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旧『そ れ は 突 然 の 嵐 の よ う に』です。 ア イ シ ー ル ド 21 ヒ ル ま も ss 中心。 いらっしゃらないとは思いますが、禁無断転載でお願いします。

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スターゲイザー

(ヒルまも一家)
※アヤ・妖介が高校一年の時の話です

+ + + + + + + + + +
泥門高校のデータ量は膨大だ。
どんな対戦相手が出てきてもデータがありません、ということはない。
今はネットで色々と情報を得る事が出来るにしても、そこまでの部分の情報が晒されているとは考えられないし。一体どういう手腕でそれを得ているのか、と首を傾げる者も多い。
しかしコーチがヒル魔、という時点で高校時代の彼を知っている者は理解してそれ以上は突っ込まない。
彼の悪魔的所業によって増えた奴隷がいれば難しい話ではないからだ。
けれど昔から完璧に隠されて手を焼いていた王城や白秋の情報も、今回は早々に仕入れられていた。
しかも近隣の情報であればほぼ完璧に網羅されている上にデータベースの更新も早い。
「・・・いつも思うんですけど、どこに情報ソースがあるんですか」
主務の猪野が積み上げられた書類にげんなりとした顔をする。
彼自身データ整理は好きだし得意だが、あまりに量が多すぎる。
しかも信用の置ける情報が多く、早くさばかないと結局意味が無くなってしまうのでどうしても必死に作業せざるを得ないのだ。
彼は、魚と野菜と情報は鮮度が命だと思っている。
そしてそれは嘘ではない。
ひらりとヒル魔に見せられる手帳は年季が入っているが、それだけとは思いづらい。
「近隣に関して言えば、これだけじゃないがな」
「やっぱり。誰か派遣してるんですか?」
それにヒル魔はにやりと笑った。
「実に有能なのを一人な」


さてその有能とまでヒル魔に言わしめた人物。
それが本日の偵察校、西部高校へと忍び込んでいた。
「ん?」
「どーした?」
アメフト部員が首を巡らす。そこにはスケッチブックを持った少女が一人。
「あんな子いたっけ?」
「さあ、美術部じゃねぇの?」
さらさらの長い黒髪、派手すぎない格好。
私服の高校なので学年までは判別出来ないが、見慣れないしおそらく一年生だろうと思われる。
「熱心に描いてるよなあ」
「俺たちモデルで描いてるのかあ?」
にやにや笑いながら見ていると、少女が顔を上げた。視線が合うとちょっと驚いたような顔をして、次いでふわんと笑う。
ちょっとここらでは見ないような美少女だ。
「おいおい、マジカワイイじゃねえか!」
「ちょっと声掛けてこようぜ・・・ってわあ!」
銃声が響く。振り返ればそこには監督の姿。
「なに喋ってんだ! さあ、GUNGUN走り込みだーっ!」
「ははははい!」
「今行きまーす!」
実弾をぶっぱなす規格外の監督の流れ弾に当たって、負傷して大会に出られないなんて悲しい事態にはなりたくない。
慌てて走り去る部員達は少女が満足そうにスケッチブックを閉じ、歩み去ったのに気づかなかった。

「ただいまー」
「お帰りなさい、遅かったのね」
「うん、ちょっと絵を描いてたんだ」
護は手にしたスケッチブックを開いてみせる。
そこには詳細に描かれた風景画。
鉛筆だけで描き込まれてるが、色彩まで見えそうな程だ。
「画力が私に似なくて良かったわ」
まもりの絵心のなさには護も苦笑して頷くしかない。
「絵心のなさは女の子だけに出るのかもよ」
「・・・うーん否定出来ないわ! 確かにそうなのよねえ」
アヤは残念な事に画力はまもりに似てしまったのだ。
笑う二人の背後で扉が開く。
「ただいまー」
「タダイマ」
そこには妖介とアヤの姿。上がり框で止まってる護に目を丸くする。
「どうしたの? そんなとこで」
「今帰ったの」
「うん。ちょっと絵を描いてたの」
アヤが片眉を上げる。父親と同じように。
「ふーん。まあいいや、とりあえずご飯! 母さん、今日のおかず何―?」
「今日は唐揚げとねー・・・」
妖介とまもりがリビングに消えるのを見て、アヤは手を出す。
護はスケッチブックをアヤの手に載せた。
「今日は?」
「西部」
スケッチブックを捲ると詳細なスケッチのページの後ろにフォーメーション図、そしてメンバーのコンディションが事細かに描かれている。
そう、あの女子高生は護の変装だったのだ。
「上々」
「後で清書して父さんに渡すよ。上空からのポジション表もね」
上空からの情報はハーピーに取り付けたCCDカメラによるものだ。
アヤと護は部屋に戻るべく階段を上る。
「それにしても」
アヤが後ろから着いてくる護を振り返る。
「なんであの格好?」
「ああ、大体アメフト部って男所帯でしょ。女の子にはガード甘いんだよね」
それに僕が男子高生は無理でも、女子高生ならいけるでしょ。
そう笑う護は肩に掛けた鞄を揺らす。
そこには変装グッズが入っている。
七つ道具と呼んで差し支えないだろう。
様々な場所に様々な格好で出没する護の姿はそれでも誰にも怪しまれない。
少年としても少女としてもこの外見は活用出来るのだと彼は笑う。
「使えるものは使わなきゃね」
「・・・変な趣味には走らないように」
肩をすくめてそう忠告した姉に、護はにっこりと笑って頷いた。

妖介・アヤの卒業後は悪魔のコーチが存在するにしてもかなりの戦力ダウンを強いられるだろう、という近隣の学校の考えは甘いのだと。
数年後、護の入学と共に驚愕の事実を知る事になるのだが、それはまだ少々先の話。


***
今から主務の能力を磨いている護の話でした。兄弟一のおしゃれさんなので変装もお手の物です。
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