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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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The Joker(下)


 


+ + + + + + + + + +
その後は食事中に過度に騒ぐことなく、ほどほどに賑やかな食事は恙なく終わった。
それを見届け、アヤは自室へと戻っていった。課題があるのだという。
セナが風呂に入っている間、自宅とは違う環境に興味津々の葉月は探検したいと強請った。
それにヒル魔は片眉をピンと上げると、二人を手招く。
「探検する前に一つ、オハナシをしてやろう」
「おはなし?」
「何ですか?」
絨毯の上にあぐらをかくヒル魔の前に、ちょこんと葉月と美佳が座る。
「この家の二階には、『泣く部屋』がある」
「おへやが泣くの!?」
「まさか、ゆゆゆ幽霊?!」
「サアネ。俺たちがこの家に引っ越してきてから、その部屋は時々『泣く』んだ」
にやあ、とヒル魔が悪魔じみた顔で笑う。それに美佳も葉月も怯えたように顔を合わせた。
「だが、気が付いてもそこに近づいて扉を開けるんじゃねぇ。さもないと・・・」
「さ、さもない、と?」
「ど、どう、なる、の?」
恐怖と好奇心の狭間で二人はヒル魔の顔を見つめる。
「―――スゴイことになる」
「『スゴイこと』って何?!」
「死んじゃうの?!」
「サアネ。もしかしたら、無事にこの家から出られなくなるかもしれないナァ?」
「「ひいいいい?!」」
青ざめ涙さえ零しかねない二人の様子を離れて見ていた鈴音は苦笑する。
「あれって、アレよね」
「アレですね」
妖介も苦笑して応じる。
どれが『泣く』部屋なの、と子供達二人がかりでしつこく尋ねられても、ヒル魔はのらりくらりとかわしている。
「テメェらの泊まるゲストルームじゃねぇことは確かだ」
「何が?」
そこに、食器を洗って戻ってきたまもりがヒル魔達の会話に加わる。
「おばさん、この家ってホントに部屋が『泣く』の?!」
「僕たちのねるおへやじゃないよね!?」
それにまもりはぱちりと瞬きをすると、そのままぐりんとヒル魔の方へ向いた。
「・・・何を話してるのヒル魔くん・・・」
「我が家のルール」
平然と答えるヒル魔の隣から妖介が顔を出す。
「暗黙の了解ってね。さ、葉月くんミカちゃん二階で俺とカードゲームしようか」
「やる!」
「僕ミカじゃなくてハルカですって!」
ぎゃいぎゃいと騒ぐ子供を引きつれて、妖介が階段を上っていく。
ヒル魔はふん、と鼻を鳴らしてソファに座り、パソコンを開いた。
冒険の話はすっかりどこかに行ってしまったようだ。
「あのまま妖介が寝かしつけてくれると思うわ」
「なんだか慣れてるよね」
「子供が好きなんですって。私に似たみたいよ」
「なるほど」
「いいお湯でした」
そうこうしているうちにセナが戻ってきた。
「さ、鈴音ちゃんも入ってきなさいな」
「やー、でもお風呂は入ってきたよ?」
仕事で遅かったセナ以外は先にお風呂に入ってきたのだ。
「一人でゆっくり、ってなかなかないんでしょう? 少しくつろいで来なさいな」
にっこりと微笑まれ、鈴音は躊躇っていたがこくりと頷いた。
確かに、日々周囲は常に騒がしくてお風呂にゆっくり入るなんてしばらくなかった。
まもりに感謝し、久しぶりにゆっくりお風呂を堪能させていただくことにした鈴音はバスルームへと消えた。
「セナも忙しいのは判るけど、あんまり鈴音ちゃんに頼り切りはだめよ?」
「そうだよね。なるべく助けようとは思うんだけど・・・」
小さくなる語尾と身体を軽く叩いて、まもりは苦笑する。
「例えば朝食だけは作ってみるとかでいいの。後は子供達にも手伝わせるといいわ」
「ううーん、難しいなあ」
「難しくないわよ。ヒル魔くんだって出来たのよ?」
「俺だって、とはどういう意味だ糞嫁?」
ぱくんとパソコンを閉じたヒル魔は、にやにやと笑いながら二人に近づく。
けれどその目は笑っていなくて、セナはさっと青ざめた。
今の状況、これはヒル魔の本拠地ど真ん中でまもりを独占して会話していたのだ、と知れたから。
「ひぃいいいい!」
「ちょっと、ヒル魔くん! セナを脅すのやめてよ!」
「脅してなんかねぇだろーが。勝手に怯えてんだろ?」
人の顔見て悲鳴上げるなんてナーンテ失敬ナンデスカネ、と全くの棒読みで言われ、セナは冷や汗を掻く。
せっかくお風呂に入ったのに、台無しかも、なんて考えつつ。
「この先何日もウチに居座るからには、ウチのルールに従って貰わなきゃナァ?」
じゃき、といつのまにやらヒル魔の手に出現した銃が鳴る。
それはつまり、悪魔の妻には手出しは勿論のこと、二人きりの会話も許さない、と?
視線で問えば、同じく視線で回答が来る。
ご名答。
ああ、こんなアイコンタクト出来ても全然嬉しくない、とセナは内心ぼやく。
「ちょっと! そんな物騒なモノ出さないの!」
同じくまもりの手にはモップが握られている。
・・・この二人は手品師ではなかったはずだけど、とセナは場違いな感想を持った。
「ルールを守れば何もシマセンヨ」
「実際今言いがかりつけてるでしょ!」
「や、あの、すみませんヒル魔さん! まもり姉ちゃん、僕が悪いのは判ってるから・・・」
「ダメよセナ、自分が悪くないのに謝っちゃ!」
「いや、だから悪いのは僕・・・」
「違うでしょ!」
聞く耳を持たないまもりに、どうやってこの場を収めようかと考えていたセナは、ふとこの家の中で一人だけまだ会っていない二人の家族を思い出した。
唯一この家の中で黒目黒髪の、息子の美佳によく似た、彼。
「あの、護くんは?」
「え? ・・・そういえば、夕食の後から姿が見えないわ」
部屋かしら、と小首を傾げるまもりに、ヒル魔は小さく舌打ちして銃をしまう。
「どこに行くの?」
「書斎。テメェコーヒー淹れて持ってこい」
「はーい」
唐突な喧嘩の幕切れに、セナは瞬く。
既に部屋を出て行ってしまったヒル魔も、キッチンに向かったまもりも、どちらも先ほどまでの激昂が嘘のように平素に戻った。
「僕、何か不味いこと言ったのかな?」
呟いても回答はない。
セナは首を捻りながら階段を上り、カードゲームで盛り上がる妖介の部屋を訪れた。
「おっしゃコレでどうだ! フルハウス!」
「ええ~!? フラッシュ来たから勝てるとおもったのに!」
「残念でしたー、俺はフォーカードです」
「うわあ! また妖介兄ちゃんの勝ち?!」
「なんかいかさましてるんじゃないの?!」
「俺はコレ強いって言ったじゃない」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ三人にセナは声を掛けた。
「楽しそうだね」
「あ、セナさん。入ります?」
「お父さんもポーカー弱いんだよね?」
「妖介兄ちゃん、七並べやらない? それなら勝てそうな気がする」
「じゃあ七並べやろうか」
四人で車座になり、妖介が素人らしくない手つきでカードを切っていく。
男四人でしばらく続いた七並べは、やはり妖介の圧勝で。
その後騒々しさに顔を出したアヤと風呂から上がった鈴音も混ざり、結局は大人数でカードを囲むことになったのだった。


そしてその喧噪の陰で、『泣く』部屋が出現している一方。

家から抜け出していた護は、何喰わぬ顔をして自室へと戻った。
着ていたシャツを脱ぐと、その二の腕にあからさまな爪痕。
それを愛おしそうに撫で、護はパジャマに着替えると喧噪には関心も示さず、さっさとベッドに潜り込んで瞳を閉じた。


***
とも様リクエスト『ヒルまも一家、セナ一家がお泊まり』でした。葉月の名前はミ/カ・ハ/ッ/キ/ネ/ンのハッキ→はつき→葉月という安直さで決定しました。セナ一家は年が13・7・0と6年ずつ間が空きました。実際こんななったらいつまでも小学生が家にいて役員とか色々面倒だよなあ(リアルな意見)本当は美佳がいびられる話がご希望だったのですが、セナだけが相変わらずいびられ・・・てる? というような話ですみません(苦笑)鈴音の要領の良さが多少入ってるようです、美佳。そして徐々に黒さが出てくる護を書くのが楽しくてしょうがないですwありがとうございました~w

とも様のみお持ち帰り可。
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