旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
頭がいいことと行動力があることと、思慮深いこととは同一ではない。
ヒル魔は目の前の姉崎まもりを見ていてつくづくそう思うのだ。
どんな人間でも第一印象で決め付けがちなので、ヒル魔のことを見た目どおり悪魔のように思い、蛇蝎のごとく嫌うのは判る。更にその所業を聞きかじれば余計に拍車がかかるのもよく判る。
けれどいくら幼馴染で大事な弟のような存在だからといって、その嫌う相手のいる部活に即決で入るのはどうかと思う。
どういった内容でどういった仕事をするのか、せめて一度聞いてから考えて決めればいいものを。
それでも彼女は行動力もそれを可能にする頭脳も持ち合わせていて。
そうして、興味を持たない部分にまで知識を深めようとする努力を惜しまない才能にも恵まれていたから、瞬く間に部活内の重要なポジションを確立したのだけれど。
とどのつまり、彼女は浅慮ではあるが頭脳と行動力でカバーしているので表立ってトラブルにならないのだ。
けれどそれと今の状況は違う。
トラブルの種はそれこそ山のようにあり、それは減るどころか増え続ける場所に今、いるのだから。
ヒル魔は舌打ち代わりにガムを噛み、嘆息代わりに膨らませた。
八つ当たりのように足を動かせば、焦るように彼女は声を上げる。
「もう!」
むくれて見上げる体勢に自然と視線が下を向く。
短いスカートからは太ももが、タンクトップからはすんなりと長い腕が、そうして胸元の谷間までヒル魔からはばっちり見える。
アホらしい、と苦々しい気持ちで眉間に皺を寄せる。
疲れていてそんな気も起こらない現状でよかったな、糞マネ。そう独り言ちる。
今はデス・マーチの最中。
『デス』の名を冠するのだからその特訓が生易しいわけもなく、むしろ地獄のような日々を続けるのだ。
ヒル魔にしてみれば、この荒野を駆け抜ける特訓は到底女に勤まるはずもないと思い、当初からまもりを連れて行くつもりは毛頭なかった。
だから彼女一人を飛行機に乗せてから部員たちに参加の是非を問いかけたのだ。
それなのに、彼女は飛行機を降りて臆することなくついて来ることを選択した。
お得意の浅慮で、だ。
案の定、予想以上に厳しい行軍にまもりは眉をひそめ、痛ましそうに部員たちに冷却材を手渡していた。
今も眉間に皺を寄せてヒル魔の膝を見ている。泣き言を言い出すのも時間の問題だ。
その前に引導を渡してやろうとヒル魔は口を開く。
「・・・判ったか」
「え?」
ヒル魔の問いかけは低く、ようやく落ち着いてくれた膝に包帯を巻くことに躍起になるまもりは聞き落とした。
「テメェの見込みは糞甘ェってことが」
聞く者の耳を削ぎ落としそうな冷たい声音に、まもりは僅かに肩を揺らした。
「・・・そうね」
小さな同意に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
ほらやっぱり、こいつは何も考えちゃいなかった。
もう少し熟考するっていうスキルを身につけた方がいい。
とっとと帰れ、そう発言しようとしたヒル魔の口は。
「ヒル魔くんもちゃんと人間だってことね」
という、まもりの言葉に阻まれた。
思わず言葉を呑んだヒル魔に気づかず、まもりは続けた。
「なんだかね、そうかなぁって思って来てみて手当てしたけど・・・」
まもりの手がそろりとヒル魔の膝を撫でる。
「ちゃんと怪我して、痛そうだし」
癒すような手つき。
「ヒル魔くんが悪魔みたいに見せかけてる『だけ』っていうのがやっと判ったわ」
俯く彼女の睫が、月光に青く影を落としている。
人工的な明かりはヒル魔の持つパソコンからのものだけで。
それは彼女を照らしているわけでもないのに、まもりの方が白く輝いているように見える。
荒野を駆けるには柔い肌が白いせいか。
それとも、心配する心根が清いせいか。
「オヤオヤ、泥門の天使様が悪魔をご心配デスカ」
からかう言葉でそう感じたのを濁そうとしたが、まもりはまっすぐにヒル魔を見上げた。
青い視線が、遮るものもなくヒル魔を射抜く。
その強さに、内心ヒル魔は舌打ちした。
「ヒル魔くんが悪魔じゃないように」
その視線が和らぐ。あたたかく慈しみを乗せて。
「私も天使じゃないわ」
「・・・ホー」
「今、こんな場所で、そんなちっぽけなことは関係ないでしょう」
まもりは腰を上げる。
見上げる格好になったヒル魔は、彼女の茶色い髪が月光を弾いて白く輝くのを見た。
その艶やかな唇の端にまで光は余すところなく散って、煌いている。
「ヒル魔くんが案ずるべきは全員がこの過酷な道のりを超えられるかということで、私の心配じゃないわ」
青い瞳だけは悪戯っぽい光を滲ませ、そうしてすぐにくるりと背を向ける。
ヒル魔は何も言わず、その背を黙って見送り。
盛大に舌打ちした。
今更のように、彼女のことが好きだな、なんて。
糞青臭いことを感じてしまった己への自戒を込めて。
***
「墜落イグニッション」の続き(黒魔尼温☆JIN様)でした。すみません長々と・・・!初期を思い出して懐かしい気持ちで書きました。ヒル魔さん視点だとまもりちゃんのことが心配でしょうがないんじゃないかなあって考えてたらするする出てきました。お忘れかもしれませんが、どうぞお納めくださいw
リクエストありがとうございましたー!
黒魔尼温☆JIN様のみお持ち帰り可。
ヒル魔は目の前の姉崎まもりを見ていてつくづくそう思うのだ。
どんな人間でも第一印象で決め付けがちなので、ヒル魔のことを見た目どおり悪魔のように思い、蛇蝎のごとく嫌うのは判る。更にその所業を聞きかじれば余計に拍車がかかるのもよく判る。
けれどいくら幼馴染で大事な弟のような存在だからといって、その嫌う相手のいる部活に即決で入るのはどうかと思う。
どういった内容でどういった仕事をするのか、せめて一度聞いてから考えて決めればいいものを。
それでも彼女は行動力もそれを可能にする頭脳も持ち合わせていて。
そうして、興味を持たない部分にまで知識を深めようとする努力を惜しまない才能にも恵まれていたから、瞬く間に部活内の重要なポジションを確立したのだけれど。
とどのつまり、彼女は浅慮ではあるが頭脳と行動力でカバーしているので表立ってトラブルにならないのだ。
けれどそれと今の状況は違う。
トラブルの種はそれこそ山のようにあり、それは減るどころか増え続ける場所に今、いるのだから。
ヒル魔は舌打ち代わりにガムを噛み、嘆息代わりに膨らませた。
八つ当たりのように足を動かせば、焦るように彼女は声を上げる。
「もう!」
むくれて見上げる体勢に自然と視線が下を向く。
短いスカートからは太ももが、タンクトップからはすんなりと長い腕が、そうして胸元の谷間までヒル魔からはばっちり見える。
アホらしい、と苦々しい気持ちで眉間に皺を寄せる。
疲れていてそんな気も起こらない現状でよかったな、糞マネ。そう独り言ちる。
今はデス・マーチの最中。
『デス』の名を冠するのだからその特訓が生易しいわけもなく、むしろ地獄のような日々を続けるのだ。
ヒル魔にしてみれば、この荒野を駆け抜ける特訓は到底女に勤まるはずもないと思い、当初からまもりを連れて行くつもりは毛頭なかった。
だから彼女一人を飛行機に乗せてから部員たちに参加の是非を問いかけたのだ。
それなのに、彼女は飛行機を降りて臆することなくついて来ることを選択した。
お得意の浅慮で、だ。
案の定、予想以上に厳しい行軍にまもりは眉をひそめ、痛ましそうに部員たちに冷却材を手渡していた。
今も眉間に皺を寄せてヒル魔の膝を見ている。泣き言を言い出すのも時間の問題だ。
その前に引導を渡してやろうとヒル魔は口を開く。
「・・・判ったか」
「え?」
ヒル魔の問いかけは低く、ようやく落ち着いてくれた膝に包帯を巻くことに躍起になるまもりは聞き落とした。
「テメェの見込みは糞甘ェってことが」
聞く者の耳を削ぎ落としそうな冷たい声音に、まもりは僅かに肩を揺らした。
「・・・そうね」
小さな同意に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
ほらやっぱり、こいつは何も考えちゃいなかった。
もう少し熟考するっていうスキルを身につけた方がいい。
とっとと帰れ、そう発言しようとしたヒル魔の口は。
「ヒル魔くんもちゃんと人間だってことね」
という、まもりの言葉に阻まれた。
思わず言葉を呑んだヒル魔に気づかず、まもりは続けた。
「なんだかね、そうかなぁって思って来てみて手当てしたけど・・・」
まもりの手がそろりとヒル魔の膝を撫でる。
「ちゃんと怪我して、痛そうだし」
癒すような手つき。
「ヒル魔くんが悪魔みたいに見せかけてる『だけ』っていうのがやっと判ったわ」
俯く彼女の睫が、月光に青く影を落としている。
人工的な明かりはヒル魔の持つパソコンからのものだけで。
それは彼女を照らしているわけでもないのに、まもりの方が白く輝いているように見える。
荒野を駆けるには柔い肌が白いせいか。
それとも、心配する心根が清いせいか。
「オヤオヤ、泥門の天使様が悪魔をご心配デスカ」
からかう言葉でそう感じたのを濁そうとしたが、まもりはまっすぐにヒル魔を見上げた。
青い視線が、遮るものもなくヒル魔を射抜く。
その強さに、内心ヒル魔は舌打ちした。
「ヒル魔くんが悪魔じゃないように」
その視線が和らぐ。あたたかく慈しみを乗せて。
「私も天使じゃないわ」
「・・・ホー」
「今、こんな場所で、そんなちっぽけなことは関係ないでしょう」
まもりは腰を上げる。
見上げる格好になったヒル魔は、彼女の茶色い髪が月光を弾いて白く輝くのを見た。
その艶やかな唇の端にまで光は余すところなく散って、煌いている。
「ヒル魔くんが案ずるべきは全員がこの過酷な道のりを超えられるかということで、私の心配じゃないわ」
青い瞳だけは悪戯っぽい光を滲ませ、そうしてすぐにくるりと背を向ける。
ヒル魔は何も言わず、その背を黙って見送り。
盛大に舌打ちした。
今更のように、彼女のことが好きだな、なんて。
糞青臭いことを感じてしまった己への自戒を込めて。
***
「墜落イグニッション」の続き(黒魔尼温☆JIN様)でした。すみません長々と・・・!初期を思い出して懐かしい気持ちで書きました。ヒル魔さん視点だとまもりちゃんのことが心配でしょうがないんじゃないかなあって考えてたらするする出てきました。お忘れかもしれませんが、どうぞお納めくださいw
リクエストありがとうございましたー!
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趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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