旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
まもりはそっと起きあがった。
隣にいる鈴音は深く眠っていて、普段であれば気配に敏感なケルベロスやブタブロスも静かに寝息を立てている。自分一人が眠りに入り損なって、まもりは内心嘆息し、気晴らしにとふらりと廊下に出た。
しんと鎮まった廊下を歩く。
かつてもこんな静まりかえった廊下を歩いた。
あの時はデスマーチを完走し、ヒル魔を含めた半死半生で横たわる面々のケアをし、その後は自らも抱えていた疲労のせいで夢も見ない程の眠りについたけれど、今は違う。
日本でも最高峰の高校生達が集った今回のワールドユース。
皆選手としての力量は元より、彼ら自身のケアをきちんとこなしていた。
やはり戦い続けるためには、自らのコンディションを整えることも大切だと理解しているのだろう。
デビルバッツの面々と比べるのは酷だろうが、考え方の差というか、実力差というか。
そういった物を目の当たりにし、まもりは自らの力量を発揮する機会にあまり恵まれていなかった。
勿論主務的な仕事やマネージャーの本来の仕事はつねにこなしていたが、世話を焼く、という程でもない。
そして選手達とさほど親しくないまもりは、彼らに対し元来の口出しも出来ず、どうにもフラストレーションを抱えていた。
何しろ他の選手達に声を掛けようとするとことごとくヒル魔からの雑用の指示や主務の仕事が入る。
向こうが気遣って声を掛けてくれているのが判るだけに、出来るだけ答えようと思っているのにあからさまに邪魔をしてくるのだ。
押しつけられるのが必要な仕事ではあると判っていても、あからさまに彼らと交流をさせないようにするのはいかがなものか、とまもりは眉を寄せる。
そして、いつの間にか自らがどすどすと足音を立てて歩いていたことに気づき、慌てて足音を潜めた。
だが。
「ケケケ、随分と足音荒く歩いてマスネ」
少々遅かった。からかいの声にまもりは振り返る。
そこにはいつものように全身黒ずくめのヒル魔の姿。
「ストレスでも溜まってるんデスカ?」
からかう口調の彼に、まもりはカッとなって怒鳴ろうとしたが。
「・・・そうよ」
否定しても苛立っているのは自らが一番よく判っている。
決戦は明日だ。無駄に言い合いをして彼の神経まで逆立てることもあるまい、と。
深呼吸する彼女に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「だから私に構ってないで、さっさと寝た方がいいわよ」
どこか素っ気ない彼女に、ヒル魔は足音も立てず、近づく。
「何?」
「ヒデェツラ」
ぐい、と顎を掴まれ上げさせられる。まもりの眉が寄った。
余計なことで煩わせないようにこちらは気を遣っているのに。
けれど、ヒル魔の顔に僅かに影があるのにまもりは気づいた。
「ヒル魔くんこそ」
「ア?」
「眠れないんじゃないの?」
試合前の興奮と期待と、ほんの僅かな不安。
そんなものを彼の表情から読み取ったまもりは、何も考えずに彼の顔をそっと撫でた。
仄かに暖かい肌に、自らの手は冷たすぎるような気がする。
「・・・冷えてんな」
「そう?」
小首を傾げるまもりに、ヒル魔は少々思案すると。
「来い」
「え」
ぐい、と引き寄せられたのは非常階段へと続くスペース。
僅かに凹んだそこは、廊下側から見えない位置だ。
「何・・・」
ぐい、と抱きしめられ、まもりの息が止まる。
こんな至近距離で彼に触れたことなどない。
まさに密着。
髪を擽る吐息に、まもりの顔がじわじわと熱くなる。
目の前には彼の胸。視界一杯に広がる黒が僅かに上下している。
なんで彼が、どうしてこんなことに、どんな顔をすればいいのか、押しのけるべきかしがみつくべきか。
色々な考えが頭を巡り、沈黙が無為に過ぎていく。
不意にヒル魔が抱きしめたときと同じように唐突に腕からまもりを開放した。
「な、なに? なんだったの?」
焦り涙目の彼女に、ヒル魔はにやあ、と笑った。
それはいつも通りの、自信に満ちた不遜な笑みで。
「充電完了」
「じゅ、じゅうでん?」
目を白黒させるまもりの手を引き、ヒル魔は彼女を部屋まで送り届ける。
「さっさと寝ろよ」
まもりの手から鍵を奪い、扉を開いて彼女と鍵を室内に放り込む。
そしてヒル魔はさっさと立ち去った。
まもりは呆然と立ちつくしていたが、室内から聞こえてきた鈴音の寝息に我に返った。
もそもそとベッドに戻り、先ほど彼に触れた手にもう片方の手で触れる。
冷えていた指は、いつの間にか熱を取り戻していて、彼の体温とそう変わらない気がした。
「・・・ッ」
不意に先ほどの一幕が思い出され、まもりはその手で顔を覆った。
熱を取り戻したはずの指先に、触れる顔は熱くて、いたたまれなくて。
まもりは早々に眠りへと逃げ込むため、無理矢理に瞳を閉じた。
***
ナス子様リクエスト『天然まもりに振り回される男性陣』でした。・・・いやご希望と違うのは重々承知なんですが、まもり側からの視点だったらどうなるんだろう、というのと折良くワールドユースカップの一幕で決戦前夜まもりが出てこないというあたりから妄想したらこんな話が。これで付き合ってないってのは嘘でしょう、と周囲から突っ込まれてるといいなあ・・・。最近妄想力が強まった気がします。リクエストありがとうございましたー!!
ナス子さまのみお持ち帰り可。
隣にいる鈴音は深く眠っていて、普段であれば気配に敏感なケルベロスやブタブロスも静かに寝息を立てている。自分一人が眠りに入り損なって、まもりは内心嘆息し、気晴らしにとふらりと廊下に出た。
しんと鎮まった廊下を歩く。
かつてもこんな静まりかえった廊下を歩いた。
あの時はデスマーチを完走し、ヒル魔を含めた半死半生で横たわる面々のケアをし、その後は自らも抱えていた疲労のせいで夢も見ない程の眠りについたけれど、今は違う。
日本でも最高峰の高校生達が集った今回のワールドユース。
皆選手としての力量は元より、彼ら自身のケアをきちんとこなしていた。
やはり戦い続けるためには、自らのコンディションを整えることも大切だと理解しているのだろう。
デビルバッツの面々と比べるのは酷だろうが、考え方の差というか、実力差というか。
そういった物を目の当たりにし、まもりは自らの力量を発揮する機会にあまり恵まれていなかった。
勿論主務的な仕事やマネージャーの本来の仕事はつねにこなしていたが、世話を焼く、という程でもない。
そして選手達とさほど親しくないまもりは、彼らに対し元来の口出しも出来ず、どうにもフラストレーションを抱えていた。
何しろ他の選手達に声を掛けようとするとことごとくヒル魔からの雑用の指示や主務の仕事が入る。
向こうが気遣って声を掛けてくれているのが判るだけに、出来るだけ答えようと思っているのにあからさまに邪魔をしてくるのだ。
押しつけられるのが必要な仕事ではあると判っていても、あからさまに彼らと交流をさせないようにするのはいかがなものか、とまもりは眉を寄せる。
そして、いつの間にか自らがどすどすと足音を立てて歩いていたことに気づき、慌てて足音を潜めた。
だが。
「ケケケ、随分と足音荒く歩いてマスネ」
少々遅かった。からかいの声にまもりは振り返る。
そこにはいつものように全身黒ずくめのヒル魔の姿。
「ストレスでも溜まってるんデスカ?」
からかう口調の彼に、まもりはカッとなって怒鳴ろうとしたが。
「・・・そうよ」
否定しても苛立っているのは自らが一番よく判っている。
決戦は明日だ。無駄に言い合いをして彼の神経まで逆立てることもあるまい、と。
深呼吸する彼女に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「だから私に構ってないで、さっさと寝た方がいいわよ」
どこか素っ気ない彼女に、ヒル魔は足音も立てず、近づく。
「何?」
「ヒデェツラ」
ぐい、と顎を掴まれ上げさせられる。まもりの眉が寄った。
余計なことで煩わせないようにこちらは気を遣っているのに。
けれど、ヒル魔の顔に僅かに影があるのにまもりは気づいた。
「ヒル魔くんこそ」
「ア?」
「眠れないんじゃないの?」
試合前の興奮と期待と、ほんの僅かな不安。
そんなものを彼の表情から読み取ったまもりは、何も考えずに彼の顔をそっと撫でた。
仄かに暖かい肌に、自らの手は冷たすぎるような気がする。
「・・・冷えてんな」
「そう?」
小首を傾げるまもりに、ヒル魔は少々思案すると。
「来い」
「え」
ぐい、と引き寄せられたのは非常階段へと続くスペース。
僅かに凹んだそこは、廊下側から見えない位置だ。
「何・・・」
ぐい、と抱きしめられ、まもりの息が止まる。
こんな至近距離で彼に触れたことなどない。
まさに密着。
髪を擽る吐息に、まもりの顔がじわじわと熱くなる。
目の前には彼の胸。視界一杯に広がる黒が僅かに上下している。
なんで彼が、どうしてこんなことに、どんな顔をすればいいのか、押しのけるべきかしがみつくべきか。
色々な考えが頭を巡り、沈黙が無為に過ぎていく。
不意にヒル魔が抱きしめたときと同じように唐突に腕からまもりを開放した。
「な、なに? なんだったの?」
焦り涙目の彼女に、ヒル魔はにやあ、と笑った。
それはいつも通りの、自信に満ちた不遜な笑みで。
「充電完了」
「じゅ、じゅうでん?」
目を白黒させるまもりの手を引き、ヒル魔は彼女を部屋まで送り届ける。
「さっさと寝ろよ」
まもりの手から鍵を奪い、扉を開いて彼女と鍵を室内に放り込む。
そしてヒル魔はさっさと立ち去った。
まもりは呆然と立ちつくしていたが、室内から聞こえてきた鈴音の寝息に我に返った。
もそもそとベッドに戻り、先ほど彼に触れた手にもう片方の手で触れる。
冷えていた指は、いつの間にか熱を取り戻していて、彼の体温とそう変わらない気がした。
「・・・ッ」
不意に先ほどの一幕が思い出され、まもりはその手で顔を覆った。
熱を取り戻したはずの指先に、触れる顔は熱くて、いたたまれなくて。
まもりは早々に眠りへと逃げ込むため、無理矢理に瞳を閉じた。
***
ナス子様リクエスト『天然まもりに振り回される男性陣』でした。・・・いやご希望と違うのは重々承知なんですが、まもり側からの視点だったらどうなるんだろう、というのと折良くワールドユースカップの一幕で決戦前夜まもりが出てこないというあたりから妄想したらこんな話が。これで付き合ってないってのは嘘でしょう、と周囲から突っ込まれてるといいなあ・・・。最近妄想力が強まった気がします。リクエストありがとうございましたー!!
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趣味:
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ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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