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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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ひとしきり海ではしゃぎ回った後、三人揃って海から上がったが、そこにまもりとヒル魔の姿はなかった。
おそらくホテルの部屋に戻ったのだろう。やっぱりな、と三人は内心で思う。
「姉ちゃん、僕喉乾いたから何か買ってくるよ」
「あ、俺もかき氷喰いたい」
「姉ちゃんも何か飲む?」
「コーヒー」
「ホットでいいの?」
アヤは頷いた。常夏の国とはいえ、海に入っていれば身体は冷える。
「じゃあ買ってくるから、パーカー着てて!」
「そのままじゃ絡まれるからね」
弟二人の真剣な顔に、アヤは大人しくパーカーを羽織る。
実際に肩も冷えていたし。
アヤを置いて弟二人が歩き去ると、ほどなく周囲に人が集まり始めた。
いかにもなナンパ目的の男達にアヤはつんとつれない風情のまま弟たちの帰りを待つ。
『姉ちゃん、こっちで遊ぼうぜ』
中でも殊更柄の悪い男がずいっと近づいてきたが、アヤは視線すら向けない。
『なんだぁ?! テメェ下手に出てやってんのによぉ!!』
焦れた男が怒鳴るが、アヤは一向に気にしない。
とうとう男がギリギリと歯がみしながらアヤに手を出した、その時。
『ぐあっ!』
ドカン、と音を立てて男が吹っ飛んだ。
その身体を蹴り飛ばしたのは、目つきの悪い妖介。
『・・・テメェら、俺の女に何の用だ?』
ぎろり、と睨みつけるとそのあまりの威圧感にあっという間に人々がいなくなる。
蹴られて伸びた男には護が近寄り、なにやら耳打ちをすると青ざめて飛び上がり、あっという間に逃げ去ってしまった。
「やっぱり絡まれたね」
苦笑する護にアヤは肩をすくめるだけだ。
露出が高かろうが低かろうが、どこにいたって一人でいれば絡まれるのは当たり前だから。
そこに割ってはいるのは幼い頃はヒル魔だったし、今は妖介だ。
彼らがいればそう絡まれることはない。
いざとなればその辺の男であれば投げ飛ばせるし。
「はい、コーヒー」
護がコーヒーを手渡し、妖介は手にしていたかき氷を頬張っている。
「やっぱ夏はかき氷だよねー」
幸せそうにすくい上げる虹色のそれがいかにも甘そうで、アヤは顔を顰めた。


翌朝。
量が多いことで有名なパンケーキとオムレツの店でプレートを囲む面々は、本日の予定を決めていた。
「今夜は友人がディナークルーズに誘ってくれているんだ」
「あなた達の分も予約取ってくれたって言うのよ」
「じゃあ夕飯はそれだね」
「昼間はどうする?」
「・・・私は水着欲しい」
まもりは心なし疲れたようにパンケーキに大量のシロップとクリームを載せて口にしている。
隣で顰めっ面をするヒル魔に殊更見せつけるようでもある。
「え? まもり、あなた水着買ったって言ってなかった?」
「少々場にふさわしくなかったので、買い直すよう勧めたんです」
しれっとまもりの母の疑問に答えるヒル魔と。
「・・・っ」
色々と言いたいことがあるけどこの場では言えない、という顔をしたまもりとの間の空気が微妙だ。
聡明なまもりの母はそれ以上その問題には口を挟まなかった。
「じゃあ今日の昼間、私たちは買い物に出掛けましょう」
「俺、ちょっと行きたいところがあるんだけど」
「ダイビングでもするの?」
「ううん。ハワイ大学に見学に行きたいんだ」
「うん? 妖介は大学留学に興味があるのかい?」
「そうじゃないけど、ハワイ大学ってアメフト部が結構強いって聞いたことがあるんだ」
「確かに」
「俺、護と行ってこようかと」
「兄ちゃんだけが行けばいいじゃない! なんで僕も?」
「アヤは母さん達と買い物行く?」
「いや、そっちがいい」
「えー、お母さんと一緒は嫌?」
「そうじゃないけど、買いたいと思う物は特にない」
「僕は買い物の方がいいよ」
まとまらない意見に、ヒル魔がぴんと片眉を上げる。
「じゃあ女性陣は買い物、荷物持ちで護、テメェが行け。俺と妖介とお義父サンはハワイ大学に行く」
「私もかね!?」
「じゃあ女性陣の買い物に付き合うんデスカ? 言っておくが、相当歩くし時間が掛かりマスヨ」
「いや、浜辺でのんびり寝ていようと思ったんだが」
「一人にして寂しく老人孤独死なんて事態は避けたいナァ」
「死ぬか!!」
「じいちゃん、一人で寝てるなら一緒に行こうよ。ドライブだと思ってさ」
「何が楽しくて男だけで・・・」
「私もそっちに行く」
「え、アヤ・・・それは」
護を一人にしていいのか、という妖介の顔に、アヤは肩をすくめた。
「着せ替え人形は好かない」
「これで男ばかりじゃないんで、ヨロシイデスネお義父サン」
「ぐっ」
そして賑やかな朝食後、全員がそれぞれ別れて目的地へと向かったのだった。


ショッピングモールや免税店で買い物に熱中する女性陣から護は離れなかった。
「これ! アヤに丁度いいと思うの!」
「あらいいわねえ。アヤはスタイルいいから、きっと似合うわよ」
「ね、護もそう思うでしょ?」
「僕、姉ちゃんならこっちの色の方が似合うと思うよ」
「それもいい色ね! すみません、これ下さい!」
「早ッ!」
「もっと色々見たいもの。次のお店行きましょう!」
放っておけば一人でふらりと銃でも購入しに行ってしまうのではと姉弟は心配していたが、そうはならない。
祖母と天然の母二人から離れるのが心配だったから。
何しろ道行けばナンパは数知れず。
現地の人から旅行者まで、華やかな母子の姿に引き寄せられているかのよう。
護は殊更まもりの傍らにいて、その連中を追い払わなければならなかった。
子持ち、しかもこんなに大きな子がいるのだと知らしめればすごすごと男達は引き下がる。
東洋人は若く見える、というのを差し引いても二人は充分華々しい。
「私もまだ若い、ってことかしら」
「そうねえ。護がいてくれて良かったわね」
「そうだね」
内心護はここに姉がいなくてよかった、と嘆息する。
ただでさえ派手な姉が一緒にいれば、ナンパはさらに苛烈だっただろうから。
ご褒美代わりに貰ったフレッシュジュースを飲みつつ、護は外見は大切だな、と改めて噛みしめた。

一方ハワイ大学に到着した面々は、アメフト部のグラウンドを見に行った。
日中の暑さが半端ないこの地では、実質練習は朝夕になり、真っ昼間に動く人影はない。
「やっぱり芝とかいいね。設備も」
「日が眩しい」
「試合はナイターが多いんだろ。昼日中にやる必要ねぇからな」
防具やヘルメットでただでさえ暑い競技であるアメフト。シーズンが秋から春、というのも頷ける。
日が落ちればハワイは涼しく快適だから、試合も問題ない。
「父さんのことだから、夏休みに部員全員こっちに連れてきて練習するのかと思ってたよ」
「基礎体力作りさせんのにはここは狭ェからな」
「ハワイは狭いのかね?」
「デス・マーチをやるなら狭いかもね・・・。どういうプランかは判らないけど」
アヤが、グラウンドの傍らにあった籠からボールを一つ取り出す。
「お父さん」
「おー」
ボヒュ、と音を立ててボールが飛ぶ。ヒル魔がそれをキャッチし、投げ返す。
それを傍らで見ながら、まもりの父は口を開いた。
「なんでアヤはアメフトをやりたいって言い出したんだい?」
「え? じいちゃん知らなかったっけ?」
「うん」
「アヤの好きな人が、アメフトやってたんだよ」
「ほう! アヤに好きな人が!」
「そこ、そんなに驚くこと?」
苦笑しながら妖介がアヤを見る。
長い金髪を重そうに揺らしながらも、軽快な投げ込みを見せる。
「本当はキックがスゴイ人だったから、ポジションもキックを希望したんだけど・・・」
「けど?」
「父さんの血筋だと思うけど、俺たち姉弟ってキック全ッ然だめなんだ」
見てて、と妖介が同じ籠からボールを取り出し、どうにか探し出したボール立てを使って立てる。
そして蹴ってみたが。
ボスッという鈍い音と共に、ボールは低く飛んで跳ねた。
妖介が走ってそれを拾いに行き、嘆息混じりに戻る。
「・・・言われたとおりに蹴っても、どーしても上にいかないんだよね・・・」
「妖介にも出来ないことがあるんだね」
「当然だよ! そりゃもう、一杯あるって」
「ヒル魔もそうだが、君たちに出来ないことがあるっていうのがあんまり想像つかなくてね」
「人は出来ないことだらけだから努力するんだって、父さんが言ってた」
「そうかね」
「それを見せるか見せないかは人それぞれだけど、みんなそうなんじゃないかな」
「そうか・・・」
悪魔じみて、出来ない事なんてないと嘯きつつも弛まぬ努力を続けていた―――もしかしたらまだ続けているかも知れないヒル魔を、まもりの父は見る。
彼もまた、パイロットという職業に就くために、ひっそりと努力を続けた過去がある。
彼と初めて会ったときからそりが合わないとずっと思ってきたが、実は似たもの同士なのかと少し感慨に浸り。
「お義父さん、そっち行きマシタヨ」
「はっ!?」
緩やかに弧を描いたボールがまもりの父に飛んでいく。
咄嗟に手を出しかけた妖介は、そのボールのスピードが柔らかいのを見て止まる。
まもりの父はそれを何とか受け取った。
「何をするんだね!」
「キャッチはまあまあ、ってとこか。これなら使えるか?」
「本気?」
「マアネ」
にやにやと楽しそうなヒル魔と、心配げなアヤとがまもりの父に近寄る。
「せっかくの海だから、少々楽しんで頂こうと思いマシテネ」
「何を企んでいるんだね!」
「企むなんてトンデモナイ」
「ちゃんと説明しなさい!」
ケケケ、と笑うヒル魔に食ってかかるまもりの父の姿に、アヤと妖介は相変わらずだな、と柔らかく苦笑した。



そうして、あっという間に翌日には日本に帰るという日になった。
その日は朝から浜辺が賑やかだ。
「何?」
「何かあるの?」
まもりとその母がホテルのラウンジから覗き込むと、そこには見覚えのあるラインが引かれている。
まもりは目を見開いた。
これは、もしや。
「ビーチフット?!」
「ご名答」
ヒル魔はにやりと笑って参加票を見せた。
そこにはヒル魔を筆頭として、全員の名が記されている。
全員の。
「・・・ちょっと待って?! お父さんとお母さんも?!」
「人数足りねぇんだよ」
「ええ?! だ、ってメンバーは五人でしょ?」
「補欠含め七人必要なんだと」
「ええー?!」
「まあ、先日実力は確認させて頂きましたカラネ、お義父サン」
「こ、これのためだったのかね!」
ヒル魔はにやにやと笑いつつ、呆れるまもり親子を引きつれ、既に準備万端の子供達の元に向かったのだった。


***
ゆう様リクエスト『ヒルまも一家でバカンス』でした。・・・どの辺がバカンス?! そしてとりとめがない・・・!
人数が多かったのと書きたい要素が多すぎたのも敗因かと。ハワイに設定したのは日本の夏休みだとアメフト部の練習に忙殺されるし、かといって高校卒業後じゃアヤがもういないし、あかりがいると動きづらいし、と色々考えた結果がこんなことに。水着デザインが浮かばず、絵チャでご意見を募って書きました。色々心残りはありますが、今回はこれにて! リクエストありがとうございましたー!!

ゆう様のみお持ち帰り可。
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