旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
巨大な鎌が音もなく振り下ろされ、ごとり、と重い物が床に落ちる。
そこにべしゃりと深紅が撒き散らされた。
首。
落ちたそれが、虚ろに天を仰ぎ、だらしなく口元を歪ませて血を滲ませる。
血涙に染まる頬を、白い手のひらが擦り清める。
そうして、どこも見ていない眸に瞼を下ろし、乱れた髪をなでつける。
「やっと、手に入れたわ」
恭しく掲げる手の内側を伝い落ちるのも、生暖かい深紅。
すぐに冷えてべたべたとした感触を残すそれは、鉄錆の匂いがする。
「これで、あなたは」
真っ白な面は、死に彩られて酷く無気力だ。
「私の、ものよ」
閉ざされた眸も、力無く開かれた口も、切り離された指も、もう何も紡がない。
何一つ。
「それでいいの。あなたは悪魔で、私を傷つける事ばかり言うから、もういいの」
抱きしめて、大事にして。
もうどこにもいかないように、傷つけられないように。
「これがテメェの望みか」
「!」
抱えていた首がぱくりと言葉を紡ぐ。
驚き覗き込めば、ざらざらと音を立てて崩れ落ちる顔。
人形めいたそれが髑髏となり、からからと音を立てて喋る。
落ちくぼんだ眼窩は何も照らさない闇に満ちて。
骨ばかりになっても鋭利な牙は変わりない。
「俺を縛り付けて殺して一人気色悪く笑ってる事が望みか」
「・・・そうよ」
だから黙って、と囁くと髑髏はさらに楽しげに笑い声を上げた。
「テメェは一人じゃ飽き足らねぇのか」
その言葉に首を巡らせる。
闇に白く浮かび上がるのは、髑髏。
あれは。
「糞チビを縛り付けて殺しておいてまだ足りねぇのか」
けたたましく髑髏が笑う。
髑髏の山に力無く座りこむ上から、声が降りてくる。
小さくうち捨てられた髑髏を哀れむように、蔑むように。
「この、死神め」
「――――――ッ!!」
声なき悲鳴を上げて、まもりはがばりと起きあがった。
心臓が早鐘を打っている。見開いた瞳に映る景色は、見慣れた自室。
ばっと手を見る。
それは血に汚れても、死の匂いもしない、平素の手、だ。
汗の滲んだ額を拭って、自らを抱きしめる。
耳にこびりつくのは悪魔の声。
「あ・・・っ」
じわり、と涙が浮かんだ。
「・・・あ・・・あ・・・!」
たかが夢だと言い切るには、思い当たる節が多すぎた。
セナを大事にするという大義名分は、彼を縛り付けて彼らしさを殺す事に他ならなかった。
過剰な庇護欲が彼を追いつめた。
まもりは顔を覆い、嗚咽を漏らす。
『テメェは一人じゃ飽き足らねぇのか』
夢の中だけの一言じゃない、それは。
今日の部活が終わった後、勢いのままに告げてしまった想いに返ってきた言葉だった。
そんな事はないと咄嗟に言い返せなかったまもりを、彼は一瞥する事もなく立ち去った。
「ぁ・・・ひっ、・・・・あ・・・」
泣き声は密やかに響く。
私の手は天使の腕などではなく。
全てを刈り取る、死神の鎌。
欲しがるなんて、願うなんて、愚かな事だと悪魔も嘲笑う。
夢の中でさえ、あの人は私のものになりはしないのだと思い知らされた。
***
暗い話が書きたくなって書きました。
そこにべしゃりと深紅が撒き散らされた。
首。
落ちたそれが、虚ろに天を仰ぎ、だらしなく口元を歪ませて血を滲ませる。
血涙に染まる頬を、白い手のひらが擦り清める。
そうして、どこも見ていない眸に瞼を下ろし、乱れた髪をなでつける。
「やっと、手に入れたわ」
恭しく掲げる手の内側を伝い落ちるのも、生暖かい深紅。
すぐに冷えてべたべたとした感触を残すそれは、鉄錆の匂いがする。
「これで、あなたは」
真っ白な面は、死に彩られて酷く無気力だ。
「私の、ものよ」
閉ざされた眸も、力無く開かれた口も、切り離された指も、もう何も紡がない。
何一つ。
「それでいいの。あなたは悪魔で、私を傷つける事ばかり言うから、もういいの」
抱きしめて、大事にして。
もうどこにもいかないように、傷つけられないように。
「これがテメェの望みか」
「!」
抱えていた首がぱくりと言葉を紡ぐ。
驚き覗き込めば、ざらざらと音を立てて崩れ落ちる顔。
人形めいたそれが髑髏となり、からからと音を立てて喋る。
落ちくぼんだ眼窩は何も照らさない闇に満ちて。
骨ばかりになっても鋭利な牙は変わりない。
「俺を縛り付けて殺して一人気色悪く笑ってる事が望みか」
「・・・そうよ」
だから黙って、と囁くと髑髏はさらに楽しげに笑い声を上げた。
「テメェは一人じゃ飽き足らねぇのか」
その言葉に首を巡らせる。
闇に白く浮かび上がるのは、髑髏。
あれは。
「糞チビを縛り付けて殺しておいてまだ足りねぇのか」
けたたましく髑髏が笑う。
髑髏の山に力無く座りこむ上から、声が降りてくる。
小さくうち捨てられた髑髏を哀れむように、蔑むように。
「この、死神め」
「――――――ッ!!」
声なき悲鳴を上げて、まもりはがばりと起きあがった。
心臓が早鐘を打っている。見開いた瞳に映る景色は、見慣れた自室。
ばっと手を見る。
それは血に汚れても、死の匂いもしない、平素の手、だ。
汗の滲んだ額を拭って、自らを抱きしめる。
耳にこびりつくのは悪魔の声。
「あ・・・っ」
じわり、と涙が浮かんだ。
「・・・あ・・・あ・・・!」
たかが夢だと言い切るには、思い当たる節が多すぎた。
セナを大事にするという大義名分は、彼を縛り付けて彼らしさを殺す事に他ならなかった。
過剰な庇護欲が彼を追いつめた。
まもりは顔を覆い、嗚咽を漏らす。
『テメェは一人じゃ飽き足らねぇのか』
夢の中だけの一言じゃない、それは。
今日の部活が終わった後、勢いのままに告げてしまった想いに返ってきた言葉だった。
そんな事はないと咄嗟に言い返せなかったまもりを、彼は一瞥する事もなく立ち去った。
「ぁ・・・ひっ、・・・・あ・・・」
泣き声は密やかに響く。
私の手は天使の腕などではなく。
全てを刈り取る、死神の鎌。
欲しがるなんて、願うなんて、愚かな事だと悪魔も嘲笑う。
夢の中でさえ、あの人は私のものになりはしないのだと思い知らされた。
***
暗い話が書きたくなって書きました。
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プロフィール
HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
旅行と読書
自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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