旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。
ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。
いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。
+ + + + + + + + + +
「そういえば、じいちゃん平気かな」
妖介の声に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「ア?」
「じいちゃん?」
ヒル魔と護の声に、妖介は続ける。
「ほら、ばあちゃんと母さんが一緒に旅行ならじいちゃん一人でしょ。寂しいかな、って」
たかだか数日のこととはいえ、普段から家事に協力的でもない男一人暮らしは面倒だろう。
コンビニ弁当ばかりになりそうだ、と妖介は推測したのだ。
「そうだなァ」
ヒル魔はカレンダーを見る。
そうしてにたりと浮かべた笑みに先ほどまでの気抜けしたような表情はなかった。
さてその翌日は大雨。げんなりした気分で妖介は雨の中を一人歩く。
アヤは朝から機嫌が悪く、今日は授業が終わると早々に椿と連れ立って出かけた。
彼女にしては珍しい行動だが、予定が狂ったのだと妖介はちゃんと理解している。
そうして、妖介が帰宅したときにはヒル魔が着々と料理を作っている最中だった。
「いつも思うんだけどさ、父さんが作る料理って過程は人に見せたくないよね」
「ア?」
アヤの片付けの下手さはやっぱりヒル魔譲りなのだ、と実感する瞬間である。
味はすごく良いのだけれど、片づけの基本がなっていないから汚れたら汚れっぱなし、という状態。
シンクには使い終わった調理用具が山となり、ゴミも投げて捨てるので、ゴミ箱がいっぱいになりあふれてもそのままに。
出した器もそのままだから、調理できるスペースも徐々に狭まってしまうのだ。
そんな気がしていた、と妖介は嘆息しながら着替え、片づけをするためにキッチンに足を踏み入れる。
「母さんが片付け上手で本当によかったよね。父さん一人じゃあっという間にゴミ屋敷だよ」
「さっさと片付けろ」
やりづらいとは感じていたのだろう、妖介の呆れたような声にもさほど気を悪くせず顎をしゃくる。
妖介はてきぱきと片付け、ゴミを大きなゴミ袋にひとまとめにし、使わない器を戻していく。
「じいちゃんを呼ぶの?」
「おー。しっかりおもてなししねぇとなァ」
からかい甲斐のある彼の事を殊の外気に入っていると知っている孫一同としては、祖父が哀れなような。
それでも妖介はふと気づいてヒル魔に尋ねる。
「あれ? じいちゃんの予定は聞いたの?」
「ア?」
「ほらじいちゃんのことだから、店屋物とかで済ませそうじゃない? それで夕飯の時間も早そうだし・・・」
ヒル魔はちらりと時計を見た。確かに世間一般では夕食の時間帯。
携帯を取り出し廊下に出るヒル魔に、妖介は肩をすくめる。
やっぱり悪魔は愛妻がいないとどうにも調子が狂うようだ。
母さんは偉大だ、と認識を新たにしながら、妖介は瞬く間にキッチンを綺麗に整えた。
そうして、不機嫌さを露にしたヒル魔が戻ってくる。
ああやっぱりなぁ、と妖介は察して嘆息する。
けれど滲む不機嫌さが予定が狂ったというものとは少々違う種類のような気がして、妖介は小首を傾げた。
「おい、テメェかアヤのどっちでもいい、明日あっちに行って来い」
「あっち? ・・・じいちゃんのところ?」
それならば今日の分の料理をじいちゃんに弁当にして持っていくかな、と考えたが。
「あのジジイ、風邪引いてやがる」
「え? そう言ってたの?」
「いや。声がおかしかった」
妖介はぱちりと瞬いた。
ということは、料理を持っていっても食べられない可能性があるというわけか。
作りすぎた料理をどう保存するか妖介は考える。
「ふうん・・・。じいちゃん、気が抜けたのかもね」
ちらりと視線を向けるヒル魔はやる気が削げたようで、料理の手を止めてしまっている。
ヒル魔を呼び、手にした具材の生姜を放り投げた。
キャッチしたヒル魔は眉を寄せる。その迫力ある表情にも平然としたまま、妖介は口を開いた。
「父さん、とりあえずこの作りかけた奴だけ作ってよ。後は俺が作るからさ」
「おー」
黙々と続きを作りはじめたヒル魔に、妖介は内心呟く。
本当にじいちゃんと父さんはよく似てるよね、と。
さてその後。
まもりが不在のときに、ヒル魔家を訪れた椿は不思議そうに呟いた。
「それにしても、皆して随分とモノを放り投げるんやなぁ」
彼女の目の前で湯気を立てるコーヒーはさすがに運ばれてきたけれど、付け忘れたスプーンは手の中に飛んできた。
ゴミはゴミ箱に、リモコンはリモコン入れに、新聞は新聞ストッカーに。
それぞれの場所は決まっているけれど、入れる手段が全部、投げる。
しかも誰の手元も狂わない。
ごく当たり前にモノが飛び交う室内。
ある意味QBの血筋ならではと言えるんやろうか、とコーヒーを啜りながら椿はそんなことを考えたのだった。
***
『ハニーレモン』『ディア・ステップファザー』のヒル魔家サイドを書いてみました。きっとまもりちゃんがいないヒル魔さんは気が抜けてるだろうなぁ、と。そうして怒る人がいないから、皆モノをよく投げます。
しかし鳥家ではごく当たり前の光景だったり。お行儀はよくないんですが、何でも投げます。
全員ゴミも投げる・洗濯物も投げる・とにかく投げる。結構命中率もいいんですよ。
妖介の声に、ヒル魔はぴんと片眉を上げる。
「ア?」
「じいちゃん?」
ヒル魔と護の声に、妖介は続ける。
「ほら、ばあちゃんと母さんが一緒に旅行ならじいちゃん一人でしょ。寂しいかな、って」
たかだか数日のこととはいえ、普段から家事に協力的でもない男一人暮らしは面倒だろう。
コンビニ弁当ばかりになりそうだ、と妖介は推測したのだ。
「そうだなァ」
ヒル魔はカレンダーを見る。
そうしてにたりと浮かべた笑みに先ほどまでの気抜けしたような表情はなかった。
さてその翌日は大雨。げんなりした気分で妖介は雨の中を一人歩く。
アヤは朝から機嫌が悪く、今日は授業が終わると早々に椿と連れ立って出かけた。
彼女にしては珍しい行動だが、予定が狂ったのだと妖介はちゃんと理解している。
そうして、妖介が帰宅したときにはヒル魔が着々と料理を作っている最中だった。
「いつも思うんだけどさ、父さんが作る料理って過程は人に見せたくないよね」
「ア?」
アヤの片付けの下手さはやっぱりヒル魔譲りなのだ、と実感する瞬間である。
味はすごく良いのだけれど、片づけの基本がなっていないから汚れたら汚れっぱなし、という状態。
シンクには使い終わった調理用具が山となり、ゴミも投げて捨てるので、ゴミ箱がいっぱいになりあふれてもそのままに。
出した器もそのままだから、調理できるスペースも徐々に狭まってしまうのだ。
そんな気がしていた、と妖介は嘆息しながら着替え、片づけをするためにキッチンに足を踏み入れる。
「母さんが片付け上手で本当によかったよね。父さん一人じゃあっという間にゴミ屋敷だよ」
「さっさと片付けろ」
やりづらいとは感じていたのだろう、妖介の呆れたような声にもさほど気を悪くせず顎をしゃくる。
妖介はてきぱきと片付け、ゴミを大きなゴミ袋にひとまとめにし、使わない器を戻していく。
「じいちゃんを呼ぶの?」
「おー。しっかりおもてなししねぇとなァ」
からかい甲斐のある彼の事を殊の外気に入っていると知っている孫一同としては、祖父が哀れなような。
それでも妖介はふと気づいてヒル魔に尋ねる。
「あれ? じいちゃんの予定は聞いたの?」
「ア?」
「ほらじいちゃんのことだから、店屋物とかで済ませそうじゃない? それで夕飯の時間も早そうだし・・・」
ヒル魔はちらりと時計を見た。確かに世間一般では夕食の時間帯。
携帯を取り出し廊下に出るヒル魔に、妖介は肩をすくめる。
やっぱり悪魔は愛妻がいないとどうにも調子が狂うようだ。
母さんは偉大だ、と認識を新たにしながら、妖介は瞬く間にキッチンを綺麗に整えた。
そうして、不機嫌さを露にしたヒル魔が戻ってくる。
ああやっぱりなぁ、と妖介は察して嘆息する。
けれど滲む不機嫌さが予定が狂ったというものとは少々違う種類のような気がして、妖介は小首を傾げた。
「おい、テメェかアヤのどっちでもいい、明日あっちに行って来い」
「あっち? ・・・じいちゃんのところ?」
それならば今日の分の料理をじいちゃんに弁当にして持っていくかな、と考えたが。
「あのジジイ、風邪引いてやがる」
「え? そう言ってたの?」
「いや。声がおかしかった」
妖介はぱちりと瞬いた。
ということは、料理を持っていっても食べられない可能性があるというわけか。
作りすぎた料理をどう保存するか妖介は考える。
「ふうん・・・。じいちゃん、気が抜けたのかもね」
ちらりと視線を向けるヒル魔はやる気が削げたようで、料理の手を止めてしまっている。
ヒル魔を呼び、手にした具材の生姜を放り投げた。
キャッチしたヒル魔は眉を寄せる。その迫力ある表情にも平然としたまま、妖介は口を開いた。
「父さん、とりあえずこの作りかけた奴だけ作ってよ。後は俺が作るからさ」
「おー」
黙々と続きを作りはじめたヒル魔に、妖介は内心呟く。
本当にじいちゃんと父さんはよく似てるよね、と。
さてその後。
まもりが不在のときに、ヒル魔家を訪れた椿は不思議そうに呟いた。
「それにしても、皆して随分とモノを放り投げるんやなぁ」
彼女の目の前で湯気を立てるコーヒーはさすがに運ばれてきたけれど、付け忘れたスプーンは手の中に飛んできた。
ゴミはゴミ箱に、リモコンはリモコン入れに、新聞は新聞ストッカーに。
それぞれの場所は決まっているけれど、入れる手段が全部、投げる。
しかも誰の手元も狂わない。
ごく当たり前にモノが飛び交う室内。
ある意味QBの血筋ならではと言えるんやろうか、とコーヒーを啜りながら椿はそんなことを考えたのだった。
***
『ハニーレモン』『ディア・ステップファザー』のヒル魔家サイドを書いてみました。きっとまもりちゃんがいないヒル魔さんは気が抜けてるだろうなぁ、と。そうして怒る人がいないから、皆モノをよく投げます。
しかし鳥家ではごく当たり前の光景だったり。お行儀はよくないんですが、何でも投げます。
全員ゴミも投げる・洗濯物も投げる・とにかく投げる。結構命中率もいいんですよ。
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HN:
鳥(とり)
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性別:
女性
趣味:
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自己紹介:
ついうっかりブログ作成。
同人歴は読み専門も含めると二桁は楽勝。
よろしくお願いいたします。
【裏について】
閉鎖しました。
現在のところ復活の予定はありません。
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