旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
数時間の拘束から放たれ、皆は空港で大きく息をつく。
空港からして南国の匂いが漂うそこを抜けると、深く強烈な青空が皆を迎える。
現在は乾期だが、毎日定期的にスコールが降る常夏の島。
今回はオアフ島のみに滞在することになっている。
忙しなく移動せずゆっくりしたいから、というまもりの両親の希望が全面的に汲まれたためだ。
空港で待っていたリムジンに乗り、移動する。
運転手が非常に引きつった顔で全員を出迎えたので、これもヒル魔の脅迫手帳の餌食になった人なのだろうなあ、と子供達は内心で呟く。
「ヒル魔くん、あの人脅迫してないでしょうね?」
「オヤ人聞きの悪い。ご親切に申し出て頂いただけデスヨ」
いかにも嘘です、という口調で喋るヒル魔にまもりが食ってかかっているが、言うだけ無駄だな、と子供達は傍観している。これもいつものコミュニケーションだな、と苦笑混じりで。
「みんなは今日、どんな予定なの?」
まもりの母の質問に、妖介が答える。
「ホテルに荷物預けたら速攻で泳ぐ!!」
彼は泳ぐことが結構好きだ。
けれど最近は授業以外で泳ぐこともなく、海に出掛ける機会もない。
久々の海、ということで純粋に泳げることを非常に楽しみにしていたのだ。
「私たちはまず移住した友達のところに行ってくるよ」
「久しぶりに会うから、楽しみね」
にこにこと笑みを浮かべるまもりの母に、ヒル魔が視線を向ける。
「送りましょうか?」
「先方にはホテルに着いたら連絡が欲しい、って言われてるの。たぶん迎えに来て貰えるから大丈夫よ」
「そうですか。もし自力で移動するようなら言って下さい」
「何をする気だ? タクシーの運転手をまた脅すんじゃないだろうな?」
「脅すなんてそんなことシマセンヨ。俺が運転して連れて行くんデス」
「断る!!」
「ヒル魔くんは国際免許も持ってるから運転できるのよ」
まもりのとぼけた回答にまもりの父は首を振る。
「そういう意味じゃない! 先方にうかうか君のことが紹介できるか!」
「ホホー? それじゃあ尚更期待に応えて俺がお送りシマショウネ」
「いらん、と言ってるだろうが!」
言い合う二人にまもりの母とまもりは視線を合わせて苦笑する。
護はノートパソコンでなにやらチェックしている。
「何?」
アヤがのぞき込み、眉間に皺を寄せた。
「何? どうしたの?」
妖介が覗き込もうとするが、護はさっさと画面を閉じてしまう。
「なんでもないよ」
しれっと言う彼のその笑みに、これはここで問いつめても無駄だと察する。
狭い空間に家族全員がいるこの場では無邪気を装っている彼は絶対に口を割らないだろうし。
アヤに目配せすると、アヤは無言でヒル魔の銃に視線を向けた。
それだけで妖介は察した。
(射撃場に行くか銃の購入、ってとこか)
ただでさえ銃に並々ならぬ関心を持っている彼のこと、この滞在中にどうにかして自分の銃を手に入れようとするのだろう。それは阻止しないと、と妖介はにっこりと笑う。
「護、今日は一緒に泳ごうな」
「うん、いいよ」
それに護もにっこりと笑って頷く。
どことなく黒い空気を醸すが、まもりやその両親は仲がいいのねとのんきに笑っている。
気づかないのは幸福だな、とアヤは内心独り言ちた。
ホテルに荷物を預けると、まもりの父母は早速迎えに来た友人の車で彼らの家へと向かっていった。
部屋割は祖父母・ヒル魔とまもり・子供達三人となった。
祖父母とヒル魔夫妻はダブルベッドだとかで、どんなものかと覗きに行った子供の前で早々にヒル魔とまもりの間で言い争いが起きていた。
「なんでダブルにしたの!?」
「ア? 経済的だろ」
「ツインと値段だってそう代わらないでしょ!?」
「ホー? ダブルじゃ不味い理由でもありマスカ?」
「ま、まずいっていうか!」
騒ぐ両親の部屋から退室した子供達はさっさと泳ぎに行こうと自室へと戻った。
「キングサイズなんだからダブルでも平気で寝られると思うけどなあ」
「そういうことじゃないと思うよ、兄ちゃん」
すったもんだの末に準備を済ませた一家は揃ってビーチへと向かった。
ざくざくと砂浜を歩く一家の姿は、人目を引く。
アヤもまもりも水着を着ていたが、その上からパーカーを着ている。
けれどその抜群のプロポーションは上着一枚では到底隠せない。
すれ違う男性が全員思わず振り返るが、ヒル魔と妖介の鋭い視線に恐れおののき、慌てて視線を逸らす。
「さすがに海外だと金髪でも茶髪でもあんまり目立たないわよね」
アヤは泳ぐのに妨げにならないよう、長い金髪をお団子にして纏めている。
「そうね」
色とりどりの人々が歩くここでは色彩的に目立たない、とまもりとアヤは言うが、とんだ勘違いだと男性陣は皆嘆息する。まもりは慈母のような、アヤは怜悧な雰囲気が内面からにじみ出ていて、それが美貌と相俟って誰もが彼女たちに引き寄せられているのに。
当人達はのんきなものだ、と。
ホテル側が用意しているパラソルの下にタオル等の荷物を置く。
「おっし、泳ぐぞ護!」
「ちょ、待ってよ兄ちゃん準備運動!」
どっかで見たなあの脱ぎっぷり、とヒル魔がかつての水町をなんとなく思い出している背後で。
「私たちも行きましょ」
「ええ」
まもりとアヤも上着を脱ぐ。
途端にあちこちから僅かに歓声が上がった。
「・・・ア?」
実は二人がどんな水着を買ってきたか知らなかったヒル魔は、たった今二人の水着姿を目の当たりにした。
まもりはワンショルダーの花柄のワンピースの水着だった。
それが普通のものなら何も問題はない。
問題は、布地の色がほぼ透明というところだ。
花柄以外の部分が透けて、地肌が見えている。水に濡れたら更に透けるのは目に見えている。
きわどいところはギリギリ花柄によって隠されているが、遠目から見れば花のタトゥーで彩られた全裸の女に見えかねないだろう。
その隣のアヤは首元の詰まった黒のエナメル調素材のワンピース形。
一見なんの変哲もないが、その背は首元とヒップ以外は覆われていないという大胆なデザイン。
真っ白な背中と、サイドからは豊かな胸のラインが覗く、挑発的なシロモノだ。
普段なら選ばないだろうそれらに誰かの思惑を察する。
「テメェらが自分で決めたのか?」
「え? ううん、護が見立ててくれたの」
「コレが一番マシだった」
ねえ、と頷き合う二人に、ヒル魔は頭痛を覚えた。
あの糞ガキ、と舌打ちが零れる。
「早く泳ぎましょ」
「待て」
波打ち際へと行こうとするまもりを引き留めたヒル魔は、問答無用で彼が着てきていたパーカーを被せた。
「わっぷ! ちょ、何!?」
「テメェは泳ぐな! コレ着てここで荷物番してろ」
「な、なんで?!」
「何でじゃねぇ! テメェ、ンな格好で泳いだら透けるだろうが!」
「透ける? でも、花柄の所は透けないってお店の人が」
「それ以外が透けてる格好想像しろ!」
想像したらしく少々の沈黙の後、まもりは首を傾げた。
「え、平気でしょ?」
誰もそんなに見てないわよ、というまもりに舌打ちすると、ヒル魔は彼女の開いた襟ぐりに顔を突っ込む。
「え、ちょ・・・ッ!!」
ワンショルダーの肩ひもがない方、そこに朱印が刻まれる。
ご丁寧に歯形も薄くつけられて、まもりは狼狽する。
「な、何するの!? やだ、コレ脱げないじゃない!」
「いいんだよ、それで!」
「よくない!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人にアヤは見切りを付けて背を向けた。
すたすたと先に行ってはしゃいでいる妖介と護の元へ歩いていく。
どうせ犬も食わないなんとやらだし、すぐに二人とも海じゃなくベッドにダイブするんだろうから、と。
<続>
空港からして南国の匂いが漂うそこを抜けると、深く強烈な青空が皆を迎える。
現在は乾期だが、毎日定期的にスコールが降る常夏の島。
今回はオアフ島のみに滞在することになっている。
忙しなく移動せずゆっくりしたいから、というまもりの両親の希望が全面的に汲まれたためだ。
空港で待っていたリムジンに乗り、移動する。
運転手が非常に引きつった顔で全員を出迎えたので、これもヒル魔の脅迫手帳の餌食になった人なのだろうなあ、と子供達は内心で呟く。
「ヒル魔くん、あの人脅迫してないでしょうね?」
「オヤ人聞きの悪い。ご親切に申し出て頂いただけデスヨ」
いかにも嘘です、という口調で喋るヒル魔にまもりが食ってかかっているが、言うだけ無駄だな、と子供達は傍観している。これもいつものコミュニケーションだな、と苦笑混じりで。
「みんなは今日、どんな予定なの?」
まもりの母の質問に、妖介が答える。
「ホテルに荷物預けたら速攻で泳ぐ!!」
彼は泳ぐことが結構好きだ。
けれど最近は授業以外で泳ぐこともなく、海に出掛ける機会もない。
久々の海、ということで純粋に泳げることを非常に楽しみにしていたのだ。
「私たちはまず移住した友達のところに行ってくるよ」
「久しぶりに会うから、楽しみね」
にこにこと笑みを浮かべるまもりの母に、ヒル魔が視線を向ける。
「送りましょうか?」
「先方にはホテルに着いたら連絡が欲しい、って言われてるの。たぶん迎えに来て貰えるから大丈夫よ」
「そうですか。もし自力で移動するようなら言って下さい」
「何をする気だ? タクシーの運転手をまた脅すんじゃないだろうな?」
「脅すなんてそんなことシマセンヨ。俺が運転して連れて行くんデス」
「断る!!」
「ヒル魔くんは国際免許も持ってるから運転できるのよ」
まもりのとぼけた回答にまもりの父は首を振る。
「そういう意味じゃない! 先方にうかうか君のことが紹介できるか!」
「ホホー? それじゃあ尚更期待に応えて俺がお送りシマショウネ」
「いらん、と言ってるだろうが!」
言い合う二人にまもりの母とまもりは視線を合わせて苦笑する。
護はノートパソコンでなにやらチェックしている。
「何?」
アヤがのぞき込み、眉間に皺を寄せた。
「何? どうしたの?」
妖介が覗き込もうとするが、護はさっさと画面を閉じてしまう。
「なんでもないよ」
しれっと言う彼のその笑みに、これはここで問いつめても無駄だと察する。
狭い空間に家族全員がいるこの場では無邪気を装っている彼は絶対に口を割らないだろうし。
アヤに目配せすると、アヤは無言でヒル魔の銃に視線を向けた。
それだけで妖介は察した。
(射撃場に行くか銃の購入、ってとこか)
ただでさえ銃に並々ならぬ関心を持っている彼のこと、この滞在中にどうにかして自分の銃を手に入れようとするのだろう。それは阻止しないと、と妖介はにっこりと笑う。
「護、今日は一緒に泳ごうな」
「うん、いいよ」
それに護もにっこりと笑って頷く。
どことなく黒い空気を醸すが、まもりやその両親は仲がいいのねとのんきに笑っている。
気づかないのは幸福だな、とアヤは内心独り言ちた。
ホテルに荷物を預けると、まもりの父母は早速迎えに来た友人の車で彼らの家へと向かっていった。
部屋割は祖父母・ヒル魔とまもり・子供達三人となった。
祖父母とヒル魔夫妻はダブルベッドだとかで、どんなものかと覗きに行った子供の前で早々にヒル魔とまもりの間で言い争いが起きていた。
「なんでダブルにしたの!?」
「ア? 経済的だろ」
「ツインと値段だってそう代わらないでしょ!?」
「ホー? ダブルじゃ不味い理由でもありマスカ?」
「ま、まずいっていうか!」
騒ぐ両親の部屋から退室した子供達はさっさと泳ぎに行こうと自室へと戻った。
「キングサイズなんだからダブルでも平気で寝られると思うけどなあ」
「そういうことじゃないと思うよ、兄ちゃん」
すったもんだの末に準備を済ませた一家は揃ってビーチへと向かった。
ざくざくと砂浜を歩く一家の姿は、人目を引く。
アヤもまもりも水着を着ていたが、その上からパーカーを着ている。
けれどその抜群のプロポーションは上着一枚では到底隠せない。
すれ違う男性が全員思わず振り返るが、ヒル魔と妖介の鋭い視線に恐れおののき、慌てて視線を逸らす。
「さすがに海外だと金髪でも茶髪でもあんまり目立たないわよね」
アヤは泳ぐのに妨げにならないよう、長い金髪をお団子にして纏めている。
「そうね」
色とりどりの人々が歩くここでは色彩的に目立たない、とまもりとアヤは言うが、とんだ勘違いだと男性陣は皆嘆息する。まもりは慈母のような、アヤは怜悧な雰囲気が内面からにじみ出ていて、それが美貌と相俟って誰もが彼女たちに引き寄せられているのに。
当人達はのんきなものだ、と。
ホテル側が用意しているパラソルの下にタオル等の荷物を置く。
「おっし、泳ぐぞ護!」
「ちょ、待ってよ兄ちゃん準備運動!」
どっかで見たなあの脱ぎっぷり、とヒル魔がかつての水町をなんとなく思い出している背後で。
「私たちも行きましょ」
「ええ」
まもりとアヤも上着を脱ぐ。
途端にあちこちから僅かに歓声が上がった。
「・・・ア?」
実は二人がどんな水着を買ってきたか知らなかったヒル魔は、たった今二人の水着姿を目の当たりにした。
まもりはワンショルダーの花柄のワンピースの水着だった。
それが普通のものなら何も問題はない。
問題は、布地の色がほぼ透明というところだ。
花柄以外の部分が透けて、地肌が見えている。水に濡れたら更に透けるのは目に見えている。
きわどいところはギリギリ花柄によって隠されているが、遠目から見れば花のタトゥーで彩られた全裸の女に見えかねないだろう。
その隣のアヤは首元の詰まった黒のエナメル調素材のワンピース形。
一見なんの変哲もないが、その背は首元とヒップ以外は覆われていないという大胆なデザイン。
真っ白な背中と、サイドからは豊かな胸のラインが覗く、挑発的なシロモノだ。
普段なら選ばないだろうそれらに誰かの思惑を察する。
「テメェらが自分で決めたのか?」
「え? ううん、護が見立ててくれたの」
「コレが一番マシだった」
ねえ、と頷き合う二人に、ヒル魔は頭痛を覚えた。
あの糞ガキ、と舌打ちが零れる。
「早く泳ぎましょ」
「待て」
波打ち際へと行こうとするまもりを引き留めたヒル魔は、問答無用で彼が着てきていたパーカーを被せた。
「わっぷ! ちょ、何!?」
「テメェは泳ぐな! コレ着てここで荷物番してろ」
「な、なんで?!」
「何でじゃねぇ! テメェ、ンな格好で泳いだら透けるだろうが!」
「透ける? でも、花柄の所は透けないってお店の人が」
「それ以外が透けてる格好想像しろ!」
想像したらしく少々の沈黙の後、まもりは首を傾げた。
「え、平気でしょ?」
誰もそんなに見てないわよ、というまもりに舌打ちすると、ヒル魔は彼女の開いた襟ぐりに顔を突っ込む。
「え、ちょ・・・ッ!!」
ワンショルダーの肩ひもがない方、そこに朱印が刻まれる。
ご丁寧に歯形も薄くつけられて、まもりは狼狽する。
「な、何するの!? やだ、コレ脱げないじゃない!」
「いいんだよ、それで!」
「よくない!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ二人にアヤは見切りを付けて背を向けた。
すたすたと先に行ってはしゃいでいる妖介と護の元へ歩いていく。
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HN:
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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