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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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(ヒルまも一家)
※アヤ・妖介が高校一年の夏休み直前
※リクエスト作品


+ + + + + + + + + +
それは一本の電話が発端だった。
夜、食事を終えてめいめいにくつろぎの時間となったのを見計らったようにその電話は鳴った。
「はい、ヒル魔です」
電話に出た妖介が、ぱちりと瞬いて傍らのアヤの肩を突いた。
「?」
電話に応対しながら、妖介はパパパ、と手話でアヤに何事かを告げる。
目を丸くしたアヤはキッチンで食器を洗っているまもりの元へと急いで向かった。
程なくまもりが手を拭きながらやってきて、電話を替わる。
「もしもし、お父さん? 何の話?」
妖介を見上げ、リビングで本を読んでいた護が小首を傾げる。
「何?」
「じいちゃんの古い知り合いがハワイに移住したんだって」
妖介は話す母親をちらりと見る。
「ここのところ遊びに行くにしても、全員で出掛けるなんて滅多にないし、夏休みも近いから・・・」
「全員でハワイに遊びに行かないか、っていうの?」
「そ」
三人は顔を見合わせる。
アメフト部に所属しているアヤと妖介はかなり時間の制限があり、泊まりがけの旅行なんて難しい。
同様にヒル魔も。
「母さんと護だけならなんとかなるよね」
「まあ、そうだけど・・・」
「あの一件があったのに?」
ぴん、とアヤが片眉を上げる。
父親と同じその仕草に、妖介もだよねぇ、と頭を掻く。
まもりの家出騒動で相当動揺したヒル魔が易々とまもりを海外に行かせるなんてあるだろうか。
「じいちゃんには悪いけど、全員は無理だって」
「そうだねー・・・」
護がため息をつき、その頭をアヤが宥めるように撫でた。
「ナニガ?」
「「「っ!」」」
不意に姉弟の会話にヒル魔が割って入る。
足音はしないし気配も消すのが癖なのだと判っていても、やはり心臓には悪い。
「・・・今、じいちゃんから電話があって」
「夏休み、一緒にハワイに遊びに行かないか、だって」
「今お母さんが断ってる最中」
端的な言葉にヒル魔は片眉を上げた。
見ればまもりは至極残念そうに断りの口上を述べているところだった。
「・・・うん、やっぱり子供達も部活あるし、ほらヒル魔くんもコーチやってるじゃない? 休めないと思うのよ」
だから、と言う前に。
ヒル魔がヒョイと受話器を取り上げた。
「随分と豪勢なオハナシデスネ」
『でもまもりと護だけでも・・・ってヒル魔?! 相変わらず唐突な!』
「俺が前置きして何かすることがアリマシタカネ」
『開き直るんじゃない!!』
途端に賑やかになる受話器の向こうを想像し、妖介は苦笑する。
相変わらず仲がいいことだ。
きっと後ろで聞いている祖母も苦笑しているだろう。
ヒル魔が会話する間にまもりを子供達が取り囲む。
「母さんだけでも行けばいいじゃない」
「んー・・・でも、みんな置いていくのはちょっと・・・」
「僕は行きたい!」
「家のことなら俺たちだけでもなんとかなるよ」
「でも、ヒル魔くんが」
「父さんが本気で行かせないつもりなら、最初から電話代わらないって」
「そうそう」
頷くアヤと護に、まもりはちろ、と未だ電話を続けるヒル魔を見た。
「・・・そうかな?」
「そうだよ」
「でも自分も行く、とか言いそうだけど」
「部活あるのに、どうやって?」
「全員で行くとか?」
「いやそりゃ多すぎるよ」
「昔デビルバッツの時にアメリカ行ったけど、今回はデスマーチはしないでしょう」
会話をする家族を余所に、ヒル魔が受話器を置いた。
「―――ジャア、そういうことでヨロシクお願いシマスお義父サン」
電話の向こうでそう呼ぶな、と怒鳴る声に笑いながら。
「父さん? どうするの?」
ヒル魔はにやりと笑みを浮かべる。
「せっかくの家族旅行のお誘いとあれば、行かないわけにはいかねぇだろ」
「え、じゃあ・・・」
「行くの?」
私たちも? と自らを指さす姉弟にヒル魔は当然、と笑う。
「やったー!」
護が喜び、どさくさに紛れてアヤに抱きついている。
「こら、はしゃぎすぎ!」
それを剥がそうとする妖介。賑やかな子供達の隣で。
「水着買わねぇとな」
ヒル魔はくしゃりとまもりの頭を撫でる。
途端にまもりの顔がほころんだ。
日付は、夏休みに入ってからだと部活に忙殺されるため、夏休みの直前となった。
「部活はどうするの?」
「期末テスト前は部活禁止期間だろ。その時行けばいい」
「テスト、二人は大丈夫?」
心配そうに尋ねるまもりに、二人はにやりと笑う。
「そりゃもう!」
「当然」
二人は学年首位と二位である。
たかだか一週間くらい勉強しなくても影響はゼロだと豪語する。
「じゃあ大丈夫かな。支度、しなきゃね」
「まだ日付は結構先だぞ」
「トランクが使えるかどうか見に行くのよ」
いそいそとトランクを確認しに行くまもりとそれについていくヒル魔を見送り、妖介はアヤを見た。
「アヤも水着買わないとね」
「いらん」
「言うと思った! 姉ちゃん、スクール水着は悪目立ちするんだからダメだよ」
アヤの眉間に皺が一本入る。
「ただでさえ日本人離れした背格好なんだから、悪趣味なコスプレイヤーだなんて言われたら最悪だよ」
「ほら、これなんてどう?」
ノートパソコンを立ち上げて検索していた護は、くるりと液晶をアヤに向ける。
極端に布地の少ないデザインに、アヤは半目になって護にデコピンを繰り出す。
「痛ッ!!」
「趣味が悪い」
涙目になって護が反論する。
「そんなことないよ! こういうのを着た方がかえって目立たないんだよ」
「まあ、ワンピース型なんて向こうじゃほとんど着てる人いないからね」
それでもこれはやりすぎ、と妖介が窘める。
そこにヒル魔とまもりが戻ってきた。
子供達の騒動を見つつ、ヒル魔が口を開く。
「明日にでも姉崎と一緒に買ってくればいいだろ」
「そうよ。お母さんと一緒に買い物に行きましょ!」
笑顔のまもりに、アヤは戸惑う。
出来ることなら人混みの中に足を踏み入れるのは勘弁願いたい。
ただでさえ目立ってしまう外見なのだと自覚しているのだから。
けれど目に見えて楽しそうな母を前にしては、そう強くも言いづらい。
結局、アヤはまもりに押し切られる形で渋々と頷いた。


楽しみにしていることがあれば、日付は飛ぶように過ぎていく。
準備に勤しみ、うきうきとご機嫌のまもりを見て家族は視線を交わし、笑顔を浮かべ。

そうして、あっという間に出立の日が来た。
久しぶりの遠出に心躍らせる皆の気持ちを乗せて飛行機は大空に飛び立った。


<続>
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