらなんでも、人の一生を弄ぶまでの約束とは思えなかった。
「やめてよ! じゃあせめて、期限をつけて!」
高校までは仕方ないと思える。大学までと言うのならその先を絶対に脅かさない約束を取り付けなければ。
それにヒル魔はぴん、と片眉を上げて口を開いた。
「期限が必要か?」
「当たり前でしょう!」
涙目で見上げるまもりに、ヒル魔はゆるりと口角を上げる。
「そうだなァ」
言いながらまもりの肩に回っていたヒル魔の手が、まもりの後頭部を掴んだ。
「え?」
いきなりのことに視線をそらしたその瞬間。
唇が重なった。
唐突なキスに、まもりは文字通り硬直した。
何で、一体、なんで。
どうしてこんなことに。
今まで確かデータをまとめていただけのはずなのに。
触れるだけでそのまま離れた唇を見開いた瞳で追う。
近すぎてぼやけていた像が焦点を結び、それは間違いなくヒル魔の顔で。
まもりは何も言えず、ただ固まっている。
「期限は一生だ」
いっしょう。
キゲンハイッショウダ、という言葉が音となってまもりの耳を通過したが、頭の中に意味が落ちてこない。
「光栄に思え、姉崎」
背に回る腕が、触れる肌が、熱い。
再び迫る唇が重なったとき。


悪魔との『約束』がいかに重要なのか、とその身をもってまもりは思い知ったのだった。

***
最終回のヒルまも二人の登場に思わず身悶えて妄想しました。
高校三年でこういった会話がされたと信じます。引退式のときに皆半そでだったのできっと夏まで部活は出たんだろうという憶測で作成。でもまもりについては引退の文字がなかったのでもしかしたら主務とかそういったことで結構後まで残ったのかも、とか。最終回ネタはまだまだ出るので妄想しまくりですw
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